別れた男の弟が気になって仕方がない38(終)

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 そんな気持ちを伝えるために、他にもまだあるかと問いかけた。全て否定してやるつもりだけれど小出しで頼むと言えば、追加ではなく、まだ最初の質問に答えていないと返された。
「あなたが幸せに、なれますか?」
「幸せに、なるつもりだけど。というかそれ、お前を幸せにできるかどうかじゃないんだな」
 幸せにしてくれるんですか? と聞かれる方が妥当な気がするのに。と思っていたら、思いもよらない理由が耳に届く。
「だって兄に言われてたでしょう?」
「え、何を?」
「新しい恋人と、兄と付き合っているときよりもずっと幸せになって、って」
「あー……確かに言われた、けど」
「幸せになって貰えないと、兄に知られた時に俺が怒られます」
 あの人本気で怒ると結構面倒なんですよと続いたから、思わず、確かにそんな感じはあったねと言いながら、少しばかり別れの日へと思いを馳せた。
 兄とのことを思い出していると、すぐに相手も感じたのだろう。
「兄を怒らせたこと、ありました?」
「別れ話した最後の日、初めて怒ってる顔を見たよ。でもあれ、押しかけてきたのお前で、別れろって言ったのもお前だったからなぁ」
 あの怒りの矛先が自分だけに向いていたらと考えると、落ち着けさせるのにもっとずっと苦労しただろうとは思う。
「ああ、あの後もかなり怒られました」
「だろうね。たいして知りもしない相手に、ホイホイ体差し出すなってのは言われなかった?」
「まぁそれもありましたけど。でもさすがにそれは、お前が言うなって感じだったので」
「言い返したの?」
「え、そりゃ、一方的に怒られなきゃならない事はしてないですから。最初に誘ったのはあなただし、一応、兄の幸せのためにって理由もありましたし。まぁ他にも色々、こっちの言い分もあったので」
「お前らの兄弟喧嘩、なんか激しそうだなぁ」
「兄はギャンギャン煩いですけど、面倒なだけでそこまで激しくもないですよ。さすがに殴り合いとかにはならないんで」
 本当に面倒なだけだとケロリとした顔で言い募るから、どうにもこの兄弟の関係がどんなものなのか、今ひとつ想像がつかない。
「でも多分、俺達が恋人になったとして、それを知ったあいつが何か言うとしたら、俺に対して、弟に手ぇ出しやがってってのが先だろ」
「それは言うでしょうね。でもあなたに幸せになって欲しいとも、本気で思ってるはずなので」
「うん。それはわかってるし大丈夫。でさ、お前が俺と恋人になるって言ってくれたら、それだけでも俺は相当幸せになれるんだけど。まだ、俺の恋人にはなって貰えない?」
 聞けばゆるく首が横に振られた。やっとだと思うと喜びで胸が熱くなる。
「あなたの恋人に、なります。色々未熟で心配かけそうですけど、どうぞよろしくお願いします」
 律儀な挨拶にふふっと笑いを零しながら、ゆるく抱えていた腕の中の体を、ギュウときつく抱きしめた。
「ありがとう。凄く、嬉しい」
 それからまた腕の力を抜いて、今度はしっかりと相手の顔を見つめながら。
「こちらこそ、ヨロシク。お前にも言われたしなるべく気をつけるけど、勘違いや思い込みで動いてそうなら早めに指摘して。さっき両想いの恋人って初めてって言ったけど、俺自身、可愛くて愛しくて仕方ないって思う相手が、真っ直ぐに俺を好きって言ってくれるのホント初めてだからさ。お前が思う以上に俺も慣れないこと色々あると思うけど、一緒に頑張ってくれる?」
 ハイと言って軽く頷いた相手の顔にグッと顔を寄せれば、察してそっと瞼が落とされる。チュッチュと軽いキスを何度か繰り返していたら、やがてチロと舌が差し出されて来たので、遠慮なく絡め取って吸い上げた。

<終>

多分この後「お前が俺を好き、俺もお前を好き。って前提でやったら、さっきとは違うものが見つかるかもよ?」を検証することになると思うのですが、さすがに長くなりすぎたのでここで終わりたいと思います。長々おつきあいありがとうございました。

 
 
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「別れた男の弟が気になって仕方がない38(終)」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。別れた男の弟が〜読みました。ハッピーエンドで安心しました。まさか自分を好きになってくれる子が現れるなんて予想してなかったのに、あんな可愛い子が恋人になっちゃうなんてきっとその後は、兄や大学の友人にすら嫉妬するくらい愛しちゃう甘やかし溺愛攻めコースなんだろうなと勝手に予測してます。個人的に体格良い受け大好きなので、とても楽しめました。気になった部分は、兄と親友のあれこれなんですが、今後の予定にはあるんでしょうか。

  2. こんにちは。最後まで読んで下さってありがとうございます。
    受けの子は体格の良さと無愛想さから自分が可愛いって自覚はないですけど、この後攻めに可愛がられまくって甘やかされるでしょうし、学校の友人やらから最近なんか可愛くなった?とか言われるようになるんだろうなと思ってます。無愛想さが減って雰囲気も柔らかになって、女の子からの告白が増えたりも。でもってきっとそれを、あなたのせいでって攻めにぽろっと言っちゃうから、攻めは気が気じゃないですよね。嫉妬はすると思いますが、そこは年の功で、恋人との仲を上手に調整していって欲しいと思います。
    体格の良い受けは私も好きでちょいちょい出してしまうのですが、同じように好きだという方に、楽しんで貰えて嬉しいです(^^♪

    書きながら、いつか受けの子側の話を書きたいなー弟の目から見た兄とその親友の恋愛や、紹介された男と何があったのか知りたいなーとは思っていましたが、同時に、名前ないまま書くのは無理だなとも感じました。書きたい気持ちはあるのですが、キャラに名前をつけた話を書くというハードルを乗り越えてまで書きたいか、という部分で揺れています。受けの子の話を書くとしたら、一日置きにチョコチョコ更新していくという方法が取れない可能性が高いのも、躊躇う要因の一つなんですよね。
    そしてもし兄の視点で書くとしたら、親友とどうこうより先に、今回の視点の主を探して見つけて抱いて貰って恋人になったその部分がメインになっちゃいそうです。ただこれも、書こうってほどはっきりしたイメージを持って考えては居ないので、現状ふわっと妄想することがある程度です。
    なので今のところ、兄と親友のあれこれは、「今後書くのが決定している話」の中には入っていない感じです〜

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