聞きたいことは色々40

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「好きだ可愛い愛してるって思ったのを口に出すのと、そう言われた相手の反応を楽むためだったり、自分の要求を飲ませるための甘言は全然違うものだからな?」
 お前の好きはこの子が欲しかった好きじゃないんだよと告げるお兄さんは呆れた顔をしているから、何が辛かったかはわかってくれているんだろう。
「てか好きって言わせたりお前から言ったって、それもうそういうプレイしたって話でしょ。お前絶対ノリノリで楽しんだだけでしょ」
 目に浮かぶよと言いながら、こめかみを押さえている。
「で、こんなになるまで泣かせても、フォローとかする気も無いんだよな。というか泣くほど俺を好きな子を抱いてやる優しい俺、くらいの認識なんじゃないの」
 そういうとこほんとクズ、と言い切るお兄さんは容赦がないなと思ってしまって苦笑がこぼれた。
「実際、泣くほど好きな相手に俺も好きだって言われながら抱いてもらったら嬉しいはずだろ?」
 しかもちゃんと気持ちよくしてるし何度もイカせてやってる、という主張は、確かに間違いとも言い難い。
 だって、ずっと貰えなかった相手からの「好き」を喜ぶ気持ちは間違いなくあったから。自分に対する想いなんかさしてないってわかってても、好きだと甘く囁かれながらイクのはたまらなく気持ちよかったから。
 でもその反動も相当大きくて、嬉しいって思ってしまうことが悲しくて仕方がなかった。
 秤にかけたら嬉しいよりも悲しいほうが勝ってしまうから、出来ればあんなセックスは繰り返したくない。
「お前はホント、そういうとこポンコツだよね。いっそ可哀想なくらいに」
 泣くほどお前を好きな子に返せるものが気持ちいいセックスだけだなんて情けないと、やっぱり呆れた顔をする。
「それで、今後はどうするつもりなの。好きって言い合うセックスはもうしないからお付き合い続けてくださいって頼むの?」
「それ以外に何かあるのか」
 その要求を飲まなきゃ振るぞって言われてるような状況で? と返す彼の声は渋い。
 そんな脅迫めいたことを言ったつもりはないんだけど。でも確かにそう言ったも同然なのかもしれない。
「そこまでこの子に執着してるくせに、この子の想いに応えてあげたい的な気持ちってないの?」
「応えただろ。その結果がこれなんだろ」
「本当はわかってるんじゃないの」
「何をだ」
 黙ったまま彼を見つめるお兄さんは、やがて諦めたようにため息を吐いた。それから視線をこちらに移して、他に言っておきたいことはあるかと問う。
「いえ。昨日みたいなセックスはもうやだ、ってのは伝えられたし、了承もされたっぽいので」
 お兄さんがいてくれなかったらこんなにあっさり了承はされなかった気がするから、やっぱりこのタイミングで話せて良かった。心配してわざわざ様子見に来てくれたのが本当に有り難い。
「うん。じゃあ行こうか」
「ってどこへ?」
「寝室。自業自得とか言ってたけど、そんなに泣かせる原因作ったのはやっぱり俺だよねって気持ちが強いんだよね。だから俺にお詫びさせて。君が浮気だって思うようなことはしないから」
「って何をする気で?」
 浮気だって思うようなことはしない、という言い回しが気になって、さすがに警戒してしまう。
「とりあえずは抱っこしながら昨日の詳細を聞きたいかなぁ」
 思い出してまた辛くなったらヨシヨシって背中を撫でたい、らしい。
「しんどい思いした分、いっぱい甘やかしてあげる」
「却下だ」
「だめ。俺はこの子に必要だと思うケアをするだけ。お前には無理なんだから、お前は俺に感謝だけしとけばいいよ」
「だとしても許可できない」
「なんで許可できないのかちゃんと説明できたら、それに俺が納得できたら、考えてもいい」
 そこで答えに詰まってしまった彼を置いて、促されるまま寝室へ向かった。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々39

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 いただきますと告げたあとはなぜか二人とも黙々と食べ始めるから驚く。というか、ただただ無言で食事を摂る空間はなんとも居心地が悪い。
「あの、何かしゃべって欲しいんですけど。というか二人ともどうしちゃったんですか?」
「ああ、ゴメン。気持ちが急いちゃって」
 はやく君の話を聞きたくてと言われても意味がわからず首を傾げるしかなかった。
「そんだけ泣いた理由聞いたら、また泣きたくなっちゃうかもしれないでしょ。そうするとご飯どころじゃなくなるなぁって思って」
「なるほど」
 あなたもですかと口には出さないまま隣を伺いみたけれど、そちらは黙々と食事を続けていて、こちらに視線をくれさえしない。
 聞こえてきたため息は、斜め前に座るお兄さんのものだった。
「そいつの不機嫌は俺のせいだから気にしなくていいよ」
「そ、なんですね」
「そうそう。だからご飯はしっかり食べて」
 夕飯食べ損ねてるでしょと言われて初めて気付く。確かに、初めてのお家デートでレンタル映画を見た流れでセックスして、そのあと夕飯を食べた記憶はない。
 いつもの朝よりお腹が減ってるのは、久々に相手が2度もイクようなセックスをしたせいかと思っていたけど、単純に夕飯を食べそこねてるせいだったらしい。
 思わず見てしまった時計も思っていたより早かった。いつもならもう2時間くらいは寝ていたと思う。
 それなのに朝食は既にテーブルに並んでいたから、もしかしたらもっと早くに起きてくる予定だったのかもしれない。起き出してまっすぐリビングに行くことはなくて、トイレに寄ったり顔を洗ったりしてる間に用意されるご飯や味噌汁はしっかり温かいのだけど、思えばおかず類は確かに冷めている。
 思いのほか早く目覚めてしまった朝は、まだ準備中ってこともあったから、この時間でこの冷めっぷりだと、やはりもっと早くに起きてくる想定だったんだろう。
「無言で食べるの気まずくて何かお喋りしたいなら、話題は何が良いだろうね」
「や、大丈夫です。俺も食事に集中します」
「そお? しばらく晴れた暑い日が続きそうだけど、日傘とかって使ったりする?」
「いや俺は使ったことないですね」
 結局あれこれと振られる話に応じながら食事を続ける中、隣の彼はずっと無言だったから、別の気まずさはずっと付きまとっていたんだけど。でも不機嫌なのはお兄さんのせいらしいので、あまり気にしないようにして食事とお兄さんの振ってくる話に集中する。
「さて、じゃあそろそろ本題に入ろうか」
 ごちそうさまを告げて食器を下げたあと、戻ったテーブルの席には3人ともが揃っていた。
「えと、この場所で、ですか?」
 場所というよりは、彼も一緒の状態で? という気持ちが強い。
「俺と二人きりで話したい?」
「出来れば」
「却下だ」
 ずっと無言だった彼の発した言葉は、短いけれど随分と語気が強かった。
「まぁ俺にあれこれ伝言されるのは気分良くない、ってのもわかるし、君の前で俺にメッてされる覚悟で同席するならいいんじゃない。とは思うんだけど、君の気持ちを優先するから、どうしても二人きりが良ければ場所移動してもいいしこいつ追い出してもいいよ」
 どっちがいいかと聞かれて、同席してくださいと返す。だって昨夜のアレコレを蒸し返して話し合ったほうがいいかも、とは自分も思っていた。話し合いなんてしたくない気持ちも間違いなくあるけれど、お兄さんが同席してくれる状態で話せるなら、その機会は逃さないほうがいいだろう。
「じゃあ一番最初に確かめたいんだけど、それだけ泣かされても、まだ別れる気にはなってない?」
「ああ、はい。俺から別れてって言うつもりはないです。でも昨日みたいなセックス繰り返されたらさすがに耐えられないかも、みたいにはちょっと思ってて」
「なんでだ」
「え、えと、なんでって」
「いやいやいや。あんな顔させといて、まだ別れるって言われないことのが奇跡じゃない?」
 そんな酷い顔をしてたかなと思ったけれど、鏡を見ながら酷い顔だと思ったのも事実だ。
「いっぱい泣いたけど、まぁ、自業自得なとこもあるんで」
「どんなとこが自業自得って思ったの? てかやっぱ、好きって言った結果そうなったってことだよね?」
「えと、はい」
「ゴメン。どうなるかわからないとは言ったけど、思った以上に酷い結果になったっぽいよね」
「いや、わかってて試したのは俺なんで」
「待て、一体なんの話をしてるんだ」
 お兄さんとだけ通じる話をしてたせいか、ますます不機嫌そうな声で問われてしまった。
「あの、好きなのはバレてるし好きって言っても振られないはずだから、隠さずちゃんと好きって言ってみたら、っていう助言を頂いてまして。でもその結果があれだったんで、もう言いませんし、あなたも俺に好きって言わせたり、俺を好きって言ったりするのは止めてもらえたらなぁと」
 毎回あんなの言わされたり言われたりするセックスされたらさすがに続けられないと言ったら、相手はひどく驚いた様子で目を見張る。
「は? まさか好きって言い合うのが嫌だったとか言ってるのか?」
「そ、ですね」
「意味がわからない」
 好きだの可愛いだの愛してるだの言われまくるセックスがしたかったんじゃないのかと言われて、そういや前回そんな話も出たような気がしなくもない。ただ、プレイとして言われたいわけじゃない、という部分がすっぽ抜けている。
 きっとそこは彼には理解できない部分だろうから、結果スルーされた可能性も高そうだけど。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々38

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 意識が浮上して、まずは大きなため息を一つ。多分泣きすぎが原因で、頭と目元と鼻の奥が痛かった。
 好きって言わされて泣いて、好きって返されてやっぱり泣いて、本当にひどいセックスだったと思うのに、相手は間違いなくかなり楽しんでいたと思う。
 最初の夜に、こっちの顔を見て悲壮な顔だの不満そうな顔だの言って楽しそうにしてたし、多分きっと泣き顔にも興奮出来る性癖を持っているんだろう。
 だって昨夜は久々に、というか初回以来初めて、相手がゴムを替えていた。といってもゴム替えは1回だけだったし、初回ほどしつこくイカされることもなかったし、抱き潰されて意識を飛ばしたりもしてないけども。
 いっそ抱き潰されていたほうがまだましだった、かもしれない。
 広いベッドのおかげで終わったあと強制的にくっついて眠る体勢になることもなく、しっかり距離をとった状態で寝るぞと言われてしまったら、自分から触れにいけるはずもない。
 もともと事後にまで甘やかしてくれる人じゃない。どころか、最中でさえそこまで明確に甘やかしてくれるようなことは少ない人だ。しっかり気持ちよくはしてくれたし、好きとも言い合わない、ただ恋人という関係を結んでいるだけの相手だったから、そんなもんかと思ってたし不満なんかなかったけど。
 昨夜は一転して、表面的には好きが溢れる甘ったるいセックスをしたから、頭ではただのプレイとわかってても、事後にあっさり放置されるのは寂しかった。ついでに言えば、やっぱりただのプレイだったよねと、再認識させられるのは辛かった。
 結果、広いベッドの端っこで、あれこれと思い返してはグスグスベソベソとけっこう長い時間ひっそり泣き続けて、結局泣き疲れて寝落ちたらしい。これは、どん底気分な目覚めだったのも致し方ない。
 体を起こせば部屋には自分ひとりで、これはまぁいつも通りと言っていい。毎回けっこうしっかり疲れ果ててしまうから、相手より早く起きれたことなんてほぼなかった。
 トイレを済ませて顔を洗って、鏡の中の自分に向かって酷い顔だと笑ってから、リビングへと向かう。泣き腫らした目元を晒す気まずさはあるが、昨夜散々泣き顔を見られているのだし、今更だろう。多分、体調の良し悪しやらを聞かれるくらいで済むはずだ。
 少なくとも、前夜のセックスの内容を蒸し返してアレコレ言われたことはない。
 まぁ昨日のあれは蒸し返してアレコレ話し合ったほうがいいような気がしないでもないんだけど。今後あんなセックスが主流になるとこちらとしてもちょっと困るし。というかあんなセックスを繰り返されたらさすがに音を上げそうなので、出来れば避けたい。
 でも話し合いがしたいかと言えばしたくない気持ちも強かった。
 泣くだけ泣いて理由をちゃんと話さなかったのも、プレイとわかって拒否らず受け入れたのも、自分自身だという意識はあって、自業自得という気持ちも大きいから、今後どうなるかも相手任せにして、自身の限界までチャレンジでもいいかという気がしないでもない。
 なんてことをツラツラ考えながらリビングのドアを開いた途端。
「ちょっと!? なにその顔」
 リビングに入った瞬間に聞こえてきた、怒りと悲鳴が混じったような声は、お兄さんのものだった。
 テーブルの上には既に食事が3人分並んでいて、お兄さんの向かいには彼が座っていて、どうやら自分が起きてくるのを待っていてくれたらしい。
 その彼とももちろん視線があったけれど、そちらからは特にコメントはないようだ。というか不機嫌そうな顔をしているから、起きてくる前にお兄さんになにか言われたのかも知れない。
「あ、おはようございます」
 来てたんですねと言えば、そりゃあんなメセ貰ったらその後どうなったか気になるでしょと返される。
「めちゃくちゃ泣いたんじゃないの、それ」
「あー……まぁ、はい」
 おいでおいでと手招かれるまま、お兄さんの座る椅子の近くまで近寄れば、スッと立ち上がった相手にギュッと抱きしめられてしまう。
「何されてそんな泣いたのか言ってご覧。おにーさんがそいつにメッてしてあげるから」
 そこそこの声量で告げられたそれは、彼にも聞かせるためだろう。
 大きなため息が聞こえてきて、思わずふふっと笑ってしまう。
「うん。笑えるならヨシ」
 告げ口とご飯どっち先にする? と聞かれたので、ご飯をと返して自分の分の食事が用意された席へと移動した。

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聞きたいことは色々37

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 気づいてしまった後だから、結局同じだったかも知れないけど。でもやっぱり、好きだなんて言うべきじゃなかったんだと思う。
 好きって言ったところでこちらが望むような反応がないのは想定済みだったのに。きっと相手に対してもこの想いを認めてしまったせいで、もう、止まらない。
 恋人になってデートもセックスも繰り返しているのに、相手には冷める熱すら湧かないって言われるような関係しか築けない。なのにそれを突きつけられた直後でも、甘い声であやされながら体を気持ちよくされてしまうと、どうしたって好きだって気持ちが湧いてくる。
 自分ばかりがそうなってるってわかってても。それが寂しくても。辛くても。苦しくても。好きだと思うことをやめられない。
 好きだ好きだと溢れてくる想いを、震える息に乗せて吐き出した。
「すきっ」
「なに?」
「すき、です」
 聞き返された二度目は、震えることもなくはっきりと音になったけれど、結果、返ってきたのは相手の笑う声だった。
「まさか俺を好きで泣いてんの」
 かわいいねぇと続いた声は少し弾んで機嫌は良さそうだけど、間違いなく、驚きと揶揄を含んだ響きをしている。
 また溢れた涙を相手の肩でぬぐって、漏れそうになる嗚咽を飲み込んで、ゆるく体を揺すった。
 はやく頭の中がキモチイイでいっぱいになればいい。そうすれば好きって気持ちが少しでも薄まるかも知れない。
 そこに想いがなくたって、彼とのセックスはいつだってこちらを気持ちよくしてくれるから、自分ばっかり好きなんだって事実からも、ちょっとだけ目が逸らせそうな気がする。
 だから、早く……
「ぁっ、あ、あぁっ」
 自らイイトコを擦り付けて、キュウっとお腹を締め付ければ、相手も熱い息を吐く。といっても自ら動いて相手をイカせられたことはないので、そのまま自分の快感だけを追って腰を揺すった。
「今日は随分エッチだなぁ」
 部屋のせいか焦らしたせいかと聞かれたけれど、どっちもそうだし、どっちも違う。
 答えず腰を揺すり続け、自分を追い詰めていく。そうやってイケることを既に知っているから、前にそうしたときのことを思い出しながら、キモチイイに集中した。なのに。
「んゃぁあっっ」
 両胸の先を抓るみたいに摘まれ引かれて悲鳴が上がる。
 痛みでビクビクと体が震えてしまったし、お腹のペニスもギュウギュウと締め付けてしまったし、その余波で白濁が少し溢れてしまったけれど。当然、イッたなんて言えるような状況じゃない。
 きもちよくイケるはずだったところに、冷水でも浴びせられたみたいな衝撃だった。
「な、なんで」
 戸惑いと焦りとで声が震える。なんでこんな目に合わされたのか、全く理解できてなかった。だってこんなこと、今までされたことがない。
「自分でお尻振って気持ちよくなるのはいいけど、一人で勝手にイこうとするのはダメだろ。それに俺のこと、全然見てなかったし」
 だからおしおき、なんて言われるのは初めてだった。
 もう指は触れてないのに、抓られた胸の先がヒリヒリと痛い。
「ひどい……」
「どっちがだ」
 あんなに可愛く好きって言った直後にいきなり一人で盛るなよと、苦笑と呆れ混じりに言われてしまって、恥ずかしい上に居た堪れない。
 なにも言えずに黙ってしまえば、胸の片側にそっと相手の指先が触れる。痛みを与えたことを詫びるみたいに、さわさわと撫でる指先は優しくてもどかしい。
「んっ……」
「痛かった?」
「はい」
「ちょっと漏れてたけど、イッてないよね?」
「は、ぁんっ」
 柔くつまんでクリクリと転がされると、触られていないもう片側がウズウズして、お腹がキュンとして、ハマったままのペニスをギュッと絞ってしまう。
 ふふっと微かに笑う気配がして、反対側もして欲しいかと問われて、食い気味にして欲しいと頼んでしまえば、やっぱり楽しそうに笑う気配がした。
「んぁあっっ」
 反対側は指じゃなくて口で吸い付かれて、同時に、やわやわと触れていた指での刺激も強くなる。
 イキそこねた体はあっさり昂って、またゆるゆると腰を揺すってしまう。中のイイトコロを自分で摺りに行ってしまう。
「イキたい?」
「い、いきたい」
 こう聞かれたときにはっきりイカセてって頼んだら、気持ちよくイカセて貰えるのを経験的に知っている。だから躊躇うことなく、イカセてってお願いしたのに。
「じゃあ、さっきみたいに好きって言って?」
 好きって言わされるプレイだ、と思った瞬間にはまた涙がぶわっと溢れてしまう。
 泣くとこまでは再現しなくても良かったんだけどと言いながら、滲む視界の先で相手が苦笑していた。

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聞きたいことは色々36

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 出来ることなら場所は移動したかったけれど、相手にそんな気がさらさらないのはわかっていた。だって必要なものは全部揃っていて、しかも普段使ってるベッドより断然広い。
 わかったいたけど、場所を移動したいと頼んだし、この部屋でするのは気が引けるし気が散ると訴えた。移動する距離なんてたいしたことないんだから、ワンチャン聞き入れてくれるかもと願った。
 あなたのベッドの匂いがいい、という訴えには少し心揺れた様子ではあったけれど、それでも結局、部屋の移動はないまま行為を続行されている。
 この部屋で、このベッドの上で。恋人を叔父に差し出して、代わりにその叔父の嫁である戸籍上の兄を抱いていた。という事実を意識せずにいられない、という訴えを、嫉妬のようなものと思われた可能性が高い。
 今日は隠すことなく好きだと認める発言をしていたから、余計にそう思わせたのかもしれない。
 気になるならどんな風に抱いてたか再現してやろうか、という申し出は全力でお断りした。
 だってその片鱗は既にお兄さん側から聞いている。端的に言えば、旦那の前で別の男に抱かれながら、その男のことを好きだと言わされるようなプレイだ。ただし旦那のアフターフォロー付き、ってことも知っているけど。
 ここにいるのは自分と彼の二人だけで、自分たちの関係は一応恋人なのに、何をどう再現するつもりなのか。ついでにいえば、アフターフォローがないってことも知っている。
 全力でお断りしたが、それを相手がどう受け取ったかはわからない。
 結果、いつもより焦らされている。ような気がする。
 少なくとも、いつもならとっくに体を繋いで揺すられていると思うのに、まだ指だけで後ろの穴を弄られていた。
 既に知った快楽のせいで、お腹の奥のほうがグズグズと疼いている。早く奥まで埋めてほしくて切ないのは、お腹なのか胸なのか。
 なんだか泣きたいような気持ちになるから、切ないのはお腹だけでいいのに。
「イッていいよ?」
 二度目の射精を促す甘い声に、ゆるく首を振って拒否を示す。
「や、だぁ。も、はやく、入れて」
 全力でお断りしたのに、結局再現されてるのかも知れない。
「だぁめ。だって気ぃ散って集中できないんだろ」
 もっとドロドロになって突っ込んで貰うことだけ必死に考えるようになってから、なんて言われてゾッとする。
「むりっ、むり、だから」
「だいじょぶだいじょぶ」
 気持ちぃだけだし初めてでもないでしょと言われたけど、こんなの経験したことない。
「知らな、こんなの、知らなっ」
「そうだっけ? でも気持ちぃだけなのはホントだから」
 誰相手にしたの、なんて聞くだけ無駄だし気にするだけバカを見るのもわかってるけど。やっぱり再現プレイ的なことをされているんだと妙に冷めた納得もあるんだけど。
 わかっててもどうしたって胸は痛い。
「ねぇやだっ、ほんと、お願い、も、やめて」
 ブワッと溢れてしまった涙に相手が怯んだのがわかる。
 快感に耐えきれなくて流れる涙と違うのは明らかで、さすがにそれは相手もわかっているんだろう。
「わかったわかった。意地悪が過ぎたな」
 指が抜かれて抱き起こされて、宥めるみたいにそのまま抱きしめられてよしよしと背を撫でられる。
 この腕を振り払って、今日はもう気が乗らないと帰ってしまえたらいいのに。
 実際は、縋るみたいに抱き返して、早くちゃんと抱いてと甘えた声でお願いしていた。
 だってお腹の奥はもうグズグズに蕩けていて、彼のペニスに貫かれるのをずっと待っているのだ。
 わかったと応じた相手がゴムを付けるのを待って、促されるまま相手の腰を跨いで自らペニスを迎えに行く。
「んぁあああ」
「上手。気持ちぃよ」
 いっぱい焦らされてうねってると薄く笑う声は甘くて、お腹の奥は満たされて、いつもなら安堵したり嬉しかったりするんだけど。
「どうして泣くの」
「だ、ってぇ」
 泣き顔を見られるのを避けるように、やっぱり縋るみたいに抱きついて、相手の肩に濡れた目を押し当てた。

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聞きたいことは色々35

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 他はと聞かれて得にはと返せば、じゃあどれ見る? とテレビ画面を指されて、そういや映画をレンタルするって流れだったと思い出す。
 とりあえず聞いたことのあるタイトルを選んで流し始める傍ら、彼がクローゼットから新たにいくつか出してきたクッションを積んで画面を見やすい体勢を作る。
「あの、くっつきすぎじゃ……?」
「暑い? ならエアコンの温度下げとくか」
「そういう話じゃ」
「じゃあ嫌だって話?」
 せっかくのお家デートなのに? と至近距離で顔を覗き込むようにして言われて、うっと言葉に詰まってしまう。
「なんならお前抱っこしながら見るのもありなくらいだと思ってるけど」
「ムリムリムリ。てか映画どころじゃなくなるでしょそんなの」
 そうなるのが目的なんだけどとおかしそうに笑ったあと、抱っこはしないであげるからとりあえず映画を見ようかと促されてしまった。そう。既に映画は始まっている。
 それでも結局、ピタリと寄り添う相手に手を握られたり腿をさすられたり肩や腰を抱かれたりで散々気が散らされたあと、全然集中できないからもう少し大人しくしててって怒り気味にお願いして、なぜか相手に膝を貸す羽目になっている。いわゆる膝枕というやつだ。
 しかもエンドロールが流れる頃には、すっかり寝入っている。多分。
「終わりましたよ」
 軽く肩を揺すればすぐに身を起こしてくれたけれど、どこかぼんやりとした顔は寝起きそのものだろう。
 お泊りした翌朝は大概自分のほうが後に起きるので、珍しいものを見ている、とは思う。
「寝落ちたのか」
 どうやら本人にもごまかす気はないらしい。
「横になんかなるから」
「膝枕、お家デートの醍醐味みたいなもんだろ。気持ちよかったよ」
 ありがとうなの一言で絆されていいのかと思いつつも、まぁ悪い気はしない。
「最後まで一緒に見てなかったのは悪かった」
「別にいいですけどね」
 もともと適当に選んだ映画で、それなりに面白かったとは思うが、真剣に見入るほどの面白さではなかったのも確かだし。
「さて、俺の目論見はどこまで成功したんだろうね?」
「目論見、ですか?」
「お家デート、映画のレンタルっていう選択は失敗だった気もしてる」
 あんな適当に選んだ作品を、まさかしっかり見始めるとは思ってなかった、だそうで。
 つまりちょっかいかけてくる相手を気が散ると邪険にしないで、そのままエッチになだれ込むのが正解だった。ぽい、のか?
 聞いてみたら、最初の段階でその展開はなさそうってわかってた、と返された。確かに、抱っこしようかって提案を、映画どころじゃなくなるってけっこうはっきり拒否った記憶はある。
「え、じゃあ俺はどうすれば良かったんですか?」
「べつにどうもしなくていいよ。それにちゃんと膝枕してくれたし。ただ、俺はそこそこ満足してるけど、お前的にはどうだったかなと。無駄な数時間をただ過ごしただけ、ってほど不満そうには見えないけど」
 お家デート楽しかったとは言ってもらえそうにないというので、お家デート難易度高すぎませんかと返してしまった。
「まぁ初めてだしな。こういうの」
「ですよ」
「でも、もう付き合いきれないから帰るっていい出す雰囲気じゃないから、大失敗ってわけでもないよな?」
 おいでと言われて広げられた腕に、少し躊躇ってから結局収まりに行けば、んふふと抑えた笑いが聞こえてくる。機嫌が良さそうだし、このままセックスに移行するんだろうか、というくらいには甘い気配が漂っている気がしたんだけど。
「じゃあお前は一通り見終えたわけだから、俺が寝落ちたあたりから見直そうか」
 もう気が散ってもいいもんなと言われながら、後ろから抱きかかえられるような体勢に変えられて驚く。
「えっ?」
「さっきは譲ったけど、テレビ見ながらエロいことされるのもお家デートの醍醐味みたいなもんだろ」
「そんなの知らなっ」
「まぁ見てるふりでいいから」
 どうせ2回目だしねと言われて、少し前に見ていた場面がまたテレビに流れ出す。
 彼が寝落ちてた時間は思ったよりも短かったようで、もうかなり終盤に近かったから、そう長いこと遊ばれたわけじゃないのだけが救いだった気もするし、相手もそれがわかってたからこその加減のない煽りだった気もする。
 つまり2回目のエンドロールが流れる頃には、まんまと、早くちゃんと抱いて欲しいって気持ちにさせられていた。

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