抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ(目次)

キャラ名ありません。全26話。
同じ男を好きになったという繋がりで友人関係を続けていた社会人二人が、実は長いこと両片想いだった事が発覚して恋人になる話。ゲイバリタチ×非童貞処女(視点の主)。
共通の想い人が結婚した夜、視点の主が攻めへの恋情を隠したまま、かつて言われた「どうしても慰めが必要ならそっちが抱かれる側で」の言葉を持ち出して慰めてくれと誘い、抱かれる過程で攻めの気持ちを知っていきます。
両片想いが判明する前に、共通の想い人の代わりに抱く・抱かれる的な要素が多少混じっています。
それなりの長さがありますが、最初から最後までホテルのベッドの上です。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
ずっとベッドの上で行為中なため、性的描写がかなり多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 結婚式帰り
2話 チャンスを拾うだけ
3話 慰めてくれんじゃないの?(R-18)
4話 あいつの代わり
5話 優しくされる
6話 顔は隠して(R-18)
7話 バカって言わないで
8話 気づかれた
9話 両想いらしい
10話 一番気を許せる相手
11話 サイズ
12話 抱かれて感じるのは無理
13話 きっと次もある
14話 初めてって言えない
15話 誰にも抱かれた事がない
16話 自己拡張詳細報告(R-18)
17話 素直な気持ちを全部(R-18)
18話 早く繋がりたい(R-18)
19話 愛されている(R-18)
20話 コンプレックスと性癖
21話 緩やかな快感(R-18)
22話 真似できそうにない
23話 独占欲
24話 恋人になって
25話 お願いもう動いて(R-18)
26話 浮かれている

 
 
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ツイッタ分(2019)

ツイッターに書いてきた短いネタまとめ2019年分です。

有坂レイのバレンタインへのお題は「夢はいずれ醒めるもの」、ゆるいBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

街にチョコが溢れる季節になったら、そっとあれこれ吟味して、これだという一つを選んで購入する。最近はじっくりあれこれ眺められるから、ネット通販することも増えた。
どんな風に渡すか、渡したらどんな顔をするか、どんな反応が返ってくるか。バレンタインまで何度も繰り返し考える。告白して、受け入れて貰って、晴れて恋人になるような、そんな甘い夢を見る。
そして14日になったら箱を開けて、たくさん重ねた甘い夢ごと、自分でバリバリむしゃむしゃ食べる。だって、僕から君へのチョコなんて、渡せるはずがないんだもの。

1ツイート短縮版 → 街にチョコが溢れる季節になったら、これだという一つを選んで購入する。渡したらどんな反応が返ってくるか、何度も繰り返し考える。晴れて恋人になるような、そんな甘い夢を見る。 そして14日になったら、重ねた夢ごとバリバリ食べる。だって、僕から君へのチョコなんて、渡せるはずがないんだもの


エイプリルフール

 今日は入社式だなんだで、まともに仕事なんて出来ないのはわかりきっている。しかし後々の事を考えたら、少しでも進めておきたくて、ほぼ始発に近い電車に乗って出社した。
 最寄り駅の改札をくぐる辺りで、声を掛けられ振り向けば、同じ部署の同僚が苦笑顔で片手を上げている。
 少しだけ立ち止まって、他愛ない話をしながら並んで会社へ向かう。随分早いですね、だとか、お前もだろ、だとか、入社式面倒、だとか、仕事させろよなぁ、だとか。
「ところでさ、凄くいい機会だと思うから、ちょっと告白したいんだけど」
 会社のビルに入ってからは周りに誰も居なかったけれど、それを口に出したのはエレベーターの中だった。二人きりの密室ってやつだ。
「え、懺悔的な何かですか?」
 当たり前だが仕事絡みと思われたようだ。
「いや、恋愛的な方」
「ああ、そっち」
 面倒事を想像してか嫌そうな顔をした相手に、にやっと笑ってそう伝えてみれば、相手はなんだと言いたげにあっさり流してしまう。
「なんだつまらん」
 もっと驚けよと言えば、だってエイプリルフールですもんと、不満げに口先を尖らせる。なんだか拗ねているみたいでドキリとする。
「なんつー顔だよ」
 ドキリとしてしまった事に内心少々慌てながら、それをごまかすように、告白されたかったのかと聞いてやる。わかりやすく、からかい混じりの口調と顔で、相手の顔を覗き込んだ。
「そうですよ」
 不満げに口先を尖らせたままの拗ねた顔が近づいて、一瞬の接触の後で離れていく。
 言葉なんて出ない。ただただ目を瞠って相手を見つめてしまう中、目的階への到着を告げる音が鳴り、エレベーターが停まった。
「エイプリルフール、って事にしておきます?」
 クスッと小さな笑いとそんな言葉を残して、開いた扉から相手が出ていくのを、やっぱりただただ見送ってしまった。
 ゆっくりと扉が閉じて行く中、振り返った相手が、やっと驚く顔を見せていたけど、もちろん欠片だって楽しくない。降り損ねたエレベーターが動き出して、一人きり、小さく呻いて頭を抱えた。

 

有坂レイへのお題は「ホント、君って奴は」、赤裸々なBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

口の中に吐き出されたものをごくんと飲み込めば、焦った様子で名前を呼ばれた。顔を上げて、ニヤッと笑って、口を開けて、何も残ってませんよと教えるように舌を出す。「ホント、君って奴は」呆れた顔が寄せられて、けれど差し出す舌を食まれる瞬間には嬉しそうに笑うから。ホント、君って奴は

 

有坂レイへのお題は「君がいない今」、ゆるやかなBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

君がいない今、日々考えてしまうのは、君がどれほど僕を想っていてくれたかと、僕がどれほど君を愛していたかだ。なぜ君が去ったかはわかっているし、君の決意を踏みにじりたくなくて、それらを受け入れ追うことはしなかったけれど、でもやっぱり後悔している。君に、会いたい。会って好きだと言いたい

 

一次創作BL版深夜の真剣一本勝負 第287回のお題は、
・おやつ ・疲れた彼に ・「好き」ってなに?

 なんで、と聞かれて正直に好きだからと言ったら、相手は一気に雰囲気を固くした。
「好き、ってなに?」
「なにって言われても、好きは好きだけど。だいたい、そっちこそ、好きだから受け取ってるんじゃないの。というか、また持ってこいって言ったのそっちじゃない?」
 たまたま放課後下駄箱でかち合った相手があまりに疲れた顔をしていたから、その日の部活で作ったお菓子を一部分けてやったのが始まりで、また持ってこいよの言葉に応じて部活どころか家で作ったものまでアレコレ渡しているのは、彼があまりに美味しそうに食べてくれるから、というその一点につきるのだけど。
「俺が好きなのはお前じゃなくてお前が持ってくる菓子だけ、なんだけど」
 おもいっきり「菓子だけ」の部分を強調して言われて、彼が何を誤解しているかがわかった。
「僕が好きなのもお菓子作りだけだからご心配なく」
「は? つかこれ、お前の手作り?」
「え、今更そこ!? てか市販のお菓子じゃないのはわかって食べてたよね? 誰の手作りだと思ってたんだよ」
「お前の彼女、とか?」
「うっわ最低」
「なにがだよっ」
「僕の彼女の手作りと思いながら、それを僕に渡せってねだるその神経が信じられないんだけど」
「よその男にホイホイ渡せる程度の付き合いなんだろ」
「って思ってたって話ね。勝手な想像で決めつけてましたって話ね」
「あーくっそ、そうだよ。悪かったよ。つか、やめんなよ」
「やめるって何を?」
「菓子、持ってくるのを」
「えー……」
 渋れば焦った様子で、いやほんとゴメン、だとか、また食わせてくれよだとか言い募る。それを黙って見ていれば、今度は情けない顔になって、どうすれば許してくれるんだよと途方に暮れた様子で告げるから、少しばかり驚く。
「そんなに好き?」
「すげー好き」
 言い切ってから、お前が作る菓子の話なと慌てて付け足すから笑ってしまった。
「いいよ。そこまで好きって言って貰ったら、ヤダって言えないよ」
 あからさまにホッとする様子を見ながら、あれこれちょっとマズイかなと思う。好きなのはお菓子作りだけだからご心配なく、という言葉を撤回することになる日が、いつか来そうな予感がした。


これで今年の更新は最後になります。

一年間お付き合い下さりどうもありがとうございました。
今年もまた連載中作品(理解できない)が年またぎになってしまいましたが、年明け後、通常通り更新できるようになるのは6日以降になりそうです。が、連載途中の作品をそこまで放置するのは躊躇われるので、なるべく途中にも更新できるよう頑張りたいと思っています。

 
 
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生きる喜びおすそ分け(目次)

キャラ名ありません。全39話。
6月頃にツイッターで話題になっていた某電車広告から派生した、月収30万で楽しそうな男と月収50万でつまらなそうな男だったらどっちが攻めでどっちが受けかというアンケートで、私なら50万×30万だなぁと思ったのがこの話を書く切っ掛けになりました。

明確に給料が50万だとか30万だとは書いてませんが、同じ会社の上司×部下(視点の主)で、これも明確には書いてませんが年齢差もそこそこありそうな二人の話。
たまたま二人きりで飲んでいた酒の席で、生き甲斐のないつまらない人生だという上司相手に、人生楽しみまくっている視点の主が、楽しさ分けてあげたいと誘って恋人になります。しかし元々尊敬する上司との名ばかりの恋人ごっこが辛くなって、最後にという気持ちで誘ったラブホで上司への恋心を見抜かれ引き止められた結果、上司主導で温泉宿に一泊旅行が決定。
部屋にお風呂が3つもある豪華な離れの部屋で体だけは気持ちよく抱かれながら、二人の関係を見つめ直したり、今後を考えたり、自身の想いの確認を経て、最終的には相手に「君が傍にいてくれる人生は楽しい」と言わせます。
最後、お腹の中に出されたものを攻めの目の前で排出したり、攻めに掻き出されたりの行為があります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的な内容を含むものが多いので、性的な描写が多い話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 上長との交際決定
2話 つまらないデート
3話 ラブホに誘ってみた
4話 義務感でもいいから
5話 自分で慣らす
6話 無神経な質問
7話 仕切り直しの提案
8話 どれくらい好き?
9話 接待デートプラン一覧
10話 離れのある温泉宿
11話 上手なキス
12話 うんと気持ち良ければ
13話 何をさせているんだろう
14話 違う、の意味
15話 嬉しい楽しいより安堵
16話 それぞれの価値
17話 早く最終手段使って(R-18)
18話 あっさり2回(R-18)
19話 イキたいのに、イキたくない(R-18)
20話 言わせたかった(R-18)
21話 余裕なんてないよ
22話 器用さの方向性(R-18)
23話 おちんちんがいい(R-18)
24話 頑張ってくれてる(R-18)
25話 一緒にイキたい(R-18)
26話 やや強引にトコロテン(R-18)
27話 綺麗なままのベッド
28話 恋人続けてみてもいい
29話 夜明け前
30話 日の出が見たい
31話 確認(R-18)
32話 ゴムを着けられる
33話 抱かれながら(R-18)
34話 このために、生きてた(R-18)
35話 中出しの約束(R-18)
36話 奥を突かれながら(R-18)
37話 ちょっと押さえてて
38話 いっぱい出たね(R-18)
39話 君がいれば(R-18)

 
 
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今更なのに拒めない(目次)

キャラ名ありません。全18話。
ED(勃起不全)バツイチ×アナニー好きノンケ(視点の主)。元同級生な社会人二人。
離婚したと押しかけてきた攻めを半年ほど居候させた結果、恋人になる話。
高校時代、二人の間で性欲発散目的なセックス経験あり。当時双方ともに恋愛感情なし。
過去にセックスをしていた仲だったこともあり、攻めが遊んでくれと言って伸ばしてくる手を拒めない中、アナニー好きを知られて行為がエスカレート。自己開発予定だったS字結腸を攻めの手で開発されたり、勃たない攻めに高校時代との違いを感じたりしているうちに双方に恋情が育っていて、先に自覚した攻めに口説かれ気持ちよく抱かれている間に受けも自身の好きを自覚していきます。
なお、攻めは受けを抱くために医者に通ってED克服。
S字結腸責めの描写多め。本人無自覚なのであまり描写は無いですが潮吹きあり。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的な内容を含むものが多いので、性的な描写が多い話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 10年振り
2話 同居3か月経過
3話 一方的に手で(R-18)
4話 アナニー道具バレ
5話 疑似セックス
6話 玩具でS字結腸開発(R-18)
7話 キスをしながらS字で(R-18)
8話 抱かせて欲しい
9話 告白
10話 久々のペニス挿入(R-18)
11話 トコロテン×2(R-18)
12話 やっと奥まで(R-18)
13話 キスしたらきっと(R-18)
14話 自ら腰を揺すって(R-18)
15話 S字の先を狙う(R-18)
16話 知らない場所まで貫いて(R-18)
17話 好きだから一緒にイッて(R-18)
18話 またしようね

 
 
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嘘つきとポーカーフェイス

 たっぷりのローションが激しくかき混ぜられる、ジュブジュブぐちゅぐちゅ湿った水音。リズミカルに相手の腰を打ち付けられる尻タブから上がる、パンッパンッと肌が弾かれる音。突かれるたびに口から押し出されてくる、ほぼ「ア」の音しかない自身の嬌声。
 そこに微かに混ざる、相手の興奮を示す荒い息遣いを必死で拾い集めながら、相手の腰使いに翻弄されるまま、ぎゅうとシーツを握りしめて絶頂を駆け上った。
「ああああああっっ」
 頭の中が真っ白になって、体がふわっと浮くような、この瞬間がたまらない。気持ちよくて、幸せで、ずっとこの時間が続けばいいのにと思う。
 けれどあっさり体を離した相手は、お疲れの一言だけ残し、さっさとシャワーを浴びに行ってしまう。
 相手の姿が部屋から消えるのを待って、腹の深くから、諦めの滲む息を吐いた。何度体を重ねたところで、こちらの体がどれだけ相手に馴染んだところで、相手には情の一つも湧かないらしい。
 多分きっと、これから先もそれは変わらないんだろう。
 彼が自分を抱くのは、遠い昔に築いた友情の残滓でしかない。今のこの関係は、彼に友人として見限られるまで限定の、酷く特殊なものだった。
 あっさり置いていかれる寂しさも、甘い余韻の一欠片さえ貰えない惨めさも、回を重ねるごとに大きくなるから、さっさと見限って欲しいのに。人として堕落しきったこんな自分に、なぜここまで付き合うのかわからない。
 やがて戻ってきた相手が、無言のまま身支度を整え、最後にベッドの傍らに立って財布を開く。そして取り出した十枚の壱万円札を、なんとも気軽に枕横に置いてくれる。
 しかしさすがにそれに触れることは出来なかった。
「数えなくていいのか?」
 起き上がることもせず、ただただ黙ってベッド脇に立つ相手の顔を見上げていれば、そんな言葉が降ってくる。別に数えなくたって十枚あるのはわかっている。この男はいつだって、こちらが必要だと言っただけの枚数を、きっちり差し出してくれる。
 受け取って、その場できっちり枚数を確かめて、安堵の表情を作って、これで助かったよありがとうと告げる。そんなルーチンを繰り返す気にはなれなかった。
「いい。信じてるし」
「そうか」
 僅かな気配だけだったけれど、じっと見つめていたせいで、笑われたらしいことに気づいてしまった。一発十万という法外な値段をふっかけた上に、ありがとうすら告げる気はないと言っているのに、なぜ笑ったりするのかわけがわからない。
「じゃあまたな」
 あんまり派手に遊びすぎるなよと、これまたいつも通りの言葉を残して帰ろうとする相手を、迷った末に引き止める。
「待って」
「どうした?」
 とうとう体を起こし、掴んだ万札を握って、相手を追いかけるようにベッドを降りた。
「やっぱりこれ、いらない」
「なぜ?」
「嘘だから」
「何が?」
「全部。最初から、何もかも。借金ないし、ギャンブルしないし、在宅で仕事もしてる」
 意を決して告げた言葉には、やはりすぐには何も返ってこない。その顔からは、怒っているのか呆れているのか、なぜそんなことをと戸惑っているのかすらわからない。
 でももういい。
「お前がずっと好きで、苦しくて、でもお前から離れたくなくて、どうしていいかわかんなくなってた頃だったんだ。あの時、お前が風俗でも行くかって言ったの、冗談だってわかってたのに、とっさに金に困ってる風を装って、風俗代わりに俺を使ってって、誘った」
「さすがに十万もふっかけたら、罪悪感で黙ってられなくなったか?」
「それもあるけど、でも十万ふっかけてもまだ俺を見限らないから。お前が、またなって言ったから。だからもう、俺から止める」
「ああ、なるほど。それで?」
「それで、って……」
 何を聞かれているのかわからず同じ言葉を繰り返せば、止めてその後どうするのかという質問らしかった。
「それは、今までお前から引っ張った金全額返して、お前の前から、姿、消す、とか……?」
「却下だ」
 そこまで明確に考えていたわけではないが、友人に戻れるはずがなく、こんなことをしでかした後じゃ今後合わせる顔もない。と思ったのに、なぜかキツい口調であっさり拒否された。
「却下って、じゃあ、お前がして欲しいように、する。から、なんでも言って」
「なんでも、ね。なら、俺が呼んだらいつでも黙って脚開いて、好きなだけ好きなようにヤラせる性奴隷にでもなるか?」
 出来るわけ無いくせにとでも言いたげに、フッと誂うみたいに鼻で笑われ、ぐっと拳を握り込む。
「お前、が、性奴隷、欲しい、なら……」
「ばぁか。本気にするな。それよりお前は、なんで俺がお前を見限らず、ふっかけられてもお前が必要だっていう言い値払い続けてたかを考えろ」
「同情、だろ。あと、お人好しだから。お前がクズな友人にたかられても見捨てられないようなヤツだから、俺みたいのに付け込まれんだよ」
「違うね。お前もずっと俺に付け込まれてんだよ。金のためにって何度も抱かれて、今じゃすっかり、ケツで感じてイケる体になってる。俺がお前の言い値を払うのは、出し渋って、お前が俺以外の誰か相手にその体使った商売を始めないようにだ」
「それ、って……」
「俺が欲しいのは性奴隷じゃなくて恋人」
 その言葉に、もちろん否を返す気はない。ないけれど。
「あんだけセックスしてて、お前に好かれてるなんて、一欠片だって感じたこと無いんだけど」
「好きだとバレたら、どこまでも毟りに来るだろうと思ってた。金でお前を引き止めてるのに、それを知られたら致命的じゃないか」
「なら、次セックスする時は、……」
 好かれてるとわかるような抱き方をして欲しい、とまでは言えずに口を閉じてしまえば、ふっと柔らかな笑みがこぼされた後で腕を掴まれる。
「え、っちょ、」
 そのままベッドまでの短な距離を連れ戻されて、今までずっと隠されていた彼の想いを、これでもかというほど教えて貰った。

 
 
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お隣さんが気になって

 たまにゴミ捨ての時間が被って、アパートからゴミ捨て場までの片道2分程度の距離を、おはようございますの挨拶と、その日の天気だとか本当に他愛のない雑談でやり過ごすことになる隣人は、いつもなんだか随分もさっとした格好をしている。端的に言えば、寝癖頭に不精髭に上下スウェットにサンダルだ。
 なぜ片道2分なのかというと、自分はそのまま駅へ向かい、相手はアパートへ戻っていくからで、多分在宅仕事なんだろうけれど、どんな仕事をしているのかなどは聞いたことはなかった。挨拶すれば挨拶が返ってくるし、天気の話にも相づちくらいは打ってくれると言うだけで、とてもお仕事何されてるんですか、なんて聞ける雰囲気はない。
 そんな彼が今、いつもとは全然違った格好で、アパートの階段を降りてくる。ビシッと決めて、というほどではない普通のカジュアル寄りな服装ではあるけれど、髪も髭も整えられているし、靴だってスニーカーだけど見慣れたロゴが付いたブランド物だ。
 普段のアレを知らなければ、素直に格好良いなと言えたと思う。ただ、どうしたって、いつもとの違いに驚くのが先だった。
「こ、こんばんはっ」
 驚きからか声が上ずってしまって恥ずかしい。しかし相手は気にするでもなく、いつも通りのそっけない挨拶を返してくれた。
「ああ、こんばんは」
「今からお出かけですか?」
 普段ならこんなこと絶対に聞かない。けれど気になって仕方がなくて、思わず口から出てしまった。
「はぁ、まぁ、ちょっと飲みに」
「お一人で?」
「ええ、まぁ」
「あ、じゃあ」
「すみません、急ぐので」
 一緒に行きたいと言い出すより先に、明らかに会話を切られて、相手が足早に去っていく。
 それ以来、なんとなく、隣人に対する見方が少し変わってしまった。というか、興味を持ってしまった。
 とりあえずで、一緒に飲んでもいいかなって思ってもらえるくらい、もっと親しくなればいいんじゃないだろうか。という方向で頑張ってみた結果、あっさり駅前の居酒屋で飲む仲にはなった。職業が作家だとも聞いた。ただし、格好はもっさりが多少マシになった程度だし、ペンネームは恥ずかしいからと教えて貰えていないままだった。
 おしゃれすれば格好良いのにもったいないなーとは思うし、たまに口に出したりもしていたけれど、でももっさりのままでも、博識で聞き上手な彼と飲むのは普通に楽しい。正直にそう言えば、物好きだとは言われたけれど、相手だって満更でもなさそうだったから、隣人と飲みに行けるような仲になれたことをただただ喜んでいた。
 そんなある日、また、お洒落な彼が駅へ向かうのを見かけた。今回はアパート前ではなかったから、相手はどうやらこちらに気づいていない。
 これはチャンスなのでは?
 そう思った直後には、彼の後をそっとつけていた。
 電車に乗って移動した彼は、繁華街の中を迷いなく抜けていく。見失わないように必死で追ったが、けれどあっさり見失った。なんせ人が多すぎる。
 すごすごと自宅へ引き返す道すがら、携帯から彼が消えた辺りの情報を探った。なんとなくそうなのかなと思った予想は当たりで、同性愛者が集まる地域としてそこそこ有名らしい。
 彼がゲイだと確定したわけでもないのに、なんだか胸がドキドキする。
 胸のドキドキがもやもやに変化するのはあっという間で、抱えきれなくなったもやもやを持て余して、隣室のドアベルを慣らしたのは二日後だった。
「あの、一昨日の夜なんですけど、すみません、後、つけました」
 出てきた相手にまず謝れば、驚いた後で苦々しげに、わかった、とだけ返される。何がわかったっていうんだろう? なんて一瞬考えてしまった間に、じゃあそういうことで、と扉を閉められそうになって焦る。
「え、ちょ、待って。まだ」
 肝心な話が何も出来ていないのに、扉を閉められたらたまらない。
「いやいいよ。わざわざ言いに来るとか、真面目だね。でもこっちに気を遣うことないし、今後は別に、挨拶だってしなくていいから」
「は? なんで?」
「なんで、って、ゲイとか気持ち悪いだろ?」
「あーやっぱそうなんだ」
 もやもやの原因はこれだった。彼は本当にゲイなのか、男が恋愛対象になるのか、気になってたまらなかったせいだ。
「良かった」
「は? 何が、良かったって?」
 眉をひそめて聞き返されたから、ゲイで良かったと繰り返した。ついでに。
「恋人に、立候補したいんですけど」
「何言ってんの。君、ゲイじゃないだろ」
 またしても良かった、と思う。恋人がいるとか、好きな人がいる、とか言われなかった。
「でも、好きなんですよ、あなたを。多分、恋愛的な意味で」
 しばし無言が続いた後で、出直してこい、と言われて扉が閉まってしまったけれど、諦める気なんてさらさらない。というよりもむしろ、諦めなくて良さそうだ、という手応えを感じてしまった。だって、無理だダメだ嫌だの拒絶じゃない。出直してこい、だ。
 とりあえずは近日中に一度、飲みに誘ってみようと思った。

 
 
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