バレたら終わりと思ってた8

1話戻る→   目次へ→

 どうしよう。逆に、女の子の姿じゃ抱く気になれないとか言われてしまうんだろうか。
 脱いだら結局は男の体なんだし、顔だけ女の子なんて違和感が酷くてむしろ萎える。とか思っている可能性だってある。
 多分、思ってても言わないけど。言わないだろうからこそ、本心でどう思っているのかわからなくて怖い。
 もしかしたら、メイクはない方が自然でいい、というのは、それを遠回しに伝えていたってだけかもしれない。自信がないって言っちゃったから、これ以上、メイクを落としてこいと強く言えないのかもしれない。
 どうしよう。自分から、やっぱりメイクを落としてきますって、言うべきだろうか。
 そんな風にグルグルと考えて迷っていれば、先に口を開いたのは相手の方だった。
「あのさ、俺が君のどこに惚れてるか、知ってる?」
「え……?」
 こっちおいでよと呼ばれて、ベッドに腰掛けて待っていた相手の前まで近づけば、隣に座るようにと促される。従えばそっと片手が握られた。
 自分のよりも大きくて温かな手に包まれて、少しばかり肩から力が抜ける。力が抜けてから、随分緊張しているらしいことを自覚した。
「こっち向いて」
 その言葉にも素直に従えば、真剣な顔がじっとこちらを見つめている。気まずいような恥ずかしいような気持ちで、視線が泳いでしまったけれど、それもやっぱり、俺を見てと促されてしまう。
「あ、の……」
「可愛いよ。凄く、可愛い」
「うぇっ!?」
 今までずっと、男バレを防ぐためにあまり接触しすぎないようにしていたせいで、この至近距離でド直球に可愛いなんて言われるのは初めてで焦らずにはいられない。
「俺の女性の好みを意識して、頑張ってくれた結果だって知ってるから、余計に可愛く感じてる部分もあるかもな」
 キスしていい? と聞かれて軽く頷けば、そっと唇が触れ合って、でもすぐに離れていく。そのまま深く口付けて、押し倒してはくれないらしい。
 自分から追いかけるように再度口づけて、先をねだるように舌を差し出したら、このままなだれ込んでしまえるだろうか。なんて想像はするものの、自分からその一歩を踏み出す勇気はなかった。
「この前、気持ちよく喘いでくれてる最中に、俺が何度も可愛いって言ってたのは覚えてる?」
「そ、そりゃ……」
「でももっと前から、言わなかっただけで可愛いとは思ってたよ。男の子に可愛いって褒め言葉にはならないよなって思って言ってなかっただけで、俺は、メイクを落とした君の素顔も、普通に可愛いなって思ってる」
「え、えと、ありがとう、ございます?」
 言いながら、お礼を言うような場面だろうかと疑問に思ってしまったのが、そのまま声に乗っていたようで、相手がクスっと小さく笑う。
「嫌じゃないなら良かった」
「こ、恋人に、可愛いって言われて嫌なわけない、です」
「そっか、嬉しいな」
「そりゃ、この顔で嫌な思いしたこともありますけど。背が低めなのもコンプレックスありますけど。でも、そのおかげで、あまり違和感ない女装が出来てるのも事実ですもん」
「あまり違和感ない女装が出来てるのは、顔とか身長がってより、君の観察力とか努力の結果な気がするけどね」
「え?」
「めちゃくちゃ研究して、練習もしたって言ってただろ。しかもそれ、俺に女って思わせるためだけの努力でしょ」
 そういやそんなこともぶち撒けたっけ。あの日はどうせもう最後だって思ってたし、別れたくないなんて気の迷いだと思ってたし、だいぶヤケになってたから、言えばドン引きだろうことをむしろ率先して口にした。
「そういうとこにさ、凄く惹かれてる」
「えっ?」
「俺が君のどこに惚れてるか知ってるか、って話」
「え? えぇっ?」
 ドン引きだろって思ってた話が、惚れてる理由としてあげられたらしいことに、混乱ばかりが加速して意味のある言葉が出てこない。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

バレたら終わりと思ってた7

1話戻る→   目次へ→

「えっと、準備、する?」
「どんな?」
 どんな準備が必要かを必死で考える。
「その、きれいに洗う、とか……?」
「そうだね。で、自分で浣腸とかしてみた経験は?」
「え……」
「うん。やっぱないよね」
 浣腸という単語に驚いているうちに、相手はあっさり結論を出してしまうが、もちろんそんな経験はないので当たっている。
「というか出来ればお腹の中も洗ったほうがいい、ってのも知らなかったよね?」
「う……はい」
 疑問符はついているみたいだけど、そんな確信を持った顔で言われたら頷くしか出来なかった。
「どうしようか」
「ど、どうしましょう?」
「あー……じゃあ、ちょっと一緒にやり方学ぼうか」
「は? えっ? 学ぶ???」
 口先からも頭の中にも盛大に疑問符を飛ばしてしまえば、相手はちょっと待ってねと言って立ち上がる。
 何をするのかと思ったら、すぐにスマホを手に戻ってきた。
「俺がアナルセックスのやり方調べた時に参考にしたサイト、一緒に見よう」
「え、えぇ……」
「嫌そうだけど、さすがにもうちょっとお互いに、意識のすり合わせが必要だと思うんだよな」
 どうしても嫌ならアドレス送るから後で読んで、現段階でどこまで出来そうかメッセージ送ってくれるんでもいいよ、とは言われたけれど。
「そしたら今日はどうするんです?」
「さっきヤダって言われたけど、前回と同じでも俺は満足。あとはまぁ、余裕があったらでいいけど、俺もちゃんと興奮してるってのを感じて欲しいかな」
 同じように手とか口とかで気持ちよくしてくれたら嬉しい、と柔らかに笑われて、ううっと言葉に詰まってしまう。
 相手の提案に乗ってしまうのもありかなとは思うけれど、抱かれる気満々だったのも事実だし、出来ればちゃんと抱かれたかった。抱いて貰えたって事実があるのとないのとで、多分、安心感が違うから。
 相手がいくら男の子でも問題ないって言ってくれても、どうしても、今までは女性しか恋愛対象にしてこなかった人、という事実が頭の隅をチラついてしまう。それに、素の部分を知られていくうちに、振られるだろう予感だってある。
 好きだと言ってくれているうちに、抱かれてしまいたかった。
「えと、じゃあ、読みます」
 意を決して告げれば、相手はわかったと言ってスマホを弄りだす。そして差し出されたスマホに表示さされた画像と文章とに、一通り目を通した。
「どう?」
 出来そう? と聞かれて、やります、と応える。だって別にそんな怖いことは書いてなかった。ちゃんと気持ちよくなれるとも書いてあった。
「でもその、浣腸、薬局で売ってる、って……」
「ああうん、持ってきてる」
 ですよね。と安堵する気持ちに落胆が混ざるのは、やっぱり尻込みする気持ちがあるからだろうか。だって浣腸なんてしたことがない。
「手伝う?」
「え゛っっ」
「いやその、初めてだろうから」
「けど、さすがに恥ずかしすぎます、よ」
「だよね」
 じゃあこれ、と渡されたイチジク浣腸を手にバスルームへ向かう。
 浣腸自体は、そこまで難しくもなかった。というか、初めてだったけど多分問題なく出せたと思う。
 問題は、と思いながら鏡を見つめてため息を一つ。
 メイクを落とすつもりで化粧ポーチも持ち込んだのだけれど、いまひとつ踏ん切りがつかなかった。
 脱いだらどうせ男の体なんだから、メイクはない方が自然でいいと思うって言われたけど。前回もちゃんと興奮してたって力説されたけど。
 結局、メイクは落とさずにバスルームを後にすれば、相手は当然、驚きに目を見張っている。
「え、なんで!?」
「すみません」
「謝る必要はないんだけど、でも、女装にこだわる理由は知りたい。俺が男の子のままでいいよって言うの、やっぱり信用できない?」
「信じられないわけじゃないです。ただ、俺が、男のままの自分に、あまり自信がないってだけで……」
 だってあなたがずっと好きって言ってくれてたのはこっちの私だし。という訴えに、相手はそれはそうなんだけど、と難しい顔を見せる。難しいというか、どうやら悩ませてしまっているらしい。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

バレたら終わりと思ってた6

1話戻る→   目次へ→

 可能なら女装を解かないまましたい。と思ってしまうのは、前回自分だけイカされたせいだけど、シャワーを勧めてくるってことは女装を解いて欲しいって意味かもしれない。
 だって男のままの自分とデートする気だったのは明白だ。
 でもこの女装姿だったからこそ、あんなにベタベタと接触してきてたのも多分事実で、男の格好だったらあんな風に肩や腰を抱いて引き寄せたりしなかったはずだから、やっぱり女装してたほうが手を出しやすいんじゃないかとも考えてしまう。
 そんな風に、答えが出ない問いを頭の中でぐるぐると巡らせているうちに、バスルームの扉が開いて相手が戻ってきてしまう。
「なにか気がかりなことがあるなら言って欲しいな」
 どうしよう、と内心焦っていたら、近づいてきた相手がすっと腰を落として、椅子に腰掛けるこちらを下から見上げてくる。
「え……」
「さっき喜んで抱かれますよ、って言ってくれたけど、男に抱かれた経験があるわけじゃないんだよね?」
「そ、です」
 抱かれた経験どころか、女の子を抱いた経験もない童貞です。とか言ったら、引かれてしまうだろうか。それとも、嬉しいとか思ってくれたりするんだろうか。
「色々調べてみたんだけど、受け入れる側をするのって大変そうだし、無理させたいとか全然思ってない。この前みたいに触らせてくれて、気持ち良くなって貰えるなら、それで構わないって思ってるよ」
「え、やだ」
 前回と同じで、なんて言われて、咄嗟に嫌だと口から漏れた。
「やだ?」
「だ、だってほんとに、私だって、ずっと抱かれたいって思ってて」
「うん。それは本当に嬉しいけど」
 でも何か凄く躊躇ってるでしょと指摘されて、結局は相手がどうして欲しいか聞かないと答えないんて出ないんだからと、何を迷っていたかを告げる。
「いやその、女装、どうしようかなって、思ってただけで……」
「えっと、メイク落とすと何か問題ある? ってかお泊りしようって言ってなかったから、メイク道具がないとかそういう?」
「いえ、持ってきて、ます」
 男だとバレてる以上、男の自分としたいと言われる可能性も一応は考えたし、女装のまま致した結果、メイクがどうなるのかの想像がつかなかったというのもある。
「えと、じゃあ、他に何が……」
「その、女装してたほうが、エッチな気分が盛り上がっ」
「ええっ!?」
 こちらが何を言いたいか察した相手があまりに驚くので、途中で言葉が止まってしまった。
「え、いやいやいや。何いってんの。そんなことあるわけないだろ」
「で、でも、前回」
「前回? って、男の子の姿の君と何度も舌絡ませるようなキスして、あちこち触って、尖らせたちっちゃなおっぱいの先っぽいっぱい弄って、気持ちぃって喘いでくれるのめちゃくちゃ可愛いって何度も言いながら、この手で勃起おちんちんイカせてあげたあれより、俺が興奮するって思ってるの? 体も心も男の子だって知ってるんだから、女の子の姿かどうかで興奮変わったりしないよ? というか脱いだら男の子の体なんだから、メイク落としたほうが自然でいいと思うよ」
 ああやっぱり女装は解いてって思ってるっぽい。
「でも、でもっ」
「ああうん、ごめんね。ちゃんと聞く」
 気がかり話して、と優しく促されて、前回自分だけがイカされたからと訴えた。
 本当に興奮してたなら、なんで抱かずに帰っちゃったの。それって男の姿だったからじゃないの。
 そう告げれば、相手は慌てたように違うを連呼した。
「違う違う。そういうんじゃないから。てか誤解だから」
「誤解、って?」
「気持ちぃって言わせて、イカセて、そこで終わりにしたのは、男同士でセックスどうやるかとか全然知識なかったせいだよ。あの日初めて男の子だって知ったんだから、そこは大目に見て」
「本当に? 本当に男の俺の体触って、興奮できた?」
「してたよ。するに決まってるだろ」
「なら、同じように手でして、とか、口でして、とか、」
「いやいやいや。あのときの自分がどうだったか覚えてる?」
 とてもそんなお願い言える雰囲気じゃなかったよと言われて、確かに、イカされた衝撃でしばらく放心してたな、とは思う。
「俺に知識とか経験とかあって、痛い思いとか嫌な思いとかさせずに抱ける自信があったら、あの勢いで押し通した可能性はなくないよ。だってずっと、出来ればそういう関係に進みたいって思ってたんだから」
 でも踏みとどまれて良かったとも思ってるよと言った相手は、男同士でのセックスは知識があっても色々大変そうだし、ゴムだけあればどうにかなるようなもんじゃないもんね、と続けた。
「っていうか、あのまま抱いてほしかった、みたいに言ったけど、あの時、俺に抱かれる準備とかしてたの? そもそも別れる気満々そうだったし、準備してあるからそのまま抱いて、とかも言わなかったよね?」
「準備……」
 確かに、そういうのは全く考えていなかった。というか準備とかしないと、男同士でセックスするのは難しいのか。
「待って。今なんか恐ろしいことに気付いた気がする」
「え?」
 男同士でのセックスってどうやるか知ってる? と聞かれて、お尻でするんでるよね、と返した。
「うんそう。で、どうやってお尻に勃起したおちんちん挿れるかはわかってる?」
 わかってると思うけどそこそこの太さと長さがあるものだよと言われて、確かにそうだなとは思う。思うけど、相手のがめちゃくちゃ太いとか長いとかじゃない限り、そこまで難しくもないような気がする。だって、自分の勃起時くらいの太さの大便は、出てくることがあるわけだし。
 でも相手の様子からすると、そう簡単なわけではなさそうだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

バレたら終わりと思ってた5

1話戻る→   目次へ→

 夜というよりはまだ夕方って時間だったけれど、早めの夕飯を済ませたあと、躊躇いのない運転で連れて行かれたのは、ラブホじゃなくて普通のホテルのツインルームだった。目当てのラブホでもあるのかと思ってたけど、どうやら予約してたらしい。
「予約までしてたなら、最初から今日はお泊りデートでって誘ってくれても良かったのに」
「そうなんだけど、ちょっとガッツき過ぎてるような気もして。男の子の君とは初デートなのに、って思ったら余計に、エロいこと期待してるって思われながらデートするのも避けたかったし」
「今までのデートで避けてた分、エロいことも期待されてるって、ちゃんと思ってましたよ。というか次こそ、自分だけ気持ちよくして貰うんじゃなくて、あなたを気持ちよくしてあげたい。って思って、張り切ってるくらいなんですけど」
 前回あんなことをしておいて、エロいことなしの健全デートなんて考えるわけがないのに。
 でも相手はこちらもしっかりその気だった事実に、そこそこ驚いているらしい。
「でももしそういう雰囲気になったとして、行くのはラブホだと思ってました」
「ラブホねぇ……男同士で利用できるとこもあるみたいだけど、実際に男同士で使った経験なんてないし、慣れないことして失敗したくなかったっていうか、万が一でも嫌な思いさせたくなくて」
 男でもいいよと言ってくれたこの人は、男女なら出来ることが男同士だから出来なくなるのはオカシイと言いながらも、それで変な目で見られたり嫌な思いをして欲しくないとも言ってくれるような人だから、色々と考えてくれたんだろう。
 こんなに気遣ってくれるこの人に対して、女装しとけば避けれそうな問題は女装しとけば良くない? って考えは、あまり誠実ではないかもしれない。
 なんて反省してしてる間に、相手もなにかに思い当たった様子で目を見張っている。
「って、もしかして、男の子って知られた後なのに女装してきたの、まさかラブホはいる想定とかしてた?」
「まさかってなんですか」
「あー、ごめん。そっか、そういうの、考えてくれてたんだ。全く気付いてなかった」
 ここで、ありがとう嬉しい、って笑ってくるのはズルいなと思う。
「恋人っぽいこともっとしたいって思ってたの、そっちだけじゃないんですからね」
「そっか」
「男ってバレたら振られるって思ってたからはぐらかしてただけで、ずっと、本当に女の子だったらセックスだって出来るのにって、私だって思ってましたよ」
「そっか」
「ほんとは男の俺とでも、したいって思って貰えるなら、喜んで抱かれますよ」
 声音を地声に戻して俺と発言しても、相手は嫌な顔をするどころか、口元をへにょりと緩ませている。
「もちろん、したいよ」
 はっきり断言されて、ホッと息を吐いた。
「顔にやけてます」
「うん、知ってる」
 照れ隠しの指摘に、相手はニヤけた口元を隠すように片手で覆ってしまう。
 照れ隠しだったのに、なんだか余計に恥ずかしい気がしてきて、思わず視線を彷徨わせてしまうけれど、目に入ってくるのは綺麗にベッドメイクされたベッドなので、気持ちが静まる気配がまるでなかった。というか、逆にめちゃくちゃ意識してしまう。
「えっと、先にシャワー使う?」
 ベッドを凝視していたら、横からそんな言葉がかけられて、思わず肩が跳ねてしまった。
「え……」
「あー……じゃあ俺が先にシャワー使ってもいい?」
「あ、はい。はい、もちろん」
「うん、じゃあちょっと行ってくるね」
 妙に慌てた態度になってしまったけれど、相手は特に何も指摘せずにバスルームに消えていった。
 一人になって、数度深呼吸を繰り返す。
 そういや意気込みばっかり膨らませて、エッチなことをする手順とか方法とかまであまり考えていなかった。
 シャワーをと言われて真っ先に考えて、一瞬動きを止めてしまった原因は、この女装をどうするかを全く考えていなかったせいだ。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

バレたら終わりと思ってた4

1話戻る→   目次へ→

 次回はぜひ男の子の格好で。という希望には明確な返答を避けつつ、今日のデートが楽しみだという方向へ話題を変えてしまう。
 男バレして破局、という展開を避けたかっただけで、二人きりの空間への憧れはあったし、相手とより親密に過ごせる時間を欲する気持ちもあった。だからドライブのお誘いは嬉しかったし、すごく楽しみでもあった。
 本日の目的地は海沿いの水族館で、別の水族館でデートをした時に、いつか行きたいと話した場所でもある。
 以前の水族館デートの楽しかった思い出や、今日行く水族館への期待や、下調べ済みの近辺施設情報などから話を膨らませた雑談をしているうちに、あっという間に目的地に到着していた。
 結局女装でデートに来てしまったから、車から降りてしまえば、以前のデートとそう変わることもない。なんてことはもちろんなかった。
 男バレを警戒する必要がないのも、だからといって男同士でデートしてる姿を人目に晒しているという緊張感がないのも、気楽でいい。けれど男バレしたおかげで、以前よりも相手との距離が間違いなく近いという、戸惑いや羞恥が新たに発生していた。
 相手に触れられるのが嫌なわけでも怖いわけでもないのが知られたせいで、相手が大胆に触れてくるようになった、というのがかなり大きい。手を繋ぐだけじゃなくて、肩を抱かれたり腰に腕が回ったりするから、そのたびに内心けっこうドキドキしてしまう。ドキドキしながら、このあとのことを考えてしまう。
 ホテルに行く気があるのかは、結局恥ずかしくて聞けていなかった。
 今日は土曜日だから泊まりだって可能なんだけど、でもいきなりお泊りを期待していいのかもわからない。というかそんな期待をしていること自体が、はしたないのではとも思ってしまうし、恥ずかしさで悶えそうになる。
 でも相手と触れ合っていると、どうしたってあの日の夜のことを思い出してしまうし、期待するのをやめられない。
 もう一度手を出して欲しいし、今度こそ、こちらからも相手に触れたい。相手の手で気持ちよくされたいし、相手にもちゃんと気持ちよくなって欲しいし、感じる姿を見せて欲しい。
 ずっとこうしたかったって言いながら優しく触れて欲しいし、舌が痺れるくらいのエッチなキスで腰を疼かせて欲しいし、躊躇いのない手つきで固くなったおちんちんを扱いて欲しいし、たまらず喘いでしまう姿をトロトロに感じて可愛いねと言って欲しい。
「もしかして疲れちゃった?」
「……え?」
「ちょっとぼんやりしてるみたいだけど」
 体調を確認されて、慌ててダイジョブですと返した。エロいことで頭がいっぱいなだけです、なんて言えっこない。
「本当に?」
「はい」
「距離が近いのしんどい、とかではなく?」
「ええっ!?」
「避けられないの嬉しくてベタベタしすぎてる自覚はあるというか。しかもそれを意識して貰えてるのがかなり新鮮で、やりすぎたかもと反省してるとこ」
 ドキドキしすぎて疲れた、とか言われても驚かないんだけど。なんて苦笑顔で続けられて、こちらも思わず苦笑を返す。
「ドキドキ、伝わっちゃってました?」
「うん。めちゃくちゃ嬉しかったよ」
「もう、そう言われたら、こっそり楽しんでるなんてズルい、とか、酷い、とか。言いにくいじゃないですか」
「ごめんね。でもこっそりずっと見てたから、ドキドキしてくれたのがぼんやりになったの気になっちゃって」
 何考えてたの? と聞かれてしまって言葉に詰まった。
「っ、そ、れは……」
「言いにくいようなこと?」
「えっと……まぁ……」
「もしかしてエッチなこと?」
「うっ……そんなの直球で聞かないでくださいよ」
「てことはエッチなことだ」
 面白そうに笑って、ますます何考えてたか知りたくなったなと言う相手に、不満を知らせるように少しばかり口先を尖らせる。
「このあとの予定はどうなってるのかな、って考えてただけです」
 言えば相手が時計を確認してから、何時に帰りたいとかある? と聞いてくる。
「ないですけど」
「明日の予定は?」
「ないですけど」
「じゃあ、帰るの明日になっても大丈夫?」
「だいじょぶ、です」
「ごめんね。俺も、ちょっとどう切り出したらいいか迷ってて」
 期待しちゃうけどいいんだよね、と続けられて、いいです、とだけ返した。こっちだって期待してるんですよ、今のやり取りで期待爆上がりですよ、なんてことはさすがに言えなかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

バレたら終わりと思ってた3

1話戻る→   目次へ→

 二人きりの空間が大丈夫ならドライブデートがしたいと言い出した相手に頷き、待ち合わせた駅のロータリーで、先程送られてきた画像の車を探す。以前、免許はあるけど車は持ってないと言っていた相手は、わざわざレンタカーを借りて来たらしい。
 車はすぐに見つかった。
 ロックは既に外れていたようで、取っ手を引けばあっさり助手席のドアが開く。
「お待たせしました」
「え、あ、あー、うん」
 珍しくも不躾な視線と、なにやら言いたげな相手の反応の理由はわかっている。でもあえて気づかぬふりをして問いかけた。
「どうかしました?」
「や、その、今日は男の格好で来るもんだとばかり思ってたから、ちょっと、驚いちゃって」
 確かに、女装が好きで趣味でやってるというよりは、異性愛者である相手に女だと思わせるためのものでしかないから、男だとバレた以上はわざわざ女装してデートに赴く必要はないんだろう。
「でもこれ、デート、ですよね?」
「それはそうなんだけど」
「なら、この格好の方が何かと都合がいいと思いませんか?」
 ドライブデートだからってずっと車の中に居続けるとは思えないし、車から出た時には以前と同じように、手を繋いで歩きたかった。あともしホテルやらに入る予定があるなら、やっぱりはっきり男同士よりも男女に見えるほうが良いんじゃないかとも思う。
 というのは割と建前的な理由で、実のところ、デート用の服を所持していない。女装は何かとお金が掛かって、バイト代も生活費も結構注ぎ込んでしまっている。メンズ服なんて、大学とバイト先に通うための最低限でいいと思っていたせいで、どう考えても女装で出向く方がマシだった。
 それにやっぱり素を晒すのは怖い。今までこの女装で相手とのデートを繰り返して、相手の気持ちを掴んできた実績があるのだから、いくら「そのままの君との新しい恋人関係を始めよう」と言われていたって、そう簡単に手放せるわけがなかった。
「せっかくのデート、手ぇ繋いで歩いたり、したいですもん」
 まぁ色々理由はあるけれど、とりあえず口にして問題無さそうな部分を伝えておく。
「男同士でそれやったら、やっぱ問題あるかな?」
「え、やる気だったんですか?」
「だって、実は男だったから。なんて理由で、今まで出来たことが出来なくなるのは変だろ。でもそれで変に注目されたり、嫌な思いをして欲しくはないから難しいな」
「難しいならやっぱデートは今まで通り女装で良くないですか?」
「女装が好きで趣味でやってるってならそれもありなんだけど、俺と付き合うために女装してるとか言われたら、そこはやっぱ、そんなの必要ないよって言いたいだろ。男の子でも何の問題もなく君が君だから好きなんだよ、とも言ってるわけだし」
「それは、確かに言われました、けど」
 その言葉を疑いたいわけじゃないけど、女装なしの男の体に手を伸ばされ済みでもあるけど、でも好みに寄せた外見のが絶対いいでしょ、という気持ちはどうしたってある。
 だってあの日、男とバレないために二人きりになることや広範囲での接触を避けていただけ、という部分を何度も確認された後、嫌じゃないならとお願いされて抱きしめられた。
 当然それだけで終わりになんかならなくて、何度も嫌じゃないならと確認されながら、押し倒されてあちこち撫でられて、口の中を舐められるようなキスをされて、結局最後には相手の手の中で果ててしまった。可愛いと繰り返して、ちっとも嫌悪感なんてないよと柔らかに笑って、電車の中でのあまりにみっともない出来事を上書きしてくれた。
 ずっと、女の体ならすぐにでも応じたいと思っていたのだから、その手を拒むことはしなかったし、嬉しかったし、安堵だってしたけど。でも、相手が帰ってから気づいてしまった。
 相手がそれで興奮できていたのかがさっぱりわからない。というか、一方的に撫で回された挙げ句、自分だけがイッて相手をイかせることなく終わってしまったという事実。
 想定外すぎる展開にいっぱいいっぱいだったせいなのは明白だけど、もし女装を解かずにいたらその先も当たり前のように求められていた可能性、というのを考えずにはいられなかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁