イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった3

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 男子校だったのもあって、態度が悪かろうが冷たかろうが顔が良けりゃいいと群がるような女はおらず、常に一人だったし感情を削ぎ落としたような無表情が多かったし、あれで高校生活楽しかったなどと言われる方が驚きだ。自分だって、運悪くクラス委員になどなっていなければ、極力関わらずにいただろう。
 なのに、同じ大学の同じ学部学科に入って一緒に行動することが増えたら、高校時代が嘘みたいに随分と人当たりが良くなって、しかもこのお綺麗な顔で気安く笑顔を振りまくものだから、あっという間に友人が増えて拍子抜けしたのを覚えている。そもそも本当に同じ学部学科に進学を決めてくると思っていなかったせいで、相手も合格したと知ったときには、入学前から大変なお荷物を抱え込んでしまったと暗澹たる気持ちになっていたのに。
 残念ながら進学先も男子学生の割合がかなり高い学部だったので、出来たのは男の友人ばかりだけれど。もし半分でも女子がいる学部だったら、今、こんな関係になっては居なかっただろうか。などと思考がおかしな方向へ行きかけた時、相手の次の言葉が耳に飛び込んできて意識を戻した。危ない危ない。
「あと提出物出さなすぎて単位不足で、という可能性もあった」
「あー、それは納得だわ。てか3年の時はどうしてたんだよ」
 1年時はまさにそれで留年しかけたらしいのは知っている。2年時は自分がしつこく声掛けして出させていた。
 そのせいで面倒見が良いと思われているらしいが、それは担任が部活の顧問だったのもかなり関係している。運悪くクラス委員になってしまったのもそれで、つまり担任からすると自分は、頼みごとのしやすい大変使いやすい駒だったというだけだ。留年しかけた生徒の提出物の管理など、本来ならクラス委員の仕事ではなかったと思う。
 こんな妙な懐かれ方をするとわかっていたら、もっと手を抜いていたかも知れないが後の祭りだ。
「3年の時は先生たちが結構煩かったし、一緒の大学行こって思ってからは、卒業できないの困るから俺もちゃんと頑張って出したよ」
「あっそ」
「2年の時の経験があったからできたと思ってるよ?」
「いやそういうのいいから」
「今だって、レポート提出とか忘れないように何回も確認してくれるの、本当に助かってるんだからね?」
「だってお前が俺にひっついてんのって、完全にそれ目的だもんな」
 進路希望調査を提出しようと歩いていた廊下で、目の前を歩いてきたこいつに通りすがりに手の中のその紙を奪われたのだ。ジロジロと人の進学希望先を眺めたと思ったら、唐突に、じゃあ俺もここ行こうなどと言い出すからわけが分からなくて随分と混乱した。
 だってあの頃はちっとも仲良くなかったし、こいつは無愛想な孤高のイケメンだったし、言い方があまりに一方的だったし、こいつのイカレタ頭の良さなんて知らなかったから留年しかけた奴がじゃあ行こうで行けるわけないだろと思ったし。しかも、なんでと聞いたら、シレッと面倒見てもらえそうだからと返されて、はっきりきっぱり、見るわけ無いだろと返したはずなのに。
 まぁ一方的に面倒を見ているわけではないし、今はもう提出物がなかなか出せない理由も知っているし、自覚はなさそうだが、親しくなるにつれて世話焼き属性を発揮してるのはむしろ相手の方なのだけれど。
「まぁ、同じとこ行ったら大学も卒業できそうとは思ったけど、別にそれだけが目的ってわけじゃなかったよ」
「他の目的って?」
「それはさ、同じとこ行ったら、友だちになれるかな、って思って」
「え、誰と? てか俺と?」
「そう」
「ともだち、ねぇ……」
「だからこうやって誕生日お祝い出来るのも、凄く嬉しくってさ」
 友だちの誕生日祝うのなんて小学生以来だよなんてサラリと言ってくるので、ぎゅっと拳を握りしめる。冷蔵庫の前、運んできた酒をちょうど相手に全て託したところだったので、そうしていないと相手の頭に手を伸ばして、グシャグシャとその柔らかそうな髪をかき混ぜてしまいそうだった。

続きました→

 
 
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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった2

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 相手よりも2ヶ月半ほど遅れて20歳の誕生日を迎えたその日、相手はウキウキな顔で様々なアルコール飲料が並んだテーブルを見せた。
「誕生日祝ってやるって、もしかして、これ?」
「ケーキもあるよ。ちっちゃいけど丸いやつ。あとハッピーバースデーのプレート」
 小さなプレートだから名前は書いてないと言われたけれど、充分すぎるというか、想定外すぎる。
「家で、とか言うから、金欠か溜まってるかだと思ってたわ」
「まぁせっかく揃って飲めるようになったんだから、色々試しておきたいし。あとやっぱ誕生日に丸いケーキないのは寂しいからさ」
 2ヶ月半ほど前のこいつの誕生日は、夕飯をデザート付きで奢ってやってまぁまぁの出費になったから、その金が惜しいのかと思っていた。昨年までは互いの誕生日を祝うようなことはしてなかったから、まさかこういう祝い方をしたいタイプとは思わなかった。
「お前、去年とか今年の誕生日、自分で丸いケーキ買って食ったの? 一人で?」
「してないよ。してないけど、去年それでちょっと寂しかったから、今年はお祝いしてって事前にお願いしたんでしょ」
 それはもしかして、夕飯を奢るのでは不満だったという話だろうか。丸いケーキが欲しかったなら、ちゃんと言っておいて欲しかった。というか、つまりこれは今言われてるってことなのか?
「えーと、来年は丸いケーキも用意しろって言ってる?」
「んー……それはどっちでもいいかな」
「なんでだよ!」
「自分の誕生日に丸いケーキがあったら嬉しいとは思うけど、なくてもまた、お前の誕生日に丸いケーキ買ってくればいいかなって」
「じゃあ、お前の誕生日に丸いケーキ買ったら、俺の誕生日はケーキなし?」
「いやちゃんと買うけど」
「なんっじゃそりゃ」
「それよりどれから飲む?」
 ケーキの話は終わりとばかりに、相手が俺はこれと缶を1つ手に取った。
 なんとなくのイメージで、飲み会とはまずはビールからスタートなのかと思っていたが、相手があっさりと低アルコールを売りにしたフルーツ酒の缶を選んだので、取り敢えずは自分も似たようなのを選んでおく。
 色々試しておきたい、という色々は酒の種類を指しているのかと思ったが、アルコール度数が低いものから手を出すというなら、酔った時の状態を段階的に知っておきたい的な話なのかも知れないと思ったからだ。
 たった2ヶ月半の差なので、この間に相手だけが酒を飲むという機会はなく、相手が酒に強いのか弱いのかはわからない。もちろん自分だって、これまで一切飲んだことがないとは言わないが、はっきりと酔っ払うほどアルコールを摂取したことはない。なので、自分だけがさっさと酔った姿を晒すことになるのを避けたかったのも、当然ある。
「じゃあ、他は冷蔵庫しまっとこう。あと、つまみも適当に用意してあるから持ってくるね」
「いや俺も手伝うって」
 いそいそと選ばれなかった酒の瓶や缶の一部を抱えて立ち上がる相手を追うように、自分も残りを抱えて立ち上がる。
「主役は座ってていいのに」
「俺もう結構腹減ってんの」
「ふふっ、素直じゃないなぁ〜」
「なんだって?」
「相変わらず面倒見が良いよねって」
「前から言ってるけど、そんなん言ってんの、お前だけだぞ」
「大学はクラス委員とかないからね」
「じゃなくて。昔っから。高校の時から」
「えー俺、高2の時の委員長がお前じゃなかったら、高校中退してた可能性もあるのに?」
「は? なんで?」
「学校つまんなかったから」
「まぁ確かに楽しそうではなかったけど」
 高校が同じでクラスが一緒だったこともあるが、その頃からの友人ではない。あの頃のこいつは、孤高を気取るいけ好かないイケメン扱いだった。

続きました→

 
 
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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった1

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 眼前の男の顔はまず間違いなくイケメンに分類されるはずで、降ろされた目蓋は長いまつげが縁取り、滑らかな頬は薄く色づき、口紅なんか塗っているはずもない唇はふっくらと艶があって、薄く開かれたそこからは時折気持ちよさそうな吐息が漏れていてたいそう色っぽい。とはいえ相手は間違えようもなく男で、色っぽかろうが性的衝動が湧くわけではなく、手を伸ばしてその頬に触れてみようだとか、顔を寄せてキスをしてみようだとか、試す以前にしたいと思ったことがない。
 試したところで多分嫌がられることはなく、むしろ喜ばれる可能性までが脳裏をよぎるが、積極的に喜ばせてやりたい相手でもないので、結局、相変わらず変な男、と思いながらそんな彼の顔を見ているしかなかった。
「なに?」
 見つめすぎたのか、相手の目蓋がゆるっと持ち上がって、興奮でいくらか潤みの増した瞳に見据えられてドキリとする。
「なんでも、ぁっ」
「こっち、集中してよ」
「するっ、するから、そこやめろって」
「先っぽ、ほんと弱いよね」
「ぁ、ぁっ、ちょっ、やめ」
「先イッとく?」
「や、やだっ」
「イッたあと触られるのは感じ過ぎちゃうんだもんね?」
「わか、ってんならっ」
「ん、だいじょぶ、俺も一緒にイケるから」
 イッていいよの甘い囁きと共に、亀頭をグニグニと撫で揉まれながら竿を擦られてあっけなく果てた。
「ああああっっ」
 一緒にイケると言ったくせに、果てたあとのペニスを擦られ続けて目の前がチカチカと明滅する。こっちが果てた時点でこちらのペニスだけ開放してくれないか、とはさすがに言えないので我慢するしか無いのだけれど。
 だって、上り詰める最後の瞬間にそんな気を回す余裕はないかも知れないし、相手のペニスと擦れる気持ちよさもわかっているから、最後の最後でそれを取り上げるのは忍びない。けれどイッた直後のペニスを刺激されるのは気持ちが良すぎて辛かった。
「んっ……」
 それが長引けば長引くほど辛さは増すので、すぐに相手が小さく呻いて動きを止めたのでホッとする。
「はぁ……気持ちよかった」
 余韻を引きずったようにうっとりと、本当に気持ちよさそうに吐き出されてくる声に、そりゃ良かったと思う気持ちと、口に出すなよと思う気持ちとがある。どっちも口に出したりしないけど。
「そっちは? 気持ちよくイケた?」
「聞くな」
 これはすぐさま口に出した。
「だって途中、なんか考え事してたし、ちゃんと気持ちよくイケたのか気になるじゃん」
 何考えてたのと言われて、先程と同じように、なんでもないと返しておく。何をどう説明すればいいかわからないというか、突き詰めて話し合いたくないと言うか、今はまだ曖昧にしておきたい。
「それよりティッシュ」
「ああ、うん。はい」
 差し出されたティッシュの箱から一度に数枚引き抜いて、まずは腹部に付いた汚れを拭いた。脱がずに捲り上げただけの服は、どうやら今回も汚さず済んだらしい。服を汚したのは初めての時くらいだから、多分、イク時に飛び散らないように気を遣ってくれているのだろう。
「あー、腹減った。なにか作るけど、食べてく?」
 さっさと身支度を終えた相手が立ち上がって、どうやらキッチンへ向かうらしい。
「食べてく」
「わかったー」
 即答すれば、少し間延びした声と共に相手が出ていった扉が閉まる。一人きりになってしまった部屋の中、吐き出したため息は思いの外大きく響いた。

続きました→

 
 
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