エイプリルフールの攻防4(終)

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 どんな覚悟を決めてきたのか、深刻な顔で玄関前に立つ相手を迎え入れたら、靴を脱いだ矢先に土下座が始まり唖然とする。
 慌てて立ち上がらせて、たくさん好きって言いながら優しく抱いてくれたらそれでいいよと言ったら、相手は随分と呆気にとられた顔をした。追撃で、泣いた分いっぱい優しくされたいと言えば、グッと体を引かれて抱き締められる。
「ごめん。本当に、お前のこと、ずっと好きだった。なのに泣かせてごめん。甘ったれたことばっかしてて、本当にごめん」
 繰り返されるゴメンの言葉を聞きながら、背中に腕を回して、その背をポンポンと軽く叩いてやった。
「も、いいから。それより早く、お前としたい」
 昨日から待たされてるんだからと言ったら、抱きしめる腕を解いた相手が、困惑を混ぜながらも何かを探るような顔で見つめてくる。
「何?」
「本気で、俺に抱かれる気でいるのか?」
「俺のこと、抱けそうにない?」
「そんなこと言ってないだろ。だってお前、去年俺にイかされて泣いたし、その、受け入れる側をするっていうのは、かなり体にも負担が掛かると思うし」
「昨日も言ったけど、今年、お前に抱かれておしまいにするつもりだったから、結構前から体は慣らしてる。だから多分、体は平気」
 慣らしてたという部分で、相手はまた随分と驚いているようだった。さすがに少し恥ずかしいなと思いながらも、相手の驚きを無視して続ける。
「もしお前が頷いて抱いてくれたとしても、それは俺ばっかり好きなセックスできっと辛いんだろうなって思ってたから、ちゃんと両想いで、好きって言われながらするセックスになるかもって思ったら、正直、早く早くって急かす気持ちばっかり強くなってる」
 正直な気持ちを告げて、お前が俺を好きだったって言ってくれたの本当に嬉しいと言いながら、驚いた顔のまま固まる相手へ自ら口付けた。そしてもちろん、自分から深いキスを仕掛けていく。
 すぐに応じてくる相手と舌を絡ませあっていたら、ふいに体が少し浮いて、慌てて口を離した。
「えっ、ちょっ…」
「ベッドまで運ぶだけだ」
「え、この状態で?」
「なら横抱きで運ぶか?」
 イエスもノーも返さないうちにさっさと姫抱きされて、照れるより先にあわあわと慌てているうちに、あっさりベッドの上におろされる。狭いアパートなので、運ばれる距離はめちゃくちゃ短かった。
「好きだ」
「俺も、好き」
 見下ろす真剣な顔にニコリと笑いかけて、早く来てという想いを乗せながら腕を伸ばす。
「お前が、好きだよ」
 唇が触れる直前、もう一度柔らかに囁かれた。きっと本気で、たくさんの好きと優しさを示しながら、抱いてくれる気で居るのだろう。
 胸の中に甘い何かが流れ込んできて、幸せだなと思った。

 
 
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「エイプリルフールの攻防4(終)」への6件のフィードバック

  1. 甘々ハピエン、ごちそうさまです。
    あぁん、おいしかったぁ~。

  2. るるさん、コメント有難うございます
    最終話に満足いただけたようで良かったです~(^O^)

  3. 久しぶりにこちらのお話を読み返して、ウワーと声にならない声を上げております。
    このお話の2話あたりの展開がめちゃくちゃ好きです……!
    エイプリルフール、私にとっては特に印象もなく過ぎてしまう1日なのですが、4月1日がエイプリルフールであることがこんなに切なく苦しいとは……と、読むたびに胸がギュンギュンします(´;ω;`)
    一度遊びにしてしまった以上、そこから抜け出せない、という泥沼にはまる感じもすごくよくわかります。

    すみません全然エイプリルフールの時期じゃないのに、好きすぎてコメントしてしまいました…(笑)
    この一ヶ月、レイさんがブログ更新されるのが本当に日々の楽しみでした。いつも本当にありがとうございます!
    来週からはまた新しいお話ということで、とても楽しみにさせていただいています。
    どうかご無理なさらず、これからもレイさんのペースで更新を続けてくださるとうれしいです。

  4. クロさん、読み返しありがとうございます。
    私もエイプリルフールはあちこちの公式さんお疲れさまです、以外のことは何もない(リアルな友人知人間で騙したり騙されたりな遊びはしない)一日ですが、創作世界くらいは色々起きててもいいよねと思って、ついついエイプリルフールをネタにした話を書きがちです。
    この、嘘ってことにしちゃった泥沼感、いいですよね〜
    攻めの方もすっごい泥沼ってるので、攻め視点書いてないですけど、大学3年目の時に、相手も自分に好意を寄せてくれてるんじゃという確信を持って触れたはずが大泣きされた攻めの気持ちとか、けっこう興味津々です。笑。

    時期関係なくコメントいただけるのはとても嬉しいです。ありがとうございます。
    ここ1ヶ月の毎日更新を楽しみにして下さっていたというお言葉もありがとうございます。ちょっと作業が面倒でしたけど、全文公開できて本当に良かったと思えます。
    更新は月水金だけな状態で、本日、さっそく1話では終わらない話を投稿してしまいましたが、今後は気長にお付き合いいただけると幸いです。

  5. お返事ありがとうございます〜!
    攻めくんの方の気持ちに興味津々…というのがめちゃくちゃわかりすぎて、ちぎれるほど首を振っております。
    たぶん、高校3年のときにあれ? って思わなかったら、わざわざ始発に乗ってまで受けくんを訪ねることはなかったのかな…とか、大学2年のときに受けくんから翻弄されて、これは好かれてるのか? 揶揄われてるのか? ってしばらく思い悩んだろうな…とか、妄想が止まらないです。笑

    大学3年のときの攻めくんは、受けくんに大泣きされた理由がなかなかつかめなくて、きっとめちゃくちゃ焦ったでしょうね……
    1年かけて受けくんが覚悟を決めたのと同じように、攻めくんもなんとか受けくんの涙の意味を解き明かそうと、1年必死で考えていたんだろうなぁと想像してしまいます。

    大学4年のときの受けくんが、やって来た攻めくんにかける言葉が、熟しきった受けくんの切ない思いを表していてとても好きです。

    好きすぎるあまり再度のコメントですみません。
    何度も読み返しては楽しめるお話を本当にありがとうございます〜!

  6. やっぱ攻め側の気持ち、気になりますよね〜
    そちらにも色々と思いを馳せながら読んで貰えていて嬉しいです。

    そうなんですよ。高校3年の時に受けが意識しなかったら、大学1年時にわざわざ3時間以上掛けて訪ねなかった可能性高いですよね。
    しかもそこで嘘という前提でも「好き」を返されたら、これもう絶対諦められなくなりますよね。笑

    私もこの二人の泥沼っぷりが結構好きなので、自分でも気に入ってる作品を凄く好きだと言ってもらえるのとても嬉しいです。
    何度も読み返して楽しんで下さって、本当にありがとうございます(´∀`*)

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