君の口から「好き」って聞きたい2(終)

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 うじうじと後ろ向きな思考に囚われる中、相手から週末の誘いがかかった。場所はめちゃ混みの学食で、今日は向かい合っての席が取れなかったから、横並びで食べている。
「明日って、なんか用事入ってるか?」
「いや、特にはないけど」
「じゃあちょっと付き合って欲しいとこあるんだけど」
「いいよ。買い物? カラオケとか映画とか?」
 これがデートのお誘いならいいのに。でもここは学食だし、恋人になる前のやり取りと何ら変わらないし、きっと期待するだけ無駄だ。そう、思ったのに。
「いや、俺んち」
「は?」
「俺の家、お前、来る気ある?」
「え、え、なんで?」
「なんではこっちのセリフだわ」
 言ってからぐっと顔を寄せてくるから、どうしたってドキドキしてしまう。
「お前、俺と付き合ってる自覚、やっぱないんじゃねぇの」
 耳元でそっと囁かれた言葉に、ああ俺たちってちゃんと付き合ってるんだと、それだけでかなり嬉しくなる。いやまぁ、恋人ごっこ疑惑はまったく晴れてないんだけども。
「それはこっちのセリフですぅ。てかいきなり家に誘うとかある? え、体目当て?」
 相手の顔は寄せられたままなので、こちらも小声で囁き返した。
 だって恋人っぽいやり取りなにもないのに、いきなりセックスとかハードル高すぎない?
「おまっ、ばか、何言ってんだ」
「何言ってるも何も、恋人の家に誘われるってそういうことじゃないの。てかお友達としてはお邪魔したことないんだから、余計に、そういうの意識して当然じゃない?」
 学校を挟んで逆方向にそれなりの距離を通学しているせいで、仲が良い友人でしかなかった時に、互いの家を訪れたことはない。
「あー、一応ちゃんと、意識はしてくれてんのか」
 じゃあ別の場所でもいいかとあっさり翻された上、話は終わりとばかりに相手の顔が離れていくから、慌てて待ったをかけた。
「待って待って」
「なんだよ」
 待ったはかけたが相手の顔は戻ってこなくて、挫けそうになる気持ちと戦いながらも口を開く。
「お前んち、行きたい」
 行ったことがなくて、見たことがない相手の部屋に、興味のある無しで言えばそりゃあるに決まってる。
「おいこらっ」
 呆れるような声だけど、でも怒ってはいない。苦笑するみたいな顔は優しいから、経験的に、このまま押せばOKされるとわかってしまう。
「だってお前の部屋、興味あるもん。ただ、いきなり、……はハードル高いってだけで」
 顔が離れてしまったし、学食でセックスと言葉に出すのもさすがに躊躇われてしまったけれど、相手にはちゃんと通じたようだ。
「そんなんこっちも一緒だっつーの。だいたい、どっちがどっちとかも決まってねぇし」
「どっちがどっちって?」
「だぁからぁ……や、いいわ。続きは明日な」
「え、なに、めっちゃ気になる」
 食い下がったけれど教えては貰えなくて、再度、本当に俺んちでいいのかと聞かれたから、いいよと返した。
 いきなりセックスって展開はないらしいから、そう警戒する必要もないんだろうし。と思うと、逆になんだか残念な気がしてしまうあたり、我ながら我儘なことを考えている自覚はあるんだけど。
 ああ、でも、恋人の部屋で2人きり、って状況になったら、少しは関係が進展したりするのかも?
 その可能性に気づいたのは、昼休憩なんてとっくに終わった後どころか、帰宅した自室でだった。


 相手の家の近くの飲食店で待ち合わせて、昼飯を食べた後で相手の家を目指す。食事中からもう結構色々ダメダメで、というよりも、やっと関係が進展するのかもという期待と不安とで相手を意識しすぎていた。
 グダグダのこちらに、今日は相手からのツッコミもなくて、ただただ楽しそうに眺められている。楽しそうだから、ツッコミ無いのかよというツッコミもしづらくて、結果、グダグダなまま相手の家の前にまで到着してしまった。
「どうぞ」
「あ、うん、オジャマシマス」
 たどたどしく応えて靴を脱ぎ、促されるまま相手の部屋に向かいながら、随分静かだなと思う。うちの親なら、息子の友人見たさに絶対顔を出している。
「ねぇ、家の人は?」
「みんな出かけてる」
「えっ……」
 思わず足を止めたこちらに、相手も立ち止まって体ごと振り向いてきた。だけじゃなくて、伸びてきた手に腕を掴まれてしまった。
「逃げんなよ?」
「え、や、だって、セックス目当てとかじゃない、って……」
「いきなりセックスはこっちもハードル高いけど、下心皆無とまでは言ってねぇよ?」
「え、ええ〜……」
 確かに。確かに言ってはなかったけども。こっちだって、進展するかもって期待はあったけど。
 何をされるんだろう。セックスじゃないにしても、どこまで、されちゃうんだろう。
 不安になって見上げてしまう先で、相手がどうやら笑いをこらえている。
「ちょ!?」
 気づいた瞬間に、腕を掴む相手の手は離れていった。逃げても良い、ってわけじゃなくて、逃げる必要なんて無いと、こちらが理解したことを、多分察している。
「ん、ごめん。お前が俺を意識しまくってんの、嬉しくって」
「嬉しい? 面白いとか楽しいじゃなくて?」
「家に誘っただけでここまで意識されてたら、そりゃ、嬉しいだろ。まぁ、学校ではますます気をつけないと、とは思ったけど」
「学校では?」
「お前が俺を意識しすぎてグダグダになってるとこなんて、学校の奴らに見せたくないよなぁって話。俺が好きってダダ漏れだしさぁ」
 可愛いけど、可愛いから見せたくない。と続いた言葉が嬉しくて、恥ずかしい。
「もしかして、それで恋人になったのに、恋人っぽいことなにもしなかった?」
「それだけで、ってわけじゃないけど。恋人になったはずのお前が、前とぜんぜん変わらないから、どうしようかとは思ってた」
「え、それは俺のセリフなんですけど!?」
「もしかして、待ってた?」
「そりゃあ」
「ちなみに、恋人になった俺と、どんな事したいと思ってた?」
「え、っと、手、繋いだ、っり」
 言った瞬間には手を取られて、ためらいなく指を絡めて握られたから、言ったらしてくれるってことかと思って声が詰まってしまう。
「他は?」
 キスしたり、って言ったらキスされるのかも? と思ったら、言えそうになかった。だから。
「好きって、言って、貰ったり」
 キスよりはハードルが低いだろうと思ったのに、予想と違って、相手から好きだよの言葉は返ってこない。ただ、ショックを受けるには相手の表情が優しすぎて、頭の中が混乱する。
「あの……?」
「お前は?」
「え?」
「好きって言って貰いたいだけで、お前からは言う気無し?」
「あれ?」
 言われて何かが引っかかる。多分、すごく、大事なこと。
「どうした?」
「あ、あの、もしかして俺、お前に好きって、言って、ない?」
「ないな」
「え、えっ、ごめん、好き。好きです」
 慌てて言い募ったら、フッと小さな笑いが漏れて、繋がれた手を引かれたかと思うと同時に相手に抱きしめられていた。
「ごめん。ちょっと意地はってた。俺も、お前が好きだよ」
「よ、かったぁ。お前優しいから、俺に同情して恋人になってくれただけかも、とか、思って」
 最近ちょっと落ち込んでたと言ったら、なんか変なこと考えてんだろうとは思ってたと返される。
「お前って、恋愛方面、かなり奥手だったんだな。意外、っつうか、ちょっと想定外で、それで不安にさせたなら悪かったよ」
「意外?」
「付き合ったら、お前の方からもっとグイグイ来るのかと」
「いけるわけない」
「なんで?」
「そんなの、だって、ドキドキしちゃうから」
 今だってこんなに近くて、凄いドキドキしてる。
「うん、だから、そういうとこ。知らなかったな、って」
 でも家誘われたらセックス想像したりはするし、自分からはグイグイ来れなくても、抱きしめられたら大人しく腕の中に収まってんだよな、って笑うみたいに言われてしまう。
「だって、ドキドキはするけど、やっと恋人っぽいこと出来ててめちゃくちゃ嬉しいし」
 一旦言葉を区切って、繋がれてない側の腕を相手の背に回し、こちらからもギュッと抱きついてやる。
「それに、いきなりはハードル高いけど、お前が俺をちゃんと好きなら、恋人となら、いつかはセックスだってしてみたいよ?」
「それ、一応の確認だけど、俺がお前を抱く側、って思ってていいわけ?」
 ちなみに昨日のどっちがどっちって、セックスの時の役割の話な。と言われて、そんなの考えたことなかったなと思う。
「そこまで具体的に、考えたことなかった」
「だと思った」
「で、でも、お前が抱く側って思ってるなら、それでいいよ」
 相手のが背だって高いし、自分が押し倒すイメージよりも、自分が押し倒される方がイメージしやすいというのもある。相手に押し倒される想像をしてみても、全く違和感はわかなかった。むしろ、押し倒すイメージのが……
「どうした?」
 いっきに加速した鼓動は、相手にも伝わってしまったのかもしれない。
「お前押し倒すの想像したら、めちゃくちゃドキドキしちゃって」
「えっ」
「絶対無理ぃ」
「あ、ああ、そういうことかよ」
 脅かすなよと苦笑された後、まぁどのみちそういうのは当分先だよなぁと言われながら、くっついていた体が離れていく。そして相手の部屋に向かうためだろう。こちらに背を向けて歩き出そうとする相手の服の、裾を掴んで引いて引き止めて。
 キスは早めにしたいと訴えてみたら、せめて部屋入るまで待ってくれと言われて、どうやらこの後すぐ、相手の部屋に着いたらキスをされるらしい。

CPお題ガチャポンのお題「今日の有坂レイのお題は【君の口から「好き」って聞きたい】です。」でした。

 
 
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君の口から「好き」って聞きたい1

秘密の手紙」の逆視点話です。

 高校入学後に知り合って、なんとなく気が合ってツルムようになって、今現在、間違いなく一番仲が良いと言える友人と、先日恋人になった。
 ふとした瞬間に見せる優しい顔に、何故かドキドキするようになったのはもう結構前で、自身の中に湧いた恋情を認めてしまえば、次に胸の中に湧いたのは期待だ。優しい顔は一種類じゃなくて、愛しげという表現が似合いそうな柔らかな時もあれば、どこか憂いを含んで寂しげな時もある。
 もしかして、相手もこちらに対して恋情と呼べるような想いを抱いているんじゃないのか。
 そう考えて当然の態度に思うこともあれば、相手への想いがそう思わせているのではと疑うこともあった。
 相手の気持ちが知りたくて、でも、せっかく築いた友情を壊すのも怖い。そしてそんな葛藤はお構いなしに自身の恋情は膨らんでいくから、だんだん友人で居続けることがキツくなって、追い詰められていたんだと思う。
 だから賭けをするような気持ちで、相手の下駄箱にメモを入れた。
 最初に入れたメモは「お前の想い人を知っている」だ。そのメモそのものは怪文書として捨てられて終わりでも、友人の立場でそのメモの話が聞けるかも知れない。そうしたら、想い人誰だよって、聞けるかも知れない。
 居ないなら居ないでいいし、そこで別の誰かの名前を聞かされたら諦められるかも知れないし、ワンチャン、その流れから告白してもらえるかも知れない。なんていうアホな計画でしか無かったけれど、相手はなんと封筒を自身の下駄箱に置くという方法で返信してきた。
 どうやら脅迫されているとでも思ったらしい。要求は何だ、と書かれた短なメモを前に、想い人が居るのは確定かなと思う。あと、言いふらされたらマズいような相手である可能性も高そうだ。
 これってやっぱり相手は自分なんじゃないの。なんて思って浮かれた結果、「告白すればいいのに」というメモを返したら、その日は朝からずっと何やら思い悩むような顔を見せていた。
 試しに軽く指摘して何があったか聞いたけれど、そのメモの話は教えてくれなかったから、やっぱり想い人って自分じゃないの、という気持ちが強くなる。だって無関係なら、こんなことがあって、って相談してくれるはずだから。
 だから、その想い人とは両想いだよ、とか、告白待ってるんだけど、とか、男同士ってとこで迷ってるなら、今どきそこまでダメって感じでもなくない? とか書き綴って、相手の下駄箱に置いた。その時に、告白すればいいのにの返事を受け取ったけれど、中のメモには「無理」の二文字しかなくて、もし無理な理由が、好きな相手が友人だからとか同性だからとかなら気にせず早く告白してよね、なんて思ってちょっと浮かれてすら居たのに。
 そんな浮かれた気持ちが吹き飛んだのは放課後の、大半の生徒が帰った後の閑散とした昇降口だった。
 用事があるから早く帰るなんて言っておきながら待ち伏せしていた相手が、「やっぱりお前だったんだな」って出てきた時の、呆れと憤りが混ざったような顔に、血の気が引く思いをした。
 相談してくれなかったのは、想い人が自分だったからじゃなくて、このメモが自分の仕業だってわかってたから。という可能性に、その時まで全く思い至っていなかったせいだ。
 きっと両想いだと浮かれて、早く告白してくれないかとワクワクしていた気持ちが一気に萎れて、泣きそうだった。まぁ、泣くことにはならなかったんだけど。
 つまりは予想通り自分たちは両想いで、無事にお付き合いが開始した。のだけれど。
 結局自分たちの関係は恋人である前に友人なのかも知れない。だって恋人になったからって何かが劇的に変わるなんてことはなかった。
 恋人らしいやり取りも、恋人っぽい触れ合いも、ほとんど無い気がする。どころか、もしかしなくても「好き」すら言って貰ってないのでは?
 両想いだと認めていたし、ぜひお付き合いしたいと言ったのは向こうだし、からかってないとも、笑ったのは可愛かっただけだとかも言ってたけど。でもこっちの気持ちを知った相手が、泣きそうになりながら「ふられるの?」なんて聞いたこちらに、同情した可能性はある気がする。
 優しいから、同情して付き合うことにしたなんて言わずに、恋人ごっこをしてくれているだけかも知れない。だから、キスどころか手を繋ぐこともないし、好きとすら明言はしてくれないのかも知れない。

続きました→

 
 
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罰ゲームなんかじゃなくて2(終)

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 まぁ男同士だし、好きって思って告白したんだから嫌悪やらはないものの、そこまで行為に積極的な興味はなくて、でもせめて、あの笑顔は見せて欲しいなと思う。二人きりと言っても、こちらの友人がいない状態を二人きりと称しているだけで、実際は周りにたくさんの他人がいるわけで、その状態では無理なのかなとも思うんだけど。
 だって、あの笑顔を見たとき、そこに居たのは野良猫一匹だけだったから。
 今度、空き時間にあの場所へ二人で行ってみようか。そういや、なんで好きになったのか、なんて話はしたことがなかった。
 これはちょっといい案かも知れない。
「ねぇ、このあとだけど、もうちょっと時間ある? ちょっと行きたいとこあるんだけど」
 思い立ったが吉日とばかりに切り出せば、向かいで本日のA定食を食べていた相手が、質問とはまったく関係のない答えを返してきた。
「今日で1ヶ月経ったけど」
「ああ、うん。え、もしかしてお祝いとかしたい系?」
 言われてみれば確かに、あの告白から今日で一月経過している。ちょうど学食に居るし、何かデザートでも買って来たほうがいいだろうか。
 なんて思った矢先。
「これ、いつまで続ければ満足なの?」
「は?」
「もしかして、期限とか決めずに始めたの?」
「は? え? そんなの決めて恋人するほうが珍しくない?」
「そりゃ普通の恋人はそうかもだけど、俺達は違うでしょ」
「え、なんで?」
「なんで、って……罰ゲームみたいなもんじゃないの?」
「は? はぁあ?」
 あまりに驚いたせいか、相手もなんだかバツが悪そうな顔になりながらも、いつネタバラシがあるのか待ってるんだけど、と続けた。
「こっち来る前、そっちでなんかすごい盛り上がってたし、やたら怖い顔して近づいてきたと思ったら、好きです付き合ってください、なんて言い出すから、何か掛けでもしてて、負けた罰ゲームで言わされたんだと思ったし、巻き込まれた腹いせに困らせてやろうとして、いいよって言ったのに、なんか、いつまでも終わる気配がなくて……」
 ああ、なるほど。やけにあっさりOKされたと思ったが、そんなことを考えていたとは。
 こちらの好意はどうやら、一欠片だって相手には伝わっていなかった。
「俺は終わる気ないけど、ネタバラシが必要なのはわかったから、このあと、ちょっと付き合って」
 あの場所へ二人で行ってみようと思いついた後で良かったなと思う。
 相手が食べ終わるのを若干急かしながら待って、相手の都合は聞かないまま、やや強引にあの場所へと連れて行く。脇道からそれようとした時にはさすがに少し抵抗されたから、その手を取って有無を言わさず引っ張っていった。
「こんなとこ連れてきて何する気? もしかして、怒った?」
 人気のない建物の裏手に連れ込まれ、相手は少し怯えているようだ。
「ここでさ、猫なでて笑ってた記憶、ない?」
 数ヶ月前の話だと言えば、思い当たることがあったらしい。
「ああ、うん。そういえばそんなこともあった、かも」
「俺、あのとき、猫相手に笑ってる顔が忘れられなくて、お前のこと気にするようになって、気づいたら惚れてたっつうか、どんどん好きになってて、あいつらがあの日やたら盛り上がって騒いでたのも、俺が怖い顔してたのも、俺がお前に玉砕覚悟の告白する気になったからで、罰ゲームとかなんもない。だから俺はOKされて普通の恋人になったつもりでいたし、1ヶ月経ったから終わり、なんて気もないんだけど」
 でも罰ゲームに嫌がらせで付き合っていただけなら、相手はもう、別れたいと思っているだろうか。なんていうのは、多分杞憂だ。
 完全な二人きりが功を奏しているのか、随分とまとう気配が穏やかで、安堵の表情を浮かべる表情もいつもに比べて随分と柔らかい。
「ねぇ、俺のこと、1ヶ月付き合って、ちょっとは好きになってくれてる?」
「それ、わかってて聞いてるだろ」
「うん。だって嬉しくて」
 えへへと笑えば、つられたように相手もクスリと笑う。あの日見た柔らかな笑顔に似ていた。
 キスがしたいなと思ってしまって、内心苦笑を噛みしめる。恋人らしいことが何もなくたって、せめて笑ってもらえれば満足するかと思ったけれど、そんなことは全然なかった。

<終>

さ~て、今週の有坂レイにぴったりのBLシチュエーションは~?
1.賭けに負けて
2.同級生
3.好きすぎて止まらない
の三本です!!
来週もお楽しみに~!
https://shindanmaker.com/562913

 
 
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罰ゲームなんかじゃなくて1

 同じ学部学科の同級生であるそいつとは、必修科目で顔を見る程度の仲でしかなく、かろうじて名前はわかっているが、多分向こうはこっちの名前も把握してないんじゃないかと思う。
 大学の敷地はそこそこの広さがあるし、いくつも並ぶ校舎の脇道ですらない建物の影にいたそいつに気づいたのは、休講を忘れて早く来すぎてしまい、時間を持て余して一人きりで構内散策をしていたことが大きいと思う。
 耳は割と良い方で、話し声が聞こえて近寄ってみたら、そいつが入り込んだ野良猫を構って笑っていたのだ。
 猫に向かって柔らかに笑う顔を見て、そんなふうに笑うんだと初めて知った。だってあまり人とつるむ気がないようで、誰かと話してる姿すら滅多に見かけないし、その時には笑顔なんて見せてなかったから、無愛想なイメージしか持っていなかった。
 そこで声を掛けてしまえば良かったのかも知れない。けれど多分相手は一人で行動するのが好きで、今ここに自分が踏み込んだら、せっかくの猫との時間を邪魔してしまうだけだろう。
 結局相手が猫と別れるまで見守ってしまった上に、自分がいる方向とは別方向に去っていったから、見てたということすら知られないままその時間は終わった。
 気づかれなかったのに、その直後の講義で同じ教室内に相手の姿を見つけて、なんだかソワソワしてしまったし、あの光景が忘れられなくて時々あの場所を覗くようにもなってしまったけれど、その後同じ光景に出会えたことはない。あの野良猫とすらあれっきりだし、夢でも見てたと忘れられたなら、良かったのに。
 しばらくして、そんなにあいつが気になるのかと、普段つるんでいる友人たちの一人に聞かれた。普段つるんでいる連中には、相手を意識しているのが丸わかりらしい。
 あの日のことは誰にも話していないし、なんとなく教えたくもなくて曖昧に濁していたら、からかい混じりに惚れただの何だの言われるようになって、そう言われ続けると、なんだか本当に相手を好きな気がしてくるから怖い。
 あの笑顔をもう一度みたいとか、できれば自分に向けて笑ってほしいとか。それってつまり、相手からの好意を欲しているってことで、好きってよりは好きになって欲しい方向だとは思うものの、あれをきっかけに相手に惚れてしまったのだと思えないこともない。
 なんてことをぐるぐると考えて、思い込みとも言える想いをバカみたいにつのらせて、相手も一緒の必修科目に身が入らないというやばい状況になり、いっそ玉砕してこいと周りに囃し立てられるまま、講義終わりに呼び止めて告白した。
 さすがに驚いたみたいで目を瞠ってまじまじと見つめ返されたのが印象的で、それすら、珍しいものを見たと思って食い入るように見つめ返してしまう。
 それに対して嫌そうに眉を寄せたから、絶対に断られると思ったのに。というよりも、そもそもが玉砕覚悟の突撃だったのに。
「わかった。いいよ」
「え?」
「おつきあい、してみても」
「え、え、まじで? いいの? じゃあ、じゃあっ、とりあえず連絡先交換しよっ」
 まったく熱のないそっけない対応ではあったが、OKされたのには違いなく、食い気味に連絡先の交換を持ちかければ、やっぱり引かれ気味ではあったものの、渋られることなく教えてくれた。
 やっぱり人とつるむのはあまり好きではないらしく、こちらの友人たちの中に引き入れるのは失敗したけれど、こちらが友人と離れて彼の隣で講義を受けることや、友人たちとは離れた席での学食利用などは出来るようになって、ポツポツとではあるが相手のことを教えてもらって、最初のうちはひたすら毎日が楽しくて仕方がなかった。
 でも友人たちに指摘されるまでもなく、恋人らしい進展はなにもない。構内で二人で過ごすことはあっても、休日に一緒にでかけたことすらないのだから、正直言えば未だ友人以下の関係だった。

続きました→

 
 
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友人の友人の友人からの恋人2(終)

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 どうにか彼とキスできる関係になれないかと考えた結果、彼を合コンに誘ってみた。ファーストキスを男なんかにと思っているなら、女の子相手にファーストキスを済ませてもらえばいいのだ。こっちはキスどころかセックスだって経験済みなのだから、貰えたら嬉しいだろうとは思うが、なにがなんでも彼のファーストキスが欲しいと思っているわけじゃない。
 ただ、女の子の扱いを学んだところで実践と行こう。という言葉をまるっと信じて、あっさり参加を了承したあたり、本当にチョロくて不安になる。こちらの思惑通りにすんなり進むから楽でいいんだけど。
 そしてベタだけれども仕込み有りの王様ゲームをして、女の子相手のキスを経験してもらった。ファーストキスに夢見てるらしいからちょっと可愛そうかなとは思ったけれど、女の子とってのは叶えてあげたのだから許して欲しい。
 なお、照れまくって動揺して挙動不審になってた姿はたいへん可愛らしかった。けれど、ゲーム終了後、逃げるようにトイレに立った彼の顔はなんだか泣きそうだ。
 慌てて追いかけたトイレで、彼はゴシゴシと唇を擦り洗っていたから、さすがに罪悪感で胸が痛む。
「えっと、ごめん、ね」
「なんで謝るの」
「合コン連れてきたの俺だし、王様ゲーム提案したのも俺だし、あの命令した王様は俺じゃないけど、一緒になって囃し立てはしたから」
 そしてこれは言えないけど、そのキスを仕組んだのが自分だからだ。
「こんなのでもなきゃ、女の子とキスできる機会なんてないんだから、むしろラッキーだったよ」
 どうにか笑ってみせる顔が痛々しくて、ますます胸が締め付けられる。いやこれホントに、結構失敗しかもしれない。こんなショックを与えるつもりじゃなかった。
「本気でそう思ってないでしょ。ファーストキス、好きな子としたかったよね。ごめんね。止められなくて」
 言えば瞳にぶわっと涙が盛り上がる。ああ、とうとう泣かせてしまった。
「悪いのお前じゃない。自業自得、なんだ」
 全く意味がわからない。俯き涙を拭う相手に、どういう意味かと尋ねてしまうのは仕方がない。
「キス、好きな子と、しとけばよかった」
「は? え? 好きな子いたの?」
 初耳なんだけどと続いた声は、嫉妬と焦燥にまみれて、自分でも驚くくらい低く重く響いてしまった。
「ファーストキス、もったいぶらずに、さっさとお前にあげとけば、良かった」
「はぁああ? えっ、ちょっ、俺ぇ!?」
 あまりの衝撃に素っ頓狂な声を上げてしまったが、相手は俯いたまま肯定を示すように頷いている。
 ああこれ、本当に、失敗した。いつから彼の気持ちは自分に向かって居たんだろう。それに気付けず、貰えたかも知れない彼のファーストキスを、自らそこらの女に渡してしまった。あまりの自業自得さに、一緒に泣きたいくらいだ。
「ねぇそれ、本気にするけど。俺と、恋人になってくれるの?」
 確かめるように告げた言葉にもやはり頷かれたから、少し開いていた距離を詰めて相手の手を取った。
「なら、一緒に抜け出しちゃおうか」
 さすがにこんなトイレで彼との初キスを済ます気はない。というか王様ゲームのキスなんてノーカンってことに出来そうなくらい、ちょっとロマンチックな演出決めつつキスしたい。
 どこに連れていけば可能かと必死で脳内フル回転しながらも引いた腕に、彼はおとなしくついてくる。チラリと伺う背後の彼は、泣いた目も目元も頬も、耳までもが赤い。
 ようやく捕まえた恋人が、可愛すぎてたまらない。

 
 
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友人の友人の友人からの恋人1

女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれたの続きです。視点は相手側。

 知り合った当初、その子は友人の友人の友人、くらいの距離に居た。見た目がかなり好みだったから、距離を詰めて友人になるか、男も行けそうなら口説いて恋人にしたいと、かなり初期段階で思っていた。しかし人見知りなのかシャイなのか、元々の友人には笑顔だって見せるのに、なかなか打ち解けてくれる気配がなかった。
 そんな子と偶然街中で出会って、チャンスとばかりに声を掛けたら、特に嫌がることなくお茶を一緒してくれた。彼はその時、大変可愛らしい女装姿だったから、ここぞとばかりに可愛いと繰り返した。男に可愛いは禁句というか嫌がられることも多いけれど、女装子なら可愛いは間違いなく褒め言葉になるだろう。
 ただの女装子で男は対象外という可能性もあったが、もしかしたらの可能性にかけて口説きまくれば、少々躊躇いを見せつつもラブホテルにまでついてくる。これはもう、よほど体の相性が悪くない限りこのままお付き合い開始もありえるというか、ぶっちゃけその時点で、交際スタートしたな、くらいの気持ちになっていた。さすがに、男も有りの子だとこんな形で知ることになるとは思っていなかったが、今日の出会いに乾杯、ってくらい浮かれていたし、なんてラッキーなんだろうと思っていた。なのに。
 ラブホの部屋に入ってから、キスも未経験の童貞を拗らせまくった結果の女装で、好奇心でラブホについてきていて、つまり男の自分相手にセックスなんて欠片も考えていなくて、それどころかキスすら嫌だと思われている事実が発覚した。完全に騙されていた。
 正直、未経験の真っ更な体に突っ込むのは無理にしても、言いくるめて手コキかフェラくらいは行けるのでは、と思う気持ちもなくはなかった。だって既にラブホの部屋の中にいたのだ。でも、ファーストキスが男なんてマジ勘弁と、必死に言い募る半泣きの顔に、ラブホまで付いてきて今更何言ってるのとは言えなかった。
 だから代わりに、連絡先を交換しあって、友人の友人の友人って関係から友人になった。
 それ以降、たまに女装姿の彼とデートをしている。彼女いない歴=年齢の非モテ童貞と自分を卑下する彼に、じゃあ女性のスマートな扱い方を教えてあげるから、自分の身でもって体感すればいいよと言った結果だ。まさかそれで本当に女装姿でデートしてくれるようになるとは思わなかった。
 ちなみに、女装子とそういう仲だったことはあるにはあるし、女性の友人だってそれなりにいるが、彼女が居たという過去はない。性愛対象はずっと男だけだからだ。でも聞かれてないから、その事実は告げてない。
 割とはっきり君狙いだよって言ってる男を、そんな簡単に信じちゃダメだよ。なんてことも、もちろん思うだけで口に出して言ったことはない。
 ちょっとチョロすぎて心配になるし、彼のことを知るほどに見た目だけじゃない素直な可愛さに気付かされる。ああもう、ほんと、早く落としたい。
 ただ、一度ラブホまで連れ込んで押し倒しかけたからか、ガードはそれなりに固かった。手を握ったり腰を抱き寄せたりを拒むことはないが、雰囲気を作って顔を覗き込むと途端に警戒されてしまう。ファーストキスを奪われてたまるか、みたいな気持ちが透けて見えるのが、これまた結構可愛いかったりする。
 ガードは固くとも隙だらけだからキスなんて奪おうと思えば簡単に奪えてしまうんだけど、その結果、彼に悲しまれたり嫌われたりするのが嫌で手が出せない。でもそろそろキスくらいは出来るようになりたい。

続きました→

 
 
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