60分勝負 同居・灰・お仕置き

 ルームシェアという名の同棲を始めて半年。仁王立ちして怒り心頭に発する同居人の前で、正座し深く頭を下げている。
 彼の怒りの原因は自分が煙草の灰を落として焦がしたラグなので、これはもう言い訳のしようもない。
 以前から何度も、煙草を止めろとまでは言わないが、疲れているときや眠い時に吸うのは止めろと言われていたのに。彼が出張で居なかった昨夜、寝る前の一服のつもりで火をつけたくせにそのままウトウト微睡んでしまって、気づいた時にはラグに焦げ目がついていた。
 小さな焦げ目の段階で気づけたのだけは本当に良かったが、彼が帰宅する前に同じラグを調達して証拠隠滅を図るのは絶対に無理だとわかっていたし、だから今のこの状況は想定内でも有る。想定内では有るのだけれど、でも実際に彼の怒りを目の当たりにすると、恐怖で体が萎縮し震えてしまう。
「以前言ったこと、覚えてますよね?」
 冷たく降る声に禁煙しますと返せば、それだけじゃないでしょうと今度は幾分柔らかな声が落ちてくる。その声に恐怖が増した。
「寝ながら煙草吸ってるの見つけたらお仕置きしますよって、約束しましたよね?」
「…………はい」
 ああ、今回は一体何をされるんだろう。
 基本優しく、普段はこちらに尽くしてくれることが多い年下の恋人のお仕置きは、ビックリするほどえげつない。だってお仕置きですからと柔らかに笑う顔に、今ではもう本気で震えが走るほど恐怖する。
 恐怖はするんだけれど、でもそれが嫌で嫌で仕方がないってわけじゃないのが、ホントどうしようもないなと思う。マゾっ気なんか、自分には欠片もないと思っていたのに。
 今ではもう、そのギャップごと、彼のことを愛している。ただ、いつか彼のお仕置きを求めて、わざと彼の怒りを買うような真似をしてしまいそうだとも、感じている。
 もちろん今回の件はわざとなんかじゃないけれど。でもそろそろ自分たちは、もっと腹を割った話し合いが必要なのかもしれない。

「一次創作版深夜の真剣一本勝負」(@sousakubl_ippon)60分一本勝負第169回参加

 
 
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雷が怖いので おまけのオマケ1

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 指摘されるまで自身の体調不良に気付けずにいた罰でありおしおきだと言われた通り、一週間をかなり悶々と過ごした。
 バイト以外でも週に数度はオナニーで欲を吐き出すが、オナニー時のお尻の疼きも、いつにも増して強かった。けれど結局、我慢できなければ一人でお尻を弄って慰めてもいいと言っていた彼の言葉を思い出してかなり迷ったものの、お尻を弄りながらのオナニーはしていない。
 多分きっと、自分でお尻を弄っても気持ち良くはなれてしまう。お尻だけでイクのは無理でも、同時にペニスを弄れば間違いなく射精できると思う。でも、そんな一人遊びを覚えてしまうのが、なんだか怖い。
 お尻を疼かせながら過ごすことで、次回のバイトへの期待が高まってしまうのは、多分間違いなく彼の狙い通りだろう。ただ、バイト前の洗腸作業でもいつになく感じてしまって、家を出る前から泣きそうだった。
 お腹の中を洗って綺麗にするのは、ただの準備で作業なのに。洗っている最中も、小さなプラグを挿し込む時も、熱い息が甘く溢れていくのを止められない。
 自分でお尻を慰めていたら、もう少しマシだったのだろうか。少なくとも、ここまで体が期待に昂ぶることはなかった気がする。
 もちろん前回よりもずっと早く準備を終えて家を出たから、到着予定時刻を大幅に遅れるなんてことはなかったけれど、到着時の体の興奮は前回以上だった。
「少しキツイおしおきになっちまったみたいだな」
 家の中に迎え入れてくれた彼に、一週間よく頑張ったねと優しく言われただけで、堪えきれずに涙が数粒こぼれ落ちる。
「お尻が、凄く疼いてて、怖い……です」
 訴えれば、わかってるよと言いながらこぼれた涙を拭ってくれた後、辛そうだから部屋まで連れていくと言われて抱き上げられる。
「ひゃんっ」
 服越しとは言え彼に触れられ、体の中を電気が走った。
「先週以上に敏感だな。まさか今日も熱があるなんてこと、ないだろうな?」
「それは、大丈夫、です。多分」
「多分、な。これで熱あったら、本気でキツイおしおきするぞ?」
 あまり振動を与えないようにと気遣ってくれているのか、言いながら、随分とゆっくり廊下を歩きだす。
「わかって、ます」
「もしかして、全然自分で弄らなかったのか?」
「お尻、ですか?」
「そう、お尻」
「弄ってない、です」
「一週間悶々としておいでって言ったから、おしおきだって思って我慢した? もしくは、弄っていいけど報告させるって言ったせいか?」
「弄ったこと、一度もない、です」
 えっ、と小さな声が漏れて、どうやら驚かれたらしい。つまり彼には、お尻を弄るオナニーを既にしているものと思われていたようだ。
「お尻が気持ち良く感じるようになって、もう結構たつと思うけど、一度も?」
「はい」
「オナニーはしてるんだよな?」
「はい」
 今もネット入手のオカズ見ながらペニス扱いてるだけなのかと聞かれて動揺したのを、見逃してくれる相手じゃない。結局、動画を見てすることもあるけれど、ここでのプレイを思い出しながらする頻度が上がっていることを正直に告げた。
「ここでされたこと思い出しながらするのに、お尻、弄らないのはどうしてだ?」
「怖い、から」
「何が怖い?」
 怖い理由を一言ではっきり伝えるのは難しい。
「自分で自分のお尻気持ち良く出来ちゃうって、知りたくないというか、覚えたくないというか」
 お尻が気持ちよくなるのはあなたが上手いからだって思ってたい気持ちもあると言い募れば、彼はなるほどねと納得げに頷いた後、随分可愛いことを言うんだなと続けた。どの辺が可愛いのかはわからなかったけれど、先程の何かが、彼の機嫌を良くしたらしいことはわかった。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイおまけ6

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 発熱してたけど本当にまるっきり自覚がなかったのかと問われて、少し躊躇ってから頷けば、どこまで自覚があったか正直に言いなさいと少し強めの口調で告げられる。こういう言い方をされたら、思いつく限りのことを洗いざらい吐き出してしまうのが正解だ。
 発熱に気づいてなかったのは事実だけれど、ほんの少し躊躇ってしまった部分を見咎めたって事だから、自覚なんてなかったと言いはったら、余計に相手を怒らせてしまうのはわかりきっている。
「レポート提出が重なって、少し疲れてる自覚はあったんですけど、でも、熱出してるとは、本当に思って無くて」
 なんせここ数年、寝込むほどの体調不良なんて起こして居ないし、熱があるという状態にあまり馴染みがない。今回だって彼が気づかなければ、最近少し疲れてるかも以上のことは思わずに、少し多めに食べたり寝たりしている内に回復して終わっていただろう。
「あの、クラクラするのは興奮してるからだって、思ってたんです。家で準備してくるの初めてだったから、そのせいかなって。というか実際、いつもよりずっと興奮してたと、思います」
「熱のせいでいつも以上に敏感になってて、それで興奮が増した可能性も高いんだが、逆に、俺にとっては都合が良かったと言えるかもしれない。だから今日のところはそこまで咎めないが、もし今後、体調不良に気づいてて無理してバイトに来たら、キツめにおしおきすることも考えるから覚えておけよ」
「はい」
「わかったならいい。タオル、冷めちまったろ。温め直すから先に水分補給な」
 手の中に握っていたタオルをスルッと取り上げて、代わりにソファテーブルに乗せていたペットボトルを渡された。それを受け取れば、彼はさっさとまたキッチンスペースへ戻っていく。
 彼が戻るのを待ちながら、おとなしく渡されたスポーツドリンクに口をつける。全く冷えていない常温のそれは微妙な味ではあったけれど、それでも体は欲しているのか、あっという間に半分飲み干していた。
 そういえば、ミネラルウォーターとホットミルク以外のものをここで出されるのは、初めてかもしれない。水分補給は基本ミネラルウォーターで、たまに給料を渡される時に少し甘めのホットミルクが用意されている。正確には、たまにではなく酷く泣いてしまった日なのだけれど。
 やがてタオルを温め直して戻ってきた彼は、今度はこちらにそのタオルを渡さず、着せられていたシャツを脱ぐようにとだけ要求してきた。せっかくの彼シャツをもう少し着ていたい、などと残念がっている場合ではないのは明らかだし、言われるままに服を脱いで彼の手で体を拭いて貰う。
 温かなタオルで素早く汗を拭われた後は、ソファ脇のカゴに入れられた自分の服を着て、これで今日のバイトは終わりということになってしまった。
 発熱なんて自業自得なのはわかっているものの、やっぱり残念だなと思ってしまう。おしおきでもいいから、もっと彼に色々されたかった。なんて事を考えてしまったところで、先程の彼の言葉を思い出す。
「あの」
「なんだ?」
「さっき言ってた、都合がいいって、なんですか? あなたにとって都合が良かったから、今日はおしおきナシ、なんですよね?」
「おしおき無しってことはないな。というか今現在、まさにおしおき中だけど」
 自覚ないのと聞かれて、どういう意味かと考えてしまえば、相手はどこか困った様子を混ぜながらも楽しげに笑う。
「初めてプラグ入れての外出時に、凄く興奮したって事実がお前に刻まれたのが、俺にとっての好都合。でもって、お前を一度もイカさず帰すのが、ある意味おしおき。今日はかなり不完全燃焼のはずだけど、熱出してるの気付かずにバイトに来た罰だから、一週間悶々としておいで」
 我慢できなければ一人でお尻弄って慰めてもいいけど報告はさせるよと続いたから、次回は一週間分のオナニー詳細報告からスタートらしいと思う。お尻でイクことを覚えてしまって、最近は一人でする時もお尻が疼いてしまうことは有るのだけれど、自分で弄ったことはないし、疼いてしまう事実含めてそれを彼に伝えたことはない。でもそれもきっと、来週には暴かれてしまうんだろう。
 神妙にハイと頷けば、給料を渡すからおいでとテーブルセットの方へ促される。
 テーブルの上には見慣れた封筒と、小さな錠剤が入った小さな瓶が並んで置かれていた。多分瓶の中身はさっき飲まされたものと同じはずだけれど、でも、目の前にある瓶は先程のものと違ってしっかりラベルが貼ってある。
 思わず手にとって確かめれば、それは間違いなく、薬局などで並んでいる市販の風邪薬だった。
「あの、これ……」
「ああ、必要そうならそれも持たせるつもりだった。持っていくか?」
「いやあの、これ、さっき媚薬だって」
「そう。さっき飲ませた薬はそれ。でもプラセボ効果はしっかりあったろ」
 本物の媚薬なんて使わなくてもお前にはそれで充分だろと言われて、媚薬と言われて使われたのはこの薬だけじゃないと思い出す。
「じゃあ、あのクリームは?」
「あれも抗炎症鎮痛解熱系。しかも使ったのは少量。お前は熱でぼんやりしてたから、たとえいつものローションだって、ちょっと容器変えたら媚薬って信じ込んでいつもより感じたはずだぞ」
 でも種明かししたから次回使うのは本物の媚薬なと笑われたけれど、それすらまた偽薬を本物と信じさせるための言葉のようにも思えてしまうから、どこまで本気なのかなんて見当もつかなかった。

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雷が怖いので プレイ26

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 とても足を抱えた体勢を維持出来ない。外してしまった手を、救いを求めるみたいに彼へ向かって伸ばした。
 払われてしまうかと思った手は、けれどあっさり彼を捕まえる。身を寄せてくれた彼に必死でしがみつけば、少しばかり浮いた背中を支えるように腕を回され、ぎゅうと強く抱きしめてくれた。辛さや苦しさではなく、嬉しさで新たな涙があふれ出る。
「ったく、別のおしおき要求とは、随分えらくなったもんだ」
 呆れの交じる声は、それでももう、冷たく響いて心を突き刺してくることはない。そしてごめんなさいと告げようとした声は、またグリっと押し付けられたローターによって汚く善がる声へと変わってしまう。
「う゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛っっ」
「苦しいか?」
 かろうじて首を横に振れば、喉の奥で笑われる気配がする。体は追い詰められて苦しくてたまらないけれど、でもさっきまでに比べれば全然マシだった。彼の腕の暖かさに包まれて、彼の声を聞いて、笑う気配を感じて、心の苦しさが少しずつほどけていく。
「いい子だ。じゃあ、このままもーちょい頑張れ。おしおき、続けるからな?」
 優しい声音でほんのりと語尾を上げた問いかけに、嫌だの無理だの言えるはずもない。相手だって、拒否が返るなんて思っているはずがない。だから頷く間も強い振動は前立腺に押し当てられたままで、体はあっさりと、半ばむりやりに絶頂へ向かって駆け昇っていく。
 体にグッと力が入って、反ってしまう背中を強い腕に支えられる。玩具の振動とは別に腸内が収縮してガクガクと腰が揺れた。
「ぁああ、あ゛あ゛っ、あああ、で、るっっ」
 頭の中が白く爆ぜて、ペニスが震えて先走りよりも濃いものがドロリと吐き出されていく感覚。とうとう玩具にイカされてしまった。
 ほんの少しガッカリしたような寂しさはあるものの、彼の指に直接弄られてではなく射精できたことと、おしおきの後はいっぱい甘やかして貰えるはずだという期待混じりの安堵に包まれて、ホッと息を吐きだそうとした。
「ぁ、ぁあ、あ、なん、で」
 お尻から抜け出ていったのは彼の指だけで、ローターは依然としてそこで震え続けている。
「キツイおしおきするって言ったろ。せっかくだからこのまま、玩具だけでイケる体になろうか。他のことなんか考えてる余裕ないほど責めてあげるから、お尻で気持ち良くなることだけ考えてな」
 ブーンと鈍いモーター音を響かせながら、起動済みのローターがアナルに押し当てられた。
「っぁあ、ん」
 ゾワゾワっと一瞬にして肌を粟立てている間にも、それは振動したままゆっくりとアナルに押し込まれていく。それはすぐに腸内で震え続けるローターに接触し、お尻の中で二つのローターがカチカチとぶつかりあって暴れている。
「あっ、あっ、ぁあ、ああっ」
「次の玩具は何がいい? バイブでローターごとナカかき回してやろうか? それとも、もう二個くらいローター突っ込んでやろうか?」
 楽しそうな問いかけがどこまで本気かわからないが、想像しただけでも血の気が失せた。
「っても、自分で選べるような余裕ないよなぁ」
 結局ローターをさらに一個追加された後、プラグでお尻に栓をされてしまう。後はもう暴力的な快楽に晒されながら、彼の腕の中で身悶え続けるだけだった。
 そう。彼はずっと、キツイ快楽に暴れる体を抱きしめて、宥めるようにあちこち擦ってくれながら、頑張れとかキモチイイなとか甘やかな声を掛け続けてくれていた。いっぱい泣いたし、すぐに彼の言葉を聞き取るような余裕なんてなくなったけれど、でも宥め続けてくれているのは感じていたから、ムリだとかイヤダとかヤメテとかを口に出さずに耐えられた。ごめんなさいと繰り返すことも、許しを請うことも、しなかった。

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雷が怖いので プレイ25

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 姿勢はそのままで、彼の指が抜け出た代わりに振動の強力な小型のローターが、お尻の中に埋められる。もちろんそれは、ちょうど前立腺を刺激するような位置に置かれていて、その刺激だけで吐精しなさいと言い渡された。上手にイケたらおしおきは終わりにするから頑張れとも、口調だけは優しい意地悪で少し冷たい響きの声が告げた。
 確かにお尻だけでイケるようにというか、トコロテンはするようになった。でも未だに無機物の玩具でその状態になったことはない。ローターでもスティックでもバイブでもディルドでも、そこそこの太さがあるもので擦られてさえ、お尻がキモチイイって感じるようにはなったけれど、どうにも玩具にイかされるということに抵抗感があるらしい。
 キモチイイのにイケなくて、ドロドロに蕩けてもうイキたいと啜り泣く体を抱きしめて貰って、彼に縋りながら、もしくは彼の胸や腕や肩に顔を押し付けながら、彼の指で前立腺を弄ってもらう。大丈夫だからこのまま出せと、甘やかに射精を促されて、ようやくナカの刺激だけで吐精する。
 彼の腕の中だから、そして彼の指だから、そこまで感じることが出来るし、お尻だけでイッちゃう姿も晒せる。
 それは間違いなく、彼への恋情を自覚してしまったせいだけれど、そんな事情はもちろん彼の知るところではないし、早く玩具相手でもトコロテンする体に躾けたいんだろうこともわかっている。トコロテンの先があることも、いずれは吐精の伴わないドライオーガズムも教え込まれるんだろうってことも、知ってる。
 それにこれはおしおきだから、無理だとか出来ないとかの泣き言は言わないつもりだった。もしかしたら彼が言うように、ちゃんと集中すればローターの刺激だけでトコロテンが出来るかもしれない。玩具じゃ嫌だってのは自分の精神面の問題で、体はもう間違いなく、そこへの刺激で吐精出来るようになっている。
 でもいつもとは明らかに違う雰囲気と、時折与えられる痛みに、あっさり心が悲鳴をあげた。だって彼が全く楽しそうじゃない。途中からは黙ってしまって、冷たい瞳だけが自分に向かって注がれている。
 別のことを考えて、行為中に彼を蔑ろにしたことを怒っているのかは、正直もうよくわからなかった。
 パァンと乾いた大きな音が鳴って体が跳ねる。またお尻がじんわり熱くなる。その熱が引いて、叩かれたショックをどうにか飲み込んだ辺りで、思い出したようにまた叩かれるのを繰り返していた。
 痛みだけなら最初の数発のが痛かったと思う。今のは音の割に痛みは少なくて、ローターのもたらす強い快楽と混ざってしまうからか、その軽い痛みを辛いと思うことはなかった。でもその大きな音に驚くのと、やっぱり彼に叩かれるという行為そのものが苦しい。それを楽しんでいる様子が欠片もないから尚更、そんな真似を彼にさせている自分に、腹が立つしガッカリだし悲しくなる。
 ごめんなさいと零しても、もう、何の謝罪かと聞いてもくれない。逆効果で怒りを煽ったのかもわからないくらい、彼の様子に変化はなかったから、そのままごめんなさいを繰り返した。
 一度苦しさを吐き出してしまうと、もう止まらない。
 怒らせてごめんなさい。叩かせてごめんなさい。玩具で上手にイケなくてごめんなさい。許して。怒らないで。優しくして。こんなに苦しいのは、全部おしおきだからなの? このおしおきじゃなきゃダメなの? 他のおしおきがいい。お願い。他のにして。これもうヤダ。いつもと違う。本当にごめんなさい。もう許して。あなたの指じゃなきゃイケない。イキたくない。ごめんなさい。痛いおしおきでもいいから、せめてもっと優しい顔を見せて。お願いだからいつもみたいに笑ってて。
 グスグスと泣きながら思いつくまま口走り懇願すれば、彼は嫌そうに眉を寄せてみせた後、ずぷっとアナルに二本の指を突き立ててくる。
「ぁあああ゛あ゛あ゛」
 激しく震えるローターを捉えた指が、前立腺にそれをグイと押しつけてくるから、目の裏がチカチカと明滅した。

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雷が怖いので プレイ24

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 何か気がかりなことがあるなら先に話を聞こうかと言われたけれど、この部屋で誰に何をしたのかなんて聞けるわけがない。聞いたって同じことが自分にできるわけじゃない。ただただ余計な嫉妬を煽って、更に自分を追い詰めるだけだとわかりきっている。
 それにきっと始まってしまえば、余計なことなんて考えられなくなるはずだ。そう思っていたのに、彼の手に触れられ体がはっきりと興奮し始めても、ふとした瞬間にチラリチラリと顔も知らない別の誰かの事が頭の隅を掠めていく。
 しかもそうなることを見越していたかのように、今日は仰向けに寝かされていて、こちらの顔色を伺い続けている彼の顔はいつもより渋くて冷たい感じがしている。気持ちが彼と彼のくれる行為に集中出来ていないのだから、面白くないのは当然だろう。
 左右の膝裏をそれぞれ抱えて、なるべく大きく足を開き、膝を胸に引き寄せるようにして腰を高く持ち上げる。そうやって晒したアナルを、彼の指が拡げるように出入りしているが、バイブやスティックの無機物ではなく彼の指で直接弄られているのに、快感はしっかり拾えても蕩けるみたいな幸せな感じがなくて切ない。
「そんなに集中できてないんじゃ、たいして気持ち良くもなれてないだろ」
 大きなため息を零されて身が震えた。頷くことも出来ないし、否定に首をふることも出来ない。それなりに気持ち良くはなれているけれど、余計なことに気を取られてなければ、もっともっと気持ち良くなれるのもわかっている。
「やっぱり今日はおしおきが必要そうだな」
「ごめん、なさい……」
「それは何の謝罪?」
「大丈夫じゃ、なかった、から」
 話を聞くといった彼に、大丈夫だからいつも通り始めてと返したのは自分だ。
「うん。それで、どうしたら集中できるかはわかってんの? 気がかり、俺に話してみる気になったか? 聞いて俺に何が出来るかは別にして、お前の気持ちをそこまで引きつけてるのが何か、興味がある」
 言えたらおしおきは軽いものにするけど、言わないなら少し痛いことも入れるから覚悟してと言われた後、こちらの回答を待つように口を閉ざす。痛いことも入れると明言されたおしおきなんて想像がつかなくて怖いのに、だからって話せるかと言えばやっぱり話せそうになかった。言いたくないし、聞きたくない。
「あと五、数える間に話すって言わなかったら、キツイおしおき決定な」
 スタートしたカウントダウンは随分とゆったりしたペースだったけれど、それがゼロを数えても、結局何も言えなかった。
「お前、今、自分がどれだけマズい選択したか、自覚ある?」
 呆れ顔が寄せられて、低い声が冷たい囁きを落とす。僅かだがはっきりと怒りを孕んだ視線に恐怖して、逃げるようにそっと顔を逸らし、ごめんなさいと謝った。
「で、今度は何の謝罪? とりあえず謝っとけってだけの謝罪なんて、無意味どころか下手したら逆効果だからな?」
 指摘されてそれ以上言えることなんてなにもない。怒らせたことへの恐怖で、ただただ口に出してしまった謝罪だった。
「なんで何も言わねぇの?」
「だ……って、何、言えばいいか、わかん、ない」
「いつもはあんないい子なのに、わかんないのは別のことに気を取られすぎだからだろ」
「ひぃんっっ」
 そんな言葉とともにバチンと大きな音が響き、右の尻タブに走った痛みに思わず情けない声を上げた。強い痛みは一瞬だったけれど、ジンジンとした熱い痺れは続いている。痛みでと言うよりは叩かれたショックで、じわりと目尻に涙が浮かんだ。
 すっかり動きの止まっていた指が、またユルユルと腸壁を擦りだす。辛うじて膝裏を抱えたままでいたものの、すっかり落ちていた腰を慌ててグッと持ち上げれば、幾分柔らかな声がいい子だと褒めてくれた。でも、それにホッと安堵するような余裕はくれない。
「ぁうっ!」
 また音が鳴って、今度は左の尻タブに痛みが走った。腰を上げた分、きっと叩きやすくなっている。でもこれで逃げるように腰を落としたり、身を捩ったりすれば、よりキツイおしおきをされることになるんだろう。痛いこともすると言われて始まったおしおきなのだから、このまま受け止めるのが正解だ。
「ほら、ちょっと痛くしただけで、これ以上酷くされないようにって、ちゃんといい子な判断が出来るのに。気を逸らしているから、あんな黙ってカウントダウン待つようなバカな真似をして。話せないなら話せないって言って、自分からおしおきして下さいって言うべきだったんだよ。いつものお前なら、多分出来てた」
 そのまま続けて左右の尻タブを交互に二回ずつ叩かれ、叩かれるたびにその衝撃で声を漏らした。

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