ずっと子供でいたかった

おにショタ要素あり

 ずっと子供でいたかった。何の悩みも持たずに、仲のいい友人たちと、学校の休み時間や放課後に駆け回って遊ぶような日々を過ごしていたかった。
 大人の階段、なんてもの、別にまだ上る必要はなかったのに。それがどういうものかもはっきりわからないまま、言葉巧みに誘われてついて行ってしまった。
 だって、昔一緒に遊んで貰った記憶があったから。頼れるお兄さんだったから。
 昔みたいに、新しいことを教えて貰ったら絶対に楽しいって思ったし、他の友だちに自慢したり広めたり出来るかなって、期待していた。
 実際、大人の階段を上るのは楽しかった。お兄さんに貰ったエッチな雑誌を友だちに見せて、英雄気分を味わったりもした。
 でも友人たちに話せないことも抱えるようになってしまった。内緒だよって言われなくたって、人に言っちゃいけないことをしてるんだという認識はあった。
 無理やりされたわけじゃないし、そこまで強引にされたわけでもないから、もし最初にちゃんと拒んで、お兄さんの家に行くのを止めていたら……
 なんて、そんなタラレバは意味がない。だって自分は拒まなかったし、イケナイコトって頭のどこかではわかってたのに、お兄さんの手を受け入れてしまった。だってお兄さんに触られるのは凄く気持ちが良かった。
 ずるずると関係を続けて、流されるままにお尻まで開発されて、紛れもないセックスをお兄さんとするようになって、今更、とんでもないことをしたって後悔しても遅すぎる。
 もうやめたい、って言ったら理由を聞かれて、好きな人が出来たからと言えば、じゃあ仕方がないねとあっさり終わりになったのも、結構ショックなのかも知れない。
 どんな相手を好きになったの、とすら聞かれなかった。
 振られたり諦めが付いたらまたおいでとは言っていたけど、あんなに色々してきたくせに、引き止めるような執着はないのだ。自分だって、好きでもなんでもない相手に好き勝手させていた、という点は思いっきり棚に上げて、都合よく遊べる体だったと突きつけられて悲しくなった。
 しかもすっかり開発されきった体は、お尻を弄らないと上手く射精が出来ないまでになっている。
 初めて恋愛的な意味で好きだと感じた相手が男だったのは、お兄さんとの関係があったからという可能性がかなり高いけれど、でも、女の子を好きにならなくて良かったとも思う。こんな体で、女の子相手にセックスできる気がしない。
 だけど片想いの相手に抱いてもらう妄想でオナニーする虚しさと言ったらない。正直に言えば、物足りない。
 でも自分から切っておいてお兄さんを頼りたくはなかったし、振られたわけでも諦めが付いたわけでもない。お兄さんなら、他に好きな人が居たままでも気にしないかも、とか思わなくもないけれど、その誘惑にはいまのところ抗えている。
「お前、最近なんか悩んでる?」
 心配そうに声をかけてくれたのは、昔からの友人の一人で、お兄さんとの関係を切る切欠になった男だった。気にかけてくれるのが嬉しくて、こういうとこが好きなんだよなぁと思いはするが、でも、この悩みを打ち明けられるはずもない。
「もしかして、お兄さんとうまく行ってない感じ?」
「俺、長男だけど」
「じゃなくて、近所の頼りになる兄貴分? あのエロ本とか譲ってくれてたイイ人」
 切ったと言えばめちゃくちゃ驚かれた上に、好きなんだと思ってた、なんて言われてわけがわからない。ただ、その指摘で気持ちがぐらつくのがわかってしまった。
 こちらの動揺に何を誤解したのか、失恋を慰めだした相手を少し強めの言葉で黙らせる。
「違うって言ってるだろ!」
「じゃあ何があったか言えよ。言わなきゃわからないだろ」
「無理」
 短く言い切れば諦めたようで、いつでも話聞くぞと言って去って行く。心配してくれてるのはわかるし、そこが相手のいいとこなんだって思うけれど、でも、この件に関してはお前はずっとわからないままでいいよ。

有坂レイさんには「ずっと子供でいたかった」で始まり、「わからないままでいいよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート(1540字程度)でお願いします。https://shindanmaker.com/801664
(ざっくり100字ほどオーバーしました)

金曜日は予定(健康診断)が入っているので、更新はいつもよりずっと遅いか、最悪更新できない可能性があります。

 
 
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親戚の中学生を預かり中1

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 コンコンと部屋のドアを叩いても無反応だった。部屋にいるのは確実だから、ヘッドホンで音楽でも聞いているのかも知れない。
「入るぞー」
 再度ドアを叩いてついでに声もかけてから、ゆっくりとドアを開いた。
 ドアの隙間からこぼれるのは蛍光灯の明かりではなく窓から差し込む夕日の赤色だったから、あれ? と思いながらそのまま大きくドアを開いて中を覗く。
 目的の人物はベッドの上だった。ベッド脇にまで近づき見下ろしても、相手の反応は何もない。
 穏やかとは言い難い、眉を寄せた難しい顔をしているけれど、部屋に差し込む夕日のせいもあってどこか色めいて見える。ドキリと心臓が跳ねるのは、自身の中にある下心を自覚しているせいだろう。
 夏休みの間だけ預かる事になった、と言われて突然連れてこられた、一応は親戚らしいこの子の抱える事情について、詳しいことは聞いていない。相手は7つも年が違う中学生で、ついでに言うなら受験生で、親からはあまり構ったりせずそっとしといてやれと言われているのに、どうにも気になってちょくちょく部屋を訪れてしまう。
 口実としてお菓子やらを持参するせいだろう。邪険に追い返されはしないが、もちろん歓迎されてもいない。でもその塩対応になぜか少しホッとする。
 親へ見せる礼儀正しさや愛想の良さに、親自身は全く違和感がないようだけれど、それを見ているとなぜかハラハラするのだ。怯えているような、無理をしているような、そのくせそれを綺麗に隠しきって笑おうとする様子が、どうにも媚びて見えてしまう。
 相手の事情の詳しいことは聞いていないが、親の離婚問題に受験生を直面させたくない、程度のことは聞いている。だからまぁ、離婚問題を抱える親の間で、親に気を遣いながら生活していたなら、大人へ向ける態度がああなるのも仕方がないと、納得出来ないことはないのだけれど。
 見下ろす寝顔がますます歪んで苦しげな息を漏らすから、思わず伸ばした手で頭を撫でた。少しでも楽になって欲しかったこちらの気持ちと裏腹に、相手はビクッと大きく肩を跳ねると、ゆっくりと瞼を上げていく。恐る恐る開かれていく瞳が、こちらの顔を捉えて一度大きく見開かれ、それから何かを迷って揺れる。
 声が掛けれないまま見つめてしまえば、小さく諦めの滲む息を吐いた後、今度はニコリと笑ってみせる。艶やかに、と言えそうなその笑みの威力を、相手は間違いなく自覚している。
「する?」
 疑問符の乗った短な言葉に、けれど何を聞かれたのかわからなかった。
「貢いでくれるお菓子代程度はしてもいいけど」
「は?」
「フェラで良い?」
「ふぇっ!?」
 何を言い出しているんだと驚くこちらを見つめる相手の目は酷く冷めている。
「俺をそういう目で見てる自覚、あるよね?」
 塩対応なのはこちらの気持ちに気づかれてるせいもあるかも、と思うこともないわけではなかったが、まさか相手から直球で指摘されるなんて思わず、何も答えられずに居たら相手に強く腕を引かれて体勢を崩した。
「うわ、ちょっ」
「今更何慌ててんの。やるならさっさとしちゃおうよ。あまり騒ぐとおばさん来ちゃうかもよ?」
 ベッドの上に膝をつくように乗り上げてしまったこちらのズボンのフロントボタンに、躊躇うことなく伸ばされる手を慌てて掴んで阻止した。

続きました→

 
 
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ショタ/弟に欲情しています

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 悶々として眠れない夜、何度も寝返りを打っていたら、上方でドカッと壁を殴るような音がした。二段ベッドの上側で眠る弟が、どうやらまた側面の壁に腕か足かをぶち当てたようだ。
 痛っ、という短い悲鳴一つ漏れてこないので、きっとぐっすり眠っている。それでも暫く息を潜めて、上の様子を探った。
 自分が眠れない原因を、まだ幼い弟に知られてはならない。
 耳を澄ますとイビキとまではいかない寝息が聞こえてくる。それを確認してから、ゆっくりとパジャマのズボンの中に手を入れた。
「……は、ぁ」
 パンツの上から股間を撫でただけで、熱い息がこぼれ出す。そこは既に硬さを持ち始めているが、撫で続けるともっとオチンチンが熱く硬くなっていくのだ。
 初めての射精を精通と呼ぶそうだが、学校で習った後だったので、先日初めて吐き出したもので手を汚してしまった時も、そこまで驚きはしなかった。自分のしている事が、オナニーと呼ばれる行為だということも、もちろん知っている。
 身体が大人になっていく過程で、それはおかしなことじゃない。当たり前に皆している。実際、どうやるとキモチイイかなんて話を平気で口に出すクラスメイトだっている。
 ただ、自分が普通じゃないと思うのは、オチンチンを弄りながら、弟の事を考えてしまうからだ。
 2つ下の弟は、まだ精通もオナニーも単語すら知らないだろう。なのにその弟に、オチンチンを弄られる事を想像している。硬くなったものを握らせて、上下に擦らせ、時には舐めさせ、最後吐き出したものが好奇心で興奮しているだろう弟の顔に掛かる一連のイメージが、自分にとってのオカズだった。
 なんでそんな事を考えてしまうのかわからない。なんとなく聞こえてしまったり、たまに引き込まれてガッツリ聞かされてしまうクラスメイトの猥談では、オカズとして使われるのはちょっとエッチな漫画だったりグラビアだったりが主で、対象は必ず女性だった。
 性の対象が同姓であってもおかしくはない。というような事は授業で聞いたが、少なくとも自分の周りに男をオカズにしたと口にするヤツはいない。ましてやそれが実の弟だなんて、自分はきっと普通じゃない。
 これは絶対に誰にも知られてはいけない、自分だけの秘密だった。
「ん、……んっ……」
 声が漏れてしまわないように、引き寄せた布団の端を噛み締めながら、必死で手を動かした。パジャマのズボンの中で、くちゅくちゅと小さな音が響いていて、もし弟が起きていて、耳を澄ませていたら聞こえてしまうのではないかと思ってドキドキする。
 絶対に知られてはいけないと思うのに、何も知らずに眠っている弟が、いつか気づいて上から覗き込むように顔を出さないかと思ってしまうこともある。
 何やってんだよアニキ、なんて言いながらベッドを降りてきて、想像の中の弟のように、好奇心で触れてくれるんじゃないか、握って扱いてトロトロと溢れる液を舐めてくれるんじゃないか。という想像の中で射精した。
 耳を澄ませば相変わらず弟の寝息が響いていて安堵する。大きく一つ息を吐いて、それから後始末にかかる。
 さっさと済ませようと、手の中にとぷとぷと吐き出されたものを零さないよう握っていた拳を、ゆっくりとパジャマから引き出した。取り敢えずティッシュで手を拭いて、それから下腹部も軽く拭っておく。部屋の明かりは落としたままの暗闇の中、汚れの飛び散り具合がよくわからないからだ。手の隙間から溢れたもので汚れているかもしれない。
 このまま眠ってしまえたらと思いながらも、だるい体を起こして汚れを拭いたティッシュのゴミを握って部屋を出た。
 ティッシュはトイレに流して証拠隠滅。後は手を洗って戻ればいい。
 悶々とした気持ちは精子と共に吐き出したようで随分と頭はスッキリとしているのに、ベッドに戻って横になり目を閉じると、今度はなんだか泣きたいような気持ちになる。それをグッと堪えていると、次には適度な疲労から眠くなるのもいつもの事だった。

続きました→

 
 
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獣の子1

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 目の前の重厚なドアをノックし、返答を待ってからゆっくりと開く。
 久しぶりに踏み込んだ父の部屋は、やはりいいようのない厳格な空気が満ちていて、ビリーは緊張で息を飲む。
「暫く見ない間に、随分と大きくなったな」
 笑顔のない言葉は胸を打つことなく素通りし、ビリーも形式どおりの謝辞を述べるだけにとどめた。
「ところで、大事なお話があると伺って来たのですが……」
 ビリーの視線は、言いながら部屋の隅で存在を主張する檻の中へと向かう。
 中には自分と同じくらいか一回り小柄な子供が一人、怯えと敵意を含む瞳でジッとビリーを見つめていた。
 注目すべきはその耳と尻尾の毛の色だろう。服を纏っていないので、その尻尾が本物であることは疑いようがない。
 この小さな国で、黒い毛皮を纏うのはビリーと今目の前にいる父の二人だけだ。
 兄弟姉妹は多々いるが、黒い毛色の遺伝子を受け取ったのはビリーだけで、だからこその特別待遇と期待に、ビリー自身は辟易している。
 父は既にこれ以上の子をなすことを諦めてしまったようだが、後2・3人くらいは頑張って欲しいと常々思っていた。
 ただ、檻の中の子供が、父の子供でないのは明白だ。黒い毛を持つ父の子を、檻に閉じ込めるようなことは絶対に起こらない。
 では、目の前の子供は一体何物なのだろう?
「猫の子、だ。お前にやろうと思って連れてきた」
 ビリーの思考を読んだように、父の声がかかる。
「猫……? なぜ、猫族がこんな場所へ?」
「さあな。ただ迷い込んだだけかも知れないが、それにしても、本来ならこんな場所まで踏み込むことはしないだろう。どちらにしろ話したがらないからわからんな」
「そんな得体の知れない相手を、俺に任せてもいいんですか?」
「殺すには惜しい毛色をしているからな」
 その言葉に含まれた父の気持ちを正確に理解できたとは思えないが、ビリーは黙って頷いてみせた。
「ただし、条件はある」
「条件……?」
「そうだ。一つ目は、檻の中から出さないか、もしくは鎖に繋いで飼うこと。もう一つは、一生この国からは出さないこと」
 似たような姿形をしていても、相手が猫族である以上、扱いはペット以上のものにはならないのだろう。
 それが守られなければ、殺すことになる。そう続けられた言葉に、ビリーは慎重にわかりましたと返す。
 檻の中の子供がどこまで二人の会話を理解しているのか、猫族についてはその存在を知っているという程度にしか知らないビリーには検討もつかない。
 一体どんな言葉をしゃべるのだろう?
 意思の疎通が出来るような相手なのだろうか?
 たとえ種族は違っても、同じ毛色を持つ自分よりも小さな生き物を、殺させなどしない。キツイ光彩を放つ瞳を見つめ返しながら、ビリーはこれからどうするかを考える。
「檻は後でお前の部屋に運ばせよう」
 それは話の終了と退室を促すものだった。
「わかりました。それでは失礼します」
 一旦思考を中断したビリーは、父へと一礼してその部屋を後にした。

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電ア少年 家教と生徒の場合

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「ナツ先生、電気アンマの刑って、知ってます?」
 予定された授業時間の半分が過ぎた頃だろうか。今日はめずらしくソワソワしていると思っていた教え子の青治が、意を決した様子でそう口にした。
「電気アンマの刑?」
 つい先ほどまで青治が挑戦していたミニテストの解答を赤ペン片手にチェックしていた夏至は、答案用紙から目を離さないままで聞き返す。
「そう、です。あの、今、クラスで流行ってるんですけど、先生が小学生の頃も、ありましたか?」
「ああ、そういえば、そんなのが流行った事もあったかな」
「本当ですか? 先生も、したり、されたり、したんですか?」
 チェックを終えて顔をあげれば、真っ赤になりながらも真剣な表情で夏至を見詰める青治と目が合った。随分と興奮している。
「どうしたの?」
 本当に珍しいと思いながら、柔らかな声で問い掛ければ、教えて欲しいんです、なんて言葉が返ってきて、さすがの夏至も驚いた。しかし、表情には出さない。それくらいのポーカーフェイスはお手の物で、やはり柔らかな表情を崩さないまま、再度問い掛けの言葉を口にする。
 今度はもう少し、詳しい話を聞くために。
「僕は家庭教師だから、教えてくれと頼まれれば、教科外だろうと知ってることは教えてあげようと思うけれど、クラスで流行ってるなら、今更何を教えて欲しいと言っているんだろうね? 青治は」
「それは、あの……」
「はっきり言ってくれないと、何を教わりたいのかわからないよ?」
「されたこと、ないんです。もちろん、したことも。別にそれでクラスの友達から仲間はずれにされてるわけでもないんですけど。僕がその刑をされそうな雰囲気になると、なぜか途中で止まっちゃうんです。みんな、僕にはしたがらない。だから僕だけ、流行ってるのに一度も経験した事がない」
 夏至は目の前の少年の顎に手を添えると、不躾にジロジロとその顔を眺め見る。青治の優しく整った面立ちを、クラスメイトの男の子たちが、電気アンマなどという遊びで歪ませたくないと思うだろうことは容易に想像がついた。
「それは、みんなが青治の事を大好きってことだろう?」
「どういう意味ですか?」
「痛い事、したくないんだよ。青治には。例え遊びでもね」
「でも、僕だって……」
「されてみたい?」
 コクリと頷く顔は上気している。変な頼みごとをしているという自覚からか、それとも行為への期待からか、どちらにしろ面白そうだと思った。
「いいよ」
「本当ですか!?」
 答えれば、目を輝かせて夏至を仰ぎ見る。内心では、この綺麗な顔を苦痛に歪ませても構わないなんて、飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことだなどと思いながらも、夏至は柔らかな笑顔を湛えたまま頷いて見せた。
「ああ。このミニテスト、一問もミスがなかったご褒美にね」
 言いながら青治の手を取り立ち上がった夏至は、青治のズボンのポケットから、ハンカチをスルリと抜き取った。
「口を開けて、青治」
「え?」
「これからすることが痛みを伴うと言うことは知っているんだろう? 叫ばれてお家の方が飛んできたら、家庭教師をクビになってしまうからね。コレを噛んで、声を出すのは我慢しなさい」
「はい」
 素直に開かれた青治の口に、夏至は丸めたハンカチを押し込める。小さな口からはみ出したハンカチに、それだけでも、酷く嗜虐心を煽られた。
 そうしてから、青治の身体をベッドの上ではなく、あえて床上へと横たえる。両足首を掴みあげて見下ろせば、既に潤んだ瞳が期待の熱を孕んで見詰め返した。やはり行為への興奮なのかと思うと、笑ってしまいそうになるのを堪えるのが、いささか大変だった。まさか青治に、こんな素質があるとは思っていなかった。
「いい? するよ?」
 それでもまだ、優しい家庭教師の仮面を被ったまま、問い掛ける。ただし、頷くのを待って、股間を踏みにじる足に、容赦はしなかった。
「んんーっ……!!」
 ハンカチに吸われ、くぐもった悲鳴。
 ハンカチを吐き出したらその時点で終了するつもりだったが、青治はギュッとそれを噛み締め耐えている。痛みに身悶え、嫌々と首を振るのに合わせて、溢れた涙が散る姿が愛おしいと思った。
 もっとずっと眺めていたい気持ちを押さえ込んで開放した後は、グッタリと身体の力を抜いた青治の脇へと膝を付き、その身体をゆっくりと起こし、口からはハンカチを抜き取ってやる。
「大丈夫?」
 そう言って覗き込んだ、涙で濡れた瞳の中、興奮は去っていなかった。期待通りの反応に、嬉しさがこみあげる。
「痛かっただろう?」
 返事を待たずに、股間に手を伸ばしてそっと撫でてやった。確かめるように握りこんだ小さな膨らみは、硬く手の平を押し返す。
「痛いのに、感じてた?」
 さすがに恥ずかしいのか、赤くした顔を逸らそうとする。その顎を捕まえて、顔をジッと覗き込んだ。
「正直に言えたら、もっと手伝ってあげるよ」
「えっ……」
「こんな状態だったら、イきたいだろう?」
 再度、足で踏まれて感じたのかと問えば、困ったように頷いてみせる。
「本当は、最初から、こうなることがわかってて、誘ったの? それとも本当に、試してみたかっただけ?」
「それはっ、本当に、こんなになるなんて思わなくてっ」
 誘ったのならお仕置と言いたいところだったが、無自覚だったと言うのなら、それはそれでも構わない。
「ずいぶんいやらしい身体をしてるね、青治は。踏まれて痛い思いをしたのに、それでもここはこんなに硬くなってる」
「あ、あっ、ごめんなさい。先生、ダメっ、触らないでっ」
 少し強めに揉み込んでやれば、小さな悲鳴が甘く響いた。
「どうして? 痛いのが気持ちいいんだろう? ちゃんと、もっと手伝ってあげるよ?」
「でもっ」
「それならどうして欲しい? 青治が自分でするのを見ていてあげようか? それとも、もう一度、足で踏んであげようか?」
 見詰める顔に浮かぶ期待の色に、夏至はうっすらと笑みを浮かべた。
「足でイかせて欲しいなら、今度は下着も全部脱ぎなさい。下着が汚れたら困るだろう? 先生も靴下を脱いで、今度は直接、踏んであげるよ」
 逡巡はそう長くは掛からず、青治はズボンのボタンに自ら手を伸ばす。ズボンと下着とを脱ぎ捨てた青治の口に、再度ハンカチを押し込んだ夏至は、ハンカチを咥えるその口にそっと口付けた。
「さっきよりずっとイヤラシイ格好だよ、青治。可愛くて、うんと泣かせてあげたくなる」
 驚きに目を見張る青治に、いままで見せた事のない笑顔を湛えながら、先ほどと同じように両足首を掴んで持ち上げる。剥きだしの股間の中心では、小さな性器がそれでも頭をもたげながら、刺激を待ちわび震えていた。
 もちろん、簡単にイかせてやるつもりなどなかったが、達してしまわない程度に、まずはゆっくりと足の裏で捏ね回してやる。
「んーっ、んっ、んっ……」
 身体を震わせ、夏至の与える快楽に素直に身悶える青治を見ながら、この子供の持つマゾヒストとしての素質を、自らの手で開花させてやりたいと思った。

 
 
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電ア少年 転校生の場合

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 それは終業の挨拶を終えて教師が教室を出て行った後、カバンを手に立ち上がった直後のことだった。
「まてよ、転校生」
 クラスでも目だって大柄な、大沢という少年に声を掛けられた。
「ワイ、急いどるんやけど」
 ムダだろうなと思いながら告げれば、やはり不興を買ったようだ。
「付き合い悪過ぎるんじゃねぇの、転校生よ」
「こっちにはこっちの都合があんねん。ほな、また明日」
 自分の態度が悪いことは百も承知で、けれど、新しい学校の新しいクラスメイトと馴れ合う必要はないとも思っていた。だから、さっさと逃げ出すに限る、とばかりに、雅善は目の前に立ちはだかる大沢の横をすり抜けようとした。
「待てっつってんだろ!」
 伸びてきた手に痛いほど腕を掴まれて、しまったなと思う。体格差はそのまま明確に腕力の差を現しているだろう。
 殴り合ったら、どう考えても自分の方が被害を被る。それでも一応は覚悟を決めて、手にしたカバンを床へ落とすと拳を握った。
 力の差はあっても一方的に殴られてやる気はなかったし、自慢できるようなことではないが、喧嘩慣れはしてると思う。上手くやれば同等のダメージを相手にくれてやれるだろうし、クラスの中で面倒そうなのはコイツだけだったから、コイツさえ黙らせることが出来れば後々楽そうだとも思う。
 負けられない。
「やんのか?」
「やる気マンマンなんは、そっちやろ?」
「勝てると思ってんのかよ?」
「負ける気はせんね」
「そうかよっ」
 言うなり足を払われてさすがに反応し切れず、整然と並んでいた机を巻き込んで、雅善は派手に床に転がった。
「痛っ……」
 椅子か机の足かに打ち付けた膝がジンと痺れ、雅善は小さな呻き声を漏す。二人を囲むように見守っていたクラスメイト達の騒ぐ声が耳に煩い。
「押さえろっ」
 そんな中、大沢の扇動するセリフが耳に届く。大きくなるざわめきと、数人が近寄ってくる気配。セリフの意味を理解した時には既に、伸びてきた複数の手によって両腕と両足を床に縫い付けられていた。
「放せや、この卑怯者!」
 取り巻くクラスメイト達を、雅善はキツイ瞳で睨み付ける。どちらかというと、大沢に逆らうのが怖いのだろう。雅善の視線に一瞬はたじろぐものの、必死の形相でもがく雅善を押さえつけている。
「侘びを入れるなら今のうちだぜ?」
 大沢の上履きが、雅善の股間の上に乗せられた。
 脅しを掛けるように軽く力のこもる足先に、大沢が何をするつもりなのか悟って、さすがに雅善も血の気が失せる。それを知って、大沢がニヤリと意地の悪い笑みを見せた。
「どうしたよ? 怖くて声も出ないか?」
 見下ろす大沢の醜悪な顔に、ツバを吐き掛けてやりたい衝動が襲ったが、それが叶う体勢ではない。雅善は大沢を睨みつけながらギリギリと歯を食いしばって、こみ上がる怒りを耐えた。
「なんだよその目は、ムカツクな。いつまで気取ってるつもりだよ?」
 何とか言えよと促されて、雅善は怒りに任せて言い募る。
「お山の大将気取っとるんは自分の方やろ、大沢。そないにでかい図体しとるくせに、タイマン張ることも出来ん弱虫や。侘びなんぞ入れる必要あらへんわ」
「なんだとっ」
「うあっっ!」
 股間を踏みにじられ、雅善の口から苦しげな声が漏れた。可哀想という女子の囁きに、羞恥で身体が熱くなる。
 もしも予測と違わず大沢が『電気アンマ』を仕掛けてくるとしたら、クラス中に醜態を晒してしまうだろう。掛けられたことも、掛けたことも、ないわけじゃない。ただ、ふざけてやりあった経験しか持たない雅善は、内心恐怖でいっぱいだった。
 この大沢相手に許してくれなんて、絶対言いたくない。かといって、終業直後でほぼクラス全員が見守る中、痴態を晒すのだって嫌だ。
 大沢に足を抱えられるのを目の端で捕らえながら、雅善は覚悟を決めてギュッと唇を噛み締めた。
「ぐぅ……あああぁぁっ」
 振動する大沢の足に、噛み締めた唇を割って、雅善の悲鳴が漏れる。床へと押さえつけられた両腕を力の限りバタつかせて身をよじろうとする雅善の額には、いくつもの汗の玉が浮かんでいた。
「おいっ、その辺にしておけ、剛士」
 遠くで誰かの声がして、股間への刺激が止まる。大沢の名前がタケシなのだと、初めて知った。
「何やってんだよ、お前。俺はそんなことしろなんて一言だって言ってないだろ?」
「だけどよ、ビリー」
「いいからやめろ」
 誰かが近づいてくる足音と、それに伴い下ろされる両足と開放される両腕。
「大丈夫か?」
 ムクリと身体を起こした雅善に手を差し出したのは、見たことのない顔をしている。先ほど大沢がビリーと呼んでいたが、黒い髪と黒い瞳を持つこの男の本名ではないだろう。
「誰や、アンタ」
「隣のクラスの、河東美里。名前を音読みしてビリーって呼ばれてる」
 ふーん、と気のない返事を返して、雅善は美里の手を借りずに立ち上がった。
「ほいで、自分、首謀者なん?」
「違う」
「ま、ええけど。止めてくれた礼だけは言うとくわ。おおきに」
 雅善は身体についた埃を軽く払うと、床に投げ出していたカバンを拾って何事もなかったかのように教室の出口へ向かって歩いていく。
「待てよ、ガイ!」
 その背に美里の声が掛かって、雅善は仕方なさそうに振り向いた。
「初対面の人間に、名前呼び捨てされるいわれはないんやけど?」
「お前も俺を、ビリーなりヨシノリなり、好きに呼べよ」
「そういう問題とちゃうやろ」
「そういう問題だよ。お前と友達になりたいんだ、ガイ」
「は?」
「大沢から話を聞いて、興味を持った。大沢には、放課後一緒に遊ぼうと誘って貰うつもりだっただけなんだ」
「そんなん一言かて言われてへんけど?」
「話を聞こうともせず睨みつけてくるからだろ!」
 口を挟んだのは、当然大沢だ。雅善は肩を竦めて見せる。
「それで、ガイ。俺達と一緒に遊びに行かないか?」
「無理や」
「なんだとっ!? 折角誘ってやってんのに、なんなんだよ、お前の態度はよっ!」
「騒ぐなよ、剛士。理由くらい、聞かせて貰えるんだろ?」
 大沢を制し、ニコリと微笑みすら浮かべながら尋ねてくる美里に、雅善は小さなため息を一つ吐き出した。
「ウチ、母子家庭やねん。仕事行っとるオカンに代わって、ワイが家事やっとんのや。一緒に遊んどる時間なんてあれへん」
 同情なんていらない。
 雅善はざわめくクラスメイト達に背を向けて、今度こそ教室を後にした。

 
 
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