オメガバースごっこ16

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「正直、調べてもよくわかんないんだよ、オメガの巣作り。まぁ巣作りに限らずオメガバースって作品による独自設定的なの多かったし、巣作り扱う作品少なかったし、しょうがないんだろうけど」
 ヒート中、もしくはヒートが近いオメガが、アルファの匂いを求めて集めたもので作りあげるもの、以外の要素についてはお前から聞かなきゃわからない。と続いた言葉に、どれだけ巣作りの理由を知りたがっているかを察してしまう。なんでそこまで、とは思うけれど。
「それ、そんなに重要なこと?」
「多分」
「多分?」
 そこまでしつこく気にするのに、多分、という曖昧な返答をされて少し驚いたけれど、どうやら過去に読んだ何かに引っかかりを覚えているらしい。
「作品名どころか内容もあんましっかり思い出せないけど、巣の中で発情期に苦しんでるオメガがいたんだよ」
「だって苦しさを緩和するための巣、でしょ?」
 巣の中でヒートに苦しんでる描写があっても、そんなに違和感があるとは思えなかった。
「そ、だけど。でもそーいうんじゃなくて。なんかオメガまじ不憫、って思うような、可哀想な状況で巣作りしてたような気がして、でもその肝心なとこが全く思い出せないし、検索してもうまく見つからないし。だからお前が、何考えてこれ作ったのか、俺に抱いてくれって言えなくて、というのがなんでこっそり巣作りになるのか、理由、はっきりさせときたくて」
 お前の中では明確に何か意味があってやってんだろ、という指摘に、ないなんて言えっこない。そしてこんなに自分を気遣ってくれる相手に、相談もせずにこそこそと巣作りして、抱いて貰えない切なさに浸っていた自分が恥ずかしくなる。もともとあった、相手への申し訳ない気持ちが膨らんでしまう。
「俺、お前好きになって、本当に良かった。お前が俺を恋人にしてくれて、本当に、良かった」
 さっき謝られたいわけじゃないと言われたので、ごめんの代わりに喜びを伝えてみたのだけれど、膨らんだ想いが胸を締め付けてじわりと涙が滲んいく。
「それさっきも言ってたな」
 小さく笑いながら、そっと滲む涙を拭ってくれる。
「俺も、お前好きになってよかったと思ってるし、さっさと恋人って形でお前を俺に縛り付けたのを良かったって言ってもらえんのは、ホッとするよ。ついでに言うなら、お前が腐男子で良かったとも思ってるし、オメガバースなんて無い世界で番を持ってるのも、悪くないって思ってる」
 せっかく涙を拭ってもらったのに、その言葉でまた胸が詰まってしまう。次々と溢れてしまう涙に埒が明かないと思われたのか、すぐにギュッと抱きしめられてしまった。
「うぅっ好きぃ」
「俺も好き」
 相手の胸の中、泣きながら伝えた想いには、やはりすぐさま同じ想いが返される。何度かそれを繰り返している内に、次第に涙ではなく笑いが溢れだす。当然、相手からも笑いを含んだ好きが帰ってくる。
「あのね」
「おう」
 顔は上げないまま告げれば、相手も何かを察したらしい。クスクスと笑い合う浮ついた雰囲気が消えて、真面目な話をするための空気になった。
「俺、お前に片想いしてた時期、けっこう長かったろ」
 前に中学生の頃から好きだったと伝えたことがあるので、相手もそれはわかっている。
「そうだな」
「お前と番になってからも、そこそこの期間片想いだったから、俺が巣作りの真似事してたのってその頃で、番のαに抱いて貰えないΩになりきってお前の私物握りながら自分慰めてたわけ。で、そういう経験があったから、お前にもっと抱いて欲しいって言えなくて一人で勝手に苦しくなってる今の状況に被ったと言うか、お前に抱かれたいって思いながら一人でするのには巣を作りたかったっていうか、そういう感じ」
 言い切って一つ息を吐いた。これを聞いて、相手は何を思うんだろう。

続きました→

 
 
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