片想いが捨てられない二人の話1

 叶う見込みなんて欠片ほどもないような片想いを、もうずいぶん長く続けている。相手は面倒見がやたら良くて生徒との距離もかなり近い教師で、高校1年時の担任だった男だ。
 入学早々事故って入院というアクシデントに見舞われた自分の病室に、結構な頻度で見舞いに来てくれたその人は、退院後も何かと気にかけてくれたから。こちらも一人出遅れてしまった不安から頼りまくってしまったし、わかりやすく懐いてもいた。
 ただ、自分だけが突出して頼りまくったり懐きまくっていたわけではない。だって面倒見が良くて生徒との距離も近い教師が、人気がないはずがない。
 そんな相手に、どうやらガチ恋しているらしいと気づいたのはいつだっただろうか。始まりはわからないけれど、この想いを初めて伝えた日のことは覚えている。
 一生徒として扱われるのではなく、もっと特別な存在になりたい欲求を持て余して、突撃掛けて華麗に躱されたのは3年に上がった春だった。高校卒業まで1年を切ってしまった、という事実に焦ったんだと思う。それに実のところ、勝算ありって、信じていた。
 彼を慕う生徒は大勢いるが、積極的に絡みに行く生徒はそこまで多くはなかったし、その中でもかなり構って貰っている方だという自負があったのと、交際相手の性別にこだわりはないらしい情報を得ていたせいだ。
 長いこと彼を慕って周りをうろついていたせいで、本気っぽかった女生徒がいつの間にやら離脱している現象を数件把握してもいた。でも男の自分は変わらずに構って貰えているのだから、交際相手の性別にこだわりはなくても、どちらかといえばゲイよりなのだと思っていたのもある。
 大きな勘違いをしていた。本気っぽかった女生徒たちが離れていったのは、自分よりも先に彼に告白していただけだ。告白した結果、無理を悟って去っただけに過ぎない。
 そうして引いていった彼女たちは聡明だと思う。少なくとも自分のように、嫌われたり軽蔑されたりはしなかったのだから。
 思春期の若者が寄り添ってくれる身近な大人に惹かれてしまうことそのものは、ある程度仕方がないこととして彼も受け入れているようではあったから、告白時に応じる可能性が一切ないことを説明された段階で大人しく引いていれば、慕ってくれた生徒の一人として彼の記憶に残れたかもしれない。
 でも自分には失恋を認めて引くなんてことは出来なくて、最初の告白を丁寧にお断りされて以降もしつこく手を変え品を変えアプローチし続けた。相手が頑なになればなるほどこちらも躍起になって、段々と派手に迫るようになったせいで、夏が終わる頃には同学年どころか下級生の一部にまでも認識されていたようだった。
 一種の娯楽化だ。最終的に先生が落ちるかどうか、というのを興味津々に見守られていた。
 いい加減に諦めろと諭す声もあったが、応援してくれる声も多くて、自分自身、だんだんと卒業式を期限としたゲーム感覚になっていたのかもしれない。
 卒業式を間近に控えたあの日、数人の協力者を得て、先生とともに生徒指導室に閉じ込められた。狭めの空間に二人きりで、最後のチャンスとばかりに自身の服に手をかけた時の、軽蔑と落胆と、憎悪すら感じるあの目を、忘れられない。
 その目を前に怯んでしまった。何も、出来なかった。
 丁寧にお断りされた最初から叶う見込みなんてない想いだった。それをしつこく迫り続けて、嫌われるまでしたのに。卒業して、彼とは会うこともなくなったのに。
 未だに想いが欠片も風化する気配がなくて、カレンダーを前に泣きそうだと思った。
 明日、自分は二十歳になる。酒が飲める年齢になる。
 あれは恋なんてするずっと前の入院中の雑談で、彼が覚えているとはとても思えないけど。覚えてたとしても、そんなの無効って言われそうだけど。
 でも、間違いなく、いつか酒が飲めるようになったら一緒に飲みに行きましょう、という約束をした。
 病院食が口に合わなくてつらいって話から、好物の話になって、日本酒が好きだと教えてもらって、まだ飲めないのにって拗ねて、じゃあいつか飲めるようになったらって……
 スマホを持つ手も、画面に触れる指先も、かすかに震えている。我ながらバカみたいだと思っているし、そもそも連絡がつくのかも怪しいのに、どうやら試さずには居られないらしい。

続きました→

 
 
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先生、教えて(目次)

キャラ名ありません。全6話。
「生徒×先生(弟子×師匠などでも)で先生が体を使って教えていくお話」というお題を頂いて書いたもの。
大学生(視点の主)×整体スクール講師。明確な年齢差は出してませんが、気持ち的には7〜8歳差くらいのイメージで書いてました。
視点の主が大学で所属する体育会系のクラブでたまたま出会った整体師にほぼ一目惚れして、相手の働く整体スクールに入学したり、スクール卒業後に出張施術という形で彼との時間を買ったらいつの間にか相互に性感マッサージをし合う関係になったりする話。
一目惚れと言いつつ恋愛要素は少なめで、恋人未満なまま終わってます。挿入も指のみ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 下心満載のスクール入学
2話 コース折り返し地点
3話 じゃあ、体目当てで
4話 名前のつけられない関係
5話 お金を払って口頭指導(R-18)
6話 期待が膨らむ(R-18)

 
 
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恋人になった元教え子にまた抱かれる日々の幸せ

取引先に元教え子が就職してましたの続きです。最初から読む場合はこちら→

 普通の抱かれ方じゃどうせ満足できっこないから、昔みたいにして欲しい。苗字なんてもってのほかで、けれど名前でもなく、出来ればやはりセンセイと呼んで欲しい。
 晴れて恋人となった元教え子に、正直にこちらの欲望を突きつけたら、彼は少し困った様子で、けれど楽しそうに、センセイがそれでいいならと言った。願ったりかなったりだとも付け加えて。
 結局あんな関係が長いこと続いていたのは、当時はまだ無自覚だったり未開発だったにしろ、互いの性癖がうまいこと合致していた結果だったんだろう。
 そうして再開した関係は順調だった。
 今日もまた彼の目の前で、獣のように四つ這いになって腰を高くあげ、添えた左手の人差指と中指で左右にぐいと伸ばしひろげて見せながら、先細りの円錐形アナルバイブを自ら突き刺し前後させている。振動はさせていないが、それでも慣れた体はすでに充分昂ぶっている。
「あ、あアっ、イイっ、ぁあん、んっ」
 声を噛まずにこぼれさせるよう言われているので、開かれた口からはひっきりなしに音がもれていた。安アパートで行為を重ねた昔と違って、音が漏れる心配があまりないためだ。昔みたいにとは言っても、そんな風に変化したことも多々あった。
「イイ、イッちゃう、おしりだけでイッちゃうっ」
「トロトロだねセンセイ。でもまだイッたらダメだよ。イくのは我慢しないとね」
 これも変化したことの一つだろう。昔はイくのを耐えろと言われることはほぼなく、ひたすら何度もイかされ続けることが多かった。
 昔は言われるまでもなく耐えていた、というのもあるかもしれない。恋人となった甘えから、彼の前に快楽を晒す抵抗が薄くなったのを、的確に見ぬかれた結果かもしれない。
 背後からかかる声に荒い息を吐きながらどうにかイッてしまうのを耐える。なのに、続く声は容赦がない。
「だからって手を止めていいとも言ってないよ?」
「あああぁっんんっ」
 ほらちゃんと動かして。という言葉に、恐る恐る埋まっているバイブを引き出すが、背筋を抜ける快感にやはり途中で動きを止めてしまった。動かし続けたらすぐさまイッてしまいそうだった。
「むりっイッちゃう、イッちゃうから」
「じゃあ少し休憩しようか」
 その言葉にホッと出来たのは一瞬で、休憩中はバイブスイッチを入れるよう命じられる。
「弱でいいよ。それで5分我慢できたら、後はいっぱいイかせてあげる」
 いっぱいイカせてあげるという言葉だけで、期待に腸壁が蠢き中のバイブを締め付ける。しかしこの状態で振動なんてさせたら、動かさなくたって充分にキツイ。5分も耐えられる自信はなかった。
「自分で入れられない?」
 躊躇えば、俺がスイッチ入れようかと優しい声が響く。けれどその場合、ただスイッチだけが入れられるのみ、なんてことは絶対にないのがわかりきっている。
「でき、る。やる、から」
 覚悟を決めてスイッチへ指先を当てた。
「ふぁぁあんあ゛あ゛ぁぁ」
 始まる振動に、背を大きく逸らして吠える。弱とはいえ機械の振動に容赦なく追い詰められていく。
 結局半泣きで耐えられたのは何分だったのだろうか。
「だめっダメッ、あ、イッちゃぅんんっっっ痛っっ!!」
 上り詰めてしまった瞬間、尻に熱い痛みが走った。
「い、った、あっ、あっ、ごめん、痛っあぁんっ」
 無言のまま10回ほど尻を叩かれたが、これは始めから言われていたことだ。我慢できずに勝手にイッたら、そのたびにお尻を10回叩くお仕置きをするよと。
「センセイはお尻を叩かれても感じちゃうの?」
 叩かれ熱を持つ尻を優しく撫でながらふふっと笑われ、カッと顔も熱くなる。その言葉を否定しきれない自覚があるくせに、口は否定を音にする。
「ち、違っ」
「本当に?」
 先程よりもずっと軽く尻を叩かれ、こぼれ落ちた声は自分でもわかる程に甘い響きをしていた。
「はぁあん」
「次はおしり叩かれながらイッてみる?」
 言葉に詰まってしまったら、やはり小さく笑われた後、バイブを握られるのがわかった。バイブはもちろん、未だ小さな振動を続けている。
「はあぁぁ、あああ…んんっっ、んっ、ああっ」
「ほら、やっぱり気持ちいいんだ」
「いいっ、ああぁイイっ」
  バイブを抜き差しされながら軽く尻を叩かれ続け、未知の快感に体も心も喜び震えた。
 これだ、という満ち足りた思い。優しく追い詰められながら、自分一人ではたどり着けない、快楽の新しい扉を開いて行くような感覚。与えてくれたのは彼だけだった。
 しかもそこには今、紛れもなく愛があるのだ。この体を使ってただ遊ばれているわけじゃない。
 このままイッてごらんと囁く甘やかな言葉に導かれて、幸せを噛み締めながら上り詰めた。

 
 
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取引先に元教え子が就職してました

就職を機に逃げたけれど本当はの続きです。最初から読む場合はこちら→

 指名を受けて上司とともに訪れた取引先で、かつての教え子と対面した。
「お久しぶりですセンセイ」
 そう言って笑った顔に、懐かしさと安堵とで泣きそうになった。自分を呼んだのが彼なのだということは、何も言われずともわかる。
 どういう根回しをしたのか知らないが、相手方の上司も同行したこちらの上司もすでに承知しているようで、今後その会社とのやりとりをメインで担当するのが自分と彼とになった。
 昔のことを引き合いに出されて脅されるのか、あちらが元請けである強みで枕営業的なことをしろと言われるのか。どちらにしろまた彼と関係が持てる、彼に抱いてもらえる。
 そんな期待と裏腹に、彼からの誘いは一向にかからなかった。最初の一度以降、センセイとも呼ばれない。彼から苗字にさんをつけて呼ばれる違和感は大きかったし、元教え子だろうが年下だろうがこちらは下請けで、丁寧語で接するのも最初はなんだかやりにくかった。
 それでもゆるやかにその状況にも慣れていく。何事も無く、表面上は穏やかに彼との時間がすぎる。
 しかし内心はといえば、不安と絶望でいっぱいだった。なぜ何も言ってくれないのか、過去のあれらをなかったことにしたいなら、なぜ今更自分の前に現れたのか。なぜ自分を呼んだりしたのか。それとも呼ばれたと思ったことがそもそもの勘違いで、これはただの偶然なのだろうか。
 知りたい事はたくさんあるのに、どれ一つとして聞く事ができない。知るのは怖い。
 そんな悶々とする日々に、少しずつ気力も体力も削られていく。
 今日もまた、打ち合わせと称して小さな会議室に二人きりでこもっているのに、何も起こる気配はない。
「最近顔色が少し悪いみたいですが大丈夫ですか? 今もなんだかボーっとしてましたが」
「あ、はい。スミマセン。大丈夫です」
「私と仕事をするのはやはり苦痛ですか?」
「えっ?」
「不調の原因、私ですよね?」
 苦笑する顔をわけがわからず見つめてしまったら、困った様子でため息を吐かれた。
「担当、変えてもらいましょう」
 あなたの責任は問われないようにするのでご心配なくと続いた言葉に、慌てて待ったをかけた。
「待って。嫌です。担当、変えたりしないでください」
「どうして? 私とじゃあなたもやりにくいでしょう? いつも不安そうな、泣きそうな顔をするじゃないですか」
「それは、あなたが……」
「昔のことは水に流して忘れてください。なんて言えた立場じゃないですよね。あなたには酷いことをしたと思っています。若かったからで許されないのもわかってますが、謝る機会をずっと探してました」
 チャンスだと思ったんです、と彼は続ける。
「大人になって出会い直したら、もしかしたらもう少し違った関係が作れるかなって。でもやっぱり無理ですよね。無理だというのは再会したその瞬間から、あなたの泣きそうな顔を見てわかっていたのに、諦め悪くずるずると付きあわせてしまいました。でもこのままじゃあなたが倒れる日も近そうですし、もう、終わりにします。本当に、成長してないですよね。ずっとあなたを振り回してばっかりだ」
 何を言われているのかイマイチ理解しきれず、ただただ彼の言葉を聞いてしまったが、本当に申し訳ありませんでしたの言葉とともに深々と頭を下げられて、はっと我に返った。
「待って、待って。意味がわからない。ゴメン。お願いだから頭上げて」
「わかりませんか?」
 頭を上げた彼は、ここまで言っても伝わらないのかと言いたげに不満気だが、さすがにそれに怯むことはない。
「わからないよ。昔のこと、後悔してるの?」
「してますよ。もう少し別のやりようがあったんじゃなかって」
「もう、俺を抱く気は一切ない?」
「脅して関係を強要したりする気はないです。ああ、それを気にしてたのか。すみません、もっと早くそんな気はないから安心してくださいと言っておくべきでしたか」
「違う。そうじゃなくて。俺が抱いてくれって言ったらまた抱ける?」
「えっ?」
 今度は彼が驚き過ぎた様子で固まった。
「酷い真似をしたと謝るくらいなら、他の誰としても満足できない体にした責任とってくれ」
「ちょっ、マジ……で?」
 砕けた口調と呆然とする顔に内心で笑う。昔の彼の面影の濃さに、少しばかり安堵もした。だから今なら正直に、自分の気持を伝えられそうだと思った。むしろ、今伝えずにいて、このまままた関係が切れたりしたら、絶対後悔するに決まっている。
「また関係を迫られたらどうしよう。じゃなくて、どうして誘ってこないんだろうって、俺の最近の不安はそっちだったよ。お前は俺に興味がなくなったんだと思ってたから、再会した時は嬉しくて泣くかと思った。またお前に抱いてもらえるって、そんな期待をしてたんだ」
「俺から逃げたの、センセイですよね?」
「そうだな。でも、逃げてから、思い知ったよ。お前がどれだけ俺の体と心とを作り替えたのか」
「心も、ですか?」
「心も、だよ。気づいてなかったのか」
「知りませんよ。知ってたら逃すわけ無いですし」
「俺は逆に、知られたから解放されたんだと思ってた。都合よく遊んでた玩具から、好きだの言われたら面倒だろ。だから面倒が起こる前に、綺麗さっぱりサヨナラなんだなって」
「でもセンセイ、引っ越す気満々で就活してませんでした?」
「してたな」
「それ、俺から逃げたかったんですよね?」
「うん。でも逃してもらえないかとも思ってた。お前が遠方の会社はダメだって言ったら、俺には逆らえなかったし」
「一生俺に脅されていいようにされる人生でも良かった?」
「さあ。それはわからないな。最後の頃は、されてる事そのものより、自分ばっかり好きになってくみたいで怖い、嫌だ、みたいなのも多かったし。だからもし、お前が好きだとか言いながらちょっと優しくしてくれたりしたら、案外ころっとそれで満足してたかもしれないし」
「そんなの! 俺だって、思ってましたよ。むりやりいうこと聞かせて酷い真似しまくってるのに、今更好きとか言っても嘘っぽいし、逃げたがってる相手にこれ以上執着見せてもそれってただの嫌がらせだよなとか。決死の覚悟で解放したのに、今更そんなこと言われる俺の立場ってなんなんです。あーもうっ、信じられない」
「信じられないのはお互い様だろ。俺だって、お前の気持ち知ってたら、ぐずぐず泣いてないで自分から連絡とってたつーの」
「泣いたの? まさか俺が恋しくて?」
「まさか、お前が恋しくてだよ」
 ついでに言うならお前を想って自分を慰める夜は今現在も続いてる。とはさすがに口には出さなかった。
「ねぇ、めちゃくちゃ遠回りになったけど、俺と恋人になって。って言ったらOKしてくれる?」
 躊躇いがちな提案に、返す答えは当然決まっている。

続きました→

 
 
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脅されて高校生に買われています

キスのご褒美で中学生の成績を上げていますから続いていますが、単体でも読めると思います。

 アパートの壁が薄いから、声をなるべく発してしまわないように、両手で口を押さえて必死で耐えている。
 くちゅり、くちゃり、と時折小さく音を立てているのは自身の肛門からで、今日は束ねてゴムを被せたペンが出入りしているはずだ。
 結局何本入れられているのか、増やすたびに実況する声だけは耳に届いていたが、とてもじゃないが覚えていられない。その場所がどんな風に拡がり緩んでいくかもつぶさに語ってくるので、そんなものは知りたくないし聞きたくなかった。だから、相手の声は音として耳に入っても、なるべく聞き取らないようにしていた。
 彼にとって自分のこの体は、単なるオモチャでしかない。
 彼には、こちらの性対象が男であることも、抱かれる側になる方が圧倒的に多いことも、知られている。知られたその時にさっさと逃げて、彼との縁を切ってしまわなかったことが本当に悔やまれる。
 あの時彼はまだ中学生で、家庭教師先の教え子だった。待遇の良さなどもあって、彼という生徒を手放したくないと思ってしまったのが敗因だ。
 興味の対象が自分に向いているのをわかっていて、成績向上と引き換えにキスを許したりするべきじゃなかった。最初は相手からキスすることを許しただけだったはずのそれは、少しずつエスカレートして、請われて手で慰めてやったのが決定打だった。まさか盗撮なんて真似をしているとは思っていなかった。
 それを証拠として出されたら、自分は簡単に犯罪者の烙印を押されていただろう。ゲイであることすら普段は極力隠して生活していたから、少年相手に淫行罪だなんて最悪の事態だ。
 こちらのそんな事情ももちろんしっかり把握されていて、証拠動画をたてに要求されるいろいろを断りきれなかった。そうして、彼の手には証拠動画が積み上がっていくという悪循環にはまってしまった。
 それでも、彼が中学を卒業するまでは、行為自体はここまで酷くなかった。中学生の教え子へ手を出す家庭教師、という証拠動画を撮影するため、どちらかと言うと彼への奉仕が主だったからだ。
 どう言いくるめたのか知らないが、彼の高校入学を機に彼の家へ通うのではなく、彼がこちらに通うようになった。目的はわかりきっていたが、当然こちらに拒否権などはない。
 すでに勉強なんてほぼ教えていなかったが、彼が通ってくるようになってから、一緒に教科書を開いたことは一度だってなかった。この部屋で開くのはいつだってこの体だけだ。
 持ち前の知性と駆使した情報とであっさりこの体を攻略した彼は、旺盛な好奇心で現在は更なる開発に取り組んでいる。
 体も心もこの異様な関係に慣らされきって、入れられているのはペンだとわかっているのに、無機質でゴリゴリとしたそれらの束を、揺すられ軽く前後に動かされるだけで、足の先から頭の上まで緩くしびれるような感覚が走ってたまらない。どれだけ声を飲み込んでも熱い息は抑えきれず、時折たまらず甘く鼻を鳴らして、より強い刺激を求めてしまう。
「腰揺れてきてるよ、センセイ。キモチイイんだね。こんなんでもちゃんとイけそうだ」
 嫌だと示すように首をゆるく横に振ってはみるが、やはり止めてはもらえない。
「今日はどこまでなら拡げても感じられるか確かめたいって言ったよね。センセイがイくたび、ペンの数増やしてくつもりだからさ。おしりでなら何度イッてもいいからね」
 耳に届く声は甘やかで楽しげだ。
「だいぶ慣れてきたみたいだし、ちょっと一度これでイッてみようか。センセイのイイトコ、いっぱい突いてあげる」
「ふぁっ、ぁあっ、んあぁぁっ」
 動きが大きくなり、中の弱い部分に押し付けるように擦られると、両手で口を覆っていてさえ歓喜の声があふれてしまう。
「声漏れちゃってるよセンセイ。俺はいいけど、声、隣に聞こえちゃったらマズイんでしょ?」
 ほら頑張ってこらえてと囁く声も、やはり楽しくてたまらない様子だった。
「ぐうっ、……ううっ、ん……ん、んっ!」
 必死で声を飲み込むのに合わせるようにグイグイと刺激されて、体は昂ぶりきって、そのままドライでオーガズムを迎えてしまう。ギュウときつく閉じた瞳からでもボロリボロリと涙がこぼれ落ちていった。
「泣くほど気持ちよかった? もう少ししたら、少し本数増やそうね」
 ふふっと笑う気配は残酷だ。ゆるやかな刺激は続いている。
 心のなかは絶望で満ちているのに、より強い快楽を約束された体は期待に昂ったままで、それがますます心に暗い影を落としていく。
 泣き顔を晒したって相手は喜ぶばかりだとわかっているのに、涙は止まりそうになかった。

 

 唯一の救いは、およそのプレイ時間に決まりがあることだろうか。勉強など一切教えては居ないが、一応これは家庭教師の延長上にあって、彼がここに滞在するのは決まった曜日の決まった時間だけだった。
 しかしそれと同時に、救いようのない状態に追い込まれてもいる。売りはしていないと言っているのに、学校では教わらないことを教わってるからと言って、彼が月謝という名のお金を置いていくからだ。
 力関係がはっきりしきっている現在、それを突っ返すだけの勇気はなく、結果仕方なく受け取り続けている。
 いくつも年下の高校生に脅された上、金で体を自由にされていると思うと、どうしようもなく情けなくて、彼の去った部屋に深いため息が満ちた。

続きました→

 
 
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キスのご褒美で中学生の成績を上げています

 頬は紅潮し、時折こぼれる吐息からはあからさまな興奮が感じ取れる。閉じられた目元、かすかに睫毛が震えているようだ。
 差し込まれた舌の拙い動きに惰性で応じながら、やっぱりこれはマズイよなぁと、どうにかなかったことに出来ないか必死で考える。
 今キスを仕掛けてきている相手は、家庭教師先の教え子で、しかも義務教育中の中学生だ。身長は自分と変わらないくらいあるし、変声期も終えてはいるようだが、まだまだ顔つきも仕草も子どもだと思う。
 未成年に手を出したら同意の上でも犯罪。という朧げな知識はあるが、キスくらいなら犯罪にはならないだろうか?
 というかそもそもこれは手を出されているのであって、断じて手を出しているわけではない。けれどそんな言い訳が通じるはずもないことは明白だ。年齢差から言っても関係性から言っても、知られた時に悪者になるのは自分のほうだとわかりきっている。
 男と恋愛できるタイプの人間だと知られたあの時に、潔く家庭教師のバイトを辞めればよかったのだ。ということもわかってはいた。ただ、いくつか掛け持つバイト先でも、ここは一番のお気に入りだったから手放すのが惜しかった。お気に入りというか、美味しいお茶菓子が当たり前でたまに食事まで出てくる待遇の良さと、成績の悪い原因は明らかに本人のやる気の無さというか計算のうちで、頭の出来そのものは良く授業内容はしっかり理解していたから楽だったのだ。
 今遊ばなきゃエスカレーター式の私立中学に入った意味がない。と豪語する相手は、暗記項目にひたすら手を抜いている。そこにやる気を出させるのが家庭教師の本分とわかっていつつも、理解はできているがテストで良い点を取るために必死で頑張る理由がないと言われれば、それもそうだとつい思ってしまう。
 家庭教師に来ている手前、少しは成績上がってくれないと困るよと言ったら、気持ち成績を上げてくれるという、ひねくれているんだか素直なんだかわからない対応をされたりもしたが、楽な仕事場という点では間違いなくダントツだ。
 そんな中、どうやら彼の遊びの対象に、自分が入ってしまったらしい。
 男とホテルに入っていくの見ちゃったよと笑った相手は、その時点で既にかなりこちらの状況を把握していた。家庭教師として訪れる以外で彼と会ったことなどなかったから油断していたのもあるけれど、互いの行動範囲を考えれば外で互いを見かけることがあっても不思議じゃない。
「同じ相手じゃないみたいだから恋人ってわけじゃないんでしょ? どうやって相手探すの? 売春? 公園でキスされてるのも見たけど、先生はネコなの?」
 次々こぼれ落ちる問いかけに、あまりに焦って思わず一部を認めてしまったのは大失態だと言えるだろう。特定の恋人はいないし、基本ネコだ。
「お金払ったら俺にもさせてくれる?」
 などと言い出した相手に、必死で売りはしていないと断り、ちょっと大人ぶって、好奇心で男に手を出そうなんて絶対間違ってると説いてみたりもした。仮に男が恋愛対象なのだとしても、そういうことは好きな相手とするもんだ。なんてありきたりのセリフは、不特定の相手との関係を見られている以上まるで説得力がなく、鼻で笑われただけだったけれど。
「じゃあさ、キスだけでも教えてよ。ね、センセイ」
 そんなおねだりを始めた相手に、軽い気持ちでまずは成績を上げてからと返したのは迂闊だった。彼が本気で試験に取り組んだら、いともたやすく成績なんて上げられる。
 彼の親には大層感謝されたが、口が裂けても、ご褒美にちょっとキスをぶら下げてやっただけですよ、だなんて言わるわけもない。そしてきっちり結果を出してきた相手に、約束を反故にすることも出来なかった。
 それでもまだ諦め悪く、自分からキスを教えるなんて状況を避けるようにして、まずはどれくらい出来るのか見せてみろと彼のしたいようにさせている。
 必死な感じは可愛くもあるが、やっぱり相手は子どもで、基本ネコの自分に年下趣味はなく、要するに一切感じない。まぁ教え子の中学生にキスされて感じてたら相当ヤバイので、ホッと胸を撫で下ろすものの、顔を離した相手はやはり不満気だ。
「下手くそって言いたいんでしょ?」
「いや別にそんなことは」
「いいよ別に。でもすぐ上手くなるから覚悟してよね」
「覚悟?」
「今回限りでなんて言わせないから。センセイのお陰で成績上がって、親が随分喜んでたし、少しは時給上がったりもするんじゃない? 良かったね。でももし辞めるなんて言い出したら、今後家庭教師のバイト一切できないようにするくらいわけないから、そのつもりで」
 どうやって。なんて聞けなかったけれど、本気だというのは伝わってきたし、多分きっとそう出来るだけの自信も何かしらの根拠もあるんだろう。
「だからこれからも、良い点取れたらご褒美にキスさせてよね、センセイ」
 にこりと笑う顔は爽やかですらあるのに、背筋を冷たいものが伝う気がした。

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