1話完結作品

1話だけで終わっている作品をただ並べただけのページです。
右下へ行くほど古い作品。

酔った勢いで兄に乗ってしまった話  大事な話は車の中で  大晦日の選択  捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか  自棄になってても接触なんてするべきじゃなかった  お隣さんがインキュバス  ずっと子供でいたかった  ホラー鑑賞会  離婚済みとか聞いてない  初恋はきっと終わらない  好きって言っていいんだろ?  カレーパン交換  ツイッタ分(2020年-2)  ツイッタ分(2020年-1)  それはまるで洗脳  あの日の自分にもう一度  ツイッタ分(2019)  禁足地のケモノ  嘘つきとポーカーフェイス  カラダの相性  お隣さんが気になって  間違ってAV借りた  ツイッタ分(2018)  結婚したい相手はお前  ときめく呪い  昔と違うくすぐり合戦  雨が降ってる間だけ  兄が俺に抱かれたいのかも知れない  ただいまって言い続けたい  親友に彼女が出来た結果  週刊創作お題 新入生・再会  60分勝負 同居・灰・お仕置き  いくつの嘘を吐いたでしょう  ヘッダー用SS  出張に行くとゴムが減る  ゴムの数がオカシイ   チョコ味ローション買ったんだって  スライムに種付けされたかもしれない  昨夜の記録  合宿の夜  寝ている友人を襲ってしまった  なんと恋人(男)が妹に!?  卒業祝い  120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅  こんな関係はもう終わりにしないか?  そういえば一度も好きだと言っていない  バレンタインに彼氏がTENGAをくれるらしい  鐘の音に合わせて  青天の霹靂  初めて抱いた日から1年  叶う恋なんて一つもない  抱かれる覚悟は出来ていたのに  2回目こそは  墓には持ち込めなかった  呼ぶ名前  酒に酔った勢いで  思い出の玩具  兄の彼氏を奪うことになった  俺を好きだと言うくせに  夕方のカラオケで振られた君と  一卵性双子で相互オナニー  腹違いの兄に欲情しています  死にかけるとセックスがしたくなるらしい  草むらでキス/戸惑った表情/抱きしめる/自分からしようと思ったら奪われた  好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう  淫魔に取り憑かれてずっと発情期  アナニーで突っ込んだものが抜けない  ハロウィンがしたかった  忘れられない夜 / 無抵抗 / それだけはやめて  引っ越しの決まったお隣さんが親友から恋人になった  優しい笑顔が好きだった  リバップル/向き不向き  戸惑った表情/拘束具/同意のキス  夕方の廃ビルで

 
 
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エイプリルフールの攻防4(終)

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 どんな覚悟を決めてきたのか、深刻な顔で玄関前に立つ相手を迎え入れたら、靴を脱いだ矢先に土下座が始まり唖然とする。
 慌てて立ち上がらせて、たくさん好きって言いながら優しく抱いてくれたらそれでいいよと言ったら、相手は随分と呆気にとられた顔をした。追撃で、泣いた分いっぱい優しくされたいと言えば、グッと体を引かれて抱き締められる。
「ごめん。本当に、お前のこと、ずっと好きだった。なのに泣かせてごめん。甘ったれたことばっかしてて、本当にごめん」
 繰り返されるゴメンの言葉を聞きながら、背中に腕を回して、その背をポンポンと軽く叩いてやった。
「も、いいから。それより早く、お前としたい」
 昨日から待たされてるんだからと言ったら、抱きしめる腕を解いた相手が、困惑を混ぜながらも何かを探るような顔で見つめてくる。
「何?」
「本気で、俺に抱かれる気でいるのか?」
「俺のこと、抱けそうにない?」
「そんなこと言ってないだろ。だってお前、去年俺にイかされて泣いたし、その、受け入れる側をするっていうのは、かなり体にも負担が掛かると思うし」
「昨日も言ったけど、今年、お前に抱かれておしまいにするつもりだったから、結構前から体は慣らしてる。だから多分、体は平気」
 慣らしてたという部分で、相手はまた随分と驚いているようだった。さすがに少し恥ずかしいなと思いながらも、相手の驚きを無視して続ける。
「もしお前が頷いて抱いてくれたとしても、それは俺ばっかり好きなセックスできっと辛いんだろうなって思ってたから、ちゃんと両想いで、好きって言われながらするセックスになるかもって思ったら、正直、早く早くって急かす気持ちばっかり強くなってる」
 正直な気持ちを告げて、お前が俺を好きだったって言ってくれたの本当に嬉しいと言いながら、驚いた顔のまま固まる相手へ自ら口付けた。そしてもちろん、自分から深いキスを仕掛けていく。
 すぐに応じてくる相手と舌を絡ませあっていたら、ふいに体が少し浮いて、慌てて口を離した。
「えっ、ちょっ…」
「ベッドまで運ぶだけだ」
「え、この状態で?」
「なら横抱きで運ぶか?」
 イエスもノーも返さないうちにさっさと姫抱きされて、照れるより先にあわあわと慌てているうちに、あっさりベッドの上におろされる。狭いアパートなので、運ばれる距離はめちゃくちゃ短かった。
「好きだ」
「俺も、好き」
 見下ろす真剣な顔にニコリと笑いかけて、早く来てという想いを乗せながら腕を伸ばす。
「お前が、好きだよ」
 唇が触れる直前、もう一度柔らかに囁かれた。きっと本気で、たくさんの好きと優しさを示しながら、抱いてくれる気で居るのだろう。
 胸の中に甘い何かが流れ込んできて、幸せだなと思った。

 
 
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エイプリルフールの攻防3

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 彼の住まいとは片道三時間以上の距離があるとわかっていながら、一度帰って出直すという彼を引き止めることはしなかった。
 引き止めたところで、どう接していいのかわからないというのももちろんある。でも一番はやはり、彼の言葉を信じたい気持ちとともに、またエイプリルフールだと言って手のひら返されるのを恐れる気持ちがあったからだ。もし彼の言葉がまたしてもエイプリルフールの嘘なら、明日彼が来ないというだけで済む。彼の前に、これ以上傷つく姿を晒さなくて済む。
 もちろん、自分だけの片想いじゃないのかもという期待と、全ての本当とやらに対する不安もあった。
 それらを抱えながら気がかりで憂鬱な時間を過ごし、だったらさっさと眠って明日にしてしまえと部屋の明かりを落として布団に潜ってみたものの、結局眠れずに何度も寝返りを繰り返す。
 そんな中で携帯電話が鳴ったものだから、心底驚き布団の中で体が跳ねた。
 発信者は登録されていない。表示されている見覚えのない電話番号に、出るかどうかを迷ったものの、もしかしたら彼なのではという期待で恐る恐る通話ボタンを押した。
「もしもし」
『出てくれてよかった』
 耳に届く心底ホッとした声は、やはり彼のものだった。
「何か、あった?」
『日付越えたから、好きって言っておこうと思って』
 朝まで待てなかったと言いながら、電話の先では相手が苦笑している気配がする。
「え?」
『ずっと、お前が好きだった。子供の頃から、お前が好きだったんだ。そう言ったら、信じるか?』
 驚いてすぐには言葉が出なかったけれど、相手がこちらの言葉を待って黙っているので、考えながらゆっくりと口を開く。
「ちょっと信じがたいけど、でも、だからこそ、嘘じゃないのかなとも思う」
 もうエイプリルフールは過ぎたわけだしと言ったら、すぐにずっとごめんと返ってきた。
『会ってからゆっくり話すつもりだったけど、今、話しても平気か? それともやっぱりそっち行ってからのがいいか?』
「電話のが、いいかな」
 どうせ眠れる気もしないと思いつつ言えば、じゃあ聞いてくれと言って話しだす。
『好きだって気持ちはあるのに、その気持ちがあるからか、お前とは友人のようにすらなれなくて、イライラしておかしな態度ばっかり見せてきた』
 小学生の頃だったが初めて好きだといった日を覚えているかと聞かれて、覚えていると返した。
『思った通りビックリされたのに、バカみたいに腹が立ったんだ。お前が俺をなんとも思ってないどころか、むしろ嫌われてるって知ってたのに、でも、突きつけられる現実にやっぱりいっちょ前に傷ついてた。最初からエイプリルフールを選んで告白したくせに、嘘に出来たこともそれにお前が怒るのも、凄くホッとした』
「あれも、偶然会ったから揶揄ったってわけじゃなかったのか……」
『そう、違う。でも自業自得でショック受けて、その後数年はもう二度とやらないって思ってた。お前との関係も、なんとかせめてすぐ険悪にならない程度にはしたくて頑張ってたけど、その甲斐あってか中学の頃は比較的穏やかだったよな?』
「確かに。でもそれをやめたってことは、気が変わったって事なんだろ?」
『だってお前に好きな女が出来たから』
「えっ?」
『お前に好きな子が出来たって知って、なんか居てもたっても居られない気分になって、どうしてもお前に好きだって言いたくなった。だからまた、嘘に出来るようにエイプリルフールを選んだんだよ』
 とにかく好きって言いたいだけだったはずなんだけどな、と相手の続ける言葉に、ただただ耳を傾ける。
『お前は驚きながらも、ちゃんと俺の話を聞いてゴメンとまで言って振ってくれたのに、逆にその対応で諦められないなと思ったんだ。というか、お前の優しい対応に味しめたというか、エイプリルフールにならお前に好きって言えるんだって、思っちまったんだよな』
 たとえ嘘としか思われなくても、年に一度だけでも、お前に好きって言っていいんだって事実が魅力的すぎたと、相手の声が申し訳無さそうに響いた。
『お前を好きって気持ちがどうにも出来ないのは、もうとっくに気付いてたからな。年に一回くらいバカバカしい遊びに付きあわせたって許されるだろって思ってた。何もかも自分勝手なのは自覚してる。でもな、だんだん欲深くなっていくんだ』
 自意識過剰かもしれないけど、高校三年頃からお前に意識されてるかもって思うようになったと言われて、思わず正解とこぼしそうになった言葉を慌てて飲み込んだ。
『お前が進学してそのアパートに住むようになってすぐ、押しかけた俺をあっさり部屋に上げただろ。しかもお前からの好きって嘘を待ってるって言ったら、やっぱりあっさり好きって言うから、あの時実はかなり驚いた。嘘でも言えるかって返ってくると思ってたから。もしかして少しは俺を好きって気持ちがあって、お前も俺同様、嘘ってことにして好きって言ってるんじゃないかって頭をよぎった』
 答えたくなきゃ答えなくてもいいが、当たってるかという問いに、少し迷ってから当たってると返した。相手はそうかと言って少し黙った後、また話し始める。
『でも今までが今まで過ぎだし、もし実は本当に好きなんだなんて話をしてふざけんなって振られてしまったら、もうこんな遊びすらできなくなる。それくらいなら嘘ってままにして、お前が好きって言ってくれる事を楽しもうと思った。これが俺の、全ての真実だ』
 年に一度だけの遊びってことに色々甘えすぎてたんだと言って、もう一度彼は本当にゴメンと謝罪の言葉をくれた。
 呆れるだろうと聞かれたので、呆れてるよと正直に返す。
「俺、お前を好きって思い始めてから先、この遊びのせいで結構泣いたからね?」
『すまん。俺に出来ることがあれば何でもする』
 じゃあ今から考えとくから、朝になったら覚悟決めてこっち来いよと言ったら、神妙な声がわかったと告げた。

続きました→

 
 
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エイプリルフールの攻防2

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 大学2年目の春は、やはりわざわざ始発でアパートまでやってきた相手を部屋に上げて、好きだの言葉に好きを返し、舌を触れ合わせる深いキスを自分から仕掛けて行った。相手の驚く顔が見れて、少しだけ溜飲が下がった。
 お前も懲りないよなとフフンと笑い、今までの鬱憤を晴らすべく嘘に驚くなよと嘲って、ざまーみろと付け加えれば、相手が嫌そうに眉を寄せたのでますます気分が良かった。しかも自主的にさっさと帰ってくれたので、初めて勝ったような気がして嬉しかった。
 でも同時に、仕掛けたキスに丁寧に応じてきた相手を、そのキスに感じてしまった自分を、しばらく忘れられなくて苦しかった。
 3年目の春も懲りずに訪れた相手を、同じように部屋に上げてキスを仕掛けていったら、押し倒されて撫で回された挙句、手で握られ擦られ相手の手の中に吐精してしまった。やめてとか嫌だとかの言葉はキスで封じられていたし、力は明らかに相手の方が強い。でも本気で抵抗しきれなかったせいだという事もわかっている。
 大学進学で物理的な距離が大きく開き、年に一度エイプリルフールに会うだけの相手なのに、他の誰かを好きになる事は出来なかった。そして4月1日の朝にドアを開けて相手の顔を見ると、やはり好きなのだと思い知るのだ。
 強引にされた事よりも、その手を拒否出来なかった事が辛くて涙が抑えられず、相手を相当驚かせた上に随分と気まずそうな顔をさせたから、結果的に相手に一矢報いる事は出来たらしい。
 ただ、泣いてしまったショックもあり、無理矢理追い出すタイミングを逸したせいで、気まずそうな相手に優しく宥められたのは、その後もかなり引きずる事になった。
 ぐずぐずと泣く自分を緩く抱きしめそっと背を撫でてくれながら、しかし決して謝る事はせず、代わりとばかりに可愛いかったとか感じて貰えて嬉しいだとか好きだとか繰り返されて、嬉しいのに苦しくて辛くて涙はなかなか止まらなかった。だってエイプリルフールであるこの日に彼の吐き出す言葉が、嘘だという事を自分は知ってしまっている。
 そして大学4年の今年も、よくまあ顔を出せると思いながらも部屋の中へ迎え入れ、今年も来てくれて嬉しいと笑う。嬉しいのは嘘じゃないけど、見せる笑顔は嘘だった。全く笑えるような気分じゃないのに笑えるのだから、この数年で随分と嘘が上手くなってしまった。
「喜んで貰えて俺も嬉しい」
 柔らかに笑い返されながら、腰に回った腕に引き寄せられる。ドキドキを隠して、慣れたフリで自分から顔を寄せ唇に触れた。
 軽く何度か触れた後で舌を伸ばせば、簡単に迎え入れられ舌先をチュウと吸われて甘噛みされる。ぞわっと肌が粟立って、腰に何かが集まり重くなる。
「あっさり感じて、相変わらず可愛いな」
 ふふっと笑われながら押し倒してくる相手の背を、腕を伸ばして抱いてみた。昨年同様触れられる覚悟も、それどころか抱かれるつもりまである。
 自分の意思で受け入れるのだから、少なくとも、彼がこの部屋にいるうちは泣き顔を見せずに過ごせるはずだ。
「今年は、最後まで、抱いてくれる?」
 相手の顔を直視しながら口にする勇気はなかったから、引き寄せた彼が覆いかぶさって来た後に、そっとその耳に吹き込んでみた。
 腕の中でギクリと小さくはねる体。しかし相手の驚きに、してやったりと笑える余裕はない。
「ねぇ、好きだよ」
「ああ。俺も好きだ」
 好きの言葉に反応して、すぐさま好きが返された。
「ほら、せっかく両思いなんだから、最後まで、しよ?」
 相手の躊躇いを感じながら、それでさと言葉を続けていく。
「でさ、もう、終わりにしてよ。お前は楽しいのかも知れないけど、俺はやっぱり嘘吐くの向いてないし、年一回の遊びってわかってても、遊びと割り切って今日だけの事に出来ないんだよ。お前が好きだよ。今日は嘘で良いけど、今日が終わったら無くなる訳でも、反転して嫌いになれるわけでもないからさ。だから、終わりにさせて」
 なんせ今日はエイプリルフールなので、これすら嘘と思われるかも知れない。だから一応、エイプリルフールだけど今日は全部本当の事しか言ってないよと言ってみた。
「わかった。終わりにする」
 これ本当なと耳元に囁かれた言葉に、ホッとし過ぎて体の力が抜けていく。
「でも、今日このままお前を抱くのは無理」
「ああ、うん。いいよ」
 言われて、確かにそうなるよなと、内心苦笑するしかなかった。
「本気で好きとか言ってる男に、好きだの可愛いだのの嘘言ったって面白くないよな。本気で抱かれたがってる相手なんて抱けないってならそれでいい。お前、俺が喜んだら悔しいもんな」
 抱かれるつもりでそれなりに体を慣らしてあったから、少し残念でもあったけれど、でも自分ばかりが好きなセックスなんて、しなくて済むならしない方が良いと思う気持ちもある。
「違う。そうじゃなくて、お前を抱くのは明日にさせてくれ」
「は? 明日?」
「今日が終わったら、もう一度、お前に好きって言う。今日のうちに俺も本気でお前が好きだって言っても、どうせお前、信じられないだろ。まぁそれも全部俺のせいだけどな」
 明日、全ての本当を話すよと、柔らかで優しい声が鼓膜を震わせた。

続きました→

 
 
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エイプリルフールの攻防

 まだ寝ていた春休みの朝、チャイムを連打されて起こされた。渋々玄関の戸を開ければ、そこには思いもかけない人物が立っている。
「え、何? なんでお前?」
 そこに居たのは地元の知り合いだった。いや、知り合いというか犬猿の仲というか、あまり良好とは言い難い関係を長年続けてきた元同級生だ。
「寝ぼけてんのか? お前に愛を囁きに来たに決まってんだろ」
 にやりと笑ってみせるから、今日がエイプリルフールだったことを思い出す。
「まさか今年も来るとは思ってなかった」
 大学への進学を決めて、先日引っ越してきたばかりのこのアパートは、実家から片道三時間オーバーの場所にある。
「もはや恒例行事だ」
「というか住所良くわかったな」
「お前の親に聞いたら、笑いながら教えてくれたぞ」
 思わず何やってんだよ母ちゃんと呟いてしまったら、相手は楽しそうに笑いながら、離れても仲良くしてやってねって言ってたぞなんて言うから、親は自分たちの関係を大きく誤解しているらしいと知った。
 いや、毎年毎年、春の玄関先で告白ごっこをしている息子たちを見ていたら、そう誤解するのも仕方がない。
「お前、どんだけ俺好きなんだよ」
「始発で駆けつける程度には、愛してるよ」
 にやりと笑い返してやったら、ふわっと笑いつつも真剣な声のトーンで告げてくるから、ああくそダメだと内心では既に白旗を振った。嘘だってわかってても嬉しいとか頭沸いてる。
「照れんなよ。可愛いな」
 顔赤くなってんぞと指摘されて、言われなくてもわかってると思いつつ、相手の腕を掴んで取り敢えず家の中に引き込んだ。どう考えても玄関の戸を開けながらする会話じゃない。
「今年はやけに積極的じゃないか」
「引っ越してきたばっかだし、近所に見られたくない」
「ああ、まぁ、確かに。配慮不足で悪かった」
 素直に謝られて拍子抜けだ。どうやら親含む実家近辺では、エイプリルフール限定の遊びとして認識されている自覚が、こいつにもちゃんとあったらしい。
「つーかお前も、本当によくこう長いことこんなバカなこと続けるよな」
「お前に正面切って好きだといえるのはこの日だけだしな」
「でももういい加減俺も慣れきってるし、そうそうお前が楽しい反応もしてないんじゃないの?」
 言いながら、初めて好きだと言われた大昔へ思いを馳せる。あれはまだ小学生の頃で、多分たまたま出くわしただけだった。普段何かと衝突することが多かった相手に、いきなり好きだと言われて腰を抜かす勢いで驚いたら、こいつは爆笑してエイプリルフールだと言ったのだ。もちろんその後、自分たちの関係が悪化したのは言うまでもない。
 その後数年は何もなかったのに、中学三年の春にわざわざ自宅まで押しかけてきたこいつは、またしても好きだと言って驚かせてきた。過去にエイプリルフールと笑われた事なんて忘れていたから一瞬本気にした。中学に上がってからはそこまで険悪な仲ではなかったし、好きな女子にすら告白できない自分と違って、男相手に告白するという勇気を純粋に凄いと思って、好きな子いるからゴメンと誠意を持って丁寧にお断りしたのだ。なのにこいつはにやりと笑って、エイプリルフールと一言残して帰っていった。もちろんその後、自分たちの関係は悪化した。
 そして高校に入学してからは、毎年4月1日に実家を訪れ、お前が好きだと言うようになった。さすがにもう信じることもなく、嘘つきと追い返したり、はいはいお疲れ様ですと軽く流してみたりしたのだが、昨年、嘘だとわかっているのにトキメイてしまって慌てた。おかげで、高校三年次はひたすらこいつを避けて生活するはめになってしまった。
「お前の反応がおかしくて続けてるってより、待ってる、が正しいな」
「待ってるって何を?」
「お前が俺に好きだっていうのを」
「は?」
「こんだけ嘘の好きを並べ立ててるのに、お前は驚くか呆れるかで、自分も嘘をつき返そうとはしないんだよな」
「ああ、その発想はなかったわ」
 そうか。嘘ってことにして好きって言っていいのか……
「じゃあ、俺もお前のこと、好きだよ」
 口に出してみたら、思いのほか恥ずかしい。だって嘘だけど、嘘じゃないから。
「そうか。ならやっと、両想いだな」
 グッと腰に手が回ったかと思うと、ふふっと楽しげに笑った相手の顔が近づいて、軽く唇が塞がれる。
 すぐに離れていく顔を呆気にとられて見つめてしまったら、満足気な顔でにやりと笑う。胸の奥を鋭い何かで突かれるような痛みが走るくらい、それは酷く嫌な顔だった。
「バカすぎだろ。お前の反応、まだまだめちゃくちゃ楽しいぞ?」
「死ねっ!」
 閉じたばかりの玄関扉を開いて、グイグイと相手を押し出した。
 ガチャリと鍵を閉めて、閉じたドアに額を押し付ける。ぐっと歯を食いしばっていなければ、泣いてしまいそうだと思った。

続きました→

 
 
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太らせてから頂きます2(終)

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※ 視点が後輩に変わっています

 思えばサークルに入って少ししてから、その先輩はずっと自分をなんだかんだ気にかけてくれていたように思う。実家の状況が変わって仕送りが大幅に減った時も、サークルを辞めるといった自分を幽霊会員でいいからと引き止め、結構な頻度で食事をおごってくれたりしていた。
 下心でなんて言いつつも何もされなかったし、いつも柔らかに笑ってくれるばかりだったから、なんというかこう、世話したがりな人なんだろうと思っていた節はある。下心というのはむしろ、手軽にボランティア精神を満たすのに利用してるってことか? なんて事を考えた事まであったほどだ。
 実家の状況が少し好転して、前ほどではないにしろまたサークルにも時々顔を出せるようになってからも、一度かなり縮んだ距離感は顕在で、奢りこそ多少減ったけれど一緒に食事する頻度はむしろ上がった。サークルに顔を出せるようになったことを、本気で喜んでもくれていたから、そこから何か少し変だなと思うようになった。
 しかし変なのは先輩がではなく、自分自身の方だった。変になった自分に、多分先輩も気付いている。なんだか少しずつ距離を置かれている気がするのは、自分が変になったせいだとわかるから、時々泣きたいような気持ちになる。
 食べるものが美味しくない。特に一人での食事時はそれが顕著だった。
 だんだんと色々なことが億劫になって、家でぼんやりすることが増えたが、ぼんやりしつつも頭の中では先輩のことを考えている。
 なんだこれ。なんだこれ。
 先輩とのあれこれを思い出す合間に、焦りなのか絶望なのかわからない不安のようなものが、脳内をぐるぐる回っている。
 そんな中、携帯が小さく震えた。手にとってみれば、くだんの先輩から奢ってやるから出ておいでという、なんとも見慣れたメッセージが届いていた。
 一瞬胸が軋む気がしたが、すぐに行きますの4文字を送る。次に送られてきたメッセージには、場所が先輩の家なことと、食べるものは既に決まっている事が書かれていた。
 急いで先輩の家に向かえば、先輩は困った様子の苦笑顔で迎えてくれたから、なんだか申し訳ない気持ちが湧いてまた泣きそうになる。先輩の前で泣くわけになんか行かないのに。そんな事になったら、きっとますます避けられるようになってしまう。
「お前、最近ちゃんと食ってんの?」
 机の上に並んでいたのはどこで買ってきたのか、近所のスーパーのものではないことだけはわかる惣菜が並んでいて、どれも消化に良さそうな物をと考え用意されたものだとわかる。
「あんま、食欲、なくて」
「知ってる。でも食わないのはダメだよ」
「太るどころか痩せたっすもんね」
 きっと上手くは笑えなかった。だって自分のゲス加減にうんざりした。
 あまり腹が減らなくなって、もしこのまま食べれずに痩せていったら、また先輩が色々気にして食事に誘ってくれるんじゃないかって、期待していた気持ちは自覚している。
「逆だよ。お前が俺の思惑通り丸々太ったから、お前は今ちょっと食べれなくなってるだけだから」
 先輩はやっぱり苦笑顔で、まったく意味がわからないことを言い出した。
「説明はする。だから、取り敢えず一緒にこれ食べよ。一緒になら、食えるだろ?」
 ほらと差し出された箸を受け取り、頂きますと告げた先輩に続いて頂きますを言ってから、取り敢えず一番手近な所にあった、トロリとした餡のかかった豆腐を口に運んだ。
「美味い、っす」
 軽く咀嚼して飲み込んで、心配気に見ていた先輩にそう伝えれば、ホッとしたように笑う。柔らかな笑顔に、ああ、この人のことがいつの間にかこんなにも好きだと思って、とうとう涙が一粒溢れてしまった。
「す、っみま、せっ」
 慌てて涙を拭おうとした手を、先輩の手がそっと握ってくる。
「謝るのは俺の方。ちょっと育て過ぎちゃったな」
「育て、すぎた……?」
 さっきから先輩の言葉の意味がさっぱり伝わってこなくて、とうとう先輩とは言葉すら通じないほどの仲に変化してしまったのかと悲しくなる。
「ヘンゼルとグレーテルの時代から、餌付けして太らせてからおいしく頂くものだって、前に教えたよな?」
「でも俺、まったく太ってないです、けど」
「俺が太らせたかったのはお前の体じゃないよ」
 苦笑した先輩は、そっと左胸に手のひらを押し当ててくる。
「俺が餌付けしまくって育ててたのは、お前の、ここ」
「ここ?」
「心臓。いわゆるハート。ようするにお前の、俺への気持ち」
「先輩への、気持ち?」
「そう。食事が喉を通らなくなるほど、俺を好きになってくれて、ありがとう」
「……えっ?」
「違った?」
 呆気にとられて見つめる先で、先輩が優しく笑っている。
「違わ、ないっ」
 どうにか声を絞り出したら、良かったと言いながら左胸に当てられていた手が頬に伸びて、さっきこぼれた涙の跡を消すように拭ってくれた。
「めちゃくちゃ美味そうに丸々太ったお前を、今すぐ食べたいくらいなんだけど、食事後回しで大丈夫?」
 頷きながらも、下心って本当にあったんだと、自分の鈍感さに少し笑う。笑ったら、笑った口元凄く美味そうと言われながら、先輩にカプリと齧りつかれてしまった。

 
 
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