聞きたいことは色々34

1話戻る→   最初から読む→

 どういう意味かと聞かれて、渋々口を開く。
「だって、俺があなたを好きになってるって、知ってるんですよね? 俺が嫌がる変なプレイだって、どうしてもしたいってお願いされたら多分もう拒否しきれないと思いますよ?」
「それは強引に試されたいっていう遠回しなお願いなの?」
 なんでそうなる。
「違いますっ」
 本気で言ってんのかって思いながらちょっと睨んでしまったら、相手も本気ではなかった様子で軽く肩を竦めて見せる。ついでに諦めたようなため息も一つ。
「頼んで受け入れてもらったとして、その後、これ以上付き合いきれないって振られる可能性は結局あるだろ。意外とハマる可能性にかけて試してみようとはならないし、別に無理してする必要はないってなるな」
 そういう話をこの前も聞かせただろと言われて、そうですねと返しはしたけど、あれはお兄さんとの会話を横で聞いてただけに近いし、納得行ってないというか気になりながら聞けてないことが結構ある。
「逃げない恋人が欲しいから、俺が嫌がることはしないんですっけ」
「まぁ、そうだな」
「でも俺に振られたところで、別に悲しいとも惜しいとも思わないですよね?」
「なんでそうなる。悲しいかはともかく、少なくとも惜しむ気持ちがなきゃ、もっと好き勝手してる」
「俺を積極的に口説くゲームはしないでくれたけど、でも、俺があなたを好きになる過程はけっこう堪能したんじゃないですか?」
 好きにさせないでと口説かれるのを拒んで、なのにただただ恋人って関係で出かけてセックスを繰り返しただけで勝手にどんどん好きになっていく自分を、どんな気持ちで見られてたんだと思うと胸が苦しい。
「もしかして、お前が俺を好きになったから、俺はもう満足してて、お前に対する気持ちが冷めてるはずだ。みたいな話?」
「そ、ですね」
「わからないな。そうならないように、口説くの禁止にしたんじゃないのか?」
「は?」
「は? ってなんだ」
「いやだって意味がわからなくて」
 なんで口説くの禁止したと思ってるんですかと聞いてみたら、俺が遊びに熱中しないように、と返ってきてやっぱり意味はわからなかった。
「口説かれて好きになった頃に、俺の気持ちが冷めてて捨てらるのが嫌だったんだよな?」
「そうですよ」
「俺に口説く遊びを始めさせたくなくて、あっさり抱かれたし恋人にもなったんだろ?」
「ですよ」
「結果俺はお前を一切口説いてないんだから、そんな心配必要ないだろ?」
「口説かれなくても結局好きになってんですけど」
「口説いてないんだからそれは別に関係ない。って、あー……なるほど」
 わかった気がすると言われたあと。
「好きになって貰う過程が楽しければ楽しいほどその反動が大きいとこはあるし、それを熱が冷めると確かに言った。けど、お前の場合は口説いてないのに冷めるも何も。冷めて飽きるような熱がそもそも発生してないんだけど」
「はぁあ???」
 そんなに驚くようなことかと言われたけど、そんなに驚くようなことだろう。口説くゲームをされたくないと拒んだことが、こんな意味を持っていたとは思わなかった。
「納得したくないのに納得しそうで嫌だ」
「なんだそれは」
「それはまぁいいです」
 だって受けた衝撃を上手く言葉にできないし、言葉にしたところで相手にちゃんと伝わる自信もない。それよりも。
「つまり俺があなたをどれだけ好きになろうが、飽きてポイ捨てされることはないって事なんですかね?」
「現状ではそうなるな」
「ちなみに俺は今日、あなたが好きなことを隠してないんですけど、何か思うところってあったりします? はいはい知ってる知ってる、くらいなもんですか?」
「ずいぶんあっさり認めてるな、とは思ったよ。自覚がないか言いたくないかなんだろうと思ってたからな」
「そもそも好きってバレたら振られるんだって思ってましたからね」
「それはアイツに聞いたな。好きって言われたくらいで振らないよ。っていうか、さっきも言ったように冷めて飽きる熱がないって話をするべきだったか?」
「もっと早く知っておきたかった、とは欠片も思ってないですね」
 冷めて飽きる熱がない話はもちろんのこと、好きがバレても即ポイ捨てにはならない話もだ。
 聞いてた話と違うって追求した場合、どんな説明をされるのか。お兄さんを経由したことでショックが和らいでいるのは確実だし、振られないだけで彼から何かしらが返ってくるわけでもないのだから、彼が過去にどんな付き合いをしてきたか知らないまま、自分ばかりが好きな現実を突きつけられる羽目になって苦しんだに違いない。
 それに自分だけじゃ、振られないなら好きって言おう、なんて発想は持たなかった自信がある。
 好きってバレてるんだしガンガン言ってみるのも一つの手。というアドバイスはもちろんお兄さんからのものだ。
 言って彼の心に響く可能性は低くて、実際、何も響いてなさそうではあるけれど。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々33

1話戻る→   最初から読む→

 正直に言えば帰りたいけど、帰りますと言って立ち上がる勇気もない。固まったまま動けずにいれば、やがて返答を諦めたらしい相手のため息が聞こえてくる。
「この後の予定は?」
「特には」
 今の電話でこの後の予定は空いてしまった。
「ならシャワー浴びてくる?」
「それ、って……」
「するかわかんないから、別にそのままでもいいけど」
「ええっ??」
 デートはしなくてもセックスだけはしようって話かと思ったら、そういうわけでもないらしい?
 意味がわからなくて頭の中に疑問符が回った。
「どっか出かけて楽しめる感じしないし、とりあえずお家デートでも目指すかと思って」
「お家デート……」
「どうしても今日はその気にならないってなら帰っていいから、もう数時間だけ付き合ってよ」
 仕切り直しオッケーですを言い損ねたせいで、今日はもう気が乗らないから無理って思われてるのかも知れない。
「その気がない、わけじゃ……」
「ならシャワーしておいで」
 洗ってないの気にしながらしたり、気持ち盛り上がってから中断するよりいいでしょ。と言われてバスルームに追いやられてしまったけれど、つまりお家デートって何するの? というところで思考が突っかかって止まってしまった。
 だからといって呆然と突っ立っているわけにも行かず、一通りの準備を済ませてからリビングへと戻る。
「お帰り。じゃあ行くか」
「ってどこへ」
「寝室」
 やっぱり頭の中では「お家デートとは」という疑問がグルグルしてたけれど、わかりましたと答えて相手の背を追ったその先。
「ここ、って」
「ここが寝室。で、あっちは俺の部屋」
 あっち、というのは普段セックスしてそのままお泊りしている部屋だ。あの部屋を寝室だと認識していたのは自分だけで、言われてみれば、彼自身が寝室と呼んだことはなかったかも知れない。
「それは、ってか勝手に入って良いんですか!?」
「もう知られた後だし別に問題ない。説明が面倒で使ってなかっただけだから」
 確かに、初回でこの部屋に通されたら色々戸惑ったり勘ぐったりしそうな部屋ではあるけども。
「ほらこっち」
 さっさとベッドの上に上がった相手が、ぽんぽんと隣のスペースを叩いて呼んでいる。
「あの、それで一体なにを……」
「なにかレンタルして見るとか、音楽かけてまったりダラダラするとか。あとは、オセロとチェスとトランプならあるかな」
 言われて気づいたけれど、リビングにも彼の部屋にもなかったテレビがこの部屋にはあった。しかもけっこう大きい。
 前回この部屋にお邪魔した時は、そんなところにまで気が回っていなかった。
「それがお家デート、ですか」
「そう。で、なにか希望ある?」
「特には」
「見たかったけど見損ねた映画とかは? ある?」
「すぐに思いつきません」
「じゃあとりあえず話題作とかから適当に選ぼうか」
 テレビのスイッチを入れた相手が何やら操作するのを黙って待てば、やがて動画のレンタルが出来るページが表示される。当たり前なんだろうけれど随分と手慣れている。
 大きなベッドの存在感がすごすぎるのと、恋人交換だの3人でだのって話を聞かされたのとで、ヤるための部屋ってイメージが強いけれど、本来は叔父夫婦の寝室なわけで、イチャイチャしながら映画を見たり音楽を聞いたりってのも当たり前にしていた部屋なんだろうと思う。
 そこに彼や彼の恋人だったりが同席してたのかまではわからないけど、この手慣れた感じからすると、皆でワイワイ過ごしていた可能性もあるんだろうか。
「この部屋で、みんなで映画とか、みてたんですか?」
「みんなって?」
「えと、叔父さんとお兄さんと、あと元彼、とか」
「さすがにそのメンバーで映画はないな。気分盛り上げるためのAV流してたりとか、カメラ繋いで映したりとかならあった」
「ひえっ」
 ちょっと想定外の返答が来て小さな悲鳴を上げてしまった。相手は可笑しそうに笑いながら、カメラもすぐ出せるけど、などと言う。
「ムリムリムリムリ」
「知ってる。自分がハメ撮りされてるとこ見せられて興奮する。みたいな性癖、あるわけないよなぁ」
「それが普通ですって。多分」
「意外とハマる可能性もあるんだけど、強引に試した結果、俺が振られる可能性のが高いのも知ってるよ」
「本気でそう、思ってます?」
 ほろりと零れ出てしまった言葉に、しまった、と思うものの、当然後の祭りだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々32

1話戻る→   最初から読む→

「一応聞きますけど、ランチしかしてないのは浮気扱いじゃないですよね?」
「お前をセックスに誘うような相手と飯食いに行くのを気にせず見逃せって?」
 それであっさり俺に食われたくせにと言われて、ついでに懲りないなとも言われたけれど、そんな警戒が必要な相手じゃないだろう。
「俺にあなたと別れる気がなくて、浮気する気もないの、知ってる相手ですよ。抱かせてって言われたのなんてあの日だけだし、一緒にご飯行ったってそんな素振り全然ないですし、基本、ノロケ混じりの昔話聞いたり、あなたと上手く付き合う方法を教えて貰ってるだけですけど」
「あいつは俺と別れさせようとしてるんじゃないのか?」
「熱心に別れを勧められたりはしてないですね」
 振られたらたっぷり慰めてくれる気でいるようだし、頼まなくても次の恋人探しを手伝ってくれる気満々な気配があるけど、基本的にはこの交際を応援してくれていると思う。既に好きって気持ちが湧いている事実を当然って感じに肯定してくれるし、血の繋がりのない戸籍上の弟のこともそれなりに案じている気がする。
「じゃあなんで、せいぜい振られないように、なんて言ってくるんだ」
「別れる気はないですけど、今まで通りに続けていける自信もない。って思ってるのを知ってるから、ですかね」
 今日だってさっそくデートキャンセルされてるわけですし、とつい口に出してしまえば、相手もバツが悪そうだ。
「なら、キャンセルをキャンセルで、今から仕切り直して出かけるか」
「や、今日はもう」
「そういう気になれない?」
「あー、まぁ、はい」
 困った。と思いながら、相手の視線から逃げるように俯いてしまう。
 勝手に別れ話だと早とちりして、泣きつく気満々でお兄さんにメッセージを送ってしまった事実が後ろめたい。
 椅子を立つ音と、相手が近づいてくる気配。
「どうしても?」
 スッと横にしゃがみ込まれて、下から覗き込むように問われて息を呑む。
 お兄さんと話すまであまり意識してなかったけれど、こういうのも顔の良さをわかってて自分の要求を飲ませる手法の一つなんだと、今はもう理解していた。
 まぁ特に無茶な要求をされてたわけでもなかったから、呑気にトキメイて、仕方ないなぁって受け入れてしまってたけど。相手の要求を飲めば満足げに笑ってくれるのも知っているし、相手の満足度が高いときに甘やかな雰囲気を纏うことが多いのだってわかっている。
「ど、しても」
 相手もわかっててやってるんだろうけれど、絶対無理ってお断りするようなことでこの手法を使われたことがないので、実のところ、受け入れずに突っぱねるのは初めてだった。
「デートキャンセルがそんなにダメだった? それとも浮気を疑ったこと? 別れる気なんだって早とちりしたこと?」
 どれに怒ってるのと尋ねる声は優しくて、そのどれにも怒ってないから答えに困る。
「怒ってない、です」
「じゃあデートの仕切り直しさせてよ」
「それは、別の日で」
「なんで?」
 もともとお泊りデートの予定で出てきてるんだから、この後に予定なんかないだろうって、そう思うのも当然だ。
「だって、別れ話されるんだと思ってて……」
 ランチしてたのを咎められたばかりなのに、会いたいってメセ送ったなんて、言い辛くて仕方がない。
「うん。それで」
「その、」
 正直に言うべきかどうか迷いまくってたら、ポケットの中のスマホが鳴った。
 反射的にポケットから取り出して確認した相手はお兄さんで、通話に出るかどうかを迷えば誰からの電話か気づいたらしく「出ていいよ」と促される。
「もしもし」
『メセ見たけど今どこ居るの?』
「彼の家、です」
『振られちゃった?』
「いえ。俺の勘違い、でした」
『うん。俺が煽ったのが裏目に出たんだよね。ごめんね。大丈夫?』
「はい」
『今から会う?』
「いえ。デート仕切り直したいって」
『そっか。じゃあせっかくのデート、楽しんでおいで』
 ダメダメだったらまた連絡してきていいからねの言葉を最後に通話は切れた。
「あの……」
 通話中じっとこちらを見ていた相手に向き直り、でも何を言えばいいかがわからない。デート仕切り直しオッケーです、と言っても、それを相手が快く受け入れてくれる想像が出来ないせいだ。
「あいつ、なんだって?」
「デート楽しんでおいで、って」
「へぇ。あいつにそう言われたら、俺とデートしてくれるんだ?」
 さっきまで拒否ってたのにと言われればその通りでしかないんだけど、一気に不機嫌になってしまった相手を前にどうしていいかわからなかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々31

1話戻る→   最初から読む→

 相手宅に到着し、一息つく間もなく「これなんだけど」と差し出されたのは相手のスマホだった。
 アプリのトーク画面に写っているのは、自分と彼の兄であるあの人とのツーショット写真だ。いわゆる自撮りで、撮ったのは相手だけれど自分にも送ってくれたから、同じものが自身のスマホの写真フォルダにも入っている。
 他にもツーショットじゃない自分の写真が何枚か続いていて、どれも覚えがあるというか、それらも自身のスマホに同じものがある。
「ご飯食べ行ったときの写真ですね。自撮りのツーショなんて、あっ……」
 初めてと続けるはずだった言葉を止めたのは、スクロールした先にあった相手からのメッセージが目に入ったせいだ。
 そこには、お前が放ったらかしてる3週間の間に俺は3回も会ったという自慢? と、せいぜい振られないように頑張れというエール? のようなものが書かれている。
 さっき別れ話をするのか聞いたときに、その方がいいならって返ってきたのはこれのせいか。こちらから別れ話を持ちかけられると思ったのかも知れない。
「えー……と、この前も言いましたけど、俺の方は別れる気はないですよ。今のところ」
 ほぼほぼ同じセリフを告げてみた。
 まぁ話を聞いたり聞いてもらってるうちに、愚痴っぽくなったというか泣き言めいたことを言ってしまったような記憶はあるけど。
 だって自分ばっかり好きなのはしんどいのに、これから先も想いが返されることは多分なくて、今はまだ相手に付き合い続ける意志があるけれど、好きがバレてるらしい今後それがどう影響してくるのかもわからないのだ。今後に関しては兄であるあの人ですら、彼の気持ちがどう転ぶかさっぱりわからないと言っていた。
 色々アドバイスめいた提案もされたけれど、それらも試してみた結果に責任は取れないと言われている。
「食事に行ったなんて話は聞いてないんだが? しかも3回?」
「え、そっち」
「どういう意味だ」
 まさか嫉妬ですか、と聞いてみたい気持ちが湧いたが、どうにか飲み込んで口を開く。
「今まで会わなかった間に何したかなんて気にされたことなくて、そこ気にするとか思ってなかったんですよ。あと、俺が言わなくても勝手に伝わるのかとも思ってたし」
 実際勝手に伝わってるし。の言葉もどうにか飲み込む。まさかデート直前に相手を煽る材料に使われるとは思ってなかった。
「とっくにあなたにも伝わってて何も言及がない、という認識でした」
 何か問題が? と聞いてみたけれど、相手は黙ってこちらを見ていてなんとも居心地が悪い。何を言うか迷って、考えて、口を閉じてるだけなんだろうけど。
「休日は溜まった家事に追われてるんじゃなかったのか。俺達のデートが3週に1回程度の形に落ち着いたのは、お前が多すぎるって言ったからだよな?」
 この人は当初最低でも2週に1回くらいはデートをする気だったし、こちらが望むならもっと頻度を増やしてもいいとすら言っていたんだけど。それを、月に1回くらいで充分だと言って、時には無い用事を捻出して、デート頻度を下げたのはこちらだ。
 そんな頻繁にデートして抱かれてたら、あっという間に好意が育ってしまうんじゃないかと思ったし、デートしない期間に甘いメッセージのやり取りが発生しないおかげで、気持ちが萎えるのも有り難かった。
「昼から泊りがけのデートするのと、ちょっとランチじゃ全然違うじゃないですか」
 これももちろん理由の一つだ。
 抱き潰されて翌日もヘロヘロって状況は一応避けてくれてたけど、それでももう充分だからさっさと突っ込んでイッて欲しいと思うくらいには、毎回濃厚なセックスをされていた。
 デート頻度を落としたからそうなっているのか、デート頻度を上げてもそこは変わらないのかはわからないけど。でも3週間開けても相手は1回の吐精で満足できてたっぽいから、デート頻度を上げたところで、気持ちよくイカされまくるセックスは変わらない気がする。
「ランチだけ?」
「ですよ。てかそこ疑うんですか? 仮にセックスしたとても、浮気扱いにはならないような相手なんですよね?」
「こそこそ二人きりで会ってセックスした結果、俺が振られる事になるなら、さすがに浮気されて振られたって思うけどな。浮気扱いにしないのは俺が把握してる範囲での話だし、俺が参加する前提の話でもある」
 お前が自分で3人目を選んで連れてくるなら歓迎するしそれも浮気扱いにはしない、だそうで。問題は相手が誰かじゃないらしい。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々30

1話戻る→   最初から読む→

 いつも通りの3週間を過ごして、いつも通りデートの呼び出しに応じたけれど、さすがに緊張はしていた。
 別れるつもりがないと言ったことで、じゃあ今まで通りでって事になったけれど、本当に今まで通りのデートやセックスが出来るのかという不安はどうしたって湧いている。
 会社で顔を合わせてはいるけど元々なるべく関わらないようにしていたし、プライベートなメッセージのやり取りだって基本日程調整でしか利用されていなかったから、あの日から3週間も経過してるのに、あの日彼の家を出てから先、彼とこの件に関して何も話していなかった。
 あの日は彼と二人きりで話せないままお開きになってしまったし、何かしら話し合うことになるはずだ。とは思っていたんだけど。
「どうしたんですか?」
 待ち合わせ場所で顔を合わせるなりそう聞いてしまったくらいに、初っ端から全然「今まで通り」じゃない。あからさまに相手の纏う空気が重くて、多分相当機嫌が悪い。
「出掛けに、ちょっと……」
「ちょっと?」
 相当嫌なことがあったように思えるくらいの雰囲気なんだけど。
「デートは無理」
「ああ、はい。もちろんいいですよ」
 無理だと判断した時点で連絡をくれても良かったんじゃと思わなくもないし、らしくないなとも思ったけれど、こんな状態でデートを強行されるよりは断然いい。
「じゃあまた誘ってください」
 帰りますねと続けたら、背を向ける間もなく相手の手が伸びてきて腕を掴まれる。
「えっ?」
「デートはしないが、用事はある。というか聞きたいことがある」
「ああ、なるほど」
 だからキャンセルの連絡がなかったらしい。
「ちなみに嫌ですって言うのは?」
「なしで」
「ですよね」
 デートという形を取るのさえ嫌になる話題ってなんだろう。そう考えて出てくる話題なんて、別れ話くらいしか思いつかないんだけど。
「場所は?」
「うちで」
 あいつは居ないからと続いた言葉に、知ってますと返すのはやめておいた。
 連絡先を交換して、そちらとは他愛もないメッセージをあれこれとやりとりしている。だけでなく、誘われて食事に出かけたりもしている。
 ちょっと年が離れすぎかなとも思うけれど、思わぬところでいい友人を得てしまった。
 ゲイで、亡くなってはいるけれど本命相手がしっかりいて、抱かれる側のが圧倒的に多かったって人だから、話を聞くのはあれこれと参考にもなるしかなり楽しい。
 更には、こちらの恋愛事情が既にあれこれと知られすぎてるのもあって、色々と教えてくれる彼の話も、なんだかんだ有り難く聞いてしまっている。
「一応聞いておきたいんですけど、デートキャンセルで話し合いって、つまり別れ話だったりします?」
「その方がいいなら」
 よくわからない言い回しだけど、別れる気があるっぽいのはわかった。
「そ、ですか」
 落胆と胸の痛みと。
 結局別れることになるなら、前回振ってくれればよかったのに。
 色々と諦めも多かったけれど、別れたくないとはっきり意思表示されたことや、こんなに執着してる恋人は初めてだと思うと言って貰ったりで、別れずに済んだことを喜ぶ気持ちも安堵する気持ちも間違いなくあった。
 だって自身の中に芽生えていた恋情を自覚してしまった。本気で好きになったら、それが相手にバレたら、自分が振られて終わるんだと思っていた関係だったんだから。ずっとそれに怯えていたんだから。
 自覚して、しかもどうやら相手もそれに気づいてて、なのに終わらなかった。という事実に、喜んだり安堵していた自分がバカみたいだ。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々29

1話戻る→   最初から読む→

「ヤダって何!?」
「さっき別れさせようとしてただろうが」
「え、そっち!?」
 さすがにこれは口に出た。
「そっちってなんだ」
「逃げない恋人が欲しくなった理由を知られたくないのかと思って」
「ああ、別に。それはそんな大した理由じゃない」
 そう言って自ら話しだしたことを簡単にまとめると、叔父の後を引き継ぐつもりで抱こうとしたら盛大に拒否られて家まで出ていかれた、ってことらしい。
 結構長いこと家族として一緒に暮らしてセックスまで参加してたのに、二人がと言うかこの隣りにいる男が、どれほど旦那を一途に想っているかを全く知らなかったんだそうだ。そして出ていく時に、叔父とは全然違うとあれこれ指摘されて、性癖に寄り添って一緒に居てくれる恋人なんかお前に作れるはずがない、的なことを言われたと。
「つまりそう言われたのが悔しくて、自分もそういう恋人作ってやる、的な?」
「違う」
 あっさり否定されてしまった。
「作ろうと思って作れるならとっくに作ってるだろ」
「確かに」
「ただ、どの恋人よりも多く抱いて散々好きだって言わせてた相手ですら、好きって言葉はセックス中のプレイの一環で言ってただけで、俺のことは別に好きでもなんでも無かったってのはそこそこ衝撃だった」
「はい待って」
 彼の言葉を止めた男が、好きでもなんでもないとまでは言ってないと訂正を入れてくる。
「お前が俺を想う程度には俺もお前を想ってるけど、それは旦那抜きでセックスしたいほどじゃないってだけ」
「なんでだよ。同じだけ想ってるなら、セックスはするはずだろ?」
「お前が俺を抱こうとしたの、俺を好きだからじゃないでしょ」
 叔父の後を引き継ぐつもりでってさっき自分で言ってたよと指摘された相手は、やはりイマイチ納得がいかないという顔をしている。
「君は俺の言葉の意味、わかってるよね?」
 そう聞かれてしまえば答えないわけにも行かず、多分、とだけ返しておいた。
 居なくなった叔父の代わりに叔父のしていたプレイを真似る、までは出来ても、叔父が愛したのと同じようにこの人を愛するのは無理。という判断をされたんだろうことはわかる。
 もし彼が、愛する人を事故でなくしたこの人を本気で想って寄り添うことを望んだのなら、この人は家を出たりしなかったのかも知れない。
 寄り添って傷が癒えるのを待てば……
 いやでも旦那と旦那が抱かれろって連れてきた相手にしか抱かれてないって言ってたから、抱いてって言われるより抱かせてって言われる方が先の可能性もあるか?
 なんて、ついつい思考が余計なことに向かってしまうのは、多分、現実逃避なんだろう。
 この人と付き合い続けても、こちらが望むような想いは今後も返ってこないのだと、確定したようなものだから。
「お前がそこ理解しない限り、この子も傷つけるだけになるから別れなよ」
「嫌だ。俺たちは上手く行ってる」
「って本人は言ってるんだけど、どうする? もう無理ってなら、俺が次の恋人探すの手伝ってもいいって、割と本気で思ってるけど。でも、こいつがこんなに執着してる恋人ってのも初めてだから、こいつが変わるきっかけに君がなってくれるんじゃないかって期待は、俺にも、ある」
 思わず見つめてしまう先で恋人が不安そうな顔をしているから、珍しいものを見ているという不思議な感動が湧いた。隣に視線を移せば、やはり不安そうな顔をした男がこちらを伺っている。
「えと、別れるつもりは、ない、です」
 これだけ色々と聞いて、諦めに似た気持ちは結構湧いているのに、でも、別れたいなとか別れなきゃとかは思わなかった。というのが、自分の答えなんだろう。
「今のところは」
 それでもそう付け加えてしまう程度には、今後も続けていくことに自信がないのも確かだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁