一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた(目次)

二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになったの続きです。
引き続きキャラの名前なし&視点変更なし。全16話。

「再度撮影兼ねて遊びに行き、可愛い年下の恋人を態度でも金銭面でも甘やかす攻めと、こんな優しい人が自分なんかとずっと付き合ってくれるはずないと思ってギクシャクする受け。そんな受けに甘えていいと説明してくれる攻め。恋が続くうちに一生懸命イチャイチャしようとする二人」というリクエストを頂いて書いた、本編から3週間後の初デート話です。
洗腸の手伝いは今回もしてますが描写はほぼなく、代わりに風呂場でのアニリングス描写がそこそこあります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 あれから3週間
2話 久しぶり
3話 酒の力を借りて
4話 早々とチェックイン
5話 昼寝を終えて
6話 セックス抜きでも会いたい
7話 昼寝後にやりたかったこと
8話 そろそろ準備へ
9話 欲しいご褒美
10話 お礼のアニリングス(R-18)
11話 やっとキス(R-18)
12話 今更の緊張(R-18)
13話 前回とは違うこと(R-18)
14話 繋がる(R-18)
15話 余裕のない急ぎ足(R-18)
16話 ベッドでゴロゴロ

 
 
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煮えきらない大人1

 closeの札がかかった扉を開ければチリンと軽やかな音が鳴る。
「いらっしゃい。待ってたよ」
 来訪に気づいて厨房から顔を出したのはこの店の二代目で、ニコニコと楽しげな顔にこちらの頬も緩んでしまう。
「こんにちは。えと、今日はありがとうございます。楽しみに、してます」
 少しばかり緊張しながらもペコリと頭を下げれば、誘ったのこっちなんだからむしろ来てくれてありがとうだよと、やっぱり笑顔で返される。期待してていいよ、とも。
「じゃ、用意するから座って待っててくれる?」
 テーブル席のがいいかなと続いた言葉に軽く頷いて、一番奥のテーブル席へ向かって歩く。両親と訪れるときの定位置だ。
 物心ついたころから年に数回、親に連れられて訪れていたこのカフェは、両親が学生時代によく利用していたという思い出の場所らしい。近くに両親が通っていた大学があって、春からは自分も通うことになっている。
 進学先をその大学に決めた最大の理由が、この店だってことは誰にも言ってないけど。でも二代目はもしかしたら気づいてるかもしれない。なんせ、高校に上がって行動範囲が広がってからは、何度か一人でこっそりと訪れていたから。
 それに、合格が決まった先日、春からはもっと頻繁に通えるようになるって、わざわざ知らせに来てもいる。しかも浮かれて、ちょっとどころかかなりテンション高めだった。思い出すたび、少々恥ずかしいくらいに。
 でもそんなテンション高めの報告をしたおかげで、こうして合格祝いを貰ってるんだけど。
「お待たせ〜」
 そんな言葉とともに、次々と皿が運ばれてくる。お皿はどれも見たことがあるのに、メニューにない料理ばかりが盛られているから驚いた。
「すごいですね。てか多すぎません?」
 どのお皿も、一品一品そこそこの量がある。せっかくの特別メニューを残したくはないけど、どう見ても一人で食べ切れる量じゃない。
「ちょっと張り切りすぎたとこあるのは認める。けどまぁ、二人分だと思えばそこまででもないだろ」
 そっちの若さに期待してる部分もあるけどと言いながら、これで最後だよと大きめのグラタン皿が中央に置かれた。
「二人分」
「さすがに今日はね。一緒に食べようって思ってさ。わざわざ定休日に来てもらったの、そのためだもん」
 取皿使ってねと言われて、初めて、カトラリーケースの横にお皿が数枚積まれていることに気づく。一緒に食べよう、なんて言ってもらえると思ってなくて、いっきに鼓動が早くなる。
 どうしよう。嬉しさと期待で緊張が増してしまう。
「飲み物なにかいる?」
「いや、水で良いです」
 じゃ、座っちゃうねと言って、相手が対面の席に腰を下ろす。こんな風に向かい合って食事をするなんて当然初めてで、思わず相手を凝視してしまえば、その視線に気づいた相手が照れくさそうに笑った。
「お酒飲める年齢なら、ここでワインの1本も開けたいとこだよな」
「俺のことは気にせず、別に飲んでもいいですよ?」
「いや、いいよ。お酒飲めるようになったら、また祝わせてよ」
「それはもちろん、嬉しい、です。けど……」
「けど?」
 言っていいのか迷えば、言葉尻を拾って訪ねてくる。
 18歳になって成人したけど、ほんの数年前までは20歳で成人だったわけだし。急かすつもりはないんだけど、でも高校卒業も目前だし、そろそろ言葉が欲しい気持ちもある。
「えっと、それは期待していい、やつなんですかね?」
「メニューの話? 食べたいものあるなら、言ってくれれればなるべく希望に沿うように頑張るけど」
「あ、いや、そういうのじゃなくて」
 なんだろ? と首を傾げる相手にはなんの含みもなさそうで、わざとはぐらかしてるようには見えなかった。前からだけど、意識してくれてるのバレバレなのに、こっちの気持ちには鈍いところがある。
「あー、その、いつ告白してくれるのかな、って」
「えっ???」
 めちゃくちゃ驚かれたことに驚いた。なんでだよ。

続きました→

 
 
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意気地なしの大人と厄介な子供1

 酒が飲めるようになったから誕プレでどっかいい店奢ってよとねだったら、相手の最寄り駅から徒歩数分の個室居酒屋に連れてこられて、これは多分、酔い潰れたらお持ち帰りも考慮された店選びなんだろう。まぁ、お持ち帰られたところで、何かされるわけでもないのはほぼほぼ決定で、せいぜい酔っ払いとして世話を焼かれるだけだろうけど。
 好きなくせに意気地なし。と内心思わなくもないけれど、お持ち帰りを考えてくれたことで良しとする。それに、酔って迫ったらワンチャンあるかも知れないし。
「誕生祝いだし、好きに頼んでいいぞ。あ、でも、先に飲むものは決めて。まずはビール、ってタイプじゃなさそうだもんな、お前」
 差し出されたメニューを受け取りながら、叔父さんはビール苦手だったっけと、ここにはいない親戚の男を脳内に思い浮かべた。
 血の繋がりがあるのと、中学を卒業するくらいまでかなり近所に住んでいたから当然かも知れないが、叔父とはそれなりに見た目も食の好みも似ている。もっと言うなら、思考パターンなんかも多分似ている。だって、幼い自分から見ても、憧れるには充分な人だったから。
 小さな個室の中、目の前に座っている男は叔父の学生時代の友人で、今現在通っている大学の事務職員だ。
 自宅から通学するにはちょっと遠い大学への入学が決まったあと、すでに近所とは言えない場所に住んでいた叔父がわざわざ電話をかけてきて、引越し後に一度会いに行くと言われた時は意味が分からなかったけれど。でもこの男と引き合わされて、お前の通う大学の職員だから何か困ったら頼れよと紹介されて、どうやらただの親切心とお節介だった。
 ネットで調べりゃ大概のことが出てくる現在で、日々の生活に困るようなこともなければ、大学でのあれこれだってちゃんと説明を聞いていれば問題なく過ごせるようになっている。そもそもこの人は職員は職員でも情報システム系だというから、紹介はされたが、頼ることはないだろうと思っていた。それはつまり、叔父抜きで会うことはないだろう、という意味だ。
 なのにお酒が飲めるようになるまでの1年とちょっと、誕プレでいい店連れてってなんて言えるような関係にまでなったのは、相手からちょくちょくと声をかけてきたからに他ならない。
 最初は叔父に頼まれての様子見だった可能性は高い。正確には、母か祖母あたりに頼まれた叔父経由の様子見、なんだろうけど。
 でもまぁ、食事に誘わるのは正直言ってありがたい。なんせ一回りも年上ということで、会計は全て相手持ちだからだ。
 さすがに叔父から資金が出てるわけではないらしいので、多少は出すべきかも、と思ったことはある。思うだけでなく、口に出しても聞いてみた。けれどその結果、一銭も支払うことなく現在まで来ている。
 いわく、金に余裕がある時にしか誘わないし、独り身だから誰かと食べる食事が嬉しいし、こんなおっさんの相手してくれるだけでありがたいから。だそうだけど、それ以外の理由も多分あると気づくのは早かった。
 口に出して確かめたことはないが、多分この人の性的指向はゲイまたはゲイ寄りのバイで、叔父に対しても何らかの感情を抱いていた過去がある、はずだ。
 叔父は既に既婚者で、さすがにもう気持ちの整理なりはついているんだろうけれど、結構本気で好きだったんじゃないかなと思ったりもしている。ちょっと似たところのある甥っ子を、度々食事に誘ってしまうくらいには。
 つまりは、自分を通して、叔父を見られているような気持ちを味わうことがある。でもその頻度は食事をするたびに下がっていって、最近は自分自身を見られている、と感じることが随分と増えた。
 元々叔父が好みなら、自分だってそりゃ相手の好みの範囲だろう。という納得と、ちょっとした期待。なんせ自分の性的指向がゲイだという自覚があるので。目の前のこの男を、悪くないなとも思っているので。
 でもそんなこちらの気持ちは、多分相手に伝わっていない。伝わっていてなおこの状況なら、相手の忍耐力というか自制心に疑問が湧くレベルだと思う。
「決まったか?」
「んー、じゃあ、カルーアミルク」
 言ったら少し驚かれたので、似合わないものを頼んだ自覚はある。
「初心者でも飲みやすいって聞いたから、とりあえずそれで」
 正確には、初心者がうっかり飲みすぎてヤバいことになる酒のランキング1位だったのがこれだ。なんて事は当然言わない。
「ああ、なるほど。けどもし、料理に合わせてみてイマイチと思ったら別の頼めよ。別に残しても構わないから」
 わかったと頷けば、じゃあ店員呼ぶから食べたいものも幾つか決めとけと言って、相手の手がテーブルの上に乗ったボタンを押した。

続きました→

 
 
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親父のものだと思ってた(目次)

キャラ名ありません。全40話。
親の離婚後出入りするようになった親戚の男は父親の恋人なんだと思っていた視点の主が、そうではないと知って手に入れに行く話。
メイン部分は社会人なりたて視点の主×トラウマ持ち元ニート童貞。
明確な年齢は出してませんが年の差多め。
20代前半×30代半ばなイメージ。

父親と恋人関係ではなく、更に、視点の主の卒業後は家政夫を辞める話になっていると知って恋人に立候補した視点の主が、卒業を機に恋人となりルームシェアという名の同棲に持ち込むことに成功するものの、人間関係に失敗してニートだった過去を持つ相手と関係を深めるのに難儀します。
年齢差がそこそこあることと、子供の頃からお世話になっている関係上、相手の立場が強いです。人間関係トラウマ持ちな部分にもかなり気を遣って、視点の主がなかなか強気に出れません。
絶対に抱く側がいいと主張する視点の主に折れて、相手が抱かれる側になってくれますが、主導権は基本相手持ち。
セックス中、視点の主(攻め)が泣いてしまうシーンがあります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 父親と恋人じゃないなら
2話 両親離婚の詳細
3話 同棲許可取得済み
4話 同棲開始の特別メニュー
5話 不慣れすぎる初キス
6話 抱かれる側はどっち?
7話 頼れる年上彼氏に危機感
8話 直接触れたい
9話 初めて見る不安げな姿
10話 抱く側になりたい 
11話 出来そうなことから少しずつ
12話 一方的に気持ちいい(R-18)
13話 手ぇ貸して(R-18)
14話 脱いで再チャレンジ(R-18)
15話 研究熱心で好奇心旺盛
16話 相手のトラウマ
17話 トラウマが気になる
18話 長期戦は覚悟済み
19話 やっと触れた相手の性器(R-18)
20話 間近に見つつ(R-18)
21話 口を寄せる(R-18)
22話 どうせなら一緒にイこう(R-18)
23話 聞きたいことがいっぱい
24話 トラウマの原因
25話 リハビリ成功
26話 想像してた展開と違う
27話 違和感と相手の覚悟
28話 前立腺が見つからない(R-18)
29話 前立腺発見(R-18)
30話 このままイカせたいのに(R-18)
31話 主導権交代
32話 騎乗位で繋がる(R-18)
33話 嬉しそうで何より
34話 上から降りて欲しい
35話 張り切っちゃうらしい
36話 急展開
37話 2回目は正常位で(R-18)
38話 気持ちよさそうなのに(R-18)
39話 めちゃくちゃ可愛い(R-18)
40話 安心したら眠い

 
 
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捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか

 早起きは三文の徳とは言うが、たまの休日は思う存分眠って置きたい。とは思うものの、妙にスッキリとした目覚めによりどうにも二度寝出来そうにはなく、仕方がないので諦めて起き上がる。
 早いと言っても早朝と呼べるほど早い時間ではないが、それでもこんな休日はめったに無いので、いっそ朝の散歩にでも出かけようかと思いたち適当にあちこち歩いてみた後、ファミレスに寄ってモーニングメニューを堪能した。
 睡眠時間確保には失敗したが、なかなか良い出だしだ。などと自己満足で帰路についた途中、珍しい人物が珍しい店舗へと入っていくのを見かけて、とっさにその後を追って同じ店舗へと踏み入ってしまった。
 ご近所さんのその男とは小学生の頃に何度か遊んだことがある。といっても確か5つほど年齢が離れていて、中学も高校も同時期に在籍したことがない。小学生の時に遊んだと言ったって、遊び相手のメインは彼の兄であって、幼い彼はオマケでしかなかった。
 その兄とも、中学くらいまではそれなりに交流があったが、別の高校に進学してからはわざわざ連絡を取り合って遊んだりはしなくなっている。そもそも高校卒業後に実家を出たと聞いた気がするから、弟以上に顔を合わせる機会がない。
 まぁ弟の方だって、姿を見かけることなどなかなかないのだけれど。なんせ母が仕入れてくるしょうもない噂通りなら、せっかく入れた高校を早々に退学になりかけるような、荒れた生活をしているようなので。
 そんな男が、開店まもない書店に入っていくだなんて、ちょっと良からぬ想像が働いてしまうってものだろう。万引の現場を目撃するようなことがあったら、さすがに止めてやろうと思っていた。
 兄とだってさして仲が良かったわけではないが、彼の家庭環境や生活が荒れるに至った事情を漏れ聞いてしまう立場として、同情めいた気持ちがあるのは認める。一緒に遊んでいたころは、素直な一生懸命さで、兄の背を追いかけてくるような子だったのを覚えているせいもある。
 しかし、周りを気にする素振りを見せながら彼が向かった先は、はやりの漫画やらが並んだ棚ではなく、ペット関連の書籍が並んだ一角だった。そのままこっそり盗み見ていれば、どうやら猫の飼い方についてを立ち読みしているらしい。
 随分と真剣な表情で読み進めていく姿を見ていたら、思わず名前を呼びかけていた。
「ひっ……」
 相当驚かせたようで、大きく肩を揺らしながら小さな悲鳴を漏らした相手は、それでもすぐに振り向いて、怖いくらいにこちらを睨みつけてくる。
「誰だ、お前」
 そう聞かれるのも仕方がない。なので名前を告げて、兄の友人だったと伝え、小学生の頃に一緒に遊んでいた話と共に当時のあだ名を教えてみた。どうやら記憶の片隅に引っかかるものがあったようで、一応は名前を知られていることには納得できたらしい。
「で、何の用だよ」
「用、っていうか、気になっちゃって。猫、飼うのか?」
「んなわけねぇだろ」
「じゃあ猫好きなの?」
「うっせ」
 手にしていた本を思い切り平台の上に叩きつけると、早足にその場を去っていく。
「あ、こらっ、売り物だぞ」
 慌ててその本を手に取り、破損がないことを確かめてから元の場所と思しきところへ戻している間に、相手の姿はすっかり見えなくなってしまった。
 そんなことがあってから数日、母親が仕入れてきたしょうもない噂話で、彼が虐待していた子猫が保護された、という話を聞いた。
 あんなに熱心に猫の飼い方を立ち読みしていた男と虐待とが結びつかない。どうせ、猫にかまっている姿を誰かに見られて、あの調子で対応した結果虐待と思われた、とかじゃないのか。
 ありえそうすぎて苦笑するしかない。
 それからなんとなく、猫が保護されたという場所を気にかけるようになって更に数日、ぼんやりと立ち尽くす彼の姿を見つけて、我ながら懲りないなと思いながら名前を呼んでみた。
「またあんたかよ」
 少しうんざりした顔は以前に比べて明らかに元気がない。というよりもなんだか疲れた顔をしている。
「で、今日は何?」
「ここに居た子猫は保護されたって聞いたけど、お前、虐待なんかしてないよな?」
「そ、っか……」
 一瞬驚いた顔をしたけれど、でも何かに思い当たったのか、一つ息を吐き出すとくるりと向きを変えて歩き出す。その腕を思わず掴んで引き止めた。
「あー……虐待したつもりはねぇけど、まぁ、あいつらが無事保護されたってなら、俺が虐待してたんでも別にいーわ」
「もしかして、居なくなった子猫心配して、探してた?」
「うっせ。てか放せよ、腕」
 強引に振りほどくことも出来そうなのに、おとなしく立ち止まっている彼をこのまま放したくないと思ってしまった。
「えっと、……あ、じゃあ、飯でも食いに行く?」
 我ながら、何を言っているんだと思ったけれど、呆れられて仕方がない場面で、なぜか相手はふはっと笑いをこぼす。
「じゃあ、ってなんだよ。てかそれって当然奢りだよな? 金ねーし、奢りなら行ってやってもいいけど?」
「もちろん奢る」
 食い気味に肯定すれば、相手はますますおかしそうに笑い出してしまったが、笑う顔に昔の面影が重なって、なんとも言えない気持ちになった。
 頭の片隅では、これ以上深入りしないほうが良いとわかっているのに、その反面、いっそもっと深く関わってしまいたい気持ちが湧いている。

有坂レイさんは、「朝の書店」で登場人物が「夢中になる」、「猫」という単語を使ったお話を考えて下さい。https://shindanmaker.com/28927

描写ないけど視点の主は高校卒業後就職している社会人です。

 
 
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初恋はきっと終わらない

 早朝、学校へ行く前に飼い犬を連れて散歩へ行く。時間に余裕があるわけじゃないから、毎日決まったコースを歩くのだけれど、そうすると、同じように早朝出歩いている人たちと度々すれ違う。何度も同じような場所ですれ違っていれば互いに顔くらいは覚えてしまうもので、通りすがりに黙礼し合ったり、中にはおはようと声を掛けてくる人まで居た。
 そんな日々の中、どうにも気になる男が出来た。
 その男は走っている人で、いつも向かい側からやってきてすれ違う。言葉をかわしたことはないが、こちらに気づくと少し嬉しそうに微笑むのが丸わかりで、それがなんとも印象的だった。
 既にそれなりの距離を走ったあとなのか、そこそこ息も乱れているし汗もすごいのに随分と余裕があるな。というのが初期の印象で、でも、だんだんとその優しげな笑みが気になるようになってしまった。
 といっても、彼の視線の先にいるのは間違いなく自分の連れた犬で、その微笑みが自分に向けられたものでないことはわかっている。わかっているのに、なんだか無性にドキドキするから困ってしまう。なのに、雨が降ったりで散歩に出られない朝は酷く残念に思ってしまうのだ。
 1分にも満たないその時間を、毎日心待ちにしていることを、嫌でも自覚するしかなかった。
 顔しか知らないその男に、どうやら恋をしているらしい。
 女の子にいまいち興味が持てなくて、自分の性指向やらに疑問を持っていた時期だったのもあって、その結論は、ストンと胸の中に落ち着いた想いだった。ただ、それがわかったところで、その恋をどうこうしようなんて気持ちは全く無かったし、相変わらずただすれ違うだけの日々を送っている。
 黙礼されれば黙礼を返し、おはようと言われればおはようございますと返しはしても、自分から積極的に声をかけていくタイプではないし、こんな朝が少しでも長く続けばいいなと願うくらいしかしていない。
 まぁ願ったところでそんな日々の終わりははっきりと見えていて、大学に入学して実家を出れば、毎朝の散歩は出来なくなってしまう。
 初恋かもしれないこの想いは、高校卒業と同時にひっそりと終わるのだ。


(ここから視点が変わります)
 日課の早朝ランニングで出会う、犬を連れた男の子と最近会わなくなってしまった。最初の数日は風邪でも引いたかと心配したが、すぐに、春だからだと思い至った。
 間違いなく学生だったから、進学か就職かでこの地を離れたんだろう。
 心配はなくなったが、今度はひどく落胆した。あの微笑ましい光景をもう見れないのだと思うと、朝走るモチベーションがかなり下がってしまった。
 ランニング中、ほぼ同じ場所ですれ違うその子を認識するのは早かったと思う。そこそこの大きさがある雑種らしい犬は愛嬌のある顔をしていたし、その犬に向かってあれこれ語りかけながら歩く姿が珍しかったからだ。
 飼い犬相手になにやら楽しげに話をしながら歩いていた彼は、通りすがりについつい聞き耳を立ててしまう自分に気づいてか、いつからか通り過ぎる前後にキュッと口を結ぶようになってしまった。でも少し恥ずかしそうに、こちらが通り過ぎるのを待っている姿も、それはそれで印象に残るのだ。
 こころなしかこちらの姿が見えると相手の歩調が緩む気さえしていて、相手が男の子で良かったと思ったこともある。女の子だったらもしかして俺に気があるのでは、なんて誤解が生じそうな可愛さがあったからだ。
 それらを微笑ましい光景として記憶している辺り、男の子で良かった、とは言い切れない気もするが。
 ただもう今更でしかない。互いに顔しか知らず、名前も住んでいる場所もわからないのだから、二度と会うこともないんだろう。
 そう思っていたのに、朝走るのを止めて夜走るようになったら、彼の犬とだけはあっさり再会してしまった。
 大きさや愛嬌のある顔から間違いなくあの犬だとわかって、思わず「あっ」と声を上げて足を止めてしまえば、その犬を連れていた女性に相当訝しがられてしまったけれど、しどろもどろに以前早朝によく見かけていたという話をすれば、あっさりあの彼が息子だということや大学進学で地元を離れたことを教えてくれた。
 彼の母親は彼ほど決まった時間に決まったコースで散歩しているわけではないようで、たまにしか会うことがなかったが、会えば挨拶を交わす程度の関係になった。
 その彼女から、彼が夏休みで戻ってくるから暫くはまた犬の散歩は彼の役割になる、と聞かされたのが10日ほど前だ。だが、早朝にもどしたランニングで、以前と同じように彼と出会うことはない。彼はもう戻ってきているはずなのに。
 期待した結果とならず、気落ちして朝のランニングをサボった代わりに走りに出た土曜の夕暮れ、いつも彼とすれ違っていた場所にある小さな公園から話し声が聞こえてなんとなくそちらへ顔を向けた。
「いたっ!」
 思った以上の大きな声が出て、相手がビクリと肩を跳ねたのがわかる。驚かせてしまったらしい。でもそんなのは気にしていられず、逸る気持ちのまま彼へ向かっていく。
 名前や連絡先やらを聞いたら驚かれるかも知れないが、この機会を逃す気はなかった。

夏休みの男の子は、母が彼と会って時々話してるというのを聞いて、夜散歩なら自分も相手と話せるかもという期待から、母が会ってた時間帯に散歩してました。

 
 
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