聞きたいことは色々69

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 こんなに派手に笑う姿は珍しい。ただ、そんな大笑いされるほど変なことを言ったつもりはなかった。
「そんな変なこと言いました?」
「いや。悪くない提案だった」
 言いながらもやっぱり笑い続けている。よほどツボに嵌りでもしたんだろうか。
「じゃあそんな笑わなくても」
 不満を滲ませながら抗議すれば、そうだなと肯定されて口を閉ざす。笑い声はもれなくなったものの、楽しげに緩んだままの口元が近づいて口を塞がれる。
 緩く口を解いて待つだけでなく、自分から舌を差し出して続きをせがめば、ゆったりとベッドに押し倒された。
 ただただ抱き合うだなんて今日は性急さがないな、なんて思っていたのが嘘みたいに、手早く繋がる穴を解されていく。
 まぁ慣れた体なので、解すってよりは指でお尻を気持ちよくされるのがメイン。と思っていたのに、前立腺を狙われることなく2本3本と次々突っ込まれる指が増えていくから、あれ? と思う。
「いい?」
 これは当然、もう突っ込んでいいよな、という確認だ。
「ダメなんていいませんけど」
 でも驚いてはいたから、驚いてますと正直に告げた。
 だって指だけでイカされる前に体を繋いだことなんてなかった。もういい加減入れてって頼まれるのが好きそうだった。
「本当は、前と同じようにしてみるつもりだった」
 お兄さん相手に愛しそうな目を向けるようになったきっかけが「懐かしい」だったから、3人でする前と同じようにしてみたら同じように「懐かしい」と思うかもって考えたらしい。初っ端から裸で抱き合ってて、以前とは違うことの連続なんだけども。
「でもお前を目の前にすると、前と同じようには難しいらしい」
 思いっきり失敗してるじゃないですか、という気持ちは口に出さなくても伝わったようで、そんな事を言いながら苦笑してみせる。
「前と同じように抱かれたところで、俺が前と同じようには出来ないから、結局懐かしいなんて思わなかった可能性も高そうですし。だから良かったんじゃないですか、前と同じを試さなくて」
 早く体繋げたいなって思ってくれたなら、それはそれで嬉しいし。体を繋げたあとでじっくり気持ちよくされるセックスだってお兄さん相手にならもう知ってるから、今日はそういうプレイな気分、とかだって別にいい。
「したいように、していいですよ。結果、俺を好きって思えなくても。お兄さんを返してとか言われないなら」
 半分こって言ったのを思い出したのか、また少し吹き出させてしまったけれど、ちょっとだけ狙い通りでもあった。
 さっき爆笑したあとの空気の緩みが良かったと言うか、楽しくて仕方がないって感じよりは、お兄さんを愛し気に見つめてるときに近い目をしていたから。お兄さんを思い出してそんな目をしたのだとしても、今は二人きりだから、その目が向かう先は自分しかいない。
 ここに居ないお兄さんを想っている。そうはっきりわかる態度を見せられたらさすがに挫けるかもだけど、さすがにそこまであからさまなことは起こらないとも思っているし、愛し気に自分だけを見つめてくれる瞬間を感じてみたい気持ちが勝っている。
 そんなこちらの思惑が伝わっているのかはわからないが、彼は柔らかな気配をまとったまま足を抱え上げた。
 ドキドキが加速していくのがわかって、多分それは顔にも出ている。目があって、その瞳が愛し気に緩む。
「ぁ……」
「そんな顔をするくせに」
 ふっと吐息に似た笑いをこぼしながら、愛し気に緩んだ目はそのままで。
「え、ぁ、あ、あぁっっ」
 こちらの発した疑問の声を無視した挿入が始まってしまって、開いた口から押し出された音だけが漏れていく。
「ど、ゆ、意味、ですか。さっきの」
 相手が動きを止めるのを待って、どうしても聞かずにはいられなかった。
「だってさすがに悔しいだろう?」
「えと、何が?」
「俺がお前を好きだと思えない未来ばかり口に出すお前に、素直にお前が好きだと言ってやるのが」
「ええっっ!?」
 本気で驚いてしまったら、驚いたことが不満だったらしく、ムッとした表情を見せる。
「なんでそんなに驚くんだ。気づいたから期待したんじゃないのか?」
 期待はした。愛し気に見つめてくれる瞬間があったらいいなと思ってはいた。そしてその期待通りに、彼が愛し気に見つめてくれたのは事実だけど。
 俺を好きって自覚して、みたいな期待はさすがにしてなかった。はずだ。
「そんな顔、してました? 俺を好きって早く自覚して、みたいな?」
「違うのか?」
「だって俺、俺を好きって思わない可能性、かなりあるって思ってましたよ?」
「だから、口ではそう言いながらも、しっかり期待はしてるんだなって思ったって話で、って、俺の勘違い?」
 彼が想っているのがお兄さんでもいいから、二人きりの今だけは自分にあの目を向けて欲しい。と考えていたくらいだから、勘違いではあるんだろうけど。
「いや嬉しいです。嬉しいですから。撤回とか絶対無しで」
「今更撤回するわけ無いだろ。好きなんだろう、多分。お前のことも、アイツのことも」
 不穏な気配を察知して慌てて言い募れば、呆れた顔で否定された。

続きます。
もうしばらくの間、更新は夜になりそうです

 
 
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聞きたいことは色々68

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 記憶にある彼とのセックスは割と性急だったというかキモチイイ重視だったから、ただただ裸で抱き合うだけの時間にはやはり慣れない。嬉しさはあるのに、どうしていいかわからないむず痒さがあって、なかなかじっとしていられなかった。
「落ち着きがないな」
 やはり安心はできないかと言われて、ソワソワしちゃって無理ですと正直に返す。
「そわそわ?」
「だってこんなの初めてで」
「まぁ、そうだな」
「どうすればいいかわかんない」
「大人しく抱きしめられておけばいいんじゃないか? って、緊張させたいわけじゃないな」
 動いてしまわないよう気を張ってみたら、あっさり前言撤回された。
「そう簡単には慣れないか」
「ですね。てか嫌がってはないですからね」
「わかってる」
「ちゃんと嬉しいって思ってるし、この後どんなセックスしてくれんのかなって期待もあります。その期待のせいでソワソワしてるとこもありますよ」
「期待はそれであってるのか?」
「あってます。てかあっちはあまり期待したくないので」
 好きって自覚が芽生えない可能性はあると思っているから、期待はしたくなかった。だって彼が愛し気に見つめる先にいるのはだいたいお兄さんで、その視線が自分にだけ向かったことはないのだから。
「俺が好きなのはアイツでお前じゃない、って確定したらどうする?」
「どうもしませんけど、二人でセックスするのは今日が最後かなとは思います」
「それだけ?」
「あなたがお兄さんだけを好きだとしても、お兄さんと別れる気はないです。あ、俺とお兄さんを奪い合うとか?」
「それはない」
 俺に勝ち目ないだろと言って笑う声はカラリとしている。
「お前を愛しいって思えなきゃ、弾かれるのは俺だよな」
 いつだったか、変わらなかった場合の未来は彼もわかっているはずだと、お兄さんが言っていたのを思い出す。
「もし俺を好きって思えなかったら、どうするんですか?」
 彼の自覚を促したいと思って始めたことなのに、彼がお兄さんだけを好きだと自覚した場合、彼がどうする気なのかってことを全く考えていなかったことに気づいた。
「てかなんで二人でしようなんて言い出したんですか。俺を好きって自覚できそうだから、ってわけじゃなかったですよね?」
 確かめたいとは言っていたけど、確信持ってからにしてと迫るお兄さんに、確信が持てそうだとかは返していなかったはずだ。
「もし俺を好きって思えなくても、3人でするの、やめたりしないですよね?」
「お前を好きって思えなくても、それが確定した後でも、3人でしたいの?」
「したいです。でもお兄さんが俺を好きって言って甘やかすのを見るのが辛いとかだと、どうしたらいいのか」
 どうしよう。そんなの全然考えてなかった。彼がお兄さんだけを好きって自覚した場合、3人でしたらお兄さんといちゃつく姿を彼に見せつけることになってしまう。
 勝ち目がないとあっけらかんと言ってしまうくらい、お兄さんの気持ちが自分に向いてないことはわかっているんだろうけど。でもお兄さんの中に彼を好きな気持はちゃんとある。お兄さんがこちらに気を使って、それを彼に向けないようにしてくれているだけだ。
 彼の好きに応えてあげてって言ったら。大丈夫だからって言えたら。きっと……
「あの、お兄さんは家族としての特別はもうあなたが持ってるって言ってて、家族としてはちゃんと好きで、だからあなたの気持ちに応えられないってわけでもなくて、は、半分こで、どうですか?」
「半分こ?」
 何の話だと言われても仕方がないくらい、テンパって取り留めのない言葉を連ねたとは思う。
「お兄さんの好きを、です。俺とあなたとで、半分こ」
 どうですか? と聞いたら、呆気にとられた顔をされた後で爆笑された。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々67

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 彼の部屋に入るのはいつぶりだろう。
 この部屋で重ねた夜を思い出して、それだけでなんだか少し切なくなる。
「緊張してる」
「そりゃあ」
「この部屋でお前抱いてた頃が遠い昔に思えるよ」
「そ、ですね」
 おいでのことばに従ってベッドに転がれば、上から覗き込んでくる瞳が楽しげに煌めいているのがわかる。これがこのあと、自分相手に愛し気に緩む、なんてことが本当に起きるだろうか。
「悲壮、ってほどじゃないけど不安そうではあるな」
「そりゃあ。ってかそれに興奮するんじゃ?」
 初めてこの部屋で抱かれた時のやりとりを思い出して聞いてみれば、少し考えた後で否定が返って驚いた。
「いや。そうでもないかな」
「えっ?」
「散々セックスしてきて、気持ちぃ思いたくさんさせて、甘ったるく好きだって言ってくるまでになった相手に、二人きりでしたいってだけでここまで緊張されて不安になられてるんだから、興奮するよりどっちかって言ったら腹立たしい」
「えぇ〜……」
 不機嫌な彼を一人で相手するのはしんどいなと思ってしまったし、これはやっぱり、泣いて逃げ帰ってお兄さんに呆れられながらヨシヨシされるパターンかも知れない。と思ってますます不安が増したところで、彼がふっと柔らかに笑うからドキッと胸が高鳴ってしまう。
「まぁお前にってより自分に、って方だから」
 そんな不安にならなくてもいいと続けた後、躊躇いがちに「多分」と付け足したから、思わず笑ってしまった。笑って少し緊張が解けて、それに気づいた相手からも安堵の気配が滲んだから、なんとなく、本当に大丈夫な気がしてくる。
「始めても?」
 どうぞと返せば見上げていた顔が降りてきて唇が塞がれた。
 軽いキスを数回繰り返した後は口の中を探られるキスになって、半分は気持ち良さに酔いながら、残り半分で服を脱がしに掛かる相手に協力して服を脱いでいく。
「残り、自分で脱ぎますから」
 そっと相手の胸を押して顔を離し、そっちも脱いで、という気持ちを込めつつ見つめれば、あっさりわかったと頷かれて服を脱ぎ始める。それを感慨深く見つめながら、寝転がったまま自分も残りの服を脱ぎ捨てた。
「いま何考えてる?」
 どうやら見つめすぎたらしい。
「初めてした時、あなた脱がせるの苦労したなぁって、思い出して」
「久々ではあるけど、思い出すのはそこなのか」
 そこまで遡って比較しなくても良いんじゃないかと言われたけど、相手が脱いでくれなくて四苦八苦する姿が楽しかったようで、その後もそこそこもったいぶられてた記憶がある。
「最初っから進んで脱ぐようになったのって、3人でするようになってからじゃないすか?」
「自分だけ裸にされてる、って状態がいつも嫌そうだったから、つい」
「俺に涙目でいい加減脱いでって言われるの、楽しそうでしたもんね」
 しかたないなぁって楽しそうに笑いながら脱いでいくのを、いつも安堵と期待とを抱きながら眺めていた。
「焦らした分だけ可愛くなるって信じてたからな」
 差し出された手を掴んで、手を引かれるのに合わせて上体を起こせば、そのまま相手の腕に包まれる。体を繋げる前にこうして裸で抱き合うのなんて、もちろん二人きりでしてた頃にはしなかった。
 まぁ3人でするときだって、こんな風にじっくりと裸で抱き合うなんてことはなかったんだけど。だってお兄さんが黙ってないというか、3人だと何をするにしても、どうしてももっと賑やかになる。
 つまり初めての状況に、けれど思ったほど心臓が跳ねてないのは、脱いだ後で抱きしめてくれるという流れ自体は変わってないからなんだろう。ごくごく稀に、脱いだ後に抱きしめてくれない意地悪とかもあったから、前段階で泣きかけてもいない今回、そのまま抱きしめてくれる流れになった驚きがないわけでもないけれど。
「今は?」
「安心しきって甘える可愛さも知ってる」
 俺相手でもなるのかはわからないが、と続く言葉を聞きながら、お兄さんに甘えきってる姿を可愛いと思ってたなんて初耳だなと思う。除け者にされて不愉快、って感情の方が強いだろうと思っていた。
「意地悪しないでくれるなら」
「してないだろう?」
「ですね」
 体の力を抜いて、すっかり相手にもたれかかってみた。お兄さんに甘えるのは重ねた信頼がかなり大きいから、さすがに安心しきってと言えるような心境には至ってないけれど、間違いなく嬉しさはある。
「不思議な感じ、です」
 膨らんだ嬉しさを、んふふと零しながら告げれば、ふっと笑うような吐息が相手からも漏れた。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々66

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 お兄さんがいくら大丈夫と言ったって、その予想が外れることもなくはない。
 ただ、もしいつか彼がお兄さんを好きと自覚したとして、もしそこに自分へ向かう好きがなかったとしても。今更今の関係を壊してお兄さんと彼とで付き合うなんてことは起きない。君を手放す気がないのも変わらない。
 そう断言されたから、更に一歩踏み込んでみることにした。踏み込むというか、彼の自覚を積極的に促してみたいって気になった。
 現状特に不満があるわけではないし、このままでもいいって気持ちになってはいたんだけど。でもあの時見た、愛しげな顔をもっと見たいなと思ってしまった。それが、自分に向かうものではなくても。
 何をしたかというと、なるべくお兄さんに真ん中を担当して貰うようになった。しかも、彼にも抱かれた最後、3人で繋がる時にだけお兄さんを真ん中に、ってことも出来るのに、なるべく彼には抱かれないようにもしてみた。
 お兄さんの肉体的な負担が増すし、彼がお兄さんを抱く機会を増やした結果、どうなるかはわからない。あれは本当にただ懐かしかっただけって可能性も充分にあった。ついでに言うと、彼に抱かれないまま終わる3Pだと、後日お兄さんからの補填がある。というのに味をしめた部分がないとも言えない。
 それらをわかったうえで、君がそれでいいならいいよと、お兄さんも協力してくれた結果。彼がお兄さんを愛し気に見つめる機会はかなり増えた。好きだとか可愛いだとかの言葉にも、今まで以上に甘さが滲むようになって、想いが乗った声だなと感じるようになった。
 お兄さん越しにそんな彼の顔を見て、声を聞いて。ドキドキを加速させる自分を、お兄さんが愛し気に見つめてくれるから。彼にトキメクことを喜んでくれるから。
 滑稽だとか惨めだとか思うことはなくて、3人でするようになれて良かった、なんてことまで思っていた。だってこんな顔も声も、どれだけ交際を続けたって、自分ひとりじゃ絶対にさせられなかった。
 自分の中の常識を変えられてしまった自覚はもちろんあるけど、彼と恋人というだけの時間をただただ重ねていた頃に比べたら、間違いなく満たされている。
 そんな中、彼から二人だけでしたい、と言われて驚いた。
 意図的に彼に抱かれる機会を減らしていたのは事実だけれど、だとしても3人でするときの話をされると思っていた。だってお兄さんとはずっと二人でもしてるのに、彼には自分ともそういう時間を取れなんて言われたことはなかった。
「理由は?」
 警戒心をあらわにそう問いかけたのはお兄さんの方だった。
「確かめたいことがある」
「この子を好きって自覚できた、とかじゃないならダメ」
「それを確かめたいって話だろ」
 そうなんだ。二人きりでしたらわかるかも、くらいのところまで来たんだと思うと感慨深い。
 というかお兄さんに対する好きは既に自覚できてるんだろうか。自分がいる場でそんな話はされたことがないけど、二人の間ではしてたのかもしれないとは思う。
 だって自覚できてても何ら不思議がない態度を見せている。
 むしろ自覚済みだからこそ、二人してその話題を避けてた可能性のほうが高いんじゃないだろうか。
「確信持ってからにして」
 確信が持てた後ならいいってことは、こちらが傷つくような目にあったときのことを考えてくれているんだろう。彼が今まで二人でと言い出さなかったのも、間違いなくお兄さんが関係してる。というか絶対ダメって言ってたんだろうなと思う。
「いいですよ、俺は。もし泣かされたら、後でいっぱい甘やかして下さい」
「それは当然だけど」
 更に何度か本当に大丈夫なのか確認された後、お兄さんからも許可が降りた。

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聞きたいことは色々65

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 3人で、というのが少しずつ増えては居るし、彼が交じる時は彼も自分を恋人として扱うことが多いから、なんかもう色々曖昧ではあるけれど。でも一応、今現在の恋人はお兄さんの方で、二人でするセックスはお兄さんとしかしていない。
 お兄さんが真ん中をやった翌週はお兄さんと二人で出かけたし、セックスは抱かれる側だった。
 お兄さんが彼に抱かれても嫌じゃなかったのは本当だし、彼に抱かれて蕩けてる姿が可愛いかったのも本当なんだけど。それを疑われたわけではないんだけど。
 途中、ゆっくり愛されるの久々で嬉しい、って思ったのも事実で、それが伝わっていたからだ。
 はぁあと吐いた息が自分でもわかるほど満たされていたから、お兄さんに笑われるのに合わせて自分も笑ってしまう。
「満たされたなら良かった」
「ありがとうございます。てかこれって前回のフォローっていうかアフターケア? 的な意味が強かったりするんですか?」
「多少は。まぁアイツ交ぜた3Pは旦那がいた頃とはしてる意味がぜんぜん違うから、後でヨシヨシする必要はないんだろうけど」
「まぁどっちに抱かれてても、俺からしたら好きな人に抱いてもらってる状態ですしね」
 しかもどっちも恋人みたいな雰囲気で、恋人以外の男に抱かれろっていうプレイ要素は欠片もない。
「だね。だからどっちかっていうと、前回はアイツに抱かれなかったから、その分の補填的な? て言っても代わりになれないのはわかってるから、アイツが出来ないようなセックスで君を満足させたげよ、みたいな」
 なるほど。せっかくの3Pだったのに、彼に抱かれる機会がなかったことを気にしてくれたらしい。立場替えたいって言いだしたの、こっちなのに。
「めちゃくちゃ嬉しかったです」
「知っててやってる〜」
「ですよね」
 んふふと笑いあってから「そういえば」と口に出したら、「大進歩の話?」と返ってきて、考えているのはどうやら同じみたいだ。
「です」
「アイツほんとポンコツ」
「それ久々ですね」
「ポンコツ言いまくってもあんま目に見えた変化なかったから諦めてたよね」
「でも好きって気持ちを理解したい気はあるっぽかったですよ。ほんと大進歩、って思いましたし」
 前に言ってた通りですねと言ったら、すぐには思い当たることがなかったのか、考え込んでしまう。
「変わらなかった場合の未来は彼もわかってるはず、みたいな話をしたときです。変わる気がありそうって言ってましたよね?」
「ああ、あれか。ほんと、もうちょっとで理解するかもって思ってたのに全然だったよね」
 ほんとポンコツって繰り返すから、やっぱり笑ってしまう。
「いつか、彼の好きの自覚相手があなただったら、どうします?」
 あの時は、彼が好きを自覚した先が自分になる想定で、「もし彼が俺を好きって思うようになったら、どうします?」って聞いたんだっけ。
 手放す気はないから好きでいてって言われてホッとしたんだけど。彼が好きを自覚する先がお兄さんだったら、どうなるんだろう?
「あー……やっぱ納得してない?」
「だって、見ましたよね? 気づきましたよね?」
 気づいたから、あんな風に困った顔で笑ってみせたんですよね。とまでは言わなかったけど、多分伝わっている。
「見たけど。気づいたけど」
「彼に好きって言われたら、応えます? よね?」
「いやぁ〜……」
 言葉を濁されたのは、やはりこちらの気持ちを考えてくれているからなんだろうか。
「家族の情とは言ってますけど、好きはちゃんとあるのに?」
「あるけど、でも俺が特別をあげたいて思ってるの君だしねぇ。アイツは既に家族って特別なんだから、これ以上の特別はあげなくていいでしょ」
 それとも応えたほうがいいの? と聞かれて、さすがに肯定は出来なかった。
「いいって言われなくてよかった」
 不安? と聞かれて、少し、と返す。
 お兄さんとお付き合いを始める前なら、彼がお兄さんを好きでも諦めがついたというか、そこまで傷つかずに別れを受け入れられたと思うけど。今更、やっぱり好きなのはお兄さんだった、なんて知らされても大人しく身を引いたり出来そうにない。
「まぁ心配いらないと思ってるけどね」
 大丈夫と、なんの根拠もないのに断言されて、でもそれだけで少しホッとする。
「俺を好きって自覚する日が来るときは、同時に、君への好きも自覚してると思うから」
 俺も君も、互いに互いを好きだけどアイツのことも好きでしょう。と言われれば、確かにと返すしかなかった。

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聞きたいことは色々64

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 前に、彼が好きなのはお兄さんなのでは、と考えたアレが当たりだったのでは。と思ったけれど、お兄さんは今回も否定的だった。更に言うと、自分とお兄さんと二人が同時に感じた変化なのに、彼にはその自覚がなかった。
 どんな気持ちであの顔をと思ったら、少し考えた後で、久々で懐かしさはあった的なことを言ったから、結局お兄さんへの恋情やらではなく昔を懐かしむ気持ちがそう見えたってことになったけど。でもまぁ、あまり納得はしていない。
 というか、彼が好きを理解するようになったら愛しがいが増す、とか言ってた人が、あの変化を目の前にしてそんな簡単に納得して引き下がらないで欲しい。
 なんてことを考えながら隣のお兄さんを見つめてしまえば、こちらの不満はあっさり伝わったようだった。
「不満そうだねぇ」
「だって」
「こいつが俺を好きって自覚したら、それはそれでかなり面倒じゃない?」
「とか言うから自覚してても言えない的な」
「そんな殊勝な性格してないと思うけどねぇ。で、こう言ってるけど、そうなの?」
 後半はもちろん、彼に向けた言葉だ。
 3人でした後はそのまま大きなベッドで3人並んで寝るのが常で、いつもは自分が彼とお兄さんとの間で横になっているけれど、今日はセックス同様お兄さんと位置を変えて、お兄さんが真ん中になっている。
 更に言うなら、普段は疲れ切って早々に寝落ちてしまうけれど、今日はお兄さんが真ん中だったおかげで普段に比べたら疲れていない。
 だから珍しく、今日のセックスの振り返り、なんてことをしてるわけだけど。なお、珍しいのは彼を交えて当日中にって部分で、お兄さんが真ん中なのは初めてだったし、今日のセックスがどうだったかって感想はどのみち求められると思っていた。
「さっきも言ったが、唐突になにかに目覚めたとか、心境に大きく変化があったわけじゃないな」
「ほらね」
「ただ全く自覚がないってわけでもないかもしれない」
「「えっ!?」」
 驚きで漏れた声がお兄さんと思いっきり被ったけれど、それを笑う余裕はどちらにもなかった。
「お前たちが着々と仲を深めて、目の前で好き好き言い合ってるのを見せつけられてるんだから、まぁ、それなりに色々考えたり自分と向き合ったりはしてる」
「え、で、その結果なにを自覚したの? ってのが一番聞きたいとこなんだけど」
「お前たちを手放せないこの執着だったり不愉快だったりが、好きって気持ちから来てる可能性?」
「ん゙ん゙ん゙っっ」
「ふはっ」
 お兄さんは悩ましげに唸ったけれど、こちらは思わず笑ってしまった。
「概ね予想通りの反応ではあるな」
「やっとそこ、みたいな気持ちもありますけど、大進歩って気持ちもありますね」
 好きだから嫉妬して不機嫌になってる、なんて指摘しても認めないと思ってたし、恋人を奪われた的な状況への不満と言われればそちらのが納得だったというのもある。
「ただこの不愉快が好きって気持ちから来てるとして、気持ちを乗せた好きが、お前たちが言い合ってる好きと同じになるとは全く思えない」
「まぁ確かに大進歩ではあるよねぇ。あと、お前たちって一括りにしてくれてるのを、俺としては評価したいね」
「そうなのか?」
「だってお前が実は俺を好きって疑われたとこだもん。俺への気持ちの自覚かと思ったら、二人まとめた話だったから安心したわ」
 このままもっと解像度上げてきなよ楽しみにしてるから、と続けた後、大きなあくびを一つ。
「気が抜けて眠くなってきたかも」
「今日、絶対俺より疲れてると思いますし、無理せず寝ていいですよ」
「君が寝るまで起きてたい」
「俺ももう寝ますって」
 そんな事を言いあっていたら、ピッっと小さな電子音が鳴って部屋が暗くなった。

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