まるで呪いのような13

1話戻る→   目次へ→

 そんなことを言われれば、頭の中で普段なにをされているかを思い出してしまって、じわっと顔が熱くなる。彼はそれを、頭の中の彼によほどエロいことをさせている、と思ったらしい。
「やっぱ相当凄いことさせてんだ?」
「ち、ちがっ」
 慌てて否定するものの、当然、信じてなんかくれないだろう。でも本当だ。嘘じゃない。妄想だからって、別にそんな凄いことはさせてなかった。逆に酷く幼いというか、抱きしめられて何度も繰り返し好きだと言ってもらったり、体のあちこちにキスを落とされる程度の妄想で十分抜ける。抱かれたいなと思う気持ちは、結局は彼に求められたい気持ちと同じもので、そこまでリアルに彼に抱かれる妄想をしていたわけじゃない。
「別に、顔真っ赤にするほど恥ずかしいようなことでも、言っていいけど。というか言ってくれればどんなことでも、引いたりしないでしてやるから言えって。高度なテクが必要な場合は、お前が満足できるレベルになるまでちょっと待たせるかも知れねぇけど」
「いやだから、ホント、高度なテクとかじゃなくてっ」
 っていうかそもそも彼の言う高度なテクってのが、どんなものを指して言ってるのかすらわからないんだけど。むしろお前こそいったいどんな凄い想像してんだと言ってやりたいけれど、こちらが欠片も想像していないようなエロい話が飛び出してくるかもと思ったら、なんだか怖くて聞けなかった。
「だいたい、お前だって脳内で俺をどう弄り回してるか教えてくれないのに、俺だけオナネタ披露させようってオカシイだろ」
「なら俺が言ったら言うわけ?」
「えっ? 言えって言ったら口で説明すんの?」
「そりゃ言うだけなら出来るよ。ただお前、嫌な気分にさせるかもだけど」
 ただの妄想だし、現実にはそんな状況にはならないってわかっているし、オナネタと割り切ってる分も大きいから、結構本気でむちゃくちゃ好き勝手してるし、お前は俺に都合よく喘いだり笑ったり恥ずかしがったり泣いたりしてんだけどと続けてから、それでも聞きたければ教えてもいいと言う。
 さっき言ってた、喘ぐ顔を想像して抜いてるだとか、現実にはそこまで感じさせるテクがないからだとかの言葉は、彼なりに気を遣ってくれた結果だったのかもしれない。だって喘がせる以外のこともしてるって、今、言った。喘がせる笑わせる恥ずかしがらせるまではまだ理解が出来るけれど、泣かされているんだというのをどう受け止めれば良いのかわからない。
 でも多分、それを気にしている時点で、彼の妄想を聞く資格がない。彼は妄想を妄想として、ただのオナネタとして、割り切っているのだから。
 そういや、恋人がいるのに恋人以外で抜くのは悪いって理由で、自分を使ってるって言ってたっけ。
 とてもじゃないが聞きたいなんて言えずに黙り込む自分に、彼は聞かないのが正解だろと言って自嘲気味に笑うから、少しだけ胸が痛くなる。
 そういう顔をさせたいわけじゃないのに。甘やかしたいんだって言ってくれる気持ちは確かに嬉しくて、幸せに笑ってて欲しいって気持ちはきっと一緒で、だから彼が今日、何をしに訪れたか知った後も、抵抗なんてせずに自分のベッドの中へ彼を迎え入れたのに。
「ただまぁ、俺だって相当エロいことあれこれ妄想してっから、そう心配すんなってことだよ。お前がどんな妄想してたって、絶対俺よりまともっつーか、きっと俺からすりゃ可愛らしいこと考えてたりすんじゃねぇの?」
「それは、そうだね」
 肯定しながら苦笑する。だってエロいことなんてほとんど妄想してない。彼には思いもよらないほど可愛らしすぎる妄想だろうから、教えたらきっと相当驚かせてしまうんだろう。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です