電ア少年 従兄弟の場合

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 高校受験を控えた中学3年の夏休み。朝から塾の夏期講習に参加した美里は、帰宅後、一休みとばかりに自室のベッドに転がった。
 どれくらいの時間眠っていたのだろう?
 ベッドのスプリングが軋む振動に続いて足に触れる人肌。
「……ん、何?」
 未だ半分以上眠りの国に身を任せたまま、美里はもっと寝かせておいて欲しいという気持ちを込めつつ、ボソボソと問い掛ける。相手は母親だと思い込んでいた。
「夕飯なら後で食うから」
 そう告げて、身をよじり壁に向かおうとする美里の足は、思いがけず強い力で持ち上げられた。予想外の行為にムリヤリ意識を浮上させられ、不機嫌そうに瞼を上げた美里の目に映ったのは、勝ち気に笑う少年だった。
「雅善!?」
「くらえっ、電気アンマ!!」
 驚き問い掛けた美里の言葉と少年の発した声が重なり、次には股間に激しい振動が送られてくる。寝起きの頭と身体には強すぎる刺激だった。
「ぐあぁっ……」
 美里はベッドの上で悶絶する。
 時間にして多分数十秒。足はあっさりと下ろされた。
「どうや、まいったか!」
 勝ち誇ったように告げた少年は、疲れたと言わんばかりに足を抱えていた両腕を振っている。それを目の端に捕らえながら、尚暫くの間ベッドの上で荒く息を吐いていた美里は、何故目の前に遠方に住んでるはずの従兄弟がいるのかを思い出していた。
 西方雅善という名の少年は、関西へと嫁いだ母の妹の息子で、美里より5歳年下の小学5年生だ。
 元々仲の良い姉妹で、どうやら一緒に出掛けたいらしく、夏休み中に1日子守をしてくれと頼まれたのを覚えている。
 すっかり忘れていた。
「俺が子守のバイトするのは、明日のハズだろ……」
 ぼやきながら上半身を起こせば、雅善は不思議そうに首を傾げる。
「何の話や?」
「いや、なんでもない」
 そうだ。前日から我が家に泊まって、明日は朝から出掛けると言っていた。明日は一日、この雅善のお守りをするのかと思うと、今から溜息が出そうだった。
「なーなー。それより、どうやった?」
「どうって、何が?」
「電気アンマ。結構効いたやろ?」
 クラスで流行ってる遊びなんだと笑う雅善に、そういや昔、同じように流行った事があったなと思う。あれは小学校に入ってすぐくらいだったろうか。地域差なのかリバイバルブームなのか、随分時差があるなと思いながら、美里はニヤリと笑い返した。
「たいした事ないな」
「嘘吐け。ぐわぁ~とか叫んどったやないか」
「寝起きだったからさ」
「そんなん強がりやん」
 もう一回思い知らせてやると膝に掛かった手を、美里はやんわり捕まえる。
「待てよ。今度は俺の番だろ?」
「え?」
「やられたらやり返す。こういうのはそうやって遊ぶのがルールじゃないのか?」
 少なくとも、自分のクラスではそうだった。
 掴んだ手を勢い良く引けば、バランスを崩して倒れこんでくる小さな身体。軽々と受け止めてベッドの上に転がすと、すばやく立ち上がって体勢を整えた。
「わっ、ちょっ、待っ」
「待たない」
「うぁっ、あっ、ああああーっはっはっは、や、やめっ!」
 さすがに子供相手にパワー全開はまずいかと、力を加減したせいだろうか。雅善は半ば笑いながら、悶えている。
 自由になる上半身をバタつかせて逃げようとするが、美里はがっしりと捕まえた両足を放すことはない。体格差は充分で、雅善の足の重みなどほとんど気にならなかった。数十秒で美里の足を放った雅善との差はここにある。
「ほらほら、参ったなら参ったって言えよ?」
「だ、誰がっ、あっ、ははっああんっ、んっ」
 負けず嫌いな所があるのか、それとも笑っているくらいだからやはり力加減が甘いのか。
「仕方ないな。んじゃ、レベルアップ」
 言いながら、美里は足に込める力を少しばかり強くした。
「うあぁ、ああああああ!!」
 ギュッとのけぞる身体に、しまったなと思う。やはり力を入れすぎたかも知れない。
「おい、大丈夫か?」
 慌てて開放すると、美里は膝をつき、暴れた興奮からか紅潮している雅善の顔を覗きこんだ。潤んだ目を隠すようにそっぽを向いてしまった雅善は、キュッと唇を結んで頑に美里のことを拒んでいるようだった。
「ホント、悪かったよ」
 仕掛けてきたのはお前だろう、とか。これでも手加減してたんだ、とか。言いたいことは山ほどあったが、美里は謝罪の言葉だけを告げて、困ったように目の前の小さな頭をそっと撫でる。
「ぁっ……」
 ピクリと震える身体と、小さく零れる吐息。雅善は耳まで真っ赤に染めて、モジモジと膝をすり合わせている。
「お、前……」
 もしかして、感じてた、とか?
 言葉に出せず躊躇う美里の気配に、雅善も気付かれた事を悟ったのだろう。
「ヨシノリのアホ! カス! イケズ!」
 どけと言わんばかりに突っぱねられた腕を取り、それを片手でまとめて拘束すると、美里は確かめるようにそっと、雅善の股間にもう片方の手の平を当てた。軽く揉み込むようにしてみても、その手を押し返す弾力はない。
「やっ……!」
 急に大人しくなって、雅善は緊張で身体を固めている。
「イっちゃった、とか?」
 やはり困惑気味に問い掛けた美里に返されたのは、大きな瞳から零れ落ちる涙だった。両腕を拘束されて拭くことのできない涙が、次から次へと溢れては流れ落ちていく。
「うー……っ」
 雅善は悔しそうに唇を噛み締めていた。
 酷く申し訳ない気持ちになって、美里は雅善の身体を引き起こすとそっと抱きしめ、宥めるようにその背を軽く叩いてやる。
「ゴメン、本当に悪かった。母さん達にはバレないように、ちゃんと始末してやるから。だから泣くなよ、な」
「ど、やって……?」
「あー……」
 部屋の中に視線を巡らせた美里は、先ほど塾から持ち帰り、机の上に置いていたペットボトルに目を止める。
「うん、大丈夫。ちょっといいか?」
 雅善をベッドへ置いて立ち上がった美里は、ペットボトルを取ってくると、雅善の視線の高さにそれを掲げて見せた。レモンティーのラベルがついたそのペットボトルの中には、数センチ分の飲み残しが入っている。
 雅善が不安げに見守る中、その蓋を開けた美里は、一瞬の躊躇いも見せずに雅善へ向かってそのボトルを傾けた。琥珀の液体を胸のあたりから被った雅善は、驚きに言葉をなくして、ただただ美里を見つめている。
「よし、じゃあ、行くか」
 ニコリと笑った美里は、雅善の手に空になったペットボトルを握らせると、ヒョイとその身体を抱き上げた。
「ど、どこへ!?」
「風呂場。汚れた服も、洗わないとな」
 俺達はふざけてて、置いてたペットボトルを倒したんだ。
 美里の告げた理由に、雅善は至極真面目な表情でわかったと呟き頷いてみせる。それを目の端に捕らえながら、明日もこれくらいしおらしくしててくれればいいなと思った。

 
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