理解できない7

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 高校生も子供と言い張って、頑なにハグ以上の行為を拒む相手に慣れていく。相手が何度も繰り返すから、日々の生活であれこれとこちらを気遣ってくれることや、差し入れられるおやつへの礼として求められているのがハグで、それ以上を本気で求めていないらしいことも理解は出来ている。
 同時に相手も、ハグ程度ではちっとも返した気になれないこちらの気持ちや、なによりあの家から自分を連れ出してくれた事への礼を、いつか体で返したいと考えている事を、今はある程度理解してくれていると思う。だから、高校卒業するまではダメだと、変わらない返事を聞くための誘いをかけることは許容されているし、こちらを安心させるみたいに、高校を卒業したら抱く気があることをちゃんと示してもくれる。
 あの夏から大きく変わった生活は、あの夏以前に考えていた高校生活からは欠片も想像できないような穏やかさで過ぎていた。
 遅れてきた成長期にどう変わるかと不安だった体も、結局そこまで大きくは変わらなかった。相変わらず同年代男子平均には身長も体重も足りていない。それでも一応、子供みたいな見た目はだいぶ改善されたようだ。
 高校卒業まで待たされるなんてと思っていたはずが、気づけば高校生活の終わりが目の前に迫っている。
「ねぇ、卒業式のあと、どうする?」
「どうする、って、家でお祝いだろ?」
「えーと、家でするってこと?」
 絶対違うと思いながらも聞いてみれば、会話が噛み合っていないことに気づいたらしい。
「あー、さすがに家でする気はないな。というか卒業式当日は無理だって」
「こんなに待ったのに?」
「当日は母さんが張り切ってご馳走用意する気でいるし、そこは諦めて」
 だから卒業式後の最初の土曜日でと言われて、まぁ、そうだろうなと思う。自分たちの関係を彼の両親がどう見ているのかわからないし、彼が自分の親に対してどういうスタンスでいるのかも知らない。確かめたくなかったし、聞こうとしたことがない。
 家でして彼の親に気づかれるのは自分だって避けたいし、同様に、夜に二人して出かけるのだって躊躇われる。
「というかさ、どこでしたいとかって希望ある?」
「え、行ってみたいラブホを探しとけってこと?」
「じゃなくて。卒業旅行、連れてってもいいんだけど」
 びっくりして目を見開き見つめてしまえば、ラブホのが色々都合いいのはわかってるんだけどと言葉を続けていく。
「お前、友達と卒業旅行の予定ないみたいだし、前に、修学旅行以外の旅行したこと無いって言ってたろ」
「旅行、誘われなかったわけじゃないからな」
「お前に友達がいないなんて言ってないだろ。誘いに乗らなかった理由も知ってる。だから、俺が全部旅費出してやるから、どっか行かないかって言ってんの」
 高校卒業までは実親から最低限の生活費が払われていることは知っているけれど、なるべく早く自立したいと思っているし、友人たちと卒業旅行に出かける金銭的な余裕なんてない。なぜ引き取られたのかという理由は知らなくても、金銭的な余裕がない理由は友人たちだってわかっていたから、しつこく誘われることはなかった。それをありがたいと思ったし、同時に一緒に行けないことを残念にも思った。残念だと思うような高校生活を送れただけで、充分すぎるほど幸せなんだと、思ってもいた。
 でもだからって、彼とどこかへ旅行することがそれの代わりになるんだろうか。高校卒業記念として彼に旅行に連れ出されることを、卒業旅行と呼んでいいんだろうか。彼にとってはなんの卒業記念でもないのに。
「あ、童貞卒業旅行?」
「は?」
 ふと初めてハグを求められたときのやりとりを思い出して口に出せば、相手はわけがわからないという顔をした。

続きました→

 
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