Eyes3話 屋上で(美里)

>> 目次  >>1話戻る

 

 背後で閉まる扉の音と、自分の溜め息とが重なる。平静な顔をして教室に戻る気にはなれず、チラリと腕時計を確認してから屋上へ向かった。
 昼休みが終わるまでにはまだ暫くの余裕がある。こつさえ掴めば簡単に開いてしまう錠を外し、少し重い金属の扉を押し開け、冷たくなってきた風の吹く外へと踏み出した。
 正面に見えているフェンスへ向かってまっすぐ歩いて行く。けれど、景色を眺めたい気分ではなかったから、フェンスに寄り掛かるようにして座った。
 この屋上でも、体を重ねたことがない訳じゃない。出入り口の扉のちょうど真裏で、壁に手をつかせた雅善を、後ろから抱いた。後ろからまわした腕で、少しでも、雅善にも快楽を与えようとしたのだが、酷く嫌がられたのを憶えている。
 抱かれたいと言って誘うくせに、感じている顔なんて、見せたことがない。
 
痛みをこらえているのがわかる。
泣きそうな顔をしていることがある。
そのくせ、誘う回数は増えていくばかりで。
 
唯一幸せそうな顔を見せる瞬間があるとすれば、
それは自分が達した後。
ホッとしたような、微笑。
    
抱かれたいんじゃなくて、
本当は、俺をイかせたいだけなんだろう?

 
 誘われて、煽られて、感じないわけがない。けれど、目に見える景色があまりにも痛くて。溜め息の数ばかりが増えて行く。

>> 次へ

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です