親睦会7

1話戻る→   目次へ→

 眠りから覚めた時には一人だった。確かめるように触れた、あの人が寝ていた場所のシーツはすっかり冷えている。
 溢れるのは苦笑。目覚めた時、腕の中で眠る自分を見てどんな顔を見せたのか、知りたい気もするし、知りたくないとも思う。
 ため息を吐いて、枕元に置かれた携帯を取り上げた。それは自分のものではなく、あまり馴染みのない電子音を響かせている。相手が目覚まし用に仕掛けたんだろう。自分を起こしたのはこの音だった。
 どうせ襖一枚隔てた先に居るんだろうから、直接起こしに来てくれればいいのに。そう思いながら開いた襖の先は無人だった。
 相手の携帯は自分の手の中で、未だ音を鳴らしながら小さく震えているのに、人気のない静かな空間を前になんだか無性に不安になる。
 大浴場から戻った時もそうだった。寝ているのを見つけた最初、ホッと胸を撫で下ろしたのを覚えている。あれもやはり、姿が見えないことで不安を感じていたからだろう。
 まさか置いて帰られるなんて事はあるはずないと思うのに、それでも居るはずの場所にその姿がないと不安を感じてしまうくらいには、相手に対する信頼がないのだと思う。酔わされて潰されて気付いたら抱かれていたみたいに、また、こちらが油断した隙に何か酷いことをされるのではないかと疑う気持ちがある。
 そんな気持ちを自覚しながら、誘われれば平気な顔して付いていく自分も大概オカシイのだけれど、奢ってくれるからとか、気持ちよくしてくれるからとか、そんな理由を掲げて目を逸らしている。
「ああ、ちゃんと起きたな。そろそろ飯の時間だぞ」
 ぼんやりと立ち尽くしていたらふいに声が掛かって、慌てて声がした方向へと顔を向けた。洗面台や脱衣かごの置かれた区画から現れたその人は、どうやらまた風呂へ入っていたらしい。
「まだ寝ぼけてるのか?」
 そのままつかつかと歩み寄ってきて、手の中の携帯を取り上げアラームを切るのを、やはりぼんやりと見つめてしまえば、苦笑交じりにそう問いかけられた。特に変わった様子はなく、いつも通りの顔と声音に、肩透かしと安堵とが混じったような妙な気持ちになる。
 そして次に湧くのは、ほのかな苛立ちだった。それは相手に対してというよりも、自分自身に対してかもしれないけれど。
 振り回されて胸を痛めて不安になって、いったい何を期待しているんだろう。もっと図々しく、たかってやるくらいの気概で対峙してちょうどいいくらいの相手だと、そんなことはもう十分わかっているのに。
 気持ちを切り替えよう。せっかくの温泉と食事を、堪能して帰ってやろうと思った。
「俺も飯前に露天の方、入っておきたかったんですけど」
「なに、起こさなかったから拗ねてんの?」
「拗ねてません」
「気持ちよさそに寝てたから、寝かしておいてやっただけだろ。むしろ叩き起こさなかったことを感謝されたいとこなんだけど」
「こんな時ばっか変な気遣いいりませんよ。せっかく奢りで温泉来てるんだから、寝て過ごすより温泉入って過ごしたいです」
「わーかったって。わるかったよ。さすがに食事の時間は今更ずらせないけど、食後に好きなだけ入っていいから」
「言質とりましたからね」
「はいはいどーぞ。というかいちいち俺の許しなんか取らなくていいから、夜中だろうと朝だろうと、好きに入れよ?」
 そのための部屋付き露天風呂なんだからと続いた言葉に、そういう意味じゃないと訂正はしなかったし、そんな余力を残してくれる気があるのかと聞き返すのは藪蛇な気がしてやめておいた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親睦会6

1話戻る→   目次へ→

 思わず硬直して、しばし相手と見つめ合う。勝手に体をまさぐられていた事に気付いているのかいないのか、相手は思ったより近くにあった自分の顔に少し驚いたようではあったけれど、次にはどこかふわっとした笑みをこぼす。
 まったくもってらしくない。こんな柔らかな笑顔、初めてみた。
 その笑顔が原因かどうか定かではないが、心拍が上昇していくのがわかる。
 らしくないのは自分もで、何故か急に恥ずかしさが込み上げた。寝ている体に勝手に触れて、あまつさえちょっとフェラしてみようなんて事を考えていたのを知られたくない。
「ああ、戻ったのか」
 声もどこかふわっとしている。けれどそれで、きっと寝ぼけているのだと合点がいった。
「疲れてます?」
 未だ肌に当てた手を一切動かせないまま、ドキドキしつつ尋ねる。手が動いてしまったら、こちらの悪戯に気づかれそうで怖かった。
「んー……うん、まぁ?」
 言外にヤりに来たんじゃなかったのと言う気持ちをたっぷり込めつつ聞いたのに、やはり寝起きで随分と思考が鈍っているのか、ぼんやりとして曖昧な反応しか返らない。
「なら、寝てていいです、よ」
 起きて抱いてくれればいいのにと思う気持ちもあるけれど、眠いならこのままもう一度寝落ちてくれと思う気持ちもあった。
 もう一度寝てくれたら、寝てる間に勝手にフェラしようとしてた痕跡を消して、自分は部屋の露天風呂にでも行ってこようと思う。後で起きてきたこの人に向かって、まるで何もなかったみたいに、寝てたから温泉堪能させてもらいましたって顔が出来るように。
 なのに。
「寝てたらお前に犯されそう」
 ふふっとおかしそうに笑われてしまって、体をまさぐっていた事に気付かれていると気付いた。カッと体の熱があがって、先程以上に恥ずかしい。
 気付かれているならと、若干慌てながらも肌に当てたままの手を引き剥がせば、ますますおかしそうに笑った相手がその手を掴んで引っ張った。寝起きとは思えない強い力に引かれたのと、完全に油断していたのとで、頭から相手の胸に突っ込んでしまった。
「ちょっ、と、なに」
「お前も寝ろよ」
 いきなり何するんですかと憤るこちらの声を遮るように、甘やかな声が鼓膜をくすぐり身を固くする。本当に、慣れない。こんな声、知らない。
 抱かれている最中に掛けられる声だって確かに甘いけれど、あれはもっと、からかいと挑発と興奮とが混ざっている。ただただ柔らかに甘く響いた声に、どうしようもなくドキドキしてわけがわからなかった。こんなことで混乱していることに、更に混乱が加速している気もする。
「一緒に、寝よ。夜に備えて体力温存しとけ」
 ぐいぐいと抱きしめに掛かる腕とそんな言葉にため息を吐いて、大人しく相手の隣に体を横たえた。
 抱き心地を確認しているのか調整しているのか、何かを確かめるように頭と背中とを這っていた手が動きを止めて、それからほどなくして軽い寝息が聞こえてくる。それを暫く聞いてから、ようやく体の力を抜いた。どうやらまた眠ってしまったらしい。
 体力温存しとけって事は、やはり夜には泊まりだからと、しつこく何度も求めてくるようなセックスをされると考えて良さそうだ。それは憂鬱なはずで、なのに体の熱は上がっていく。弄られ挿れられる事に慣れてしまった尻の穴が、キュッと窄まりうずくような感覚がして、恥ずかしいのか情けないのか、なんだか泣きたいような気さえしてきてやっぱり頭の中はグチャグチャだった。
 この腕の中から抜け出したい。混乱するのは、どう考えたってこの状況のせいだ。なのに、このまま捕らわれていたいとも思う。この腕の中で、安らかな寝息をただただ聞いていたい。
 ふわっとした柔らかな笑みも、柔らかで優しいばかりの声も、寝ぼけていたからだとわかっている。昼寝から目覚めた時、相手がこのやり取りをどこまで覚えているかも怪しいし、出来れば忘れていて欲しいとも思う。だってきっと、この人はこんな甘やかな反応を、自分に見せたくはなかっただろうから。
 胸の何処かがまた少し痛くなって、気持ちを落ち着けるように少し深い呼吸を繰り返した。けれどドキドキが収まっていくと、泣きたいような切ない気持ちばかり残ってしまう。
 抱きしめられているので元々近い距離にいるのだけれど、更に自分から身を寄せて相手の肌にくっついてみた。
 そこに安心なんてものはなく、やはり胸は小さく痛み続けている。けれどそれでも、目を閉じて相手の体温を感じていれば、やがて意識は眠りに落ちた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親睦会5

1話戻る→   目次へ→

 本館の大浴場をたっぷりと堪能してから戻れば、寝室的な感じで区切られた場所に最初っから敷かれていた寝具の片方で、相手が寝息を立ていた。
 客室に併設されている専用露天風呂だけで十分だと言って、本館までの移動を面倒がって一緒に大浴場へ行くことをしなかったのは、もしかして疲れていたからだろうか。もしくは、かなり長湯してしまったから、単に暇を持て余して寝てしまっただけかもしれない。
 夕食まではまだそれなりに時間があるから、戻ったら抱かれるのだと思っていたのに。と言ってもそれは、食事前に一回、少し時間を開けて寝る前に一回、くらいで満足してくれたら良いのにという、こちらの願望でしかないのかも知れないけれど。
 隣の寝具に腰を下ろして、ぼんやりと相手の寝顔を見つめる。寝顔なんて初めてみた。
 可能性の一つとして、抱き潰されて寝顔を晒すことはあったとしても、逆はないと思っていた。そうか。宿泊先で長時間一緒に過ごすということは、相手が寝ている間に自分が起きているという、こんな時間帯も存在するのか。
 寝ているならいいだろうと、しげしげとその顔を眺め見ながら、この人は何で自分を抱くんだろうと不思議に思う。
 間違っても不細工と判断されるような容姿じゃないし、部署が違うので仕事っぷりはあまり知らないけれど、それでも職場での評価がそこそこ以上に高いらしい事は知っている。男でも女でも、それなりに好意を寄せてくれる相手はいそうだと思う。
 あの親睦会以降、セックスとセットみたいな感じでしょっちゅう奢られているけれど、値段は気にせず好きに食べていいって方針で、わざと高いものを選んで頼んでも何も言わないし、逆に値段の安いものばかり選んで頼んだら気を遣うなと怒られる。今回の旅行だって、想像していた温泉旅館とはまったく違ってなんだか随分と豪華で、自分は部屋に案内された最初はビックリし過ぎて呆けてしまったのに、相手は慣れた様子で仲居さんから宿の説明を受けつつ和やかに会話していた。
 だから、自分みたいに金銭的に厳しくて、デートするような余剰金がないから恋人なんて作れない、ってこともなさそうだ。
 というかなんでこの人、あの寮にいるんだろう?
 社宅で自炊が嫌なのだとしても、寮で出されるほんのり微妙な食事よりは、好きに買ってくるなり食べに行くなりした方が良さそうなのに。だって食事に連れて行かれる店からして、この人多分、かなり舌が肥えている。
 ただただ気楽に性欲を処理したいだけだとしても、自分はそこまで相手に都合よく便利な穴ではないはずだ。黙って足を開きはするし、キモチイイと喘いで反応は返すけれど、して貰うばかりでこちらから何かしらの奉仕をしてやることはない。まぁ求められたこともないけれど。
 そこまで考えたら、ふと、もしこちらから相手に触れたら、相手はいったいどんな反応をするのだろうかと思ってしまった。
 たまには奉仕っぽいことをしてやるのもいいかもしれない。風呂上がりなはずだし、ちょっと口に咥えて舐めてやるくらいはチャレンジしてみようか。
 酔わせて潰した相手に突っ込むまでした相手なんだから、寝ている体に少しばかり悪戯したって文句を言える立場にないだろう。ヤるために来たはずの場所で、何もせずに無防備に寝姿を晒した向こうが悪い。
 せっかく気持ちよく寝ている所を起こしてしまうかもしれないけれど、どうせなら起きてそのまま一発抜いてしまえばいいとも思う。元々、食事前に一回して置くつもりだったのだから、そのまま抱かれてもいいし、口の中に出されるのは嫌だけれど、初めてのフェラに興奮するってならまぁ我慢してやってもいい。
 そんなことを思いながら、相手の体に手を伸ばす。慣れないことをしようとしているので、おっかなびっくりなのは仕方がない。ただ、あまりにもたついたせいか、相手の股間を剥き出すより先に、相手の目が開いてしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親睦会4

1話戻る→   目次へ→

 ドアを開けた先にいたのは、今現在微妙な関係となっている、というよりはもう間違いなくただのセフレな先輩だった。
「出かけるから支度しな」
 換えの下着だけでいいと言われて、わけがわからず目の前の男を見つめ返す。
「いったいどこ行くんですか?」
 返された地名は、そう遠くもない温泉地だった。しかしますますもって意味がわからない。
「なんで?」
「たまには場所変えてヤろうと思って?」
「ああ、そういう話」
 同期と違って寮内でヤることに抵抗なんてないけれど、外に食事に出て、その帰りに目についたラブホで、という経験は何度かある。支払いはどうせ相手だし、寮でするよりはやっぱり色々と気楽なので、自分からそう誘導してしまったこともあった。
「泊まるんですか?」
 でもラブホ利用経験はあっても宿泊まではしたことがない。もちろんラブホ以外の宿泊施設に泊まったこともない。
 もっと端的にいうなら、食べることとヤること以外の何かを、この男と共にしたことがない。
「ヤる気で行くのに日帰りとか慌ただしすぎだろ」
「ですよね」
 確かに聞くまでもなかった。この様子なら当然、既に宿の予約も完了しているんだろう。
 何で突然そんな気にと思う気持ちの中に、なるほどこういう形で自分の欲求を通すのかと思う気持ちがある。元々、酔って潰れた相手に突っ込むような男なわけだし、ある意味すんなり納得できる。
 ヤることヤッてるセフレっぽい仲にはなったし、平日だってお互い早い時間に寮へ戻っていれば応じてしまうこともあるけれど、基本、一度のセックスで何度も射精することはしない。互いに一度ずつ吐き出して終わりだ。だからだろうか。直接言葉で、物足りないだとかもっとしたいだとか言われたことはないけれど、終えた後にヤり足りないという気配を感じることはあった。
 最初の頃は本気で疲れ切って二戦目なんてとんでもないって感じだったし、そこそこ慣れてしまった今だって、やっぱり続けて何度もしたいなんてことは思わない。
 性欲の差とかではないと思う。なぜなら慣れてきてからは土日とも抱かれることが平気になったし、平日の誘いを疲れているからと断ることも減った。更に言えば、さすがに回数が減りはしたけれど、一人で処理することも未だにある。
 なんというか、気持ちよく果てた後の体を更に弄り回されるのが嫌だった。
 ほぼマグロが許されている現状、相手は毎回、こちらの体を丁寧に慣らして拡げてくれる。それらの準備を考えたら、一度にヤりたいだけヤッて、吐き出せるだけ吐き出して、その分次回までの日をあける方が楽なはずだ。でももし、面倒だからヤり溜めさせろ的な提案をされていたら、抱かれることそのものを止めるだろうとも思う。
 ヤり足りない気配を滲ませても口に出して言わないのは、そんなこちらの気持ちを、きっと相手も察しているのだろうと、そう思っていたのだけれど。そこに踏み込んで来る今回の誘いには、どうしたって警戒する気持ちや困惑する気持ちやらが湧いてしまう。
 元々のんびり湯に浸かれる温泉や銭湯などが好きで、たまの贅沢で徒歩距離にあるスーパー銭湯へ行くことはあるが、実のところ、温泉旅館への宿泊なんてしたことがない。旅行そのものも随分とご無沙汰だった。というか多分そんな話をチラッと零した記憶があるから、それで目的地が近場の温泉地になった可能性が高い。
 もしこれがセックスの誘いでなければ、きっと喜んでホイホイと付いていく。けれど相手の目的がなんとなく見えてしまっている以上、素直に喜ぶことなど出来ずにただただ立ち尽くしていた。
「まぁちょっとこれ見ろよ」
 相手もこちらのそんな態度は想定内だったらしい。そう言いながら、スマホの画面をこちらへ向けてくる。それはどうやら宿のサイトの料理紹介ページらしく、美味しそうな料理の写真が並んでいた。
「こんな感じの飯が出るみたいだけど」
 朝食はこっちなと指が画面を滑って、これまた美味しそうな和朝食の写真が表示される。ゴクリと喉が鳴ってしまって、フッと小さく笑われた。
「行く気になったか?」
 疑問符は付いているが、断られるなんて思っていないのは明白だ。食事に釣られて頷くと思われているのが癪だし悔しいのに、もし断ったらどうするのかを考えるとそれはそれで気持ちが沈む。
 他の誰かを誘って出かけて行くのか、あっさりキャンセルを選ぶのか。キャンセルを選んだとして、そんな真似をさせても今夜また食事に連れ出してくれるのか。
 もし自分なら、ここまで用意した誘いをあっさり断られたら、関係そのものを終えることを考える。これがそんな重要な意味をもつ誘いかどうかはわからないけれど、それを確かめることそのものをなぜか躊躇ってしまう。
 セフレっぽい関係とは言っても、明確にセフレと言われたことはないし、自分の方も、セフレだと思っていると口に出したことはない。それくらい、自分たちの関係はあやふやだった。
 こちらの不安や困惑の正体には多分気付いているだろうに、豪華な食事写真で釣る真似はしても、言葉での安心はくれようとしない。本当にいつもと違う環境でヤりたいだけで、嫌がるような無茶はしないと言ってくれれば、たとえそれが嘘だとしても、嘘だろうとわかってても、こちらは頷きやすいのに。せめて最初に、場所変えてヤるのが目的だなんて言わずに、温泉好きだって聞いたから喜ばせたくて宿を取ったとか言ってくれていたなら、たとえ本当の目的に気付いても、わかりやすく差し出された好意を振り払う真似はしにくいのに。
 胸の何処かがキリキリと痛い。ズルいと思うのに、それはお互い様だとわかってもいる。
 だって食事まで奢ってくれる、都合の良い性欲処理相手という扱いしかしていない。吐き出したらハイ終わり、という態度をあからさまに見せていた。疲れ切ってぐったりだった最初の頃はともかく、ある程度慣れてからは終えた後の処理も自分でするようになった。というよりは、終えた後の体には触れさせなくなった。
 行為の最中に甘い言葉をねだることもしないし、行為の余韻なんてものはむしろ避けるような素振りをしている。もちろん、食事とセックス以外の何かを相手に求めたこともない。
 だって酔い潰した相手に無断で突っ込む犯罪者と、そんな犯罪者相手にも簡単に足を開いて善がっている自分には、これくらい曖昧で殺伐とした関係で十分だろうし似合いだろう。そう思っているはずなのに、時折走る胸の痛みは、知覚するほどに増して行く気がする。
「ああそうだ。お前、財布置いてっていいぞ」
 食事に釣られてあっさり頷かなかったせいか、ダメ押しとばかりにそんな言葉が告げられた。
「行きます」
 言えば満足そうに笑いながら、じゃあ支度してと促される。最初に言われた通り、換えの下着類だけ適当なカバンに丸めて突っ込めば、支度なんてあっというまに終了だった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親睦会3

1話戻る→   目次へ→

 とある週末の朝、一階の玄関脇にある共同トイレから出たところで、今から出かけるらしい同期と鉢合わせた。隣には当然、同期が恋する先輩もいる。というかあの後あっさり彼らはお付き合いを始めたので、つまりこれからデートらしい。
「何かおみやげ買ってくるね」
「できれば食い物で」
「うん。わかってる」
 ふわふわとした笑顔で幸せを振りまく同期は、最近なんだか可愛くなった。男でも可愛いと得なことって色々あるよねと笑顔で言い切るような、まさに童顔かわいい系の恋人が出来た影響なのは間違いない。
 ただ恋人リスペクトというよりは、もっと単純に、事実あれこれ可愛がられている結果なだけっぽいけれど。
 付き合うことになったと嬉しげに報告された時、先輩抱きたい側じゃなかったのかと聞いてみたのだけれど、あんな可愛い顔してるのに、その顔が欲に濡れながらお前のがずっと可愛いって言ってくれるのがたまらないそうで。そりゃそんな可愛い言われまくるセックス繰り返してんなら、最近同期の可愛さが増したことと、先輩の顔が可愛いってのはあまり関係がないかもしれない。
 あと、思ったより全然気持ち良かったから、抱かれる側でも問題ないという結論になったらしい。でもそれは元々好きな相手だからだろう。
 恋人となった先輩と週末ごとに仲良くデートを繰り返している同期には、たまに、お前も付き合っちゃえばいいのにと勧められるが、さすがに無理って気にしかなれない。
 もちろん同期が勧めてくる相手は、あの日親睦会を企画したもう一人の先輩だ。同期にはあの日気持ちよくイカされてしまった姿を見られているし、現在、自分たちが互いの部屋を時折行き来してる姿だって見られている。ぼっろい寮なので、致してる声が漏れていることもあるかもしれない。
 ようするに、恋人になろうだとか、付き合おうだとかって展開はないものの、やることだけはやっていたりするのだ。ほぼマグロでも気持ちよく性欲発散できる上に、週末の食事が豪勢になる特典付きだったので、なし崩し的に受け入れてしまった。
 我ながらチョロイのは認める。あんなレイプまがいの真似をされた側だってのに、気持ちいいセックスと美味い食事とであっさり懐柔されている。強引に押したら落ちそうと思った結果、酔わせて取り敢えず突っ込んだ先輩の手法ははっきり言って犯罪だけど、まぁ確かに自分相手にはそこそこ有効だったんだろう。
 同期が週末ごとにいそいそとデートへ出かけるのは、寮内でセックスするのはさすがに控えたいという、同期の希望を先輩が汲んでいるからというのも実は知っている。同期がなんでそんな事を言ったかは、寮内でヤッてる他者の声を聞いてしまったからと思っていいはずだ。もちろん、その他者の声が自分の声だろうこともわかっている。だって自分は寮内でそんな声を聞いてしまったことがない。
 ただ同期に声について言及されたことはないし、付き合っちゃえばとは言われるがあの後の自分たちの関係をあれこれ突っ込んで探られたことすらない。元々入居者は少ないけれど、他の入居者にだって、何かを言われたことはなかった。元々の入居者たちに関しては、寛大なのか無関心なのかよくわからないけれど、多分後者って気がしてる。
 出かけていく二人を見送った後、自室へ戻ってこのあとどう過ごすかをぼんやり考える。もしセックスの誘いが掛かるとしてもいつも通りなら夕方だろうし、出かけるにしたってあまりお金を掛けずにとなると近所を散歩とかになってしまう。
 部屋の窓越しに見上げた空は午前中だと言うのになんだか暗くて、天気はこれから下り坂だと言うから、散歩って気分にはなれそうにない。本でも読むかと思いながらはぁとため息をこぼした所で、部屋の戸が叩かれた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親睦会2

1話戻る→   目次へ→

 意識が浮上した際、聞こえてきたのは同期の友人が嫌だ止めて違うと抗うか細い声と、それを宥めているらしい甘やかな声だった。んっ、だとか、ふっ、だとか漏れ聞こえる息から、泣いているような、それでいてなんだか色っぽい気配を感じて、いったい同期に何が起きているのかと声のする方へ顔を向け、それから重い瞼を薄っすらと押し上げていく。
(えっ?)
 驚きすぎると声は出なくなるものらしい。しかしあまりの衝撃に、酔いも忘れて意識がはっきりし、重かった瞼が嘘みたいに目を大きく見開いてしまった。
 嫌だ止めてと零している同期は、恋する相手に組み敷かれて喘いでいる。違う、そんなつもりじゃない、という言葉の意味を自分は理解しているが、多分同期を組み敷く先輩だってわかっているだろう。年齢よりずっと若く見える可愛い顔は、随分と楽しげに同期を見下ろしている。
 というか、風呂場共同だからって他人が入浴中なら遠慮して時間をずらすし、先輩の裸なんて見たことがなかったけれど、服の下の筋肉が随分とエゲツナイ。その体を知っていたら、果たして同期はその先輩に恋心を抱いたりしただろうか?
 嫌だ止めて違うと繰り返しながらも、同期はもう完全に喘いでしまっているし、彼が想定していた役割が逆ではあるものの、好きになった相手から落とされるキスに嬉しそうな顔を見せてしまっているし、先輩はずっと満足げで楽しげだ。だから二人を止める気にはならなかったし、むしろだんだんそんな二人の情事を、ほぼ不可抗力とは言え覗き見ている気まずさが押し寄せてくる。
 自分が潰れた後何があったか知らないが、いくら潰れたからって人のいる部屋でおっぱじめた向こうも悪い。でもこういうのは途中で気付いてしまっても、目を逸らして気づかぬふりをしてやるもので、向こうがこちらに気づいてなかろうとジロジロ見続けるものじゃない。とは思うのに、目の前で繰り広げられる二人の痴態から目が離せない。
「おい。向こうが気になるのはわかるが、せっかく起きたならそろそろこっちに集中してくれ」
 ふいに落とされた声に、驚きそちらへ顔を向ければ、この親睦会を企画した先輩が自分を見下ろしていた。うっすらと汗の浮かんだ額や上気した頬からはっきり示される興奮の中、射抜くような鋭い瞳が自分を捉えている。
「っえ、なっ、ぅあっっ、ちょっ」
 体を揺すられ反射で声が漏れ、それに伴い感じた自分の体の異変に戸惑い慌てれば、見上げた先の先輩が口角を釣り上げた。
「うそっ、うそっ、やだっ」
 下半身は痺れるみたいにだるくて尻の穴が熱い。
「抜いてっ、嘘、ね、嘘でしょ、やだっ」
「起きた途端、随分騒がしいな」
 ふっ、と笑いを零した後で、近づいてきた顔に口をふさがれた。容赦なく侵入してきた厚い舌が、好き勝手に口内を舐め啜って荒らしていく。
「んっ、んんっ」
 抗議するような唸りも簡単に飲み込まれ、口の中の弱い場所を執拗に擦られてゾクゾクする。快感に震えてしまえば、連動するように尻穴がキュッと締まって、そこに咥えこんでいる先輩のペニスを意識せずにいられない。
 嘘だ嘘だ違う。これは何かの間違いだ。なんていくら頭で否定しようと、自分の置かれた現状が変わるはずもなかった。
「気持ちぃ?」
 キスの合間の問いかけに、けれど頷けるはずがない。
「も、やめっ」
「なんで? 気持ちよさそに見えるけど」
 初めてでも痛くなんてないだろと続いた言葉に、体の熱が上がる気がする。痛くないとか気持ちいいとかそういう問題じゃないし、初めてってわかってて断りなく、しかも意識がない間に突っ込んだって部分を問題視して欲しい。
「そ、ゆー問題、じゃ、ない」
「知ってる。お前、俺のことなんてなんとも思ってないもんな」
「じゃ、なん、っで」
「んー、お前男同士あんま抵抗ないみたいだから、強引に押したら落ちるかもと思って?」
 抵抗なく見えるのは同期が男の先輩に恋しようと自分は無関係と思っているからだし、そもそもこれは強引に押したら落ちるとかいうレベルを超えている気がする。
「でもこれレイプ、っすよ、ね」
 そうだなとあっさり肯定が返るとは思っていなかったが、だからこそ、わかったらもうヤメロが通じる相手ではないと思い知らされる。
 その後は話は終わりとばかりにキスが再開されてしまったが、そのキスが終わる頃にはあちこちメロメロにされていて、ケツ穴を擦られながらいつの間にか勃起していたペニスを握って扱かれるまま気持ちよくイッてしまって呆然となった。その頃にはすぐ傍らで同じように致していた二人も終えていたようで、同僚がやはり呆然とした顔でこちらを見ていたから、なんだか酷く恥ずかしい。
 同僚があっさり先輩に押し倒されていた件も含め、なにもかもが想定外のメチャクチャな夜だった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁