雷が怖いので27

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 連れて行かれたのは防音室ではなく浴室だった。防音室の奥には簡易なシャワーブースが設置されていて、普段はそちらしか使わないので、もちろん寝室同様この場所も初めて入る。
 なぜ、と思ったら、浴槽に湯が張られていた。抱かれ終わった後、ゆっくり湯に浸かれるようにと始めから準備してあったらしい。
 使うかどうかはともかく用意しておいて良かったと言われながら、濡れきった服をあっさり剥かれて、ちゃんと温まって来いの言葉と共に浴室に押し込まれそうになって、慌てて相手の服を握った。
「一緒に、入らないの?」
 だって同じだけ相手もずぶ濡れだ。
「俺はいい。ここまで運ぶのに濡らした廊下も拭かないとならないし」
「そんなの、後まわしでもいいでしょ。俺も手伝いますし。そのままじゃあなたが風邪ひきますよ」
「大丈夫だ」
 棚に積まれたバスタオルを一枚取って濡れた体を拭き始めるが、まずはその濡れた服を脱ぐべきだと思うし、何とも言えない違和感に目が離せない。
「いいからお前は早く風呂に入れ」
 さっさと行けと言いたげに手で払う仕草をされたが、おとなしく従う気にはなれなかった。
「そんなに、俺に肌を見られるの、嫌、ですか? 肌に触られるのが嫌なんじゃなくて、見られるのが、ダメ?」
「お前と違って、綺麗な体じゃないからな」
 ああ、当たりだ、と思う。頑なに服を脱がないのは、その服の下に、見られたくない何かがあるのだ。
「何か、傷跡でも……?」
「まぁ、そんなところだ」
「気にしません、と言っても?」
 自嘲気味な笑みとともに、無理だよと一蹴された。
 胸の奥がざわついて仕方がない。その傷跡を見たいという衝動。だって彼が彼自身についてを語ることは殆どなかったから、この機会を逃したくなかった。少しでももっと何かを聞き出せないか、引き出せないか、食らいついてしまう。
 握っていた服の裾を、さらにきつく握りしめた。
「脱いで、ください。そして一緒に、風呂に入って」
「だから、」
「お願い、します。何をしたら、脱いで、くれますか?」
 なんでもすると言ったら少し眉を寄せて、そういう発言は自分の首を絞めるぞと注意されたが、だって彼を動かすために差し出せるものは、相変わらずこの身一つしか無いのだから仕方がない。そう言ったら、なんでそこまでと呟くように返された。そんなの、決まってる。
「好きになったって、言ったじゃないですか。俺を逃してくれないなら、せめて、あなたのことをもっと、教えて下さい」
 本気が伝わるように、まっすぐに相手の目を見つめて言い切れば、諦めに似たため息が落ちた。
「わかったからその手を離せ」
 言われて手に込めていた力を抜けば、相手は濡れきった服を次々と脱いでいく。露わになっていく肌の痛々しさに息を呑んだ。
 こちらの反応に、相手はわかっていたと言いたげで、やはり自嘲気味な笑みを口元に浮かべている。
「あちこち汚くて引いただろう?」
「そんな、こと……」
「これらが何の傷かわかるか?」
「SMの、プレイ……?」
「そうだ。といっても、火傷の痕みたいになってるのは、刻まれたイレズミを消した分も混ざってるがな」
「イレズミ……」
「消えない所有印だよ。むりやり消しても、こうして痕が残る。まぁ、金積めばあれこれもうちょい綺麗にもなるんだろうけど、こんな事になるならやっておけば良かった」
 怖いかと聞かれたので、慌てて首を振って否定した。何に対する怖いなのかもわからないし、この体を見せられて感じたのは驚きと、後はどちらかと言えば憐憫だ。だって絶対に、彼がそうされたくて出来た傷じゃない。
「しかしこれを見たら、もう、一緒に風呂に入ろうなんて言う気にはならないだろ?」
 なんでそんな目にと聞いていいかをさすがに躊躇っていたら、そんな言葉と共にバスタオルで体を拭き始めるから、やっぱり慌ててそのバスタオルへ手を伸ばした。
「一緒に、風呂に入って」
 バスタオルの端をギュッと握って、譲らない気持ちで告げれば、小さなため息の後でわかったと返される。しかしホッと安堵の息を吐いたのもつかの間、パチンと小さな音が何度か響いて、浴室も今いる脱衣所もほとんどの明かりが落とさた。
 真っ暗にならなかったのは、幾つかの間接照明が残されたままだからだ。さすが金持ちのバスルームはお洒落だ。などと呑気に感心している場合じゃない。
 電気を消された理由はわかっていたから、目の前の体そのものへ手を伸ばし、抱きついてやった。真っ暗ではないから、優しい灯りの中に浮かび上がる傷をそっと撫でて、更には唇を寄せてキスをする。
「なにをしてる」
「怖くもないし、汚くもない。でも、言っても信じてくれそうにないから」
 戸惑いの強く滲む声に、俺を信じられたら電気つけてと言い捨ててキスを繰り返せば、暫くしてまたパチンという音が幾つか響いて明るくなる。顔を上げての言葉に従えば、噛み付くようなキスが降ってきた。

続きました→

 
 
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雷が怖いので26

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 ポツリポツリと落ち始めた雨粒は、すぐに勢いを増して激しい土砂降りに変わる。それに伴い雷も、当然のようにかなりのスピードで近づいていた。
 怖い怖い逃げ出したい。せめて屋根のある場所へいきたい。家の中に入りたい。安全な場所へ逃げ込みたい。耳をふさいで目を閉じて小さく蹲って、雷をなるべく感知しないように務めるためには、ここなら多分安全だと思える環境があってこそだ。
 安全な場所ですら極力排除したい存在なのに、こんな路上でどうしろというのか。雷が通り過ぎるまでをやり過ごす方法がわからない。むしろ空から目を離せなかった。耳を澄まして、音の到達時間から雷との距離を必死で計ってしまう。
 空を凝視したまま動けずに居ても、頭の中は様々なことが駆け巡って混乱状態だった。理由を話して、家に入れてとお願いすればいいというのもわかっている。けれど正直に、あなたを好きになったと言うのも怖い。だって上手に言いくるめられて、バイトを継続してしまう未来しか見えない。知られたくない。この気持ちに値段をつけられたくはない。
 その反面、理由を話して、助けを求めて、雷から守るように抱きしめて欲しいとも思う。随分と怒らせてしまったから、きっと逃げ出したおしおきもされるだろう。それを想像すると、怖いと同時に甘い期待も湧いてしまう。好きだという気持ちごと全てを差し出して服従してしまえば、好きだとか恋だとか余計なことを考えずに、今まで通り恥ずかしくて気持ちがよい事をされて高額時給が発生するバイトを続けられるだろうか。
 色々な恐怖に、気持ちが消耗していく。下着までじっとりと濡らす雨に、体力も消耗しているのがわかる。雷もどんどんと迫っていて、追い詰められても居た。
 もう、言ってしまえばいい。そう思ったのに、いざ言おうとしても、言葉を発することは出来なかった。喉が詰まって声が出ない。
 体は緊張しきってガチガチだった。このままだとここで雷が通り過ぎるのを耐えなければならないと気づいて、膨らむ恐怖に体が小さく震えだす。ガチガチに緊張していても、震えてしまう体がいっそ不思議だった。
「ずいぶん強情だな。それとも、そんなになってまで、俺から逃げたいのか」
 違う。違う。違う。けれど口から漏れるのは不規則で耳障りな汚い呼気ばかりで、首を振って否定をすることも出来ない。
 とうとう溢れ出した涙は、激しい雨と混ざって流れ落ちていく。ますます呼吸が乱れてしゃくりあげれば、掴まれていた肩をぐいと引き寄せられて抱きしめられる。
「なぁ、何がそんなに嫌だった? 俺は何を失敗した? 頼むから、教えてくれ」
 身長差があるので声は頭上から降ってきた。力なく、困り果てた、懇願混じりの声に、心臓がキュッと締め付けられる。
「ち、がう」
 声が出た。小さな呟きは、顔を押し付けている相手の胸に消えてしまったけれど、それでも言葉が出たことでガチガチだった体が少しだけ緩んだようだった。
 相手の背中に腕を回して抱きつけば、ますます安心が胸の中に広がっていく。ほぅ……と息を吐いてから、体を密着させた状態のまま、ゆっくりと顔だけ上向けた。
「違う。俺が、勝手に、あなたを好きになっただけ。恋人にはなれないってわかってるから、仕事として抱かれるのは嫌だって思ったから、苦しくなって、逃げただけ」
 辺りはとっくに夜の暗さで、近くの街灯の明かりも、俯く相手の顔を照らしてはくれないのだけれど、それでも、驚きに目を瞠ったのははっきりとわかった。
「逃げて、ごめんなひゃぁっっ」
 最後まで言い切る前に、鋭く光った雷に慌てて相手にしがみつく。緊張がほぐれたのと、空を見ていなかったせいで、盛大に反応する羽目になってしまった。
 しかもそう間を開けず、ゴロゴロなんて生易しいものではなく、ピシャンガラガラと獰猛に追い立ててくる音が響いたから、先ほどの比ではなく体が震える。怖さを少しでも紛らわそうと、ぎゅうぎゅう抱きついてしまえば、強い力で抱き返されると共に体がヒョイと宙に浮いた。

続きました→

 
 
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雷が怖いので25

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 見送られることなく玄関を出るのは初めてだ。こんな一方的な別れ方で良いのかと後ろ髪を引かれる思いはあるものの、それらを振り切るように玄関扉を押し開く。
 寝室の薄暗さが増していた事からもわかってはいたが、外はだいぶ暗くなりかけていた。夜が近いのももちろんあるが、空に広がる黒い雲のせいで余計に暗く感じるのだろう。
 天気予報は曇りだったけれど、今にも雨が降りそうだと思う。
 降られる前に急いで帰ろう。そう思いつつ踏み出したところで、空がピカッと明るく光った。
 近くはない。それでも体が硬直するには十分の衝撃だった。
 やがてゴロゴロと小さな音が聞こえてくる。やっぱりまだまだ遠そうだ。けれど、先程光った方向を見上げながら、立ち尽くした足は動かない。
 自宅のある方角だから、それではまるで、雷雲に向かって歩いて帰るようなものだ。
 無理だ、と思う。ここに留まるわけにはいかないのに、歩き出せない。なんでこんな時に雷がと思うと泣きそうだった。
 どうしようどうしようどうしよう。雷は先程光ったきりなのに、既に体が震えてしまうのは、雷が通り過ぎるまでどれくらいの時間を要するか考えてしまったせいだろう。
 雷から離れる方向へなら、足が動くだろうか。自宅とは反対方向の駅へ向かって走るのはどうだ。駅にまで辿り着ければ、後はどこかの店に入ってやり過ごすことが可能かもしれない。
 よし、そうしよう。そう思って足を踏み出しかけたところで、二度目の雷が光った。
「ひっっ」
 小さな悲鳴を飲み込んで、歯を食いしばる。大丈夫、まだ遠い。
 動くなら今のうちしかないのだから、迷っている暇はない。頑張れと自分自身を鼓舞しながら、玄関先を飛び出した。その直後、ドアの開く音が聞こえた気はした。
「待てっ!」
 背中に届いた強い静止の声に、走りかけた体がとまる。彼の言葉に従うように、心も慣らされているせいだ。しかし、足を止めたのはほんの数瞬だけだった。
 雷からも、彼からも、逃げるために再度走り始める。足には自信があったから、追いつかれる可能性は低い。そう思っていたのに、追いかけてきた彼にあっさり捕まってしまった。
 彼が予想外に早かったからではなく、彼にさんざん抱かれたあとの体が、思うように動かなかったせいだ。少し眠ったとはいえ、それで全力疾走出来るほどに回復しているはずがないと、少し考えればわかることだった。
「一体どこに行く気だった?」
 両肩を捕まれ向きを変えられ、見上げた彼はやはり怒っているらしい。
「というか、なんで無断で抜け出した」
「それ、は……」
「一緒に眠っちまってたのは俺が悪いが、何か用事が出来たにしろ、起こさず出ていくことはないだろ」
 眠っていたからこそ、好都合とばかりに無断で抜け出しただなんて、言えるわけがない。口を閉ざして俯きかけたが、それも許して貰えなかった。肩を掴む手が片方外され、今度は顎を捕まれむりやり上向かせられる。
「つまり、俺から、逃げようとした。そうだよな?」
 理由は? と聞かれて、やっぱり何も言えなかった。
 強制的に見上げる彼の背後の空が光って、体が大きく跳ねる。背後を振り返った彼が、雷か? と呟くのと同時くらいに、少し強めにゴロゴロと音が鳴り響いた。さっきよりも音が近づいている。
「黙って逃げ出されるような事をした心当たりがないんだが、理由が言えないってなら、言えるまでここでこうして、お前を捕まえたまま立っていようか」
 ニヤッと笑った顔の意味はすぐにわかった。
「い、いや、だ……」
「正直に理由を話すのと、この屋根も何もない道に突っ立って雷が通り過ぎていくのを耐えるのと、どっちでも好きな方を選べよ」
「そ、んなの」
「ああ、ご褒美の提示がなかったよな。理由が話せたら家に入れてやるし、雷が酷いようならまた防音室を使ってもいい。そしてもし、雷が聞こえなくなるまで耐えたら、もう理由は聞かない。逃げだすくらいだし、バイトも終了な。ほら、どうする?」
 意地の悪い顔で、意地悪な提案をされて、泣きそうになる。泣いたって、彼を喜ばせることはあっても、彼が気持ちを変えてくれることはないとわかっているのに。どちらかを選ばなければ、本当に、この場所から動くことは許されないのだ。
 彼を見上げて上向く顔に、ポツリと水滴が跳ねる。とうとう雨が降り出した。

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雷が怖いので24

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 意識が浮上して目を開けたら、そこは彼の腕の中だった。間近で見つめる彼の寝顔に、驚きで息が止まるかと思った。
 息を殺すようにしてひっそりと、深呼吸を繰り返す。
 目を閉じる直前にかけられた、少し眠るか? という言葉は自分ひとりに対するものだと思っていた。声の感じから、一緒に眠ろうというような話ではなかったはずだ。
 目覚めたときにそばに居てくれるこれも、やっぱり目一杯の甘やかしなのだろうか。だとしたら、この甘やかしはいつまで続くんだろう。
 多分きっと、今回の報酬を貰うまでなんだろうと思って、胸の中がシクシクと痛い。
 ベッドに降ろされた最初、お前はこういう方が好きそうだと言っていたし、それは事実だと思う。まるで恋人同士のように甘やかされるとたまらなく嬉しい。でもこれは、好きそうだからそうしてくれているというだけの、初めて抱かれるという場面に際するサービスに過ぎないのだ。
 お前が好きそうだからと前もって口にだすのは、つまりは、勘違いするなと言う釘刺しだったんだろう。そんなことを言われなくたって、元々期待なんて出来る関係にはないのに。でもやっぱり、言って貰っていて良かったのかも知れない。
 だってこんなの、知らないままなら期待しそうになる。目一杯の甘やかしを、ここまで自然にあれこれと重ねられたら、わかっていても誤解したくなる。もしかして、少しくらいは、この想いが報われる可能性があるのかと思いたくなる。
 そんなわけ、ないのに。
 甘えるように、けれど起こしてしまわないように、そっと目の前の男に擦り寄った。んっ、と小さな吐息が一つ漏れた以外は、規則正しい呼吸が続いている。起きてしまったらどうしようという気持ちはやはりあったので、ホッとしながら更に顔を彼の胸元に押し付け、浮かび始めた涙を彼の着るシャツに吸わせてやった。
 期待できるような関係でないことは、このきっちりと着込まれたシャツからだって明らかだ。あなたも脱いで、とは結局言えなかったけれど、相手の肌に包まれるように抱かれたかったなと思う。
 普段からあれこれされまくるばっかりで、彼への奉仕的なことは一切求められたことがない。ペニスだって先程始めて目にしたし、それだってほんの僅かな一瞬だけだったくらい、彼は素肌を晒さない。されるのが好きじゃないと言っていた言葉はきっと本当で、それには肌に直接触れられる事も含まれているのだと思う。
 だから仕方がない。そうは思うのだけれど、もし本当に恋人のような関係なら、こちらから触れることも許されるのだろうかと考えてしまうのを止められない。
 目の前のボタンを一つずつ外して、はだけた胸元から手を伸ばして、その肌に直接触れたい。そんな衝動をどうにかこらえ、ひっついていた体をそっと離して、ゆっくりと、今度は相手の唇に自分の唇を押し付けた。
 自分からキスをするように求められて応じたことはあるけれど、自分の意思で、衝動で、許可もなく彼の唇に触れたことはない。
 寝ているからと好き勝手しすぎている自覚はあって、起きたらもしかして怒られるのかなと思う。それとも、今日のうちは目一杯の甘やかしでこれも許されるだろうか。
 どっちだっていい。だってもうそんなの関係ない。だってもう、無理だから。
 こんな風に甘やかに抱かれて、なのに次回からはプレイの一部として、彼のモノが挿入されるのなんてきっと心が耐えられない。慣らされた体は、そんな事をされたって気持ちよく達してしまうのだろうけど、彼に抱かれることで体が覚える満足感や多幸感は、行為の後まで続かないとはっきりわかってしまった。
 優しく抱いてもらったのを最後に、この人と会うのはもう終わり。それでいいと思った。
 今回のこれを、いつも通りのバイトだなんて思いたくないから、今回は封筒を受け取らずに帰ろう。むしろ、このまま黙って帰ってしまおうか。
 だって目を覚ましたこの人と、会いたくない。話したくない。今は、特に。
 バイトを辞めることは、後日電話で伝えればいいかと考えながら、そっとベッドを抜け出した。

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雷が怖いので23

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 下手に大丈夫だなんて言っても、きっと強がりは見抜かれてしまう。あやされながら正直に言ってご覧と促されたら、縋るように好きだと口に出してしまうかもしれない。だから、感じ過ぎてなんだか怖いと伝えた。
 入れられただけで簡単に達してしまうという痴態を晒した後なので、きっと信憑性も高いだろう。というか、それだって不安の一部ではあるのだ。別に嘘を言っているわけじゃない。
 うんと甘やかしてやるの言葉通り、彼は優しく笑いながら、不安を払拭させるためか何度も頭をなでてくれた。
「俺は、俺に抱かれて、今までになく感じるお前を、見たいよ。怖いくらいに感じるのは、嫌か?」
 ふるふると小さく首を横に振る。だって感じすぎて怖い瞬間なんて、今までも何度もあったのだ。それを耐えて乗り越えれば、その先にもっと大きな快感が待っていることを、身をもって知ってしまっている。
「怖いの、最初だけ、だから」
「うん、いい子。ちゃんと、怖いの塗りつぶすくらいに気持いいばっかりにしてやるから、怖いの、少しだけ我慢しような」
 彼はこの体を持ち主である自分以上に知り尽くしているのだから、その言葉に嘘はないだろう。
 早くキモチイイばっかりで、何も考えられなくなればいいなと思った。好きだとか、嬉しいとか、だからこそ切なくなってしまう気持ちまで、全部キモチイイで塗りつぶして欲しい。
「お願い。なるべくはやく、うんと、きもちよく、して」
 甘えるようにねだってみたら、今度は気持ちよすぎて苦しいって言うことになるぞと苦笑された。でも、ダメとは言われなかった。つまりそれは、彼の中にも選択肢の一つとして存在している。
「怖いより、そっちが、いい」
「わかった。ならしっかり俺に捕まってな」
 はいと返して、ずっと近いままで居てくれた彼へ、そっと腕を伸ばした。そのまま首に腕を回して、ぎゅうときつく抱きつけば、動くぞの宣言とともに彼が腰を揺すりだす。
「お前のいいところをいっぱい突いて擦ってやろうな」
「ひぁああっ、あああ、ああ、ゃあぁ」
 そんな言葉と共に的確に、中のいい場所を激しく擦られ出して、悲鳴に近い嬌声を上げた。すぐにまた、頭の中まで熱く白くなっていく。
「やっ、やあ、きもち、ぃ……イ、く……いっちゃう」
「ん、いいよ。今日は我慢しなくていいから、好きなだけイきな」
「あ、ああ、……い、っくっっ……ん、あ、……待っ、て、イッた。いった、からっっ」
 一回止まってという訴えは、甘くて柔らかな声音の、ばかだなで一蹴された。
「怖いより、苦しい方がいいんだろ? 大丈夫。お前の体はすぐにまたイけるから」
 気持ちいいのだけ追いかけなと示唆されて、必死でうなずき、言われた通り気持いいを探して追いかける。体位を変えられると、キモチイイの場所も微妙に変わる気がした。
 望みどおり、余計なことを考えられないような状況で、吐精を伴うものもそうでないものも含めて散々イかされまくって、結局、好きなだけが何回になったのかはさっぱりわからない。途中意識が飛んでた時間もあったようだし、ずっとキモチイイ絶頂感が止まらい状態に陥った時間もあった。
 はっきりわかるのは、彼がイッたのは最後だけで、しかも外出しだった事くらいだ。ゴムを付けずに入れられたのはわかっていたから、そのまま中へ出されるのかと思っていた。
 なんで中に出してくれなかったの、とは聞けなかった。中に出されたかったと残念に思ってしまったことに、少なからず衝撃を受けていたからだ。中に出されたからって妊娠できるわけでもないし、ただただ後処理が面倒になるだけだという知識だってもちろんあるのに。
 何も考えなくて済むような、気持ちいいばっかりの初めてを終えたのに、終わってしまえば結局、目を逸らしたものたちと向き合う羽目になった。気持ちよく絶頂を繰り返した満足感や多幸感は、行為の後まで残らなかった。
 彼の甘やかしは続いていて、疲れきった体をいたわるように、温めた濡れタオルで全身を拭き清めたり、マッサージらしきこともしてくれたのに、気持ちはちっとも浮上しない。ありがとうございますの言葉は上滑りで、疲れ切ってるみたいだからこのまま少し眠るかという苦笑交じりの言葉に、すぐさまそうしますと返して逃げるみたいに目を閉じた。

続きました→

 
 
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雷が怖いので22

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 約束通りちゃんと気持ち良くしてやるし、ここまで良い子で待てたご褒美にうんと甘やかしてやろうなと言って、彼がベッドへと乗り上げてくる。覆いかぶさるようにして近づいてきた顔は、良く見るニヤリとした笑顔ではなく、柔らかに笑んだものだった。
 見惚れていたら唇が触れる間際にクスリと笑われて、ドキドキはどんどんと加速していく。さすがに期待が膨らんで、だから胸の奥に感じるかすかな痛みは無視をした。
 うんと甘やかすの宣言通り、愛しむように肌へと触れてくる唇や指先。お尻以外はそこまで開発されていないはずなのに、どこを触られてもビリビリと強い快感が走ってしまうのは、好きな人に優しく触れてもらえる喜びからなのだろうか。それともやはりこの人が、こういった行為に長けていて上手いのか。玄関先でへたり込むほど玩具で焦らされたのだから、体は興奮しきっているはずで、結局はそのせいだったりするのだろうか。
 ついそんな事を考えてしまうけれど、でも余計な事は考えたらダメだ。
 目の前の男が好きなのだという気持ちと向き合ったら泣いてしまうので、なるべく頭の中を空っぽにする。気持ちが良いということにだけ集中して、相手に体ごと全部預けてしまうことに慣れている。
「ふ、…っぁ、……ぁっ、だ、…め、イっ…ちゃう」
「そうだな。ナカもとろっとろで、イかせてって必死に絡みついてきてる」
 お尻に入れていた玩具の代わりに、彼の指が入ってくると、さすがにもう耐えきれない。気持ちが良い場所をもっと弄って擦って欲しくて、はしたなく腰が揺れてしまう。
「ん、んっ、イかせて、お願い、も、イかせて」
「可愛くおねだり出来たらな。今回はちゃんと応えてやるから、言ってみな?」
 なにをと聞こうとして、けれど問う前に気づいてしまった。
「ち、ちんちん、入れ、て」
「それだけ?」
「ちんちんズポズポして、おしり、きもちく、して。おれに、あなたを刻んで、教えて。お願いだから、おれを、抱いて」
 思いつくまま重ねる言葉は震えていたかも知れない。でも思い浮かんでも、言えない言葉もあった。だって、彼のものになるというのが奴隷やペットになることを指すのなら、あなたのもにしてとは言えるわけがない。
「よく言えました。じゃあ、俺のちんちんでいっぱい気持ちよくイこうか」
 ちんちんって可愛らしさはないけどなと言って、くつろげたスラックスから勃起したペニスを取り出した。初めて見た彼のペニスは確かに大きい。しかしじっくり観察する余裕などくれるはずもなく、それはすぐにアナルに押し当てられてしまう。
「入れるぞ」
 頷けばアナルを広げて熱い塊がミシミシと押し入ってきた。大きくて苦しいとは思うのに、それ以上に、焦らされすぎた体が待ち望んでいた刺激で快感の波が押し寄せる。
「んああああああっっ」
 頭の中が真っ白になって焼き切れるような気がした。ジンワリとした痺れが身体中を駆け巡ったままピリピリと痺れ続けている。
「あ、ああ……あぁ……」
 頬を軽くペシペシと、撫でるに近い感覚で叩かれて、霞んでいた視界が開けてくる。同時に聞こえてきたハァハァと荒い息遣いが、自分の発するものであることも自覚した。
「お前、想像以上だよ」
「んんっ」
 柔らかに唇を食まれるようなキスと、お尻の中の圧迫が増したのとで、痺れが増して甘く鼻を鳴らしてしまう。キスはすぐに終わったけれど、顔は近いままで、相手は苦笑に喜びを混ぜ込んだ表情をしていた。
「ど、ゆ…、いみ」
「さすがに入れただけでイくとは思ってなかったって話」
 それはこっちも同じだ。しかも玩具でいかされるのより、ずっとずっと気持ちよく激しくイった。でもそれは仕方ないだろうとも思う。だって、ずっとずっと、この日を待っていたのだから。
「だ、って……」
「ずっと待ってたんだもんな」
 はっきりと指摘されて、恥ずかしい上に胸が苦しい。
 なんでこんなにも抱かれたいのか、だってこの人は本当のことを知らない。好きだから抱かれたくて、好きだから嬉しくて、好きだからこんなにも気持ちが良いのだと、そう思ってしまう気持ちを知らない。
 好きという気持ちがなくても、もしかしたら同じように気持ちよくイかされてしまうのかもしれないけれど。それくらい、この人はエッチなことが上手くて、体は慣らされたし開発されてもいるけれど。でも、気持ちがない状態との比較なんて、出来ないのだから仕方がない。
 好きだなんて気持ちを意識したくないのに、体の中に感じる彼の熱があまりに嬉しすぎて、好きだという気持ちが胸の中にあふれてくる。
 ああ、どうしよう。このまま抱かれ続けたら、どうなってしまうんだろう。
「大丈夫か?」
 こちらの不安や戸惑いはやはりすぐに伝わるらしい。けれど、どう伝えていいかわからないどころか、これは伝える気のない想いが原因だ。そして、たとえどうなったとしても、自分からもう止めてなんていう気はなかった。

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