いつか、恩返し15

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 気持ちよさそうで幸せそうな相手を前に、可愛いと繰り返す自身の感情がゆるりと変化し、目の前の相手をただ素直に愛しんでもいい存在なのだと認識しだした頃。
「そろそろ、代わってみる?」
「えっ?」
「セックスする時の立場の話。って言っても、ちゃんと気持ちよくなれるのに俺もそこそこ時間掛かったし、暫くはお前の後ろ慣らしつつ最終的には俺が抱かれるってのでいいけど」
 抱かれて気持ちよくなるってことに興味あるだろ、と続いた言葉に頷きながらも、興味があるのはそれだけじゃないな、とも思っていた。
 自分が抱かれる側に回るというのは、相手からすれば、好きな子を抱くというセックスになる。彼が自分に向かって可愛いと言うのかはわからないが、言ったとしてもそこに優越感や見下しや憐憫なんか欠片もないのは最初からわかりきっているわけで、どんな風に抱くんだろう、彼に抱かれている自分相手にどんな感情を持つんだろう、という興味だ。好奇心、ではないと思う。
 そこから先、前戯で彼にアナルを弄られる、という過程が増えたけれど、彼のように自分で自分の体を慣らして拡げるというような事はしていない。どうしても自分で自分の体を開発したいなら止めないけど、できれば全部任せて欲しいと言われたせいだ。
 自分で自分の体を開発、という部分に興味だったり好奇心が発揮されていたら、とっくに弄っていただろう。それに、相手が自分に対して何か要望を口にするというのが珍しかったし、一から全部相手任せで自分の体を変えられていく、とういのもそれはそれで楽しそうかなと思ってしまった。こっちは好奇心だろうな、という自覚はある。
 いくら全部相手任せとは言え、さすがに中を洗うだのの準備は自分で済ませたけれど、それ以外は本当に相手に委ねていた。ゆっくりじっくり、こちらのアナルを弄り拡げて、その場所で快感が得られるようにと変えられていく。
 元々抱かれる側も経験してみたい気持ちはあったし、目の前で彼の体が変化していく過程をずっと見てきたわけだし、そんな場所を弄られるという違和感はあっても不快感はなく、自分の体が変えられていくのも、目の前の彼がいきいきと楽しそうにしているのも、面白かったし楽しかった。
 好きだ好きだと言いながらも、こちらの様子を窺って、こちらの好奇心やら興味やらを満たせるようにと寄り添い協力してくれている、みたいなイメージが強かったから、そんな彼がこちらの体を好き勝手弄って楽しんでいる、という事実が新鮮だ。そんな彼を面白がっている、という部分も見抜かれてはいるようだが、もちろんそれを咎めるような相手じゃない。
 ただ、こんなにも抱きたい意思があったなら、もっと早く言ってくれればよかったのに、と思う気持ちも強い。その気持のまま、口を開いた。
「こんなに俺を抱きたいと思ってたなら、もっと早く言えば良かったのに」
「俺はちゃんとタイミング考えて行動してるよ。お前の興味や好奇心をただ満たしてやるだけの、抱く側セックスがしたわけじゃないからね」
「ん? どういう意味?」
「お前が俺の策に嵌って、ゆっくりじっくり、俺への気持ちを育てるの待ってたよって話?」
「んん??」
「俺を恋愛的な意味で好きになって、とは言わないって言ったけど、そういう意味で好きになって貰う努力をしてなかったわけじゃない。このまま恋人ごっこができればいいって気持ちも嘘じゃなかったけど、ごっこが外れる恋人になれたらいいなと思う気持ちがないとは言ってない」
「それを、今、言うのかよ」
 もちろん今だからこそ言うんだよと笑う顔は、なんだかキラキラと輝いて見えた。

続きました→

 
 
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