弟の親友がヤバイ1

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 仕事休みな土曜の朝というか昼近く、のそのそと起きだしてリビングへ向かえば、そこでは見知らぬ男が大事な弟とイチャイチャしていた。リビングのテーブルに、横に並んで座っている二人の距離がやたら近い。
「誰だそいつ」
 ドアに背を向けて仲良く寄り添う頭が二つとも振り向いて、弟がおはようではなく「おそよう」と笑う。そして隣の男は軽く頭を下げた後で、お久しぶりですと言った。
 会ったことがある相手なのかと、しげしげ相手を見つめて思い出す。随分男くさくなったが、その顔には面影がある。
「あっ、お前、なんで……」
 弟の前だったことを思い出して慌てて口を閉ざした。
 彼は弟が小学校に上がった頃から頻繁に訪れるようになり、中学二年の夏休みを境にここ四年ほど会うことがなかった男だ。何故彼が家に来なくなったかはわかっている。
 弟の親友だというそいつは、明らかに弟に懸想していたから、弟と引き離したくてちょっとした意地悪というか悪戯を仕掛けた。だって大事な大事な弟を、男なんかにどうこうされたらたまらない。
 五つ違いの兄弟だから、弟が中学二年当時はこちらはもう大学生で、成長期などとっくに終わった大人の体だった。背が高いというほどではないが平均的な成長を遂げていた自分が、成長期入りかけの小さな体を後ろから抱き込んでしまえば、相手は抵抗を奪われたも同然だ。
 そして何をしたのかといえば、無遠慮に股間を弄り回して、勃たせて扱いて吐精させた。誰の手でも感じちゃう淫乱だと罵って、弟に手を出したら許さないと脅して、弟の代わりに気持ちよくしてやるからまた遊びにおいでと誘ってやった。
 その後ピタリと顔を見せなくなったことから、遊びに来たらまたやるよという宣言を、彼は正しく理解したようだった。
「今日さー、母さんたち居ないじゃん。泊まりで勉強しに来ないかって誘ったら、たまにはいいかもって言ってくれたから、呼んじゃった。すっげ久々で滾る」
「受験勉強だからな? 遊びに来てるわけじゃないからな?」
 にっこにこで報告してくれる弟に、やれやれといった様子で男が返しているが、その目は随分と優しげだ。
「お前らって、未だに親友やってんの……?」
「は? 当たり前じゃん」
 肯定は弟から即座に返ってきた。
 こんな危険な兄が居たんじゃ親友なんてやってられないと、弟から離れてくれたのだと安心していたが甘かったようだ。家に来なくなったというだけで、学校では変わらず仲良くしていたのかと思うと、騙されたような気持ちすら湧いてくる。
「母さん知ってんのか?」
「もっちろーん。オッケー貰って、布団も用意してもらったもん」
 男同士だからってさすがに一緒のベッドじゃ狭いしねーとあっけらかんと話す弟に、もっと危機感持てよなんてことは言えるわけがない。むしろそこが弟の魅力であり可愛いところであり、だから守ってやらねばと愛しく思うのだ。
「あ、兄さんのご飯ここあるよ。ここ片付けたほうが良い? でも別に目の前で俺らが勉強してたからって構わないよね?」
「ああ、いいよ。どうせお前の部屋、二人で勉強できるスペースなんてないんだろ?」
「えへへ。ゴメンね」
 あまり本気で悪いとは思っていないだろう事は明らかだったが、部屋を片付けておかないからだと小言を続ける気にはならない。むしろ散らかし放題グッジョブ! と言ってやりたいくらいだ。
 弟の部屋で二人きりになどさせてたまるか。こいつはまだ絶対、弟を諦めてなんかいない。むしろ久々に訪れたのは、宣戦布告かもしれないとすら思う。
 なぜなら弟達の正面の席へ腰を下ろして、用意された朝食を食べ始めた自分を見つめる瞳が、ふてぶてしく挑戦的だからだ。
「なに?」
「いえ、別に……ただ、綺麗な箸使いだなと見とれてただけです」
「は?」
「でっしょー。魚とかの骨もね、兄さんすっごく綺麗に取るからね」
 何を言い出してるんだこいつはと呆気にとられたその横で、弟が自慢気に告げた。
「それ前聞いた。だから気になったってのもある」
「あ、そっか。言った言った。で、どうよ。俺が言った通りっしょ?」
「うん。お前が言った通りだった」
 やはり弟に向ける瞳は優しげで、あーこれちょっとマズイんじゃないの? という気がして少し焦る。
 だってさっき、泊まりで誘ったと言っていた。相手は自分がいるのをわかって乗り込んできているのだから、明らかにこちらが不利だろう。
 取り敢えずはゆっくりと朝食を食べつつ目の前の二人を観察して、どうやって邪魔してやるかしっかり考えなければと思った。

続きました→

 
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