知り合いと恋人なパラレルワールド3

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 何の進展もないまま数日が経過し週末がやってきた。
 先輩は大学をずっと休んでいるが、休みの理由は、家庭の事情で祖父母の田舎へ行っている事になっている。それには、電波の届かないド田舎なので携帯は通じない、というもっともらしいオマケも付いている。
 実際はずっと自分の部屋に匿ったままだった。大学近くのアパートなので、下手に外出して誰かに見られるのも面倒で、気軽に出歩くことも出来ない。
 こちらへ来てしまった先輩と、向こうの自分とはその後も頻繁にメールをやり取りしているようだけれど、その内容はほとんど聞いていない。
 そんな状態の先輩が、週末になってようやく動くことに決めたらしい。というよりは、今後暫く、もしくは最悪このままずっとこの状態が続く可能性があることを、仕方なく受け入れたようだった。
 いつまでも恋人でもない後輩宅へ居座り続けるのが申し訳ない、という気持ちもあるんだろう。まず最初にしたのは鍵交換の交渉と2台目の携帯の新規購入だった。
 学生証も免許もあったし、クレジットカードや銀行のキャッシュカードは問題なく使えたので、それらの作業はスムーズに進み、先輩は世話になったの言葉と合鍵を1本残して自宅へ戻っていった。合鍵を預かったのは、もしまた突然入れ替わるようなことがあった時に、こちらへ戻ってきた先輩に渡すよう頼まれたからだ。
 ホットする反面、どこか寂しいような気持ちになってしまうのは、先輩と暮らしたほんの数日で、先輩に心惹かれるようになっていたからなんだろう。
 大して広くもない部屋の中、先輩と過ごす時間は心地が良かった。
 翌週から先輩は普通に大学へ通いサークルにも顔を出すようになった。平気そうに振舞っているが時折やはり憂いた顔をしている事もあり、何かと気になり自分から話しかける。
 内容が内容なので、結局どちらかの部屋へ寄って近況を聞くことも多く、共に過ごす時間は以前に比べて格段に長くなった。事情を知らない周りは急に懐いてどうしたと、多少驚いても居るようだが、事情は当然説明できないので、話してみたら気が合ったと言って濁している。
 先輩の話によれば、授業内容や周りの人間に多少違いがあるものの、基本的には問題なく過ごせているらしい。向こうとのメールは今も変わらず頻繁に続けているようで、向こうへ飛んだ先輩も、同じように向こうに馴染んで生活出来ているらしいとも言っていた。
 思うところは色々とあるだろうけれど、どこまで踏み込んで聞いて良いのかはやはり迷うことも多くて、結果、先輩の様子見のつもりが自分の話ばかりしている気もする。大変なのはどう考えても先輩の方なのに、他愛無い相談にも丁寧なアドバイスをくれたり、くだらない話を振っても笑って付き合ってくれた。
 ますます心惹かれていることには気づいていたが、走りだした気持ちを止める術なんて知らない。
 別の世界の自分とは恋人なのだと聞かされていたから意識した、という可能性はもちろんあるだろう。そもそも男を恋愛対象としたことがなかったから、それがなければ、気の合う良い先輩止まりだった可能性も高そうだ。
 先輩は向こうの自分とこちらの自分を、しっかり分けて別人として見てくれている。けれどふとした瞬間に気づいてしまう、優しい瞳や、柔らかな笑みや、切なげに寄る眉。
 それらは自分を通して恋人に向けられたものであって、決して自分自身へ向けられたものではないのだ。それに気づいた時のなんとも言えない切ない気持ちは、やはり恋愛感情によるものなんだろう。
 好きな人に既に想い人が居るという状態は珍しい事ではないかもしれないが、それが別世界の自分自身というのは珍しいどころの話じゃない。ライバルが自分自身だなんて、馬鹿げてる上に遣る瀬無いことこの上なかった。

続きました→

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

 
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