ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書1

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 今まで入室禁止だったおっさんの仕事部屋に置かれた、えっちな蔵書を読みに通うようになって、おっさん本人との会話は明らかに増えた。
 訪れた時にはおっさんはリビングへ移動してしまい、やっぱり同じ部屋で過ごすことは無い。仕事部屋なのに追い出すようで悪いが、最悪リビングでも作業は可能だからとのことで、蔵書を部屋の外に持ち出すのは普通の本部屋同様禁止だった。ただ、お茶しようとかお腹減ったから一緒に何か食べないかと、自分から突撃すれば、リビングから追い出されることもなかった。
 滞在していい時間は朝の九時から夕方の六時までと決まっていて、そこは緩めてくれなかったので、仕事がある平日に訪れることはなくなったけれど、仕事休みの週末は朝から一日入り浸りということもあって、以前なら昼は一旦自宅に帰っていたのを今ではほぼ一緒にランチタイムを過ごしている。
 食べているのは主におっさんの手料理だ。パンに適当に具材を挟んだサンドイッチだとか、インスタント麺の上に野菜炒めを乗っけたものだとか、御飯の上に色々乗せられたオリジナルな丼物だとかを、社会人なら払えるだろと一食五百円で提供されている。
 ボッタクリ価格だぞと本人が言うとおり、材料費に五百円も掛かってないのはもちろんわかっているけれど、おっさんの手料理を食べながらおっさんと過ごす時間を思えば安すぎるくらいだった。
 おっさんを観察するように見つめてしまう視線は、たまに見すぎと咎められるものの、こちらの気持ちについては何も聞いてこない。どうしたいのか、どうなりたいのか、はっきりさせてから再チャレンジしろと言われているものの、正直どうなりたいかの結論は出ていなかったので、そんな彼の態度に甘えきっている。
 どうでもいい世間話みたいなものだって、話題を振れば応じてくれるし、おっさん自身のことだって聞けばそれなりに教えてもくれた。聞かれたくないらしいことはさらりと躱されているから、自分から近寄らずにいたから知らなかっただけで、彼は多分コミュニケーション能力がかなり高い。
 ゲイと公言していてもヒソヒソと陰口を叩かれることなく、それどころか近所のおばちゃんが余計なお節介を働くくらい馴染んでいるのだから、考えてみれば全く意外性のない能力ではあるのだけれど。
 そんなおっさんを、多分多大な好奇心で、好きだとは思う。そう、好きの根底にあるのは好奇心だとわかっていた。
 初めて読む本を読み進めるドキドキと、彼と話をして彼の人となりや彼自身のことを知っていくのは似ている気がする。
 ただ本と違って読み終わりがなく、知りたいことは増えていく。最近は彼が言うところの大人向けの本ばかりを目にしているせいで、どうしてもそういった行為についても想像してしまう。大人向けというだけあって、恋愛感情よりも性行為への描写がメインなものばかりなのも、多分良くない気はしている。
 あの日、通うのを止めるから最後に一度だけ寝てくれという話なら応じてもいいと言っていたから、自分相手にセックスすることも可能なのだと知っているのもマズイ。
 してみたい。という欲求は膨らむが、それもやはり好奇心なのだろうとわかっていた。そんな下衆な部類の好奇心を自覚すればするほど、どうしたいのか、どうなりたいのか、わからなくなっていく。
 一度してみたら満足するかといえば、多分きっとしないだろう自信がある。でも仮に、自分が満足するまで相手を付き合わせたとして、じゃあその先にあるのはなんだろうとも思う。おっさんへの好奇心が満たされてしまったら、もうここへ通うことに魅力を感じなくなるんだろうか?
 本が読みたいだけなら、図書館だってあるし、自分自身で買うことだって可能だ。ここへ通う理由が本よりもおっさん自身であることは明白で、彼の蔵書を読み漁ることで、本を通して彼に近づけるような錯覚を起こしている。
 彼の蔵書がやたら魅力的に感じる理由はそこにあるのだと、本人と直接関わることが増えてやっと自覚した。

続きました→

 
 
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ゲイを公言するおっさんの蔵書

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 近所に住む変わり者のおっさんは男が好きだそうで、昔から親には近づくなと言われ続けていたが、そのおっさん本人がガキは範疇外だとかいくら男が好きでもタイプってもんがあるだとか言うので、安心して親にはナイショで良くこっそり遊びに行っていた。
 目当ては彼の蔵書だった。彼自身が本部屋と呼ぶ広めの部屋の中は本棚が立ち並び、そこには学校の図書館にはないような、図鑑や小説や漫画や雑誌が割と適当な感じで収められていた。その雑多さも含めて魅力的で、彼の家に行ったら基本本部屋にこもりきりだった。
 持ち出し禁止。本部屋への飲食物持ち込み禁止。本は丁寧に扱うこと。という3つの約束はあるものの、持ち出し禁止以外は図書館と同じだ。
 何度か親バレしてその都度怒られもしたが、共働きの鍵っ子だったので、実質的な親の拘束などないに等しい。密室に二人きりで変なことをされたらという心配をする親には、ガキは範疇外で俺は好みのタイプじゃないってよと彼の言葉をそのまま伝えてみたが、それを信じたのかどうかは知らない。本を借りて読んでるだけとももちろん言った。
 そもそも、漫画もそれなりの量があったので、本部屋に通っているのは自分だけではなかった。自分だって最初は、友だちに連れられて彼の部屋に行ったのだ。ただ、自分が通う頻度が一番高いことは自覚していたし、二人きりになることもないわけではなかった。まぁ、二人きりとは言っても家の中に二人しか居ないだけであって、本部屋の中で二人きりで過ごすなんてことは一度もなかったのだけれど。
 言っても聞かないから諦めたのか、おっさんは子供に無害と理解したのか、だんだん親も何も言わなくなって、自分はますますおっさんの本部屋通いが加速した。
 男を好きだということを隠さずにいるおっさんは確かに変わり者かも知れないが、意外と近所には馴染んでもいたようだとわかったのは、自分が高校に進学した頃だろうか。子供の目から見たおっさんは、実はそこまでおっさんではなかったこともその頃に知った。
 おっさんは自分のことはほとんど話さないので、情報源は近所のおばちゃんだ。高校になってもおっさんの本部屋に通い続けるのは自分くらいで、おばちゃん的にも珍しかったのかもしれない。
 お喋りなおばちゃんは、おっさんの可哀想な生い立ちを聞いてもいないのに教えてくれた。思ったほどおっさんではないものの、それでも干支一回りは違う相手に、仲良くしてあげてねと言われても困ると思った記憶がある。
 聞いたことをおっさんに確かめることはしなかった。踏み込み過ぎたらさすがにもう来るなと言われそうな気がしたからかもしれない。
 時代のせいかも知れないが、彼の本部屋に子供が入り込む頻度がどんどんと減って、大学卒業を待つ現在、彼の家に本目当てで通うのはどうやら自分一人になっている。
 おっさんとの関係は子供だった頃とほとんど変わっていない。それは互いにそう意識して距離を保ってきたからだ。それを破るつもりで、今日は本部屋をぐるりと一回り歩いただけで、彼の仕事部屋のドアを叩いた。
 そこは鍵のかかる部屋で、子供の立ち入り禁止区域だ。子どもと呼べない年齢になった今も、その中に入ったことはない。
 誰かが来ているときは、基本彼はそこにいる。彼と話をするのは、家に訪れ部屋に入れてもらう時と、帰る前の挨拶をする時の二度だけだ。
「もう帰るのか?」
 いつもは最低でも一時間は本部屋で過ごすので、さすがに少し驚いた様子を見せる。
「じゃなくて。お茶、しない?」
「お茶?」
 今度ははっきりと驚きを見せた。こんな誘いをしたのは初めてだから当然かも知れない。
「俺、来週大学卒業するからさ。少し、話がしたいんだけど。嫌?」
「いや、いい。ならリビング行くか」
 あっさり承諾されて少し拍子抜けだった。
「それで、話って?」
 初めて通されるリビングのソファに並んで座る。目の前のローテーブルには湯気を立てた紅茶が置かれ、その先にはそこそこ大画面のテレビが鎮座している。
 要するに、向い合って座れる形に席がない。まさかの距離に緊張がやばい。
「あの……」
「俺の好みの男のタイプが聞きたい?」
「は?」
 慌てて彼に振り向いたら、苦笑しながらそういう系の話だろと言われた。
「こんな通われたらさすがに気づくって」
「で、俺は、今も全然タイプじゃ、ない?」
「それに答えるのは難しいな。お前の成長見過ぎたよ」
「それ、って、どういう……」
 緊張からかどうにも言葉がつかえてしまうが、彼がそれを気にする様子はない。
「就職先ってこの近く? 実家から通うのか?」
「あ、はい」
「となると、卒業前に一度だけってお願いでもねぇよなぁ」
 付き合って下さいって告白なの? と聞かれたので、わからないと返したら、苦笑が深くなった。
「もう通わないから最後に一回だけ寝てくれ、ってなら、応じないこともない。……かな」
「えー……」
 それは結局、どういう意味なんだろう。お前はタイプじゃないって言われたってことなのだろうか。
「じゃあ、ちょっと提案だけど」
 どうすればいいのか迷っていたら、彼が立ち上がりついて来いと誘う。連れて行かれたのは彼の仕事部屋だった。
 初めて入った仕事部屋も、作業用の机があるのと若干狭い以外は本部屋と大差がない。
「こっちは大人向けの本ばっかな。男同士ももちろんあるけど、女同士も男女物もある。写真集も動画もある」
「え、読んでいいの? てかどういう意図なの?」
「会社実家から通うってならこっちも開放するから、もう暫くここ通えば?」
 自分がどうしたいのか、どうなりたいのかくらいははっきりさせてから再チャレンジよろしくと言われて、困ったような嬉しいような気持ちが確かに湧いたのだけれど、それよりも目の前の本の山に意識が奪われている。
 さっそく本棚の前に立ち、タイトルを確かめだした自分の背後で、小さな溜息が零れた気がした。

続きました→

 
 
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