生きる喜びおすそ分け13

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 あちこち撫でられキスされて、いわゆる性感帯を暴かれていく。
 過去の経験と比べるのはどうかと思うけれど、唯一知っている相手はかなりノリの良い男で気安かったのもあって、完全に遊びの延長だった。突っ込まれたし、気持ちよくして貰った側でもあるけれど、感覚的には友達と抜きあったのに近い。
 でも元々尊敬する憧れの人で、成り行きで恋人になって、でも全く恋人らしい要素のないデートが虚しくなって、別れる前にとラブホに誘ったらなぜかこんなことになってしまった、好きを自覚済みの相手に、感じる場所を探るように触れられるのはぜんぜん違う。
 頑張るよって言ってくれているのだから、相手に身も心も委ねきって、ただただ気持ちよくして貰えばいいのかも知れない。とは思うものの、やっぱり色々恥ずかしくて、なんだか怖くて、いたたまれない気持ちが湧いた。
 だってラブホになんて誘わなかったら、この人は男相手にセックスする事なんて考えもしなかったと知っている。今はもうちゃんと性的対象として見れてると言ってくれているし、実際に反応したペニスを確認させてもくれたけれど、女性相手のセックスすらもう良いやと思ってるっぽい男に、何をさせているんだろうと思ってしまう。
 セックスしてもいいと思えるくらいにはちゃんと好きだとも言ってくれているのに、それでもやっぱり、恋人として傍に置いておくために必要だから頑張ってくれてるだけだと思ってしまう気持ちがある。
 ちゃんと気持ちがいいのに、そのキモチイイに全然浸っていけない。
「体の反応はかなりいいけど、なかなか緊張解けないな。というか気が散ってる?」
「ごめ、なさ……」
 集中できていない自覚はあったからつい謝ってしまえば、謝られる理由がないよと優しい声が返った。
「こっちこそ、男の子の体に触るの初めてで勝手がつかめてないから、あちこち色々試すみたいに触っちゃってゴメンね。それで気が散っちゃってたりする?」
「いえ、そんな……ちゃんと、きもちぃ、です」
「うん。ちゃんと気持ちよくなって貰えてるのはわかるんだよ。体はね。でもちっとも楽しくはないでしょ?」
 楽しんでいないと指摘されてドキリとした。だって楽しいとか嬉しいとか思うだけの気持ちの余裕がない。ついでに言うなら、肌のあちこちを撫で擦られてキスを落とされ舐め食まれる程度じゃ、あれこれ余計なことを考えられないくらいの強烈な気持ち良さは生まない。
 でも考えたってどうしようもないことを考えて、相手のくれる気持ちよさに集中できなかったのは事実だ。
「あ、あの、ごめんなさい、その」
「責めて無いから落ち着いて。どうしたら楽しんで貰えるかなって思ってるだけだから」
「あの、俺が、楽しかったら、あなたも少しは楽しい、ですか?」
「あー……俺の方の話、か」
「あ、ちがう。そうじゃなくて、だって、俺がっ」
「ああ、いいよいいよ。言われ慣れてる」
「ちがう。違うんです」
 憧れの人になんて真似をさせてるんだろう、なんて思ってしまったせいで、余計なことを口走った。ちゃんと過去に言われたあれこれを聞いていたのに、まんま、相手がセックスを楽しんでくれていないと取れる発言をした。
 人生をあれこれと楽しむ姿を傍で見ていたい欲求でここまでするのだから、こちらがそのセックスを楽しめないなら意味がないと思われても当然だと思う。でもだったら、こちらが彼のくれるキモチイイに浸って、このセックスをちゃんと楽しめたなら、彼も多少は満足してくれるのかなと、思ってしまった。だったらいいな、という期待からの言葉で、彼が楽しそうではないのが不満だとかの意味は一切なかったのに。

続きました→

 
 
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