BAD END回避(スライム姦)

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 自分が魔界の見世物小屋と思しき場所へ連れてこられ、スライムたちに陵辱される日々を送るようになってからどれほどの時間が流れたのかは定かではないが、その生活はある日唐突に終わりを告げた。
 それは体を宙に持ち上げられ、大きく開かされた足の間から腹に詰まったスライムたちが、自重によって落ちていくショーの真っ最中で、ずるりぬるりと腸壁を滑っていくスライムたちのおぞましい感触に呻き喘いでいた時だった。
 気持ちが悪いと思うのに、ゾクゾクと背筋を走る快感は、ここでの日々の中で覚えこまされたものだ。
 何を言っても叫んでも懇願しても無駄だった。何もかもとうに諦めきっていて、口から漏れる言葉は失くし、ただ苦しさに呻き快楽に喘ぐ。何も考えず体の示すままに声を漏らすのが楽だった。
 初めは何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「あっ…んんっ、ぁ…ひゃっ?……んぁぁぃゃあああっっ」
 体の中からゆるりと落ちていたスライムたちが、急速に動いて次々と体外に排出して行くから驚いて、その感触に久々に大きな悲鳴を上げてしまった。
 宙に吊るされていた体も無造作に床へ下ろされて、体に纏わり付いていたスライムたちがそそくさとどこかへ消えていく。一切の拘束が解かれるのは、この場所へ連れてこられてから初めての事だった。
 ふと気づけば、先程まで目の前に並び、下卑た様子でこちらを見ていたモンスターたちの姿もない。ぼんやりと見回す室内では、客と思しきモンスターたちが慌てた様子で逃げ惑っている。
 自分も逃げるなどという思考も体力もなく、そのまま呆然と逃げ惑うモンスターたちを眺めていたら、肌をウロコで覆われた大柄な二足歩行のモンスターが近づいてきた。見た目の特徴的に雄の竜人とわかってはいるが、ここまで大柄な竜人と対峙するのは初めてだ。
 かつて戦ったことがある竜人は、せいぜい自分の背丈と同じくらいだったし、もちろんこちらは何人もの仲間が居た。それでもさすが竜人と思わされる強さだったし、戦闘態勢を整えた状態で出会うならまだしも、こんな状態で出会った所で何が出来るわけでもない。
 むしろこれはチャンスかもしれないと、わかりやすく怒気を孕んだその姿に、一筋の希望を見た気がした。
 近づいてくるのを黙って見上げていたら、その竜人は目の前にしゃがんで顔を寄せてくる。まるで瞳の奥の何かを探ってでも居るようだ。
 見るからに屈強そうな体躯をしていたし、こちらを射抜くように見つめる眼光も鋭いのに、何故か欠片も怖いとは思わなかった。卑猥な目的で近づいてきたのではないことがはっきりとわかる、彼の澄んだ瞳のせいかもしれない。
「意識ははっきりしているか?」
 久々に聞く人の言葉だった。体の大きさからも、周りを圧倒する力強い気配からも、相当高度な種族だろうことは感じていたが、目の前の竜人はどうやら人語を操るらしい。
 随分と流暢に人語を話すのだなと、場面に似合わずのんきにそんな事を思った。
「ダメか……」
 がっかりした様子のため息と共に立ち上がりかける竜人に慌てて手を伸ばす。とは言っても、久しく拘束される事に慣れきった体の動きは緩慢だ。
「待って」
 諦めきって喘ぐ以外に言葉を発しなくなっていたせいか、それだけの短い単語ですら、舌がうまく回らない。
「話せるのか!?」
「殺して、くれ」
 驚きの声からも僅かに動いた表情からも明らかだった喜色は、こちらの発した言葉ですぐさま霧散してしまった。
 すっと顔を逸らした彼は立ち上がり、遠くへ向かって何事か吠える。それは人の言葉ではなかったから、彼が何を言ったのかはわからない。
 やがて駆け足で近づいてきたのは、打って変わって随分と小柄な竜人だった。まだ子供というよりは、きっとそういう種族なのだろう。その小柄な竜人へ何事か託すと、それきり彼は居なくなってしまった。
 一旦姿を消した小さな竜人は、やがて清潔そうな布を抱えて戻ってきた。その布で裸の体を包まれた後は、軽々と言った様子で抱き上げられる。
 並んで立ったら自分の背丈の半分程度しかない体躯のくせに、やはり竜人だからなのか凄い力だ。
「お前、あばれる、しない。わかった」
 先ほどの彼ほど流暢ではないが、こちらの彼も多少人の言葉を話せるらしい。片言でも暴れるなという警告は理解して、わかったと返して頷いてみせた。
「お前、運いい。たすかる」
 こちらを気遣ってかゆっくりと歩き出しながらそんな言葉をかけられて、やはりこれはここに囚われている人間たちを救い出すための動きらしいと認識した。
 人を助けるのかと思うと不思議だったが、人間界にも囚われ無体な仕打ちを受けているモンスターたちを保護する活動がないわけではないから、きっと似たようなものなのだろう。
 助かりたかったわけではないのだが、どうやらこのまま殺して貰えそうにはない。それでもスライムたちに嫐られるためだけに、ただただ生かされているような日々から抜け出せることは、確かに幸運なのかもしれないと思った。

続きました→

 
 
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仲間のために一人残って戦った結果(スライム姦/BAD END)

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 魔界へ続くとされるダンジョンの中、殺されるつもりで自分が残った。自分が残り敵の目を惹きつける事で、大事な仲間たちが無事に逃げ切れるならこの命など惜しくはない。
 少しでも時間を稼ごうと、持てる力を振り絞って剣を振り回し続けたがそろそろ限界だ。足に力が入らず、敵の攻撃を受けて吹き飛んだ体が壁に激突する。
 背を打ち付けた衝撃で脳みそまで揺れた気がした。ゆっくりと意識が暗転する中、仲間たちが逃げ切れている事を切に願った。

 体を這いまわるスライムたちに肌が粟立ち抑えきれない声があがる。
「あぅ、あぁ…やめっ、ろ……コロセ」
 多少数が多かろうと、最下層の弱小モンスター相手に良いようにされているのは、武器も防具もアクセサリーも全て取り上げられて丸裸な上、何らかの魔法でスライムたちが強化されているか、逆にこちらの攻撃力が下げられているせいだ。
 もともとパワープレイヤーで魔法類は使えない。なのに、腕に絡みつきまとめあげて拘束してくる1匹を、引き千切ることすら敵わない。
「う…ぁっ……いや、だっ」
 人語を解すことのない彼らに何を言っても無駄だ。それでも嫌だ、ヤメロ、殺せを繰り返すのは、彼らを自分にけしかけている存在を認識しているからだった。
 自分が今いる場所はステージの上か、もしくは動物園の檻の中のようなもので、スライム相手に為す術なく陵辱される自分を、楽しげに見つめてくる視線がある。
 死を覚悟して一人残って戦った自分は、結局殺されずに連れ去られ、魔界における見世物小屋的なものへ売られたのだと思う。
 スライムたちによって頭もほとんど固定されているから、じっくり周りを観察する余裕はないが、部屋の中はかなり広い様子で、アチコチで自分と同じように、連れられてきた人間たちが下等なモンスター類に弄ばれているようだった。
 固定された視界の中、つまらなそうに通り過ぎて行くのも、足を止めて興味深げにこちらを見つめてくるのも、にやにやと眺め続けているのも、今まで倒してきたモンスターや対峙したことのない未知のモンスターたちだ。
 高度なモンスターたちの中には人語を話すモノも居ると聞いたことがあるが、稀に掛けられる言葉の意味はわからなかった。ただしそれらが揶揄いや侮辱を含むものなのだろうことは、彼らの雰囲気と声音でわかる。
「んぁっ」
 熱を冷ますように体の上をアチコチ這っていたスライムの一部に胸を覆われ、少し高い声が上がってしまった。この後何が始まるか、体はもう嫌というほど知っている。
「あっ、あぁっ、んんっ」
 ぷにぷにとした触感で胸を揺すられながら、尖りっぱなしの乳首を捏ね回されれば、先程までとは比べ物にならない快感が走って身をよじった。
 床に投げ出されて横になった状態から、やがて背中に集まったスライムたちにより掛かる体勢へと変えさせられ、立てた膝を大きく割り開かれる。
 顔は正面に固定された。目の前にはショーのスタートを嗅ぎとったモンスターたちが並び、興奮気味にこちらを見つめている。
 開かれた足の間に勃ち上がるペニスに絡みついた一部に、擦るように上下しながら締め付けられれば、鈴口からはたまらず透明な雫がこぼれ出た。
「あ、あっ、イヤ、だっ。入る、なっあああっっ」
 亀頭を覆い先走りを吸収した後、足りないとばかりに小さな入口を拡げるように、穴の奥へと触手を伸ばされる。既に慣れた行為に痛みはないが、そんな場所をスライムのツルリとした触感で擦られてさえ、快感に声を漏らす自分自身に絶望することは避けられない。
 ペニスから侵入した触手に前側から前立腺をつつかれ、尻肉を左右に引っ張られて晒されている後ろの穴が、より深い快感を求めてヒクついているのがわかる。後ろから侵入した触手と前後同時に責められた時の、恐ろしいまでの快感を思い出して体が震える。
 今回はどんな風に責められるのか、何度イけば終わるのか。そして終わってもどうせ少しの休憩を挟んで、何度だって繰り返される。
 何らかの魔法か、もしくはスライムから直腸を通して栄養を与えられているのか、力尽きて事切れることさえ許されないのだ。
「いや、だ……助けて……殺して、くれ……」
 ボロリとこぼれ落ちる涙さえ、喜々として頬に這い上がってきたスライムにすぐさま吸収されて行く。
 ここにあるのは絶望だけで、なのに死ぬことさえ許されない。舌を噛み切ろうとすれば、腔内にまでスライムが侵入してきて阻まれるのは実証済みだった。
 誰か……
 どこにも届かない願いを虚しく繰り返しながら、責めを激しくするスライムたちに翻弄されて嬌声を響かせた。

救出しました→

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(初詣2)

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 あちこちの出店を覗いてまわり、あれこれ食べつつ家族への土産も買って、自宅の最寄り駅に戻って来たのは5時頃だった。
 シンと静まり返る住宅街を並んて歩く。ぽつりぽつりと会話はあるが、さすがに疲れと眠さとで朦朧としている。
 ふわわと大きなアクビをしたら、隣の彼が付き合ってくれてありがとうと言った。
「良いって。これはこれで、なかなか楽しかったし」
 今回は受験生な幼なじみが相手だから付き合ったというだけで、きっともう二度としないけれど、人生一度くらいそんな経験があったっていい。
「いや、今日だけの話じゃなくてさ。お試しでも、ごっこ遊びでも、恋人になってくれてありがとって事」
「気がはやいな。それは大学合格してから言えよ」
「言いたかったんだからいいじゃん。そりゃ可愛い彼女ならなお良いのかもだけど、高校最後のクリスマスも年越しも、恋人と過ごせたってのが奇跡っつーかさ」
 嬉しかったんだもんと続ける口調の子供っぽさに思わず笑う。子供っぽさそのままに、彼は口を尖らせた。
「そりゃそっちはモテモテだから、こんなのたいした出来事でもないのかもだけどさー」
「いやこっちもそれなりに大した出来事だけどな。俺あんまイベント熱心じゃねぇから、年越しを神社でなんて初めてだったし」
「えっ? 初めてだったの?」
 そう言う彼は、今日程の規模の神社は初めてでも、過去に何度か友人たちと経験済みらしい。
「告白されて付き合ってみても続かないの、多分そういうの嫌がるせいなんだよな。あーあと、メールとかラインとか定時電話とかも面倒で、それも振られる原因か?」
「マジでっ!?」
 振られる側なのかと驚かれて、そうだと苦笑で返す。自分から振ることなんて殆ど無かった。そしてそんな事が続けば、だんだん特定の恋人を作ることに消極的になる。
 だからあの時、話の流れだったとしても、なんで自分から試しに恋人してやるなんて口にしたのか、今でも不思議で仕方がない。
「え、じゃあ、クリスマスの時の、十分恋人してるって、あれもしかして本気で言ってた?」
「当然だろ。歴代彼女よりお前相手のが色々してやってるくらいだわ」
「わーマジかー。俺にはお試しだからって手ぇ抜いた対応すんなとか言ってたの誰だよ」
「あー、確かに言った言った。でもそれ、女の子紹介のために取り敢えず形だけ付き合ってみましたって態度ありありなのは、さすがにこっちも腹立つかなってくらいの意味だわ」
「それさ、どっちかって言ったらそっちが、俺を勉強させるために取り敢えず形だけ付き合ってみました。って態度ありありだった気がするんだけど……?」
「そうか?」
「自覚ないとか割と酷い」
「嫌になったなら振ってもいいぞ。本命受かったら女の子の紹介はしてやるし」
「振らないよ勿体無い。ちょっとビックリしただけ。てか逆に、俺かなり優遇されてるっぽい感じもある」
 イベント嫌いなのに神社調べてくれてたし、初詣も一緒に行ってくれたし、自分の分の絵馬にまで俺の受験合格祈願してくれたしと続ける声は機嫌が良さそうだ。
「なんで?」
 ひょいっと目の前に回りこまれて足を止めれば、真剣な顔で見つめられた。
「なんで、って何が?」
「なんで、俺相手だと、嫌いなイベントごとも付き合ってくれるの?」
「お前が幼なじみで受験生で、一応金貰ってる立場だから?」
「それは正直にぶっちゃけ過ぎ」
 嘘でもお前が好きだからとか言ってよと苦笑する。
「ごっこでもお試しでも、今は俺が恋人でしょ。てわけでやり直しね」
 もう一度、なんで? と繰り返されて、思わずため息がこぼれ落ちた。
「お前が、好きだからだ」
「うん。俺も好きー」
 にっこり笑った顔が近づいてくる。
 屋外だし家の近所でもあるけど、どうせ周りに人なんて居ないし、もうかなり疲れてるしいい加減眠い。まともな判断が出来なくたってこれはきっと仕方がない。
 調子にのるなと頭を叩いてやりたい気持ちも、これ以上あれこれ許すのはマズイのではとチラリと過る思考も、そんな言い訳で押さえつけて目を閉じた。

続きました→

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(初詣1)

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 初詣は言われるまでもなく一緒に行くつもりでいた。一緒に行って、一緒に彼の大学合格を祈願してやろうと思っていたから、近隣の合格祈願向け神社と寺もチェック済みだ。
 クリスマスの時同様にゴネてこちらを頷かせるつもりだったらしい相手は、一緒に初詣に行きたいという願いも、大晦日から出かけて年越しの瞬間を神社で迎えたいという願いも、二つ返事でOKした自分に随分と驚いていた。
 どこへ初詣に行きたいかと聞きながら、調べておいた神社と寺のリストを見せる。
「これって」
「受験生向けの合格祈願用。行けそうなとこ探しといた」
「マジで? てかどういう風の吹き回し?」
「クリスマスにお前が頑張ってるの見せたから?」
「でもあれは、キス、させて貰ったし……」
 あの日のキスを思い出しているのか、相手の頬が薄く色付いていく。なんとなく期待のこもった視線を感じたが、さすがにそれは無視をした。
「まぁ、俺が横についてなくてもちゃんと勉強やってんなら、俺もイベント事は渋らず付き合わないと。お前にも、もっと恋人らしくしろって言われたしな」
 でもエロい事は受験終わってからなーとオマケのように付けたら、ギョッとした顔をするので、慌てて、女の子紹介されたいなら受験終わるまでは俺で我慢しとけと付け加えた。
「ああ、そういう事」
 ホッとするのかと思ったら、何やら渋い顔をしている。まさか俺にエロいことしたいわけ? なんて事を、冗談でも言えそうにない雰囲気だ。
 触れてはいけない。突き詰めてはいけない。これはお試しで、彼の受験が終わるまで限定の恋人ごっこをしているだけ。
「それで、どこにするよ」
 何にも気づかなかったことにして、少し強引に話題を戻した。
「周りに出店多そうなとこ?」
「お前の初詣の目的ってそこなのかよ」
「当然じゃん」
 出店の多さはやはり知名度に比例するだろうか。
「知名度高いとこって言ったらやっぱここだろ」
 リストの中から自分もよく知る大きな神社を一つ選んで指差した。しかし相当の人が押しかけるのだろう事も想像に難くない。
「でもめちゃくちゃ混みそう」
「人混み嫌?」
「いや。お前がいいならいいよ。たまにはそんな初詣も楽しそう」
 調べたら大晦日から三が日までは24時間ずっと開門しているそうなので、どうせ並ぶだろうと、23時半に向こうへ着くよう逆算して待ち合わせ時間を決めた。
 
 
 毎年テレビのゆく年くる年で賑わう神社を見ては居たが、実際の年越し神社を舐めていた。知名度の高いところを訪れたのだから当然なのかも知れないが、最寄り駅を降りた時から既に人が一杯で、その流れに乗って神社へ向かうものの、なんとか門を通った辺りで年を越してしまった。
 年越しの瞬間は見知らぬ周囲も一緒におめでとうと盛り上がったものの、だんだん口数も少なくなって、黙々と本殿へ向かってゆっくりと進んでいく。
 とにかく人が多いので、はぐれないようにを言い訳にして、当たり前のように途中からは手を繋いでいた。数時間は外にいる想定で防寒対策バッチリなのに、人混みに揉まれて暑いくらいで、相手の手は少し汗ばんでいる。 
 互いになんでもない振りをしているのは明らかだった。きっと自分だけがドキドキしているわけではないのだろうけれど、それはそれでやっぱりちょっと問題なんじゃないかという気もする。
 実際付き合う事になってから、彼が真面目に受験勉強に励んでいるのは確かなようだから、今更やっぱりこんな事は止めようなんて言い出せない。そんな事を言い出して、せっかくやる気になっている、受験前の彼の気持ちを乱したくはなかった。
 それでも、こんな提案するんじゃなかったという後悔は、日に日に大きくなっている。特に、こんな風にデート紛いの事をしている時は強く思う。
「疲れた?」
 参拝を終えた後も人波に従い移動し、周りの人がようやくバラけ出した辺りで、やっとホッと安堵の息を吐けば、隣から気遣う様子の声がかかる。手は参拝時に放して以降は、さすがにもう繋いでいない。
「少しね。思ったよりずっと混んでた。でもお前としてはこっからがメインなんだろ?」
「疲れてるなら、出店巡りなんて無理にしなくてもいいけど」
「大丈夫。でも出店覗きに行く前に、社務所寄らないか?」
 せっかくだし絵馬書いたりお守り買ったりしたらどうかと誘ってみたら、行く行くと元気良く笑うので、その笑顔にこちらも少し気持ちが晴れる。
 ぐちゃぐちゃと色々考えて後悔しても、それに彼を巻き込んでしまったら本末転倒だ。あまり自分を気遣わせてはいけない。気持ちを切り替えて、今は初詣後の出店巡りを一緒に楽しむのが正解だ。

続きました→

 
 
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大学生になったら親友にも彼氏が出来たかも知れない2(終)

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 親友に電話を掛けたら、開口一番「やっぱ筒抜けなんだな」と笑われた。
「俺に聞かれちゃまずかった?」
『んなことないよ。でもお前に聞く話でもないかと思ってさ』
「てか、俺を喜ばせるテクなんて、そんなの聞いてどうすんだよ」
 男の恋人ができたと言われるのかと、多少ドキドキしながら聞いてみる。
『知っといたら役に立つかなと思って?』
 あんま参考になんなかったけどと言った相手は、更に、もっと具体的な話が聞きたかったんだけどなと続ける。
『この際お前でも良いや。ちょっと昔を思い出して、初めての時どんな事されて気持ち良かったか詳細教えない?』
 何言い出してんだよ。やだよ。と即答しそうになるのを堪えて、結局自分から真相へ触れに行く。
「あのさ、もしかして恋人できた?」
『男の?』
 楽しげな声に、悪戯を仕掛ける時の相手の顔が脳内に浮かんだ。こちらが何を気にして電話を掛けたかは、きっと相手もわかっているんだろう。
「そう」
『出来てないよ』
 あっさり否定されて、じゃあなんでとますます思う。
「じゃあ……」
『うん、でも、気になってる相手はいる』
 もちろん男でと言われて、やっぱりそうなのかと少しだけ複雑な気持ちになった。
『ゴメンな』
「なんで謝るの?」
『なんとなく?』
 明言は避けるものの、でもきっと彼の言いたいことはわかっている。なぜ彼に気になる男が居ると言われて気持ちが騒いでしまうのかも。
「いいよ。今、幸せだし」
 親友が彼女を作らなければ、ただのクラスメイトだった男に抱かれる事もなく、その男に恋をすることもなかった。それがなければ、今の幸せな日々はないのだ。
 親友が男を恋愛対象に出来ると知っていたら、きっと自分は親友への気持ちを捨てられずにいただろう。他の男に抱かれるなんて真似も絶対にしなかった。
『うん。知ってる』
 優しい声に、胸の中が温まる。こいつが親友で、本当に良かった。
 結局その後、親友が気になっているという男の話を少し聞いて、最後に、もし付き合う事になったらいつかダブルデートしようと言って電話を切った。脈は多分あると言っていたから、そんな日がいつか本当に来るかもしれない。
 電話を終えた後、寝る支度を整えて寝室へ向かえば、既に相手はベッドに入っていた。とは言っても寝てはおらず、部屋の電気も点いている。
 すぐにこちらに気付いた相手は、手元の携帯をあっさりスタンドに戻しながら、なぜかお帰りと言った。
 電話の中で、親友を好きだった過去を少しだけ思い出してしまったからだろうか。親友から目の前の彼へと想いが帰るような気持ちで、素直にただいまと返しながら、軽く上げられた掛け布団の中へと滑りこむ。
 同棲に浮かれて購入してしまったダブルベッドのおかげで、友人はもとより親兄弟も入れられない家になってしまったが、後悔なんてものはない。エッチなことをしない夜も、隣に彼の気配があるまま眠れるのは嬉しいと思う。
「楽しい話は聞けたか?」
「うん。恋人じゃないけど、気になる男は居るって」
「そうか」
 慰めるようにそっと頭を撫でられて、幸せなのとおかしいのとで思わず笑う。
「あいつにも言ったんだけどさ、お前を好きになって、俺は今、すごく幸せだよ?」
「そうか」
 セリフだけなら同じだけれど、声音から彼の安堵と喜びが伝わってくる。
 胸にあふれるような愛しさで、顔を寄せてその唇を塞いだ。誘うまでもなく、すぐに薄く開かれたそこから差し出された舌に、自らの舌を絡ませる。
 自ら仕掛ける深いキスであっさり昂ぶった股間を相手の腰に軽く当てれば、相手の腕が腰に回って引き寄せられて、相手の手によって相手の腰に強く押し付ける事になった昂ぶりを、腰を揺すってグリグリと刺激してくるからたまらない。
「んああっっ」
 とてもキスを続けられずに、のけぞって声を上げた。
「一応聞くが、お前の中に入っても?」
「あ、アっ、ん、して。俺の中、お前で、ああ…いっぱいにっ、んぁあ」
 刺激を止めてくれないままなので、言葉を紡ぐのが大変だ。そして了承を告げた後も、暫くはそのまま腰を揺すられ喘ぎ続ける。
 もちろん、一緒に暮らすようになってそこそこ経つので、もっと手軽にあっさり触れ合って終わる日だってあるけれど、今日はじっくり抱かれたい。だから彼を制止するような言葉は吐かなかった。
 そうすることで彼にもこちらの、しっかり抱かれたい気持ちが伝わることを知っている。
 充分すぎるほどに昂ぶって、早くイきたいと思うようになってからがスタートだ。
 彼から離れられないように、よりたくさんの快楽をこの体に刻みこんでやるという宣言通り随分と開発されてしまった体は、焦らすようにゆっくりと快感を煽られ期待に満ちている。
 甘い吐息を積極的に吐き出しながら、彼の与えてくれる全てが幸せで酔いしれた。

頂いたリクエストは「親友と彼女のてん末」「二人のイチャイチャ」「二人で過ごす日常」でした。
彼らの続きが読みたいというリクエスト、どうもありがとうございました(*^_^*)

 
 
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大学生になったら親友にも彼氏が出来たかも知れない1

親友に彼女ができたらクラスメイトに抱かれることになったの少し未来のお話です。

 学部学科は違うものの、同じ大学に進学して、ルームシェアという名の同棲を始めておよそ1年と半年。それなりに二人暮らしも板につき、相変わらずあれこれと甘やかすのが上手い相手に導かれて、めきめきと料理の腕を上げてきた本日の夕飯は、ひき肉から自分で作ったハンバーグだった。
 家事は当然分担していて、料理は確実に相手が作ったほうが美味しいので、基本的には相手の担当だ。けれど学年が上がった春頃から、彼がバイトで帰宅が遅くなる火曜と土曜の夕飯は自分が作るようになった。
 毎度律儀に今から帰るという連絡を入れてくれるので、彼の帰宅時間に合うように焼き上げたハンバーグはテーブルの上で湯気を立てている。
「おまたせ。ああ、美味そうに焼けてるな」
 荷物をおいて手洗いを済ませてきた相手が席に着きながら、まずは見た目を褒めてくれた。比較的表情が少ないこの男は、それを補って余りあるほど言葉を惜しまない。
 同時に頂きますを告げたものの、つい相手の反応が気になって、相手が食べるのを見つめてしまう。それを相手もわかっているからか、彼は真っ先にハンバーグを口に運ぶ。
「凄く美味しい。また腕を上げたな」
 最初の一口を飲み込んだ後、目元を緩めながら告げられた言葉に、ホッとして嬉しくなる。
 感情表現が控えめで表情が少なくたって、柔らかな瞳は雄弁だった。
 お前が愛しい。
 そんな気持ちが伝わって来るようで、なんだか照れ臭くもある。もちろんベッドの中では直接言葉で伝えてくれるし、その時には自分も想いを言葉にして返すけれど、たまにこうしてふいに読み取ってしまう事には、さすがに頻度が低くてまだあまり慣れていない。
「どうした?」
「嬉しいだけ。美味しいなら良かった」
 表情が乏しい事を自覚している彼は、表情から感情を読まれる事に関しては無頓着だ。と言うよりも、こちらが読み取っている事に多分気付いていない。
 気持ちを切り替えるように笑って、自分も食事を開始する。自分で食べてみても、ハンバーグはなかなかの美味しさだった。
「そういや今日、珍しい男から電話があったぞ」
 食事をしながら一日の出来事を報告する事は多いが、「珍しい男」などという少々思わせぶりな言い方がらしくない。聞いたらこちらが驚くような相手からなのかと思いながら口を開く。
「俺の知ってるヤツ?」
「ああ」
 肯定とともに返された名前に、確かに驚いた。
 告げられた親友の名前に、なんで自分ではなく彼に連絡をとったのだろうという疑問がわく。先程弄っていた携帯には、彼からの電話もメールも来ていない。自分に連絡がつかなくて仕方なく、という可能性は薄そうだ。
「なんでお前に?」
「お前がメロメロになったテクを教えろだそうだ」
「は?」
「俺とのセックスが良くて付き合ってる、というような事をあいつに言ったのか?」
「やー……どうだったかな……」
「言ったんだな」
 断定されてしまって、ごまかすようにフヘヘと笑う。
 自分たちが恋人として付き合っている事を知っているのは親友だけだったから、まだ高校に通っていた頃は、惚気のようなものを聞かせてしまったことが何度かあった。相手が上手いのか体の相性が良いのか、男同士のセックスでもキモチイ思いしかしたことがない。と言ったことが確かあったはずだ。
「セックス目当てで付き合ってる、とまでは言ってないけど」
「別に咎めたわけじゃない」
 事実だしなと続いた言葉に思わず口をとがらせる。
「セックスだけじゃなく、お前が好きで付き合ってるよ?」
「そうだな。すまん」
「まぁでも、セックス気持ち良いかは重要だよね。恋人になれなくてもいいからお前に抱かれてたい、とか思ってたくらいだし」
 まだそう昔のことでもないのに、あの頃のことが既に懐かしい。
「けっこう酷い始まり方だったからな。お前がそう言い出した時、丁寧に慣らしたかいがあったと思ったよ」
「それ、前も聞いたかも。で、あいつには何をどこまで教えたの?」
「相手のペースを見て強引に事を進めようとしなければなんとかなるんじゃないか、とは言っておいた。それだけかと不満そうだったがな」
「てかそんなの聞いてどうすんだ、あいつ」
「また恋人ができた、とは考えないのか?」
「あー……そっか、もう1年半以上経ってるもんな」
 小柄で笑顔の可愛かった彼女と親友は、結局卒業する少し前には別れてしまった。
 体育館裏で自分たちが抱き合うシーンを見られた時の誤解は早々に解いたようだし、実際自分が付き合いを開始したのは親友ではなく目の前に居るこの男なのだが、さすがに男同士で付き合って居ることなどは公言できず、自分と親友とその彼女との三角関係をネタにした噂はなかなか消えずに燻っていた。
 周りの噂なんかに振り回されてしまうのは可哀想ではあったが、周りに不安を煽られた彼女と、親友との仲が少しずつ冷めていくのは自分も感じていた。
 自分も関わって親友が恋人と揉めているのは申し訳がない。なので親友との距離を置いてみたりもしたのだが、それは彼女にも周りの噂的にもわざとらしいと逆効果だった。
 最後の手段として彼女にも真実を知らせるダブルデート案なども出してみたが、そちらは不安要素が大きすぎると親友の方から却下された。男同士で付き合っているというのを親友の彼女がどう捉えるか想像が付かないし、男が恋愛対象だと知られることで余計に疑いが深くなる可能性もあると言われてしまえばお手上げだ。
 親友がお前はお前の恋を頑張れと言ってくれたことや、大学受験などもあって、なんとなく状況がわからないまま、気づけば二人は別れていたという感じだった。
「またちっさくて可愛い感じの子かな?」
「何も聞いてないのか?」
「聞いてない。お前は? 何か聞いたの?」
「聞いてはいないが想像はつく。なぜわざわざ俺に電話を掛けてきたかを考えれば、相手はきっと男だろう」
「は? えっ、ちょっ、そんな……いやでも、ありうる……のか??」
 衝撃の発言に混乱していたら、珍しく声を立てて笑われたから、どうやら揶揄われたらしい。
「なんだよ。冗談かよっ!」
「いや。割と本気でそう思ってはいる。もし真相が違っていたら教えてくれ」
 電話するんだろとこの後の自分行動を言い当てられて頷いた。
 いったい親友の口からどんな真相が聞かされるのか気になって、せっかく美味しく出来たハンバーグなのに、いつの間にか食べ終えてしまったのが少しばかり悔やまれる。

続きました→

 
 
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