兄は疲れ切っている10

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 閉塞感に迷ってはいるものの、金曜夜から土曜の夜までのどこかしらに時間を見つけては、誘い出して兄を抱く。
「ぁ、はぁ、んな、しなくて、も」
「まぁ、確かにじゅうぶん解れてはいるけどさ。兄貴が自分で後ろの準備するようになったからって、足開かせて突っ込むだけとかするわけないって、何度も言ってるだろ」
 お腹の中を空にしてたほうが突っ込まれるのは楽だろうし、かと言って弟の手で洗われるのなんて絶対に嫌だと思うから、兄が自主的にお腹の中を空にしてくれることそのものは歓迎するけれど、その後自分で慣らして拡げてローションを仕込むような真似まではしなくていい。多分さっさと突っ込んで、さっさと終わって欲しいんだとは思うけれど、そう思うほど、逆に突っ込むまでの前戯に時間を掛けてやりたくなる。
「んっ、けど」
「いいから。俺がしたくてやってんの」
 言えば困ったように曖昧な笑みを浮かべて、逃げるように顔を背けた上に、持ち上げた腕で目元を隠してしまう。その腕をどけるような真似はせず、しつこく穴だけを弄って拡げて、中のイイトコロを優しく柔らかに擦っていく。
「っぁ、ぁぁっ、んぁ」
 逃げるみたいに顔を隠しても、口を閉じて声を噛むようなことはない。
「ん、きもちぃ、そこ、ぁ、あっ」
 控えめに喘ぎながら、ちゃんと気持ちがいいとも教えてくれる。けれど。
「ゃっ、つよ、いっ、ぁ、やだっ、ぁあっ」
 刺激を強くすればすぐに嫌がってしまうし、それを無視して続ければ、嫌だと訴えるのを止めて静かに泣き出してしまうのも経験済みだ。全く喘がなくなるわけじゃないけれど、漏れる喘ぎも確実に減るから、気持ちがいいと素直に声を漏らしてくれるのは、兄の演技とまでは言わなくても確実にこちらへのサービスではあるんだろう。
 そんな現実を突きつけられるのも嫌だから、時々強く弄る意地悪を挟んでしまうものの、追い詰めるような真似はせずに嫌だと言われたら引くようにはしている。
 そうやって丁寧に前戯を施すこれが、どれくらい兄の心の負担になっているのかはわからない。かと言って、そうする以外のやり方だってわからなかった。
「ぁ、もっ、もぉ、ぁあっ、なぁ、って」
 やがて、早く挿れろとねだるような声に急かされる。少しだけ媚びたような甘い声が、胸の奥をチクチクと刺激する。どうせこれもサービスだとわかっているからだ。
「もーちょっと」
 ここで焦らさず突っ込む場合、指を引き抜いた時に兄が相当安堵するらしいのを知っている。だから素直に応じてやることのほうが多いのだけれど、今日はもう少し兄に求められたかった。せめて、言葉だけでも。たとえ演技だとしても。
「ん、ぁ、……そん、な……も、」
 待てないと弱々しく続いた言葉にも、再度もうちょっとと返して指を動かし続ければ、どこか諦めに似た気配が滲み出す。
「なぁ、も、いれて。早く、お前、ちょうだい」
 焦らしだした時に、どうすればこちらが動くのか、兄だってきちんと学習している。今日はこちらのもうちょっとに付き合ってくれる気はないらしい。
 ここで応じず、更にもうちょっとと焦らしてやりたい気持ちはもちろんある。やってみたこともある。結果、兄は諦めを深くしただけだった。
 兄を焦らして追い詰めて、その体をグズグズになるまで甘やかそうとすればするほど、兄の心が閉じていく。こちらが甘やかに接していれば、もっと簡単に絆されてくれると思っていたのに、全く上手くいかない。
 今度はこちらが諦めのため息を吐いて、兄の尻穴に埋めていた指を引き抜いた。

続きました→

 
 
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