エイプリルフールの攻防3

1話戻る→   最初から読む→

 彼の住まいとは片道三時間以上の距離があるとわかっていながら、一度帰って出直すという彼を引き止めることはしなかった。
 引き止めたところで、どう接していいのかわからないというのももちろんある。でも一番はやはり、彼の言葉を信じたい気持ちとともに、またエイプリルフールだと言って手のひら返されるのを恐れる気持ちがあったからだ。もし彼の言葉がまたしてもエイプリルフールの嘘なら、明日彼が来ないというだけで済む。彼の前に、これ以上傷つく姿を晒さなくて済む。
 もちろん、自分だけの片想いじゃないのかもという期待と、全ての本当とやらに対する不安もあった。
 それらを抱えながら気がかりで憂鬱な時間を過ごし、だったらさっさと眠って明日にしてしまえと部屋の明かりを落として布団に潜ってみたものの、結局眠れずに何度も寝返りを繰り返す。
 そんな中で携帯電話が鳴ったものだから、心底驚き布団の中で体が跳ねた。
 発信者は登録されていない。表示されている見覚えのない電話番号に、出るかどうかを迷ったものの、もしかしたら彼なのではという期待で恐る恐る通話ボタンを押した。
「もしもし」
『出てくれてよかった』
 耳に届く心底ホッとした声は、やはり彼のものだった。
「何か、あった?」
『日付越えたから、好きって言っておこうと思って』
 朝まで待てなかったと言いながら、電話の先では相手が苦笑している気配がする。
「え?」
『ずっと、お前が好きだった。子供の頃から、お前が好きだったんだ。そう言ったら、信じるか?』
 驚いてすぐには言葉が出なかったけれど、相手がこちらの言葉を待って黙っているので、考えながらゆっくりと口を開く。
「ちょっと信じがたいけど、でも、だからこそ、嘘じゃないのかなとも思う」
 もうエイプリルフールは過ぎたわけだしと言ったら、すぐにずっとごめんと返ってきた。
『会ってからゆっくり話すつもりだったけど、今、話しても平気か? それともやっぱりそっち行ってからのがいいか?』
「電話のが、いいかな」
 どうせ眠れる気もしないと思いつつ言えば、じゃあ聞いてくれと言って話しだす。
『好きだって気持ちはあるのに、その気持ちがあるからか、お前とは友人のようにすらなれなくて、イライラしておかしな態度ばっかり見せてきた』
 小学生の頃だったが初めて好きだといった日を覚えているかと聞かれて、覚えていると返した。
『思った通りビックリされたのに、バカみたいに腹が立ったんだ。お前が俺をなんとも思ってないどころか、むしろ嫌われてるって知ってたのに、でも、突きつけられる現実にやっぱりいっちょ前に傷ついてた。最初からエイプリルフールを選んで告白したくせに、嘘に出来たこともそれにお前が怒るのも、凄くホッとした』
「あれも、偶然会ったから揶揄ったってわけじゃなかったのか……」
『そう、違う。でも自業自得でショック受けて、その後数年はもう二度とやらないって思ってた。お前との関係も、なんとかせめてすぐ険悪にならない程度にはしたくて頑張ってたけど、その甲斐あってか中学の頃は比較的穏やかだったよな?』
「確かに。でもそれをやめたってことは、気が変わったって事なんだろ?」
『だってお前に好きな女が出来たから』
「えっ?」
『お前に好きな子が出来たって知って、なんか居てもたっても居られない気分になって、どうしてもお前に好きだって言いたくなった。だからまた、嘘に出来るようにエイプリルフールを選んだんだよ』
 とにかく好きって言いたいだけだったはずなんだけどな、と相手の続ける言葉に、ただただ耳を傾ける。
『お前は驚きながらも、ちゃんと俺の話を聞いてゴメンとまで言って振ってくれたのに、逆にその対応で諦められないなと思ったんだ。というか、お前の優しい対応に味しめたというか、エイプリルフールにならお前に好きって言えるんだって、思っちまったんだよな』
 たとえ嘘としか思われなくても、年に一度だけでも、お前に好きって言っていいんだって事実が魅力的すぎたと、相手の声が申し訳無さそうに響いた。
『お前を好きって気持ちがどうにも出来ないのは、もうとっくに気付いてたからな。年に一回くらいバカバカしい遊びに付きあわせたって許されるだろって思ってた。何もかも自分勝手なのは自覚してる。でもな、だんだん欲深くなっていくんだ』
 自意識過剰かもしれないけど、高校三年頃からお前に意識されてるかもって思うようになったと言われて、思わず正解とこぼしそうになった言葉を慌てて飲み込んだ。
『お前が進学してそのアパートに住むようになってすぐ、押しかけた俺をあっさり部屋に上げただろ。しかもお前からの好きって嘘を待ってるって言ったら、やっぱりあっさり好きって言うから、あの時実はかなり驚いた。嘘でも言えるかって返ってくると思ってたから。もしかして少しは俺を好きって気持ちがあって、お前も俺同様、嘘ってことにして好きって言ってるんじゃないかって頭をよぎった』
 答えたくなきゃ答えなくてもいいが、当たってるかという問いに、少し迷ってから当たってると返した。相手はそうかと言って少し黙った後、また話し始める。
『でも今までが今まで過ぎだし、もし実は本当に好きなんだなんて話をしてふざけんなって振られてしまったら、もうこんな遊びすらできなくなる。それくらいなら嘘ってままにして、お前が好きって言ってくれる事を楽しもうと思った。これが俺の、全ての真実だ』
 年に一度だけの遊びってことに色々甘えすぎてたんだと言って、もう一度彼は本当にゴメンと謝罪の言葉をくれた。
 呆れるだろうと聞かれたので、呆れてるよと正直に返す。
「俺、お前を好きって思い始めてから先、この遊びのせいで結構泣いたからね?」
『すまん。俺に出来ることがあれば何でもする』
 じゃあ今から考えとくから、朝になったら覚悟決めてこっち来いよと言ったら、神妙な声がわかったと告げた。

続きました→

 
萌えたらポチッと応援よろしくお願いします。

1話完結作品/コネタ・短編 続き物/ビガぱら短編/シリーズ物一覧

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

  • なんだか楽しいのでもう少し・・。お願いします。
    甘々でも甘辛でも、ちょっと苦味入りでも。

    by るる 2016年4月6日 11:52 PM

  • るるさん、コメント有難うございます(^^♪
    かなりざっくり急ぎまくった展開だよなぁと思ってたのですが、なんだか楽しいと言ってもらえて嬉しいです。
    もう少しと言っていただけたのも嬉しいのですが、ゴールはこの二人がエッチする所かなと思っていたので、本日の更新分で一旦終了とさせて下さい。
    もしこの二人の話をもっとという場合は、コメント欄またはメールフォームから、もっと書いてとリクエストいただければと思います~

    by レイ 2016年4月7日 9:39 AM

コメントを残す




Menu

HOME

TOP