親睦会12

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 戸惑い、えっ、と小さく零せば、苦笑顔が近づいて目元に唇が落ちる。
「のぼせる前に上がろうか」
 左右交互に、宥めるみたいに何度か唇が触れている間に、下半身では埋められていた指がゆるゆると引き出されていく。
「ぁ、…っぁ、……」
 力のこもらない口元から反射的にこぼれる声は酷く遠くて、自分のものではないみたいだった。
「めっちゃ呆けてんな。大丈夫か?」
 大丈夫なわけが無い。意味がわからないし勝手すぎる。こちらを気持ち良くしない、これが最後のセックスだと言ったのはそっちだろう。胸の中に育った好意ごとメチャクチャにして欲しかったのに。そうして貰えると思ったから、無理矢理にでもわかったと了承したのに。
 中断したのはこんな場所で強引にねじ込むより、風呂から上がって布団の上で、いつもみたいに抱く方がいいって話だろうか。それとも、泣いたりしたから、最後のセックスすらももう、萎えて抱く気になれないって話だろうか。
「するなら、ここで、したい」
 だってそのための部屋付き露天風呂でしょうと、笑う余裕なんてもちろんなかった。馬鹿みたいに声が震えてしまうのは、これが場所を変えたいという話ではなく、抱く気が萎えたという話だと察知しているからに他ならない。
「しないよ」
「裂けても、別に、いいです、けど」
「そういう意味じゃない」
 やはり少し困った様子の、でも優しさの滲む苦笑顔のまま、指先が優しく頬を撫でていく。自分はもう、彼にとってセックスの対象ではないと、そう理解するしかないような顔だと思った。
「あなたは、酷い」
「そうだな。俺が悪い。全部俺のせいで、お前は何も悪くない」
 声を絞り出すと同時に、こらえきれずに浮かび上がった涙を、またしても宥めるみたいな目元への口づけと共に舐め取られていく。けれど今度はそれが呼び水になって、涙は次々浮かんで流れ出す。
「おっつかねぇ」
「あなたのせい」
「だな」
「なんで、今になって、優しい真似するんですか。酷い目に合わせて終わってくれたら、まだ、恨みようもあるのに」
 そうだなと肯定する声は随分と穏やかな響きをしていた。
「お前は俺を恨んで当然のことされてる。でも恨まずにいてくれたらと、都合よく願ってしまう気持ちもある」
 優しくするのはそんな下心と罪悪感からだと言って、相手は自嘲的な笑みを見せる。
「お前は俺の怨恨に巻き込まれただけの可哀想な被害者だ。ってことを、今更、ようやく、自覚したんだ」
「えん、こん?」
「そ。お前は本来無関係なのにな。許せとは言わないし、恨むなとも言えないけど、でも俺が付けた傷をどうにかして癒せたらと思う気持ちは、まぁ、ある。出来る限りの償いはするつもりだけど、どう償ってくかはお前次第かな」
「俺、しだい……」
「そう。だから、お前と話がしたいと思ってる。その涙が落ち着いたら、のぼせる前に風呂から上がって、それから少し、俺の話を聞いてくれないか」
 穏やかで優しい声音は今まで全く知らなかったもので、でもこんな形で知りたくはなかった。

続きました→

 
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