彼女が欲しい幼なじみと恋人ごっこ(クリスマス・イブ)

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 元々25日の夜が勉強を見に行く予定の日だったので、クリスマスならその時に、ケーキでも一緒に食べれば良いと言ったのに、相手は恋人同士なら24日にクリスマスデートをするものだと言って頑固に譲らなかった。
 どうやら最近彼女の出来た親友が、その日に色々と致す予定を立てていて、羨ましさと妬ましさからの対抗意識らしい。まったくもってバカらしいが、本人は至って本気で、勉強そっちのけでデートデートと煩いったらない。
「じゃあ聞くけど、いったいどんなデートがしたいっての? こっちはまだ授業あるんだから、会っても夕方からの数時間だぞ」
「まずプレゼント交換。これ絶対な。後は映画見るかカラオケ行くかラブホ!」
 喜々として告げられた言葉の最後に頭を抱えたくなった。
「ったく、俺とラブホなんか行ってどうすんだよ」
「それはまぁ、下見、的な?」
「お前の好奇心に払う金なんてねーよ」
「え、クリスマスデート奢ってくれんの?」
 驚きと期待とを混ぜた顔で聞かれ、確かに奢ってやる必要なんてないことに思い至る。
「あ、間違えた。俺が彼女側か。じゃあお前の奢りで」
 言えば途端に悲壮な顔になるから、思わず笑いたくなった。付き合いの長さもあって、相手の経済状況はだいたい把握できている。
「ってのも可哀想だから、カラオケでも映画でも付き合ってはやるけど割り勘な」
「やった! 約束だからな。ドタキャンとか絶対無しだから」
 仕方なくデートに了承を告げれば、それ以上はごねることなくむしろ機嫌の良い様子で、その日はその後しっかり机に向かっていた。
 なんとなく、家庭教師として金銭が発生していることと、やはり幼なじみである彼の受験が上手く行って欲しいと思う気持ちとを、良いように使われている気がしないこともない。しかし夕方数時間のデート程度でやる気が出るなら、もうそれでいいかと思ってしまうくらいには、思いつきで始めた恋人ごっこはそこそこ効果を発揮してもいる。
 そんなこんなで24日の夕方、結局カラオケが良いということで訪れた店の個室で、まずは互いにプレゼントを交換した。
 彼がくれたのは無難にもほどがあるマフラーだっが、長い付き合いからか自分の好みを把握した品で悪くない。もっと本音を言えば、見た目も触り心地も魅力的で、きっとお気に入りになるだろう。しっかり好みを押さえたプレゼントが、嬉しくもあり意外でもあった。
 対して自分が彼に渡したのは、彼が苦手とする問題を集めてみた、手作りの彼専用問題集だった。彼のがっかり加減がいささか申し訳ないものの、ちゃんと気持ちは込めまくった逸品だ。
「本当にこれだけ?」
「なんだよ文句あるのか」
「文句っていうか……もうちょっと恋人らしい何かなかったの?」
「恋人じゃなかったら、こんな面倒なことするわけないだろ」
「それは、そうかもだけどー」
「時間もったいないから歌えば?」
「もー、取り敢えずの恋人だとしても、恋人は恋人なんだから、もうちょっとじょうちょって物があっても良いのにー」
「情緒漢字で書けたら考えてやってもいーぞ」
「そうやってすぐ勉強に持ってくしー。あーもー、いーよわかったよ歌うからっ!」
 なんで恋人になってやったか思い出せと言いかけた所で、それを察したらしい相手が曲を入れ始めてしまったので、ため息1つで自分もそれに続く。歌い始めてしまえば、なんだかんだで楽しかった。

続きました→

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