まるで呪いのような2

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 合格祝いを持って、相手の部屋に訪れる。綺麗にラッピングされた小箱の中身はシャーペンだけれど、最近自分も愛用している、少し高めの製品だ。
 ペンに名前を入れてやろうかとも思ったが、自分が贈られたなら大喜びで大事に使うだろうけれど、そういった細工を彼が手放しに喜んでくれるイメージが持てなくて、結局、箱の方にだけ名前を入れた。
 受け取って中身を確認した相手は、少し困った様子で高級そうすぎて使うの躊躇うなんてことを言う。まぁ、言われそうな気はしてた。
「箱に入れたからそう見えるだけで、本体自体はそう高くないし、それ、俺が普段使いしてるやつだから」
 実は箱の方が高いと言いながら、プレゼントに掛けた値段をぶっちゃけてやる。
「てわけで、お前から貰ったのと、値段はそう変わらないから使ってよ」
「いやでも、俺なんて、去年ファミレス奢っただけっつーか」
「がっつり肉料理にデザートまで食わせてくれたじゃん」
「値段の問題じゃなくて、なんつーか、あー……」
 まぁ合格おめでとうって言って貰ったのは好きだと伝えたあの日だし、とっくに高校生活スタートしてたし、合格祝いに何でも奢るから好きに頼んでと言われたのは、更にそこから半月くらい経過してたけど。
「形に残らないもののが良かったなら、それ返してもらって、今からファミレス連れてこうか?」
 ほら、こういうところでも、自分の想いは彼には重い。彼の精神的な負担を考えて、控えた結果でコレだ。もしペンにまで名前を入れていたら、きっともっと躊躇われ引かれていただろう。
「こんな俺の名前入ってるような箱、お前が持っててどうすんだ」
「さぁ? 捨てるんじゃない?」
 気持ちの整理をつけるのに利用したあとで、とまでは言わなかった。
「箱のが高いのにかよ!」
「つったって、お前だってこんなの何かに使える? せいぜい机の引き出ししまいこんで終わりじゃない?」
 そうだ。こんなの、贈る側のただの自己満足にすぎない。
 自分が気に入って使っているから、使いやすいと思うから、彼にも使ってみてほしかった。それだけなら、ちょっと使ってみなよと剥き出しで差し出した方が良かったに違いない。いっそ自分が使っているものをそのまま渡すくらいが、彼にとっては受け取りやすいだろう。
 わかってたのに、合格祝いという名目で、少しばかり格好つけてしまった。相手の生活なんて丸見えなのに、自分が贈られたらきっと嬉しいだろうなってものを、選んでしまった。自分だったら、箱は刻まれた名前が見えるようにして机の端に置いておくし、シャーペンだって自宅学習用にして、使ってないときはそこにしまっておくだろう。
 でも彼はそうじゃない。わかってる。知ってる。なのに、自分がして欲しくてして貰えない事を、ついつい選んでしまうのは、どうしようもなく一方通行な片想いが原因だった。独りよがりな恋を持て余している。
 自分とは違う高校を選んだ、別れるつもりの恋人相手に、嫌がらせをするつもりで選んだわけじゃない。そうだった方がずっとマシだ。ある程度の予測はしていたものの、彼が困惑する顔を見て、予想以上にショックを受けている。つまり色々と無意識でやらかしてる所が、本当に救えないし、なんともバカらしい。
「まぁそうかもしれないけど、さすがに捨てたりしねぇよ」
「捨てていいよ。でさ、俺のことも、一緒に捨てて欲しいんだけど」
「え? なんだって?」
 遅かれ早かれ別れ話はするつもりだったし、ちょうどいいかと切り出せば、相手は全く意味がわからないという様子で聞き返してきた。

続きました→

 
 
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