ずっと子供でいたかった

おにショタ要素あり

 ずっと子供でいたかった。何の悩みも持たずに、仲のいい友人たちと、学校の休み時間や放課後に駆け回って遊ぶような日々を過ごしていたかった。
 大人の階段、なんてもの、別にまだ上る必要はなかったのに。それがどういうものかもはっきりわからないまま、言葉巧みに誘われてついて行ってしまった。
 だって、昔一緒に遊んで貰った記憶があったから。頼れるお兄さんだったから。
 昔みたいに、新しいことを教えて貰ったら絶対に楽しいって思ったし、他の友だちに自慢したり広めたり出来るかなって、期待していた。
 実際、大人の階段を上るのは楽しかった。お兄さんに貰ったエッチな雑誌を友だちに見せて、英雄気分を味わったりもした。
 でも友人たちに話せないことも抱えるようになってしまった。内緒だよって言われなくたって、人に言っちゃいけないことをしてるんだという認識はあった。
 無理やりされたわけじゃないし、そこまで強引にされたわけでもないから、もし最初にちゃんと拒んで、お兄さんの家に行くのを止めていたら……
 なんて、そんなタラレバは意味がない。だって自分は拒まなかったし、イケナイコトって頭のどこかではわかってたのに、お兄さんの手を受け入れてしまった。だってお兄さんに触られるのは凄く気持ちが良かった。
 ずるずると関係を続けて、流されるままにお尻まで開発されて、紛れもないセックスをお兄さんとするようになって、今更、とんでもないことをしたって後悔しても遅すぎる。
 もうやめたい、って言ったら理由を聞かれて、好きな人が出来たからと言えば、じゃあ仕方がないねとあっさり終わりになったのも、結構ショックなのかも知れない。
 どんな相手を好きになったの、とすら聞かれなかった。
 振られたり諦めが付いたらまたおいでとは言っていたけど、あんなに色々してきたくせに、引き止めるような執着はないのだ。自分だって、好きでもなんでもない相手に好き勝手させていた、という点は思いっきり棚に上げて、都合よく遊べる体だったと突きつけられて悲しくなった。
 しかもすっかり開発されきった体は、お尻を弄らないと上手く射精が出来ないまでになっている。
 初めて恋愛的な意味で好きだと感じた相手が男だったのは、お兄さんとの関係があったからという可能性がかなり高いけれど、でも、女の子を好きにならなくて良かったとも思う。こんな体で、女の子相手にセックスできる気がしない。
 だけど片想いの相手に抱いてもらう妄想でオナニーする虚しさと言ったらない。正直に言えば、物足りない。
 でも自分から切っておいてお兄さんを頼りたくはなかったし、振られたわけでも諦めが付いたわけでもない。お兄さんなら、他に好きな人が居たままでも気にしないかも、とか思わなくもないけれど、その誘惑にはいまのところ抗えている。
「お前、最近なんか悩んでる?」
 心配そうに声をかけてくれたのは、昔からの友人の一人で、お兄さんとの関係を切る切欠になった男だった。気にかけてくれるのが嬉しくて、こういうとこが好きなんだよなぁと思いはするが、でも、この悩みを打ち明けられるはずもない。
「もしかして、お兄さんとうまく行ってない感じ?」
「俺、長男だけど」
「じゃなくて、近所の頼りになる兄貴分? あのエロ本とか譲ってくれてたイイ人」
 切ったと言えばめちゃくちゃ驚かれた上に、好きなんだと思ってた、なんて言われてわけがわからない。ただ、その指摘で気持ちがぐらつくのがわかってしまった。
 こちらの動揺に何を誤解したのか、失恋を慰めだした相手を少し強めの言葉で黙らせる。
「違うって言ってるだろ!」
「じゃあ何があったか言えよ。言わなきゃわからないだろ」
「無理」
 短く言い切れば諦めたようで、いつでも話聞くぞと言って去って行く。心配してくれてるのはわかるし、そこが相手のいいとこなんだって思うけれど、でも、この件に関してはお前はずっとわからないままでいいよ。

有坂レイさんには「ずっと子供でいたかった」で始まり、「わからないままでいいよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート(1540字程度)でお願いします。https://shindanmaker.com/801664
(ざっくり100字ほどオーバーしました)

金曜日は予定(健康診断)が入っているので、更新はいつもよりずっと遅いか、最悪更新できない可能性があります。

 
 
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ツイッタ分(2020年-1)

ツイッターに書いてきた短いネタまとめ2020年分その1です。
その2は今夜22時頃に挨拶を添えて投稿予定です。

有坂レイの元旦へのお題は『不器用な独占欲・「あなたの匂いがする」・片恋連鎖』です。
#ふわあま #shindanmaker https://shindanmaker.com/276636

 帰省しない一人暮らし連中で年越しパーティーをしようと誘えば、相手は誰が来るのと聞いた。参加決定メンバーの名前を挙げていけば、あっさり彼も参加を決めたけれど、その理由はわかっている。彼が密かに想いを寄せる男が参加するからだ。
 なぜ彼が想う相手を知っているかと言えば、彼が自分の想い人だからだ。想う相手を見続けていたら、その相手が見ているのが誰かもわかってしまった。
 男ばかりの不毛な一方通行片想いに、気づいているのは自分だけだと思う。

 当日は一番広い部屋を持つ自分の家に総勢7名ほど集まった。
 想い人の隣席を無事ゲットした彼の、反対隣の席に腰を下ろして、彼を挟んで彼の想い人と話をする。だって彼との会話を弾ませるには、彼の想い人を巻き込むのが一番いい。彼の想い人に、彼へ返る想いなんて欠片もないとわかっているから、胸が痛む瞬間はあるけれど、割り切って利用させて貰っている。
 年明け前からいい感じに酒が回っていたが、年明けの挨拶を交わした後もダラダラと飲み続けて、気づけば大半が寝潰れていた。そして隣の彼もとうとう眠りに落ちるらしい。
 先に寝潰れた連中同様、寝るなら掛けとけと傍らに出しておいた毛布を渡してやれば、広げて被るのではなくそれにぼふっと顔を埋めてしまう。酔っ払いめ。
 そうじゃないと毛布の端を引っ張れば、顔を上げた彼がふふっと笑って、お前の匂いがする、なんて事を言うからドキリと心臓が跳ねた。
 そんな顔を見せられると、男が好きになれるなら俺でも良くない? って気持ちが膨らんでしまう。いつか、言葉にしてしまう日が来そうだと思った。


バレンタイン

 金曜だからと誘われて飲みに行った帰り、ほろ酔いで駅までの道を歩いていたら、隣を歩いていた同僚の男が前方に見えたコンビニに寄りたいと言う。急いで帰る理由もないので二つ返事で了承を返し、一緒にそのコンビニに入店すれば、その男は入口近くに設置されたイベントコーナーで足を止める。
 並べられているのはどう見たってバレンタイン用のチョコレートで、バレンタイン当日の夜というのもあってか、さすがに種類も数も残りが少ない。
「なに? まさか買うのか?」
「なぁ、どれが一番美味そうに見える?」
 それらをジッと見つめている相手に問えば、問いの答えではなく、全く別の質問が返される。それでも聞かれるがまま、一番気になる商品を指差した。
「美味そうっていうか、気になるのはこれかなぁ」
「ふーん。じゃ、これでいいか」
「え、マジで買うの」
 驚くこちらに構うことなく、その商品を手に取ると真っ直ぐにレジへ向かっていくから、頭の中に疑問符が溢れ出す。まさかコンビニに寄った理由がバレンタインチョコの購入だとは考えにくいが、相手の行動には一切の躊躇いがなく、他商品には目もくれなかった。
 すぐに会計を終えて戻ってきた相手に促されるまま外に出れば、ズイと差し出されるコンビニの袋。またしても脳内は疑問符でいっぱいだ。
「は? え? どういうこと?」
「さっき、」
「さっき?」
「言ってたじゃん。チョコ欲しい、って」
「あー……ああ、まぁ、言ったけど、でも」
 バレンタインの夜に男二人で飲みに来ている虚しさを嘆いて、ここ何年もご無沙汰だって言う話は確かにした。ただ、ご無沙汰なのは本命チョコ、って言ったはずなんだけど。確実に義理で渡されるチョコは、今年も数個は貰ってる。
「うん、だから、本命チョコ」
 グッと袋を押し付けて、くるりと踵を返すと、なんと相手は走り出す。
「あ、おいっ」
 慌てて声を掛けたが、相手の背中はどんどんと遠ざかって行く。今更追いかけたところで、多分きっと捕まえられない。
 大きく息を吐いて、押し付けられたチョコを取り敢えず鞄にしまったけれど、さて、本当にどうしよう。


SM=SiroMesiというツイを見て

 同窓会に参加して数時間。そろそろお開きも近そうだという頃合いに、少し離れた席から「SM同好会に入ってた」などという単語が飛んできて、思わず飲みかけだったビールを思い切り吹き出した挙げ句に盛大にむせてしまった。すぐさま隣から何やってんだの声と共に布巾が差し出され、わたわたと後処理に追われている間に、SM同好会についての話題は終わってしまったようだが、チラと視線が合った発言者が悪戯が成功したみたいなちょっと悪い顔で笑ったから、どうやらわざと聞かせたらしいと思う。

 二次会には参加せず、地元の同窓会だったにも関わらず自宅へも戻らず、わざわざ少し離れた駅に取っていたホテルに戻ったのは、結構遅い時間だった。隣には、先程SM同好会なる爆弾発言を投げ落とした男がいるが、もちろん偶然でも誘ったわけでもなく、元々、二人でこの部屋に泊まる予定だっただけである。
 高校時代そこまで仲が良かったわけでもなく、大学なんて飛行機移動が必要な遠さだった自分たちが、同窓会に合わせて一緒に帰省したり、同じホテルの同じ部屋に泊まるような関係になったのは数ヶ月前だ。連絡を取り合うような関係ではなかったから、まさか相手も同じ地域に就職していたとは知らなかったし、仕事絡みで顔を合わせたのは本当にただの偶然だった。
 懐かしさから意気投合し、そこから何度か飲みに出かけ、あれよあれよと恋人なんて関係に収まってしまったのは、間違いなく相手の手管にしてやられたせいだと思う。気楽に出会いを探す勇気など持たないゲイの自分には、一生恋人なんて出来ないと思っていたし、無駄に清らかなまま終わる人生だろうと思っていたのに。
 なんとなくそんな気がした、などという理由から、なぜかあっさりゲイバレした上に、バイで男とも経験があると言った相手に口説き落とされた形だけれど、今の所後悔はない。既に2度ほど抱かれたけれど、めちゃくちゃ気を遣ってくれたのは感じたし、出会いを求めたことはなくとも自己処理では多少アナルも弄っていたのが功を奏して、ちゃんと気持ちがいい思いも出来た。
 そして今夜、3度目があるんだろうという、期待は間違いなくあるんだけど……
「やっぱSM同好会、気になってる?」
 部屋に入るなりスッと距離を縮めてきた相手に、含み笑いと共に耳元で囁かれて、ビクリと体が跳ねてしまう。
「そりゃ、だって、てか、事実?」
「事実だよ。って言ったら、期待、する?」
 ピシリと体を硬直させて黙ってしまえば、可笑しそうなクスクス笑いが聞こえてくる。
「あれね、シロメシ同好会の略。白飯て白米ね。美味しい炊き方とか、白飯に合うおかず探しとか」
 吹いたビールの片付けで全然聞こえてなかっただろと続いたから、きっとあの後も、そんな説明をしていたんだろう。なるほど。あの悪い顔の意味がやっとわかった。
 ホッとしたら体から力が抜けて、咄嗟に隣に立つ男に縋ってしまう。ジム通いもしている相手の体は逞しく、よろける事なく支えてくれる。
「あんま脅かすなよ」
「んー、残念。これ、脅しになるのかぁ」
「え、残念て?」
 思わず聞き返せば。
「白飯も好きだけど、プレイ的なSMも、好きなんだよね。っつったら、どーする?」
 再度身を固めてしまえば、元々耳元に近かった相手の顔が更に寄せられ、チュッと食まれた耳朶にチリとした痛みが走った。

その2はこちら→

 
 
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何も覚えてない、ってことにしたかった2(終)

1話戻る→

 がん、とやや強い音を立てて空のジョッキを机に置いた相手が、嘘ですよね、と唸るみたいに聞いてくる。
「嘘じゃない」
「いや、絶対ウソですって。だって俺、前に、酔って記憶なくしたこと無いって、言ってたの覚えてますよ」
「あ、そっち?」
「今後は俺に冷たくするってのも、嘘だって思ってますけど。でも先にそっちです」
「本当に何も覚えてない」
 言えば探るようにジッと見つめられて、大きくため息を吐いた。
「ってことにして、なかったことにしたい。ってのは本当」
「やです」
 一瞬、ほらみろと安堵しかけた相手が、慌ててそれは嫌だと言い募る。
「というか、お前の方こそ、どうせたいして覚えちゃいないだろう?」
 何もなかったはずだ、という主張だけは、最初にあっさり否定されていた。彼にこちらを抱いた記憶がばっちり残っていたせいだ。責任とってお付き合いさせて下さい、というのが相手側の主張だったが、もちろんそんなものを受け入れられるはずがない。めちゃくちゃ逃げ回っていたのは、相手の主張がそれだったせいもある。
 ただ、抱いた記憶があったって、そこまで鮮明に覚えているとは思えない。それくらい、あの日の彼はグダグダに酔っていた。
「あまり覚えてないからこそ、ですって。俺と付き合うのがダメなら、せめてもっかい、抱かせてくださいよ」
「ぜってーやだ」
「なんでですか。俺を好きなんですよね?」
「好きじゃない」
「ほらまた嘘つく。ところどころしか記憶なくても、はっきり抱いたってわかる程度にはちゃんとあるって言ってんでしょ。俺にまたがって、好き好き言ってたの、覚えてるんで」
 それこそ嘘だろう、と思う。嘘だと思いはするけれど、実のところ、言った記憶が確かにあるから、嘘の妄言だとは言い切れないのがなんだか悔しい。
「だとしても、好きって言ったほうが興奮する、程度の言葉遊び的な、」
「はいはいウソウソ。それも嘘。あんな顔して好き好き言っといて、興奮するための言葉遊びとか無いでしょ」
「あんな顔ってどんな顔だ。あ、いや、いい。知りたくない」
「ね、それ、どんな顔してたか、ある程度自覚あるってことじゃないんすか?」
 墓穴をほったらしい。大きく息を吐きだして、もう一度抱かせれば諦めるのかと聞いた。
「いや。諦めませんけど」
「なら、さっきの、せめてもっかい、てのはなんだったんだ」
「え、もっかい抱いてる間に、落とせるかなって思って?」
「わかった。二度とお前に抱かれないし、お前とはこのまま距離をおく」
「酷っ、俺の気持ち、弄んで楽しいですか?」
「どっちかというと、お前が、俺を弄んでる気がするが」
「どこがですか。思わせぶりな態度で逃げまくって、必死に俺が追いかけるの、楽しんでるんでしょ」
「そもそもなんでそう必死に追いかけてくるんだ、って話なんだが」
 一夜の過ちで流せないにしても、酔ってホテルに連れ込まれた挙げ句にむりやり男を抱かされた、という方向で非難されるならまだわかるし、謝罪しろと言うならするつもりはあるのだけれど、相手の訴えが付き合えだのもう一度抱かせろだのだから、正直どうしていいのかわからない。
「そんなの、ずっと好きだったからに決まってるでしょ。何言ってんですか、いまさら」
 ふん、っと開き直った様子で告げられ呆気にとられてしまったが、あまりに呆然と見つめてしまったせいで、相手が少し焦りだす。
「え、まさか、俺の好き、本気にされてない?」
「というか、初耳」
「はぁあああああ!!??」
 とっさに声がでかいとたしなめたものの、さて、この予想外の展開を、ホント、どうすればいいんだろう。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1077577605635698689

 
 
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何も覚えてない、ってことにしたかった1

 今日もさっさと逃げ帰ろうとした仕事終わり、今日こそ逃しませんよ、と言って腕を掴んできたのは若干目の据わった入社三年目の後輩だった。
 彼がなぜそんな顔で、こんな事を言うのかわかっている。悪いのは自分で、彼はそれに振り回されている可愛そうな被害者だということも。
 知らぬ存ぜぬを貫き通して逃げまくるのもいい加減限界かもしれない。仕方なく、わかったから手を離せと言えば、素直に掴まれた腕は開放されたけれど、こちらを疑う目は鋭いままだ。
 その彼を連れて、とりあえず駅前にある個室を売りにしたチェーン居酒屋に入店した。
 そこまでしてやっと、これ以上逃げる気がないことをわかってくれたらしい。案内された小さな部屋の中、対面に座る相手は態度を一転してにこにこと嬉しげだった。
 そんな相手にメニューを差し出し、好きに頼めと言えば、相手の機嫌はますます良くなる。相変わらず単純で、わかりやすくて、扱いやすくて、いい。
 ホッとしつつ、相手が店員を呼んで注文を済ませるのを、ぼんやりと見ていた。個室のドアが閉まって店員が去ると、相手がこちらに向き直り、少し拗ねた様子で唇を尖らせる。
「なにホッとしてんですか。俺、一応、まだ怒ってますからね」
「そうか」
「ここ奢られたくらいで、なかったことにはなりませんから」
「だろうな」
 何も覚えてないからなかったことにしてくれ、を受け入れる気があるなら、そもそも逃がしませんなんて言って腕を掴んでは来ないだろう。
「ねぇ、わかってると思いますけど、年明けてからこっち、ほんっとそっけないから、俺、めっちゃショックでしたよ?」
「お前に構いすぎてたせいでああなったんだろう、と思って反省したんだ」
 昨年末の仕事納めの日、納会で少々飲みすぎた上にそのままずるずると三次会くらいまで参加して、酔いつぶれ寸前だった目の前の彼をお持ち帰りしたのだ。正確には、自宅にではなく、そこらのラブホにインした上でやることはやって、翌朝、彼を部屋に残してさっさと逃げ帰ってしまった。
 好意は確かにあったけれど、同じ部署の後輩相手に、あんな形で関係を持つだなんて、大失態も良いところだ。
 抱かれたのはこちらだし、相手も相当酔っていたから、何も覚えてないし、帰れなくて仕方なくそこらにあったラブホを利用しただけだし、きっと何もなかったはずだ。という主張を、慌てて連絡してきた相手にほぼ一方的に告げた後は、今日まで必死に逃げ回っていた。
「ちょ、待って。てことは、今後はずっとこのスタンス? なんて言いませんよね??」
「いや、言う」
 だって二度と、あんな失態は犯せない。部署は一緒だが直属の部下ってわけではないのだから、無駄に構うのを止めればいい。
「うっそでしょ」
 呆然となったところで、最初のドリンクとお通しが運ばれてくる。相手が呆けたままなので、仕方なくこちらが対応するはめになった。
「ほら、ビール来たぞ」
 相手の目の前に置いてやったジョッキに軽く自分のジョッキを当てて、さっさと飲み始めてしまえば、また少し剣呑な顔になった相手が、後を追うようにジョッキを掴む。
 一気に飲み干していくさまを、溜息を飲み込みながら見つめていた。

続きました→

 
 
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ときめく呪い

 あれなんかおかしいぞ、という事に気づいたのは、ダンジョンの中腹あたりだったろうか。少数精鋭が行き過ぎて二人パーティーになってから数ヶ月経つが、それなりの人数で動いていた頃も含めて、彼の隣に居てこんなわけがわからない気持ちになったことなんて無い。
 少ない食料を分け合うことも、同じ水筒から水を飲むことも、ダンジョン攻略中なら当たり前だし、モンスターは当然一緒に倒すし、そこらに張り巡らされている罠だって、お互い協力しあって躱していくのが基本だ。じゃなければなんのための組んでいるのかわからない。
 なのに、彼の一挙手一投足に意識が引っ張られるような気がして、彼が自分に向かって話しかけてくれるだけでも、胸がざわついて切なくなるような不思議な気持ちになる。
「うーん……」
 人の額にでかい手を押し当てながら相手が唸る。こちらは彼の手が額に触れているというそれだけで、ドクンと鼓動が跳ねて、元々いささかぼんやりしていた頭に、更に血がのぼる感覚を自覚していた。
「顔赤い割に、熱ありそうって感じではねぇんだなぁ」
 よくわからんと言いながら額の手が外れて、長身の体が屈んで相手の顔が近づいてくる。
「ひょぇっ」
 おでこ同士がぶつかって、慌てて一歩を下がろうとしてよろめけば、おっとあぶねの呟きと共に背を支えられてしまう。それを、抱きとめられたと認識するあたり、やっぱり何かがオカシイと思うし、抱きとめられたからなんだってんだと頭では思えるのに、胸がきゅうきゅうと締め付けられる気がする。
「んー……で、お前の実感としてどうなんだよ。体調悪ぃの?」
「いやだから、最初っから体調は別に悪くないんだって。ただ、なんつーか、お前に、必要以上にひたすらトキメク」
「なんかの罠に引っかかった記憶、ねえよな?」
「うん、ないね。得体の知れないアイテムも拾ってない」
「でも症状的に魔法か呪いかってとこじゃねぇの?」
「んな症状の魔法も呪いも聞いたこと無いんだけど」
「世の中にはまだまだ俺らの知らんことはいっぱいあるだろ。あと、新しく作られたものって可能性もあるし。とすると、得体の知れない症状放置しとくのもマズいよな」
 面倒だけど一回帰るかという提案に待ったをかける。
「俺がお前にトキメイてたら気が散って戦えない、ってなら諦めるけど、そうじゃないならもーちょい進んじまおうぜ」
「お前こそ、いちいち俺にトキメイてたらきつくねぇの?」
「違和感はめちゃくちゃあるけど、まぁ別に大丈夫だとは思う」
 街に戻ってなんらかの対処をしてもう一度ここまで戻ってくる、ということを考えた時の時間的ロスも金銭的ロスもそれなりにでかい。利益重視の少数精鋭二人旅なのだから、引き時を間違ってはいけない。命の危険はなさそうだし、この症状の様子見かねてもう少し先へ進んでみたいと思った。
 症状の軽さというかアホらしさに、油断していたのだと思う。結局、その後も些細なことでトキメキまくった結果、相手の方がさすがにもう耐えきれないと言い出して、そのダンジョンを出ることになった。
 どうやら呪いだったそれは、街へ戻って解呪屋に駆け込めばあっという間に払ってもらえたけれど、問題はその後だ。
「お前、もっかいあの呪いに掛かるか、俺に惚れるかしろよ」
「バカジャネーノ」
 呪いのせいで意識されまくっていた相手が、彼にトキメキまくっていた時の姿に、どうやら相当絆されてしまったらしい。
 呪いでトキメキまくってたから、ダンジョンの中という劣悪環境で手を出されてもあの時は普通に嬉しかったんだけれど、呪いが解けた今となっては、なんてバカなことをしたんだろうの一言に尽きる。
 相手側まで引っ張るような強力な呪いではなかったから、こちらだけ気持ちが冷めたのは正直かわいそうだと思わなくもないけれど。
「バカで結構。頼むからもっかいヤラせて。すげー良かったんだって、お前の体」
 いや、かわいそうとか全然嘘だった。
「お前が、もう耐えきれないっつって戻ってきたんだろ。今更だ今更」
 こんなことを言い出すのなら、あのままトキメカせて置けばよかったのに。
「しょーがねぇだろーが。お前が掛かった何かに引きずられてお前が可愛いのか、あの時は俺自身の感情に全く自信持てなかったんだよ。あの呪いが俺の感情にまで左右してないのはわかったから、俺に惚れるの無理ならもっかい呪われろ」
 でもって可愛がらせろと本気な顔で言われて、トクンと心臓が跳ねてしまったことを、いつまで隠し通せるだろうか。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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60分勝負 同居・灰・お仕置き

 ルームシェアという名の同棲を始めて半年。仁王立ちして怒り心頭に発する同居人の前で、正座し深く頭を下げている。
 彼の怒りの原因は自分が煙草の灰を落として焦がしたラグなので、これはもう言い訳のしようもない。
 以前から何度も、煙草を止めろとまでは言わないが、疲れているときや眠い時に吸うのは止めろと言われていたのに。彼が出張で居なかった昨夜、寝る前の一服のつもりで火をつけたくせにそのままウトウト微睡んでしまって、気づいた時にはラグに焦げ目がついていた。
 小さな焦げ目の段階で気づけたのだけは本当に良かったが、彼が帰宅する前に同じラグを調達して証拠隠滅を図るのは絶対に無理だとわかっていたし、だから今のこの状況は想定内でも有る。想定内では有るのだけれど、でも実際に彼の怒りを目の当たりにすると、恐怖で体が萎縮し震えてしまう。
「以前言ったこと、覚えてますよね?」
 冷たく降る声に禁煙しますと返せば、それだけじゃないでしょうと今度は幾分柔らかな声が落ちてくる。その声に恐怖が増した。
「寝ながら煙草吸ってるの見つけたらお仕置きしますよって、約束しましたよね?」
「…………はい」
 ああ、今回は一体何をされるんだろう。
 基本優しく、普段はこちらに尽くしてくれることが多い年下の恋人のお仕置きは、ビックリするほどえげつない。だってお仕置きですからと柔らかに笑う顔に、今ではもう本気で震えが走るほど恐怖する。
 恐怖はするんだけれど、でもそれが嫌で嫌で仕方がないってわけじゃないのが、ホントどうしようもないなと思う。マゾっ気なんか、自分には欠片もないと思っていたのに。
 今ではもう、そのギャップごと、彼のことを愛している。ただ、いつか彼のお仕置きを求めて、わざと彼の怒りを買うような真似をしてしまいそうだとも、感じている。
 もちろん今回の件はわざとなんかじゃないけれど。でもそろそろ自分たちは、もっと腹を割った話し合いが必要なのかもしれない。

「一次創作版深夜の真剣一本勝負」(@sousakubl_ippon)60分一本勝負第169回参加

 
 
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