理解できない6

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「これから俺が、どう育つかもわからないのに……」
 今はまだ、一応はちゃんと抱きたい気持ちがあったって、高校を卒業するまでそれが継続するかはわからない。魅力や価値があがるという言葉が信じられないし、本気で言ってるっぽいとは思うけれど、なぜそんな確信めいて口にできるのかは欠片も理解できそうにない。
 もし魅力や価値が今より上がらなかったら、どうするんだろう。でも本当に上がるかどうかわからない魅力や価値を信じられないと言って、今の価値でいいから抱いてくれって言ったって、受け入れてくれないこともわかっている。中学生どころか高校生相手にも、随分と頑なに手は出さないと決めてしまっているらしい。
 途方に暮れて項垂れ、はぁあと大きくため息を吐けば、大丈夫だよと、これまた全く根拠のない言葉が告げられた。いや全然大丈夫って気にはなれないんだけど。むしろ卒業までの時間を思って憂鬱でしか無いんだけど。
 視線を下げたことで相手の性器が目に入って、再度零れそうになったため息をどうにか飲み込む。膨張率にもよるんだろうけど、少なくとも、小さくはなさそうだ。一応時々指で慣らしてはいるけれど、今の状態でも辛いだろうと思っているのだから、高校卒業まで待ってたらこちらの体の負担はもっと増すのが確実なのに。体の負担的にも今抱かれたいのだと言ったはずだけれど、どうやらその件は流されてしまったようだ。
「こーら。またジロジロ見て」
 正面に立っていた相手が、そんな事を言いながらスルッと背後に回ってくる。湯船に浸かるんじゃないのかと、振り向いて相手の顔と湯の張られたバスタブを何度か交互に見てしまえば、短く交代と告げられる。
「交代?」
「そ。背中洗ってやるよ。あと、頭も」
「いや、もう洗い終わってるし。てか一回風呂入った後だし」
「知ってる。けど一緒に風呂なんてなかなか機会無いし、さっき洗ってもらって気持ちよかったから、俺もお前にしてやりたい」
 ほら座ってと促されて、なんだかもう抗う気もなく大人しくバスチェアに腰を下ろせば、躊躇いのない手付きでさっき彼が使っていたのとは別のボディタオルを手にとった。もちろん、普段自分が使っているものだ。
 さっき彼にしたのと同じように、泡立てたタオルが背中と腕をゴシゴシとこすっていく。強すぎると抗議すればすぐに気持ちがいいなと思うくらいの力加減になったけれど、もし普段あのくらいの強さで体を洗っているなら、さっきのは物足りなかったんじゃないだろうか?
 わざわざ聞いたりはしないけれど、もしまた背中を洗うような機会があれば、もっと強くこすってやろうとは思った。
 背中と腕だけなのに結構丁寧に時間を掛けてゴシゴシされたあと、一度泡を洗い流して、今度は頭だ。こちらもけっこうな力強さでガシガシ頭皮を指の腹ですられたけれど、こちらはほどよい強さで痛いと声を上げることはなかった。というか気持ち良かった。
 そして何より、相手の機嫌が良くて、なんだか随分と楽しそうなのがいい。無理やり押しかけて無理難題を押し付けていた自覚はあるし、そこまでしてもなお、こちらの要望をどれもこれもきっぱりお断りされた気まずさもあったから、ホッとせずにはいられなかった。

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理解できない5

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 ないわけないだろと、やっぱり困ったような苦笑を浮かべながら言って、ゆっくりと立ち上がる。釣られるように見上げながら、胸の奥がざわつくのを感じていた。
 抱きたい気持ちが今もまだあるとはっきり言われたのだから、安堵するべき場面だろう。なのにこのあと何を言われるのか、何をする気で立ち上がったのか、不安のほうが強く胸の中に広がっている。
 気持ちがあると認めたからといって、抱いてくれるわけではないんだろう。そうわかっていつつも、不安を振り払うように口を開いた。
「……っなら、」
「抱かないよ」
 さっさと抱いて欲しいと続けるはずだった言葉を遮るようにきっぱりと宣言されて、どうしていいかわからなくなる。気持ちを強く持ってこちらの意思を少しでも通さなければと思うのに、困ったような苦笑ばかりを見せているくせに、この件に関して相手に譲る気は一切ないらしい。
「多分うまく伝わらないというか、理解して貰えそうにないけど、お前の言うお前の価値は、お前が成長して見た目の子供っぽさをなくしても変わらないよ。少なくとも、俺にとっては。それに、何度も言ってるけど、子供相手にえっちなことするチャンスなんて、全く欲しいと思ってない」
「なんで? エフェボフィリアじゃないの?」
「えふぇ、え? なんだって?」
 聞いたことがない単語だったんだろう。単語を繰り返すことすら出来ないらしい。
「エフェボフィリア。思春期の男女に向かう性的指向、らしいよ」
「なんだそれ。聞いたことない」
「ちなみにもっと小さな子ども相手にエロいことしたいのはペドフィリア」
 眉を寄せて嫌そうにしながらも、それは聞いたことがある気がすると言ってから、どっちも違うと否定してくる。
「自覚がないだけじゃなくて?」
「少なくともお前以外の子供相手にそんな気になったことないって」
「あー……なら、誘惑してごめんね? そんな気はなかったというか、あまり近づいて欲しくなかっただけなんだけど、対応間違ってたのは認める。冷たくあしらわれたいタイプって、もっと早くに気づけてれば、もっと愛想よくしてたんだけど。でもさすがに今更だよね」
「いや待て。冷たくあしらわれたいタイプってなんだそれ。そんな性癖もないから、俺のためにって塩対応始めたりすんなよ」
「え、じゃあ、何が原因で俺にそんな気になったっていうの?」
「そんなの、お前の全部が気になって仕方がなかった、ってだけだよ。子供が好きだとか、塩対応にトキメイたりはしないけど、お前の見た目が年相応よりも子供っぽいと言うか発育が悪そうなとこは心配だったし、うちの親には愛想良かったけど無理してるように見えたし媚びてるようにも見えた。俺を避けようと冷たい対応だったのはわかってるけど、でも放っておけないと思ったから、気づかないふりして構い倒してただけだし、正直、俺が持ち込む菓子類を断れずに食べてるのみて少しホッとしてた」
 そこまで言って、何かに気づいた様子で、ああそうかと納得げに頷いてみせる。
「そうだな。強いて言うなら、俺が貢ぐ菓子類を、なんだかんだ受け取ってくれたのが、お前相手にそんな気になった一番の原因? って気がしないこともない」
「なにそれ」
 疑問符がついている上に、気がしないこともない、なんて随分とあやふやだ。でも口に出したことで相手の納得は深まったらしい。
「お前が成長期に入って、これからもっと大きくなるってなら、俺はむしろ嬉しいよ。お前が年相応に育って、大人の男になってくれたほうが、俺にとってのお前の魅力も価値も上がってくよ」
 何を言い出しているんだろう。本気だと思えるような優しい笑顔に戸惑っていると、頭の上に手のひらが乗ってグリグリと撫でてくれたが、そんなことをされたって戸惑いが深まっていくだけだった。

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理解できない4

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 この家の二人の子どもたちが中高生時代に見せていた食欲を基準に用意される食事と、彼が度々差し入れてくれるおやつのおかげで、摂取カロリーが大幅に増えたというのがきっと大きいと思う。このまま伸びることなんて無いだろうと思っていた身長が、この一年で目に見えて伸びていた。体重だって随分と増えて、鏡に映る自分の体が変化していくのがわかる。
「これからどんな風に成長するかわかんないし、俺が高校を卒業する頃には、見た目が好みから外れてる可能性は大きいと思うんだよね」
 出会った初期の自分にそういった欲望を隠しきれなかった相手は、どう考えたってショタコンと呼ばれるタイプの人種のはずだ。
「既に好みドンピシャからは外れてるかもだけど、俺の年齢を理由に手を出さないのが本当なら、まだ対象内ではあるよね? 子供にエロいことしたい気持ちを俺が叶えてあげられるのには期限がある。見た目このままで年だけ重ねていけるなら高校卒業待ってからでもいいかもだけど、犯罪がどうとか言って高校卒業するの待ってたら、子供相手にえっちなことするチャンス無くすよ」
 言葉を重ねるほどに、相手の目が驚きに見開かれていくから、相当想定外の話をしている自覚はある。でもどうせいつか支払う礼なら、自分の価値が高いうちに払っておきたい。
「それとも、本当はもう、俺を抱きたいなんて気持ちがなくなってる? 子供相手には出来ないって引き伸ばして、高校卒業したら子供じゃなくなった俺にそんな気は起きないって言うつもりだった? それならそれで、はっきりそう言って欲しいんだけど」
 その気がないとはっきり言われたらもう誘わないけれど、代わりにこちらが差し出せる礼を指定してくれるとありがたいと言えば、驚きに見開かれていた目が眇められて眉間にシワが寄っていく。不快そうな顔に、どんな答えが返されてもいいようにグッと拳を握りしめた。
 握った拳に相手の手が伸ばされて、大きな手のひらにそっと包まれる。そうしながら一度俯いて大きく息を吐きだした相手が、困ったような苦笑を浮かべながら顔を上げる。
「お前をそういう対象として見てた事を隠せなかったのは、本当に悪かったと思ってる」
「隠すの上手い人のが困る、って言ったと思うけど」
「うん。でも、どう考えてもそれは気づかれちゃいけない気持ちだったよ」
「なんで?」
「なんで、って、お前に、子供のうちに抱きなよ、なんて誘わせる結果になってる」
「想定外なこと言ったっぽいのはわかってるけど、俺の提案、そこまで変なことだった? 高校卒業したら抱こうと思ってるなら、俺としては、今払ったほうがずっと楽なんだよね。俺の価値的にも、体の負担的にも」
「価値とか体の負担って?」
 わかりやすいかとこちらの事情を付け加えてみたら、逆にそれが引っかかった様子で、価値やら負担やらの意味を聞かれてしまった。
「価値はそのまま俺自身の価値だよ。子供とえっちなことしたい相手に、子供の俺を差し出すほうが価値が高いのは当然だろ? 体の負担ってのは、体をある程度慣らし続けとくのが大変だから、どうせなら価値が高い今、先払いで欲しいだけ持ってって貰うと、そういうことしなくて良くなって楽だなって思って」
 また想定外のことを言ってしまったのか、相手が驚きに目を瞠った後、大きく息を吐いて困ったように笑う。一連の流れがさっきとほぼ同じだ。
「ある程度覚悟はしてたけど、これは想像以上だな」
「覚悟って?」
 今度はこちらが、覚悟の意味を問いかける。
「お前の育ってきた環境を考えたら、常識だとか価値観だとかが、俺とは大きくずれてるだろうとは思ってけど、それが想像を超えてたって話」
「子供に手を出すのが犯罪で、それをしたくないって思ってる、ってのは理解してるけど」
「そうじゃなくて。いやでもこれを今すぐどうこうは出来ないのわかってるから、取り敢えずはそこじゃなくて、お前の誘いをどうするかだけど」
「あ、抱く気になった?」
「違う。俺が菓子やら貢ぐのに対して、お前が体を差し出す必要なんてないんだ。それは高校を卒業しても同じだ」
「つまり、俺を抱きたいなんて気持ちはもうないってこと?」
 肯定されて、オナホ代わりにもならないほどお前の体は汚いのだと突きつけられる予感に、少しだけ声が震えてしまった。

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理解できない3

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 濡れた髪を後ろになでつけるようにして水気を払う相手の動きが止まるのを待って、体をこちらへ向けるか椅子を後ろにずらしてくれと頼む。そこまで広くない浴室なので、相手に動いてもらわなければ、相手の前に屈めない。
「なんで?」
「なんで、って、舐めてあげようと思って」
「却下」
「けど勃たないと使い物にならないだろ」
 バスチェアに座る相手の肩越しに覗き込んだ先、股間のペニスに反応はなかった。まぁ背中と腕を擦られたのと頭を洗われた程度でギンギンに反応している方がオカシイので、ごくごく自然で当たり前の状態なだけだけれど。
「こら。見すぎ」
 こちらの視線に気づいたようで、ぱっと膝が閉じられる。
「だって、初めて見るから」
 ハグ以上の行為がない自分たちの間で、目にする機会は当然なかった。服の上から触れる機会すらほぼなかったので、相手のペニスサイズはさっぱりわからなかったし、気になってもいたのだ。
「俺としてはなるべく小さい方がありがたいけど、それ、どんくらい大きくなるの?」
「なぁ、使い物にならないだの言ってるってことは、抱かれる気満々で押しかけてるってことでいいんだよな?」
 勃起時のサイズを聞いたのに、あっさりスルーされて別のことを確認される。
「それ以外ないだろ」
「高校生相手にえっちなことする気ないって、何度も言ってるだろ。しないよ」
「フェラしても勃たなかったら諦めてもいい」
「そんなことされて勃たないわけ無いだろ。あと、フェラも高校生とする気ないえっちなことに含まれてんの、わかってるだろ」
「裸でこの狭い空間に二人きりで、その理性、いつまで持つ? 誘ってんのこっちだし、フェラされたら勃つって言うなら、そのまま流されちゃえばいいじゃん」
 気持ちよくしてあげられると思うよと言えば、嫌そうに眉が寄せられる。
 口でされたら勃つに決まってると言われても、それは刺激に対する反応であって、その行為に嫌悪感があるかないかは別問題だ。そして、行為そのものよりも、誰に、という部分が重要なんだろうこともわかっていた。
「高校生相手にって言うけど、何がそこまで問題? 今日この家には俺たち二人しかいないし、黙ってれば誰にも知られないよ。少なくとも、俺は自分から言ったりしない。それにもしバレて問題になったら、俺が誘ったって言えばいいよ。今回のこれは、完全に事実だし」
「誘う子供よりも、誘いにのっかる大人の方が罪深いと、俺は、思ってる」
 ますます嫌そうに眉をあげながら、俺は、という部分を強調して告げられる。
「バレるバレないの問題じゃなくて、この誘いに乗っかってお前に手を出したら、俺は俺が許せない。だからお前の誘いには乗らないよ」
「でも、煽られ続けたら理性切れる可能性はあるんだよね? 俺の誘惑に負けたくないってだけで、つまり、俺の努力不足ってだけなんだろうけど、でもじゃあ、どうすればその気になるか、どうすればその理性ぶち切れんのか、教えてよ」
「やけに食い下がるな。むしろこっちが聞きたいよ。抱かれるのが好きってわけじゃないだろ。必要ないって言ってるのに、なんでそんなに抱かれたがるんだよ」
 なんでってそんなの、時間がないからに決まってる。成長期に入ったみたいだからだと言えば、相手は驚いた様子で何度か目を瞬いた。

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理解できない2

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 その日は珍しく夫婦ともに留守だった。結婚記念日が近いとのことで、一泊だが近場でのんびり過ごすらしい。昼前には揃って楽しげに出かけていった。
 旅行の話は事前に知らされていたので、万端とは言わないが準備はしてきた。成功するのかはわからないが、いい加減、色々とはっきりさせたい。
 この家の長男は元々家を出ていたから、今夜この家にいるのは彼と自分の二人だけだ。しょっちゅう部屋に訪れてはあれこれ構って触れてくる彼のことを、その親である夫婦がどこまで認識して許容しているのかは知らない。ただ、彼らの目に振れる範囲での接触はせいぜい笑いかけられたり頭を撫でられたりなので、あんな過去持ちの自分と息子とをこの家に二人きりで残して旅行することへの不安はそこまでないらしい。
 そう思うと裏切るようで申し訳ないけれど、次にいつこんなチャンスが巡ってくるかわからないし、こちらにはもうあまり時間がないのは明白だ。だから仕方がないのだと自分自身を納得させながら、夕食後の片付けを終えて、先に風呂を済ませた自分と入れ違いに風呂場へ向かった彼を追いかけるように、再度自分も風呂場へ向かう。
 脱衣所前で耳を澄ませ、相手が確実に浴室へ入ってから、脱衣所の中へとそっと入り込む。素早く服を脱いでから浴室のドアを叩けば、すぐに薄くドアが開いて相手が顔を覗かせた。
「何かあっ、えっ?」
 何かあったのかと問いかけようとしていた相手が驚きに目を見張るのがわかる。
「俺も入れて」
「は? えっ?」
「いいから入れて」
「いやだって、お前」
 いいからと再度言いながら強引にドアを押せば、押し返されることはなく浴室のドアが開いていった。自分が入れそうな隙間が出来たところで素早く中に身を滑り込ませて、今度は逆に、すぐさまドアを閉じてしまう。
 これでこの家の中どころか、狭い浴室に裸で二人きりだ。まだ状況が把握しきれていないのか、明らかに戸惑ったままの相手の体には泡がついていて、どうやら体を洗っている途中だったようだ。
 自分は髪から洗う派だが、どうやら相手は体から派らしい。
「背中、流す」
 さすがに意味が通じていないわけではないだろうけれど、戸惑いを深くする相手に、洗ってあげるよと言い換えて再度伝えながら、相手の手元に手を伸ばした。手の中のボディタオルを握って引っ張れば、それはするりとこちらの手の中に落ちてきて、同時に諦めたようなため息が聞こえてきた。
「あー、じゃあ、よろしく」
 告げてバスチェアに腰をおろした相手の背中をゴシゴシ擦って、そのまま肩から腕をこすり終わったところで、もういいと言われて手の中のタオルを取り上げられる。
 全然洗い足りてないんですけど。
 こちらは全身洗ってあげるつもりで、というよりは全身くまなく触ってやるつもりでタオルを手にしていたので、それは多分顔に出た。それに返されたのはお見通しだとでも言うようなどこか呆れた顔で、ほとんど洗い終わってるところだったからもう充分だと告げられる。
「不満なら、次、頭、洗ってよ」
「それは、いいけど」
 相手に指示されるまま頭を洗ってやれば、たまには人の手で洗われるのもいいなと満足気に笑う。押しかけて戸惑わせていたのはわかっているから、少しでも満足出来たなら良かったとホッとした。同時に、なんて危機感がないんだとも思っていたけれど。

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理解できない1

親戚の中学生を預かり中の続きですが、視点は変わってます。
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 自分の家が、というよりは親が、二人揃ってどうしようもなくオカシイってことには小学校の高学年辺りにはもうはっきりと気づいていたし、その親に育てられた自分も充分にオカシイのだという自覚だって、中学に上がる頃にははっきりとあった。ただ、そんな親元から逃げられるのは高校を卒業してからだと思っていたし、高校に入ったらこっそりと逃げる準備を始めるつもりだった。
 つまり中学を卒業する前にあれこれ露呈させるつもりなんかなかったし、迂闊だったし、バカだった。
 結果的には、オカシサを必死に取り繕った親と親戚たちのおかげで、自分はかなり遠方の、一応は親戚だというとある家庭に預けられる形で収束したのだけれど、その過程で、親と親戚の間では、悪いのもオカシイのも自分ひとりだけという事になったらしい。そうなるだろうという気はしていたけれど、離婚くらいはするのかと思っていたら、自分ひとりが居なくなれば万事解決的な結論になったようだ。
 高校卒業後にこっそり逃げるという当初の予定よりもダメージはかなり大きかったけれど、予定していたよりも早く逃げ出せたので、気持ち的にはプラマイゼロだろう。本当は悔しくて悔しくて仕方がないのだけれど、そうとでも思ってなければ自分自身を保てない。
 最初は何も知らずに、夏休みの間だけと言われて預かってくれていたこの家の夫婦は事情を知ってドン引きだったけれど、事情を知ってますます義憤に駆られたらしいこの家の次男によって説得されて、今はそれなりに当たり障りのない関係を築けていると思う。
 実のところ、7つ年上だというこの家の次男が、ひと夏だけ預かると言われていただけの自分に興味を持ってあれこれ構ってくれなかったら、この結果には絶対にたどり着かなかった。
 彼が自分の問題に積極的に関わってくれたことには、間違いなく感謝している。ただ、同時にめちゃくちゃ戸惑っても居た。
 だってなんで彼がそこまでするのか、さっぱりわからない。どうにも自分の理解を超えている。
 下心はあると認めているのに、ハグ以上のことを要求されたことがない。というよりは、頑なに拒まれている。
 最初は中学生相手に手を出すようなオカシナ大人の仲間入りをしたくない、みたいなことを言っていたけれど、高校に上がってもそれは変わらなかった。高校生だって充分に子供で、成人を超えた大人が手を出していい対象じゃないだの言っているけれど、結局の所、この体への興味は多分もうないんだろう。
 元々見た目に惹かれて構ってくれていたのだろうし、まさか中学生があれこれ経験済みなんて思っていなかっただろうし、他人の手垢が付きまくったこの汚らわしい体相手にそんな気になれないと言われたら、まぁそうだろうなとしか思えない。でもそうならそうと言えばいいのにと思うのだ。
 この家の夫婦を説得して自分をこの家に引き入れた張本人で、夫婦よりもよっぽど保護者面をしているのだから、可哀想な子供として保護してやっただけだと言って、そのまま保護者に徹してくれればいい。感謝はしているのだから、目的は体じゃなくて金だと言われれば、バイトを増やしてもいいし、待ってくれるなら働きに出てから返していくんでもいい。もちろん、金じゃなく何か別のものだとしても、言ってくれればそれを返すし、かんたんに返せないものでも返すための努力はする。
 なのに、一緒に暮らしたい下心で関わったと言うし、嬉しそうに楽しそうに構ってくるし、それなりの頻度でハグを要求してくるし、そのくせキスひとつしてはこない。こちらから触れようとしても体格差で拒まれてしまう。
 本当に、彼相手にどう振る舞えばいいのか、ここで暮らし始めて一年近くが過ぎても尚、わからなすぎて落ち着かない。

続きました→

長い秋休みを終えて戻ってきました。初っ端から午前中更新が出来ずにすみません。また暫くは偶数日に更新を続けていくつもりなのでよろしくおねがいします。

 
 
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