聞きたいことは色々(目次)

キャラ名ありません。全70話。
会社の先輩と、先輩の戸籍上の兄と、視点の主の3人がメインの登場人物で、最終的には受け攻め入り混じったリバ3P関係になります。ただし先輩受け描写はなし。
すでに故人の先輩の叔父が、先輩とお兄さんと養子縁組して兄弟になったような関係で、戸籍上は親子でもお兄さんは実質叔父の嫁。
円満に3Pできる関係作れないかな〜みたいな思惑でお兄さんを出してみたものの、恋愛経験ゼロのキスすら未経験だった視点の主がそれを受け入れられるまでに右往左往しまくって長くなりました。

中学時代にちょっとだけ家庭教師をしてくれた男と会社で再開した視点の主が、ゲイ仲間として相談に乗ってもらうだけのつもりがまんまと初めてを奪われて、なりゆきで交際開始。
本気で惚れたら捨てられると思い込んだ視点の主が口説くのを禁止したせいで、好きとも言い合わない恋人関係を続ける中、お兄さんが心配して様子見に来てくれたおかげで彼ら兄弟の特殊な関係(叔父を交えた3Pやら恋人交換プレイやら)がアレコレと発覚。ついでに、口説かれてないのに恋情が育ってしまっていることを自覚。
本気で惚れても捨てられなかったけど想いが返ることもなく、なのに執着だけはされて自ら別れることも選べない視点の主を、いずれ3P前提でお兄さんが一旦奪って愛情注ぎまくって視点の主の気持ちや考え方が変わるのを待ってくれます。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 気になる噂
2話 相談したい
3話 いきなり宅飲み
4話 恋人の探し方
5話 付き合う基準
6話 色々全部未経験
7話 寝室へ
8話 楽しそう(R-18)
9話 気持ちよさ優先(R-18)
10話 ホント悪趣味(R-18)
11話 2週間経ったから
12話 買い物デート
13話 体目当て
14話 今後のデート先候補
15話 それなりに順調
16話 戸籍上の兄
17話 現状に満足してたのに
18話 物置部屋じゃなかった
19話 好きバレ
20話 彼の過去の恋人たち
21話 貴重なネコちゃん
22話 兄弟関係の真実
23話 お兄さんからのお誘い
24話 「普通」に対する感覚
25話 とんでもエピソード
26話 今までと違う扱い
27話 別れたほうがいい
28話 確かめたい
29話 別れる気はない
30話 デートキャンセル
31話 想定外の疑惑
32話 キャンセルをキャンセル
33話 お家デート
34話 冷めて飽きる熱がない
35話 ベッドの上で映画鑑賞
36話 再現プレイ?(R-18)
37話 好きって言わされるプレイ(R-18)
38話 憂鬱な朝
39話 昨夜のアレコレを蒸し返して
40話 可哀想なポンコツ
41話 ハグは優秀
42話 やっぱこれ浮気かも
43話 2番目の恋人
44話 宣戦布告
45話 嫌だ
46話 彼の好きな人
47話 仲良し兄弟
48話 夢見ていたアレコレ
49話 3人でしてもいい
50話 3人でデート
51話 3人デートの感想
52話 2人の違い
53話 不機嫌な彼
54話 車の中で
55話 3人でしよう
56話 どっちが抱っこするか問題(R-18)
57話 今までと違う朝
58話 3Pの感想
59話 変わらなかった場合の未来
60話 3週に1度
61話 するときの位置
62話 お兄さんが真ん中(R-18)
63話 蕩けるお兄さん(R-18)
64話 大進歩
65話 いつか彼が自覚した先
66話 積極的に促す
67話 久々に彼と2人で
68話 半分この提案
69話 好きなんだろう、多分(R-18)
70話 甘い卵焼き

 
 
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聞きたいことは色々70(終)

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 昨夜はかなりあっさり解放されたからか、隣の彼が起き出す気配とともに目が覚める。
「も、朝ですか」
「珍しいな」
「疲れ切る前に寝たからっすよ」
「ああ、なるほど」
 このまま起きるのかと聞かれて、起きますと返して身を起こす。
「お兄さんからメセ返ってます?」
「ああ」
 手元のスマホを弄っている彼に問えば短な肯定が返る。どうやらお兄さん宛にメッセージを書いている途中らしい。
「起きたって送ったから、1時間もしない内に来ると思う」
 既読もついたと言われて、もしかして早起きして待っててくれたのかなと思う。
 元々お兄さんとは今日会う約束をしてたけど、当然それは彼とどうなったかの報告用だし、泣かされてヨシヨシされる可能性もあったから、帰りがけにお兄さん宅へ向かう予定になっていた。
 それをこっちに来てって方向に変更したのは、当然彼の自覚と昨夜のセックスが関係している。
 気持ちよくなる重視じゃなく、彼からの好きを堪能するようなセックスは、お互いに一度ずつイッて一旦終わりになったんだけど、普段はそんな簡単に終わらないから体力的にも精力的にも余力があった。
 もちろんそのまま2回目に入っても良かったし、2回目がキモチイイ重視でも良かったんだけど。翌日お兄さんと会う予定になっているからって、疲れ果てるようなセックスされた後でしかもちゃんと好きを貰えて満足してるなら、セックスする流れにはならない気がするし。
 というか彼が好きを自覚しようがしまいが、気持ちよくイカされまくって疲れ果てる前提だったから、気持ちをやり取りする穏やかなセックスでなんか色々満たされちゃう、なんてのを想定していなかった。
 そう。体力的にも精力的にも余力があるのに精神的に満たされてて、2回目したいって欲求があまりなかったし、それは多分彼もだったんだろう。
 でもこんなに余力を残して終わりにしたら、逆に翌日お兄さん相手にしっかりセックスする流れになるはずで、じゃあもういっそお兄さんを今から呼び出すか、なんて話もなくはなかった。まぁその案は、嫌だって言って蹴ったんだけど。
 もちろんお兄さんとだけしたいわけでも、3人でするのが嫌なわけでもなくて、彼と初めて気持ちをやり取りできたこの夜を、もう少し二人きりで過ごしたかっただけだ。
 たっぷり果てて気絶するみたいに寝落ちるのでもなく、じゃあ寝るかって背中を向けられるのでもなく、擦り寄って甘えて抱きしめてって言っても許されそうな気配があったから。というかそういうのを期待してるって正直に言ったせいで、お兄さんを今から呼び出す案はあっさり立ち消えた。
 その代わりで、朝から来てもらう案になって、朝ごはんを一緒に食べましょうという誘いの文句は、その後3人でセックスしましょうという意味が含まれている。
 それがわからない相手じゃないし、彼が好きを自覚できたってことも伝わっていると思う。
 きっと今、にこにこ顔でこっちに向かっている。
「せっかく目が覚めたから、朝飯作るの手伝いますよ」
「手伝うだけ?」
「どういう意味です?」
「俺はお前の手料理食べたことないんだが」
「手料理ってほどのもの作ったことないですけど」
 お兄さんは先に起き出して朝ごはんを作って待っててくれる人じゃないから、お兄さんに朝食を振る舞った経験は確かにある。ただ、食材好きに使っていいよって言われても、ほんと卵を焼くとかパンを焼くとか野菜ちぎって盛るとか、そういうレベル。
「てか俺としてはあなたが作ってくれる朝ごはんが食べたいですけど」
 お泊りした翌朝のご飯はちょっとした楽しみの一つなのに。って言ったら初耳だって言われて、そういや言ったことなかったかも知れない。
 想いがなくても好きって言ってもらえなくても、恋人としての特別扱いは色々あって、これもその一つだった。
 それを、嬉しいとか楽しみにしてるとか伝えなかったのは、伝えた後の反応が怖かったせいだ。喜んでくれるとか張り切ってくれるとかが全くイメージ出来なかったし、こちらを喜ばせたくてやってるようにも感じなかったというのも大きい。
「言ってなかったけどそうだったんです。てわけで俺はお手伝いで」
 朝ご飯楽しみだなぁお腹減ったなぁって催促すれば、諦めたみたいな溜息が聞こえてきた。
 やっと好きを自覚してもらった後でさえこの反応なんだから、ずっと言わなくて正解だった。と思ったところで、卵料理は何がいいかと聞かれて驚く。
「目玉焼き卵焼きオムレツスクランブルエッグ」
「って俺が選んでいいんすか?」
「文句もなく何でも美味そうに食うな、とは思ってたが、そういやお前の好みを聞いたことはなかったなと思って」
「甘い卵焼きが食べてみたいって言ったら作ってくれます?」
 甘い卵焼きが出てきたことはなくて、完全にしょっぱい派なのはわかっているから、言ったら試してんのかって少し嫌な顔をされてしまったけど。
「じゃなくて、卵焼き甘い派なんすよ。だからあなたが作る甘い卵焼きも食べれるなら食べてみたいなぁって」
 ダメですかって聞いたら再度溜息を吐かれてしまったけれど、その口からは「わかった」という了承が返った。
「やった!」
 多分お兄さんも彼が作る甘い卵焼きは食べたことないはず。少なくとも、卵焼きが出たらしょっぱい味付けだと思いながら口にするだろう。
「きっとお兄さんもびっくりっすね」
「そうか?」
「多分喜んでくれると思います」
「あいつ、甘い卵焼き別に好きじゃないだろ?」
「俺が甘いの好きなのは知ってますよ」
 しょっぱい派の彼が今日という日の朝に甘い卵焼きを作ることの意味を、自分以上に喜んでくれそうな気がする。
「ほんと、楽しみだなぁ」
 くふふと笑えば、すっと彼の顔が近づいてチュッと唇を吸っていく。
「ふぇえっ!?」
 こんなタイミングでキスをされるのはもちろん初めてで、焦って変な声を上げてしまった。
 というかなんで今? という気持ち満々で見つめてしまう先では、昨夜何度も見たあの目が愛し気に自分を見つめていて、ドキドキが加速していく。
「楽しみなのはわかったからもう行くぞ」
 本気で手伝う気ならお前も早く来いよと言い置いて出ていく彼を追いかけるには、少しだけ時間が必要だった。

<終>

やっとエンドつけることが出来ました。今回、内容的にも更新時間的にもかなりグダグダしてしまいましたが、最後までお付き合い本当にどうもありがとうございました。

 
 
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聞きたいことは色々69

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 こんなに派手に笑う姿は珍しい。ただ、そんな大笑いされるほど変なことを言ったつもりはなかった。
「そんな変なこと言いました?」
「いや。悪くない提案だった」
 言いながらもやっぱり笑い続けている。よほどツボに嵌りでもしたんだろうか。
「じゃあそんな笑わなくても」
 不満を滲ませながら抗議すれば、そうだなと肯定されて口を閉ざす。笑い声はもれなくなったものの、楽しげに緩んだままの口元が近づいて口を塞がれる。
 緩く口を解いて待つだけでなく、自分から舌を差し出して続きをせがめば、ゆったりとベッドに押し倒された。
 ただただ抱き合うだなんて今日は性急さがないな、なんて思っていたのが嘘みたいに、手早く繋がる穴を解されていく。
 まぁ慣れた体なので、解すってよりは指でお尻を気持ちよくされるのがメイン。と思っていたのに、前立腺を狙われることなく2本3本と次々突っ込まれる指が増えていくから、あれ? と思う。
「いい?」
 これは当然、もう突っ込んでいいよな、という確認だ。
「ダメなんていいませんけど」
 でも驚いてはいたから、驚いてますと正直に告げた。
 だって指だけでイカされる前に体を繋いだことなんてなかった。もういい加減入れてって頼まれるのが好きそうだった。
「本当は、前と同じようにしてみるつもりだった」
 お兄さん相手に愛しそうな目を向けるようになったきっかけが「懐かしい」だったから、3人でする前と同じようにしてみたら同じように「懐かしい」と思うかもって考えたらしい。初っ端から裸で抱き合ってて、以前とは違うことの連続なんだけども。
「でもお前を目の前にすると、前と同じようには難しいらしい」
 思いっきり失敗してるじゃないですか、という気持ちは口に出さなくても伝わったようで、そんな事を言いながら苦笑してみせる。
「前と同じように抱かれたところで、俺が前と同じようには出来ないから、結局懐かしいなんて思わなかった可能性も高そうですし。だから良かったんじゃないですか、前と同じを試さなくて」
 早く体繋げたいなって思ってくれたなら、それはそれで嬉しいし。体を繋げたあとでじっくり気持ちよくされるセックスだってお兄さん相手にならもう知ってるから、今日はそういうプレイな気分、とかだって別にいい。
「したいように、していいですよ。結果、俺を好きって思えなくても。お兄さんを返してとか言われないなら」
 半分こって言ったのを思い出したのか、また少し吹き出させてしまったけれど、ちょっとだけ狙い通りでもあった。
 さっき爆笑したあとの空気の緩みが良かったと言うか、楽しくて仕方がないって感じよりは、お兄さんを愛し気に見つめてるときに近い目をしていたから。お兄さんを思い出してそんな目をしたのだとしても、今は二人きりだから、その目が向かう先は自分しかいない。
 ここに居ないお兄さんを想っている。そうはっきりわかる態度を見せられたらさすがに挫けるかもだけど、さすがにそこまであからさまなことは起こらないとも思っているし、愛し気に自分だけを見つめてくれる瞬間を感じてみたい気持ちが勝っている。
 そんなこちらの思惑が伝わっているのかはわからないが、彼は柔らかな気配をまとったまま足を抱え上げた。
 ドキドキが加速していくのがわかって、多分それは顔にも出ている。目があって、その瞳が愛し気に緩む。
「ぁ……」
「そんな顔をするくせに」
 ふっと吐息に似た笑いをこぼしながら、愛し気に緩んだ目はそのままで。
「え、ぁ、あ、あぁっっ」
 こちらの発した疑問の声を無視した挿入が始まってしまって、開いた口から押し出された音だけが漏れていく。
「ど、ゆ、意味、ですか。さっきの」
 相手が動きを止めるのを待って、どうしても聞かずにはいられなかった。
「だってさすがに悔しいだろう?」
「えと、何が?」
「俺がお前を好きだと思えない未来ばかり口に出すお前に、素直にお前が好きだと言ってやるのが」
「ええっっ!?」
 本気で驚いてしまったら、驚いたことが不満だったらしく、ムッとした表情を見せる。
「なんでそんなに驚くんだ。気づいたから期待したんじゃないのか?」
 期待はした。愛し気に見つめてくれる瞬間があったらいいなと思ってはいた。そしてその期待通りに、彼が愛し気に見つめてくれたのは事実だけど。
 俺を好きって自覚して、みたいな期待はさすがにしてなかった。はずだ。
「そんな顔、してました? 俺を好きって早く自覚して、みたいな?」
「違うのか?」
「だって俺、俺を好きって思わない可能性、かなりあるって思ってましたよ?」
「だから、口ではそう言いながらも、しっかり期待はしてるんだなって思ったって話で、って、俺の勘違い?」
 彼が想っているのがお兄さんでもいいから、二人きりの今だけは自分にあの目を向けて欲しい。と考えていたくらいだから、勘違いではあるんだろうけど。
「いや嬉しいです。嬉しいですから。撤回とか絶対無しで」
「今更撤回するわけ無いだろ。好きなんだろう、多分。お前のことも、アイツのことも」
 不穏な気配を察知して慌てて言い募れば、呆れた顔で否定された。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々68

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 記憶にある彼とのセックスは割と性急だったというかキモチイイ重視だったから、ただただ裸で抱き合うだけの時間にはやはり慣れない。嬉しさはあるのに、どうしていいかわからないむず痒さがあって、なかなかじっとしていられなかった。
「落ち着きがないな」
 やはり安心はできないかと言われて、ソワソワしちゃって無理ですと正直に返す。
「そわそわ?」
「だってこんなの初めてで」
「まぁ、そうだな」
「どうすればいいかわかんない」
「大人しく抱きしめられておけばいいんじゃないか? って、緊張させたいわけじゃないな」
 動いてしまわないよう気を張ってみたら、あっさり前言撤回された。
「そう簡単には慣れないか」
「ですね。てか嫌がってはないですからね」
「わかってる」
「ちゃんと嬉しいって思ってるし、この後どんなセックスしてくれんのかなって期待もあります。その期待のせいでソワソワしてるとこもありますよ」
「期待はそれであってるのか?」
「あってます。てかあっちはあまり期待したくないので」
 好きって自覚が芽生えない可能性はあると思っているから、期待はしたくなかった。だって彼が愛し気に見つめる先にいるのはだいたいお兄さんで、その視線が自分にだけ向かったことはないのだから。
「俺が好きなのはアイツでお前じゃない、って確定したらどうする?」
「どうもしませんけど、二人でセックスするのは今日が最後かなとは思います」
「それだけ?」
「あなたがお兄さんだけを好きだとしても、お兄さんと別れる気はないです。あ、俺とお兄さんを奪い合うとか?」
「それはない」
 俺に勝ち目ないだろと言って笑う声はカラリとしている。
「お前を愛しいって思えなきゃ、弾かれるのは俺だよな」
 いつだったか、変わらなかった場合の未来は彼もわかっているはずだと、お兄さんが言っていたのを思い出す。
「もし俺を好きって思えなかったら、どうするんですか?」
 彼の自覚を促したいと思って始めたことなのに、彼がお兄さんだけを好きだと自覚した場合、彼がどうする気なのかってことを全く考えていなかったことに気づいた。
「てかなんで二人でしようなんて言い出したんですか。俺を好きって自覚できそうだから、ってわけじゃなかったですよね?」
 確かめたいとは言っていたけど、確信持ってからにしてと迫るお兄さんに、確信が持てそうだとかは返していなかったはずだ。
「もし俺を好きって思えなくても、3人でするの、やめたりしないですよね?」
「お前を好きって思えなくても、それが確定した後でも、3人でしたいの?」
「したいです。でもお兄さんが俺を好きって言って甘やかすのを見るのが辛いとかだと、どうしたらいいのか」
 どうしよう。そんなの全然考えてなかった。彼がお兄さんだけを好きって自覚した場合、3人でしたらお兄さんといちゃつく姿を彼に見せつけることになってしまう。
 勝ち目がないとあっけらかんと言ってしまうくらい、お兄さんの気持ちが自分に向いてないことはわかっているんだろうけど。でもお兄さんの中に彼を好きな気持はちゃんとある。お兄さんがこちらに気を使って、それを彼に向けないようにしてくれているだけだ。
 彼の好きに応えてあげてって言ったら。大丈夫だからって言えたら。きっと……
「あの、お兄さんは家族としての特別はもうあなたが持ってるって言ってて、家族としてはちゃんと好きで、だからあなたの気持ちに応えられないってわけでもなくて、は、半分こで、どうですか?」
「半分こ?」
 何の話だと言われても仕方がないくらい、テンパって取り留めのない言葉を連ねたとは思う。
「お兄さんの好きを、です。俺とあなたとで、半分こ」
 どうですか? と聞いたら、呆気にとられた顔をされた後で爆笑された。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々67

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 彼の部屋に入るのはいつぶりだろう。
 この部屋で重ねた夜を思い出して、それだけでなんだか少し切なくなる。
「緊張してる」
「そりゃあ」
「この部屋でお前抱いてた頃が遠い昔に思えるよ」
「そ、ですね」
 おいでのことばに従ってベッドに転がれば、上から覗き込んでくる瞳が楽しげに煌めいているのがわかる。これがこのあと、自分相手に愛し気に緩む、なんてことが本当に起きるだろうか。
「悲壮、ってほどじゃないけど不安そうではあるな」
「そりゃあ。ってかそれに興奮するんじゃ?」
 初めてこの部屋で抱かれた時のやりとりを思い出して聞いてみれば、少し考えた後で否定が返って驚いた。
「いや。そうでもないかな」
「えっ?」
「散々セックスしてきて、気持ちぃ思いたくさんさせて、甘ったるく好きだって言ってくるまでになった相手に、二人きりでしたいってだけでここまで緊張されて不安になられてるんだから、興奮するよりどっちかって言ったら腹立たしい」
「えぇ〜……」
 不機嫌な彼を一人で相手するのはしんどいなと思ってしまったし、これはやっぱり、泣いて逃げ帰ってお兄さんに呆れられながらヨシヨシされるパターンかも知れない。と思ってますます不安が増したところで、彼がふっと柔らかに笑うからドキッと胸が高鳴ってしまう。
「まぁお前にってより自分に、って方だから」
 そんな不安にならなくてもいいと続けた後、躊躇いがちに「多分」と付け足したから、思わず笑ってしまった。笑って少し緊張が解けて、それに気づいた相手からも安堵の気配が滲んだから、なんとなく、本当に大丈夫な気がしてくる。
「始めても?」
 どうぞと返せば見上げていた顔が降りてきて唇が塞がれた。
 軽いキスを数回繰り返した後は口の中を探られるキスになって、半分は気持ち良さに酔いながら、残り半分で服を脱がしに掛かる相手に協力して服を脱いでいく。
「残り、自分で脱ぎますから」
 そっと相手の胸を押して顔を離し、そっちも脱いで、という気持ちを込めつつ見つめれば、あっさりわかったと頷かれて服を脱ぎ始める。それを感慨深く見つめながら、寝転がったまま自分も残りの服を脱ぎ捨てた。
「いま何考えてる?」
 どうやら見つめすぎたらしい。
「初めてした時、あなた脱がせるの苦労したなぁって、思い出して」
「久々ではあるけど、思い出すのはそこなのか」
 そこまで遡って比較しなくても良いんじゃないかと言われたけど、相手が脱いでくれなくて四苦八苦する姿が楽しかったようで、その後もそこそこもったいぶられてた記憶がある。
「最初っから進んで脱ぐようになったのって、3人でするようになってからじゃないすか?」
「自分だけ裸にされてる、って状態がいつも嫌そうだったから、つい」
「俺に涙目でいい加減脱いでって言われるの、楽しそうでしたもんね」
 しかたないなぁって楽しそうに笑いながら脱いでいくのを、いつも安堵と期待とを抱きながら眺めていた。
「焦らした分だけ可愛くなるって信じてたからな」
 差し出された手を掴んで、手を引かれるのに合わせて上体を起こせば、そのまま相手の腕に包まれる。体を繋げる前にこうして裸で抱き合うのなんて、もちろん二人きりでしてた頃にはしなかった。
 まぁ3人でするときだって、こんな風にじっくりと裸で抱き合うなんてことはなかったんだけど。だってお兄さんが黙ってないというか、3人だと何をするにしても、どうしてももっと賑やかになる。
 つまり初めての状況に、けれど思ったほど心臓が跳ねてないのは、脱いだ後で抱きしめてくれるという流れ自体は変わってないからなんだろう。ごくごく稀に、脱いだ後に抱きしめてくれない意地悪とかもあったから、前段階で泣きかけてもいない今回、そのまま抱きしめてくれる流れになった驚きがないわけでもないけれど。
「今は?」
「安心しきって甘える可愛さも知ってる」
 俺相手でもなるのかはわからないが、と続く言葉を聞きながら、お兄さんに甘えきってる姿を可愛いと思ってたなんて初耳だなと思う。除け者にされて不愉快、って感情の方が強いだろうと思っていた。
「意地悪しないでくれるなら」
「してないだろう?」
「ですね」
 体の力を抜いて、すっかり相手にもたれかかってみた。お兄さんに甘えるのは重ねた信頼がかなり大きいから、さすがに安心しきってと言えるような心境には至ってないけれど、間違いなく嬉しさはある。
「不思議な感じ、です」
 膨らんだ嬉しさを、んふふと零しながら告げれば、ふっと笑うような吐息が相手からも漏れた。

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聞きたいことは色々66

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 お兄さんがいくら大丈夫と言ったって、その予想が外れることもなくはない。
 ただ、もしいつか彼がお兄さんを好きと自覚したとして、もしそこに自分へ向かう好きがなかったとしても。今更今の関係を壊してお兄さんと彼とで付き合うなんてことは起きない。君を手放す気がないのも変わらない。
 そう断言されたから、更に一歩踏み込んでみることにした。踏み込むというか、彼の自覚を積極的に促してみたいって気になった。
 現状特に不満があるわけではないし、このままでもいいって気持ちになってはいたんだけど。でもあの時見た、愛しげな顔をもっと見たいなと思ってしまった。それが、自分に向かうものではなくても。
 何をしたかというと、なるべくお兄さんに真ん中を担当して貰うようになった。しかも、彼にも抱かれた最後、3人で繋がる時にだけお兄さんを真ん中に、ってことも出来るのに、なるべく彼には抱かれないようにもしてみた。
 お兄さんの肉体的な負担が増すし、彼がお兄さんを抱く機会を増やした結果、どうなるかはわからない。あれは本当にただ懐かしかっただけって可能性も充分にあった。ついでに言うと、彼に抱かれないまま終わる3Pだと、後日お兄さんからの補填がある。というのに味をしめた部分がないとも言えない。
 それらをわかったうえで、君がそれでいいならいいよと、お兄さんも協力してくれた結果。彼がお兄さんを愛し気に見つめる機会はかなり増えた。好きだとか可愛いだとかの言葉にも、今まで以上に甘さが滲むようになって、想いが乗った声だなと感じるようになった。
 お兄さん越しにそんな彼の顔を見て、声を聞いて。ドキドキを加速させる自分を、お兄さんが愛し気に見つめてくれるから。彼にトキメクことを喜んでくれるから。
 滑稽だとか惨めだとか思うことはなくて、3人でするようになれて良かった、なんてことまで思っていた。だってこんな顔も声も、どれだけ交際を続けたって、自分ひとりじゃ絶対にさせられなかった。
 自分の中の常識を変えられてしまった自覚はもちろんあるけど、彼と恋人というだけの時間をただただ重ねていた頃に比べたら、間違いなく満たされている。
 そんな中、彼から二人だけでしたい、と言われて驚いた。
 意図的に彼に抱かれる機会を減らしていたのは事実だけれど、だとしても3人でするときの話をされると思っていた。だってお兄さんとはずっと二人でもしてるのに、彼には自分ともそういう時間を取れなんて言われたことはなかった。
「理由は?」
 警戒心をあらわにそう問いかけたのはお兄さんの方だった。
「確かめたいことがある」
「この子を好きって自覚できた、とかじゃないならダメ」
「それを確かめたいって話だろ」
 そうなんだ。二人きりでしたらわかるかも、くらいのところまで来たんだと思うと感慨深い。
 というかお兄さんに対する好きは既に自覚できてるんだろうか。自分がいる場でそんな話はされたことがないけど、二人の間ではしてたのかもしれないとは思う。
 だって自覚できてても何ら不思議がない態度を見せている。
 むしろ自覚済みだからこそ、二人してその話題を避けてた可能性のほうが高いんじゃないだろうか。
「確信持ってからにして」
 確信が持てた後ならいいってことは、こちらが傷つくような目にあったときのことを考えてくれているんだろう。彼が今まで二人でと言い出さなかったのも、間違いなくお兄さんが関係してる。というか絶対ダメって言ってたんだろうなと思う。
「いいですよ、俺は。もし泣かされたら、後でいっぱい甘やかして下さい」
「それは当然だけど」
 更に何度か本当に大丈夫なのか確認された後、お兄さんからも許可が降りた。

続きました→

 
 
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