初めて抱いた日から1年

 ひと月前と半月前と先週と何度も頼み込んで、サラリーマンな年上彼氏に平日の休みをもぎ取ってもらった。
 どうしてもその日に休んで欲しい理由は、出来れば前日まで知らせたくなくて教えていない。だって知ったら絶対休みなんか取ってくれない。理由も告げず、お願いと繰り返し頼むその行為が、どれだけ子供じみたわがままかって事はもちろん自覚している。
 実際子供だし。というセリフは、大学生となってしまった今はもう使えないし、そもそも使いたいとも思っていないのだけど。せっかく長年の片想いを叶えて、一回りも年上のその人を恋人にして、さらには相手を抱くことも出来るようになったのだから、子供みたいな真似はいい加減卒業した方がいいとも思ってるけど。
 でもやっぱり、幼少期から長年培ってしまった関係の脱却は難しい。だってそもそも、相手が抱かれる側になってくれたのだって、自分の盛大なわがままを、結局根負けした相手が仕方なしに受け入れてくれたようなものなのだ。
 そしてやっぱり今回も、今は忙しい時期だから休みは難しいと言われていたのに、なんだかんだ調整して休みにしてくれたのは、相手がこちらのしつこい要望に折れてくれたからに他ならない。
「で、明日を休みにさせた理由は? どこか出かけるのか?」
 大学入学と同時に相手の家に転がり込んでいるので、今自分たちが居るのはリビングだ。家賃と生活費の一部は支払っているが、格安設定なこともわかっているので、家事全般は自分が担当している。今彼が話しながら食べている夕飯も、作ったのは自分だった。
「出かけないよ。俺は学校もあるし」
「は?」
 ならなぜ休みを取らせたと言いたげだ。脳内ではきっと、辻褄が合う理由を必死で探しているのだろう。
「今日は抱かせて」
「平日だぞ」
「だから明日休んでもらった」
 あからさまに嫌そうな顔をしたので、だって特別な日だよと語気を強めに告げてみた。
「特別な日?」
 今度はまったくわからないという顔をしている。まぁそれは想定内だ。この日にこだわってるのは自分だけだってちゃんと知ってた。
「そう。特別な日。記念日」
「記念日……? ってまさか、俺を初めて抱いた日、とか言い出す気じゃないだろうな?」
「あれ? 覚えてた?」
「特別な日で記念日と言われて、去年何をしたかと考えたら、それくらいしか思い当たることがない」
「初めて抱いた日から一年ってのもあるけど、俺が初めて告白したのもこの日。それから数年経って、ようやく告白を受け入れてもらえたのもこの日」
「えっ……?」
「さすがにそこまでは覚えてなかったろ。去年、ちょっと強引に抱いちゃったのはさ、日付も関係してたんだよね」
 恋人になれた日が告白した日と被っていたのはただの偶然のはずだけれど、初めてのセックスをこの日にというのは、随分と前から決めていた事だった。
「来年以降も、この日だけは絶対抱くから。普段はそっちの体力に合わせてあんまりムチャもしないでしょ。でも今日だけはちょっとだけムチャさせて?」
 言ったらなんとも言えない顔をしつつも、諦めたような溜息が一つ落とされる。
「休めるのは明日だけなんだから、そこは考慮してくれよ」
「そこはまぁ、多分、大丈夫……と思う。体力任せに抱き潰したりはしない。予定」
 さすがに12も歳の差があると、セーブしてるつもりでもついついやり過ぎて、過去に何度か抱き潰している。おかげで最近は、休前日しかさせて貰えないし、翌日休みでさえ二回もイかせればあっさりギブアップされてしまう。一度のセックスで一回イけば、それでもう充分らしい。
 まぁ、折角の休みを一日ベッドの中で過ごしたくはないだろうし、たった二回でも午前中はベッドの中という場合も多いので仕方がない。
「予定じゃなくて確実に抱き潰すな。もし明日一日で回復できないような抱き方したら、来年以降は断固拒否だからな」
 それはようするに、ムチャさえしなければ来年以降もこの日だけは絶対に抱くという宣言までも、了承してくれたということだ。
 わかったと頷いて、ありがとうと目一杯の笑顔を向けた。

 
 
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