いつか、恩返し16

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 今だから言う、というのは、今日あたりいい加減抱かれることになるだろうという予測を、肯定されたようなものでもある。そう思った矢先に、短な宣言が伝えられる。
「抱くね」
「ああ」
 頷けばアナルから相手の指が引き抜かれていき、暫くして、今度はペニスの尖端が押し当てられるのがわかる。期待と興奮と混じりに見上げてしまう相手の顔は、自分と同じように期待と興奮とが混じっているみたいだった。さすがにもう、キラキラとした輝きはない。
 目があって、少しの間黙ったまま見つめ合う。先に口を開いたのは、相手の方だった。
「楽しみ?」
「そりゃあな。お前は?」
「もちろん楽しみでもあるけど、」
「あるけど?」
「嬉しいって気持ちがとにかく強いかな」
「ちょっと気が早くないか? まだ入ってないのに」
「確かにそうなんだけどさ」
 苦笑する相手の顔が、前屈みに寄ってくる。両手を伸ばして相手の肩を掴み、相手を引き寄せると同時に、自分自身も軽く身を起こして、相手へと顔を寄せた。
「ね、好きだよ」
 柔らかな笑いに変えた相手が、甘い声で囁いてくる。
「……俺も、」
 好きだ、とまでは言えなかったが、それは相手に唇を塞がれたからにすぎない。
 軽いキスを何度か繰り返している中、ぐっと足を抱え直されて、くる、と思う。その直後、ぐぷっと太く熱い塊が押し込まれたのを感じた。
「ぁうぅっ」
「痛い?」
「いた、くなっ」
 痛くはない。でも指とは違う質量が、相手のペニスが、自分の体を押し開いて貫いていく、というのを意識せずにいられない。多分、体にかかる圧のせいだ。こんな風にのしかかられるみたいな格好で、解されたことはなかったから。
「痛かったら、言ってよ」
「ん、ぁ、ぁああぁあ、ああ」
 こちらが頷くのも待たずに、そのまま体重をかけられて、ぬぷぷと体内に相手のペニスが沈んでいく。それを感じながら吐き出す息は、戸惑いの交じる情けない音を乗せている。
「おまっ、おまえっ」
 ほぼ一息にきっちり最後まで繋がってきた相手の動きが止まって、文句の一つも言ってやろうと口を開いたけれど、上手く舌が回らない。強い痛みは確かになかったが、それなりに動揺はしていた。
「ゆっくりするより、こっちのが楽かと思って。経験的に」
 経験的にだなんて言われてしまうと、こちらは返せる言葉がない。
 彼を初めて抱いた時、めちゃくちゃ気を遣ってゆっくりと挿入したけれど、確かにずっと、ふぅふぅ荒い息を繰り返しながら辛そうな顔を見せていた。大丈夫って言いながら無理やり笑顔を作る姿に、胸を締め付けられるような思いだってした。さっさと繋がってしまった方が楽だった、と言われても納得ではある。
 不満を残しながらも口を閉じてしまえば、相手は少し困ったように笑って、ゴメン嘘、と続けた。
「うそ、って?」
「ゆっくり挿れてあげたかったけど、無理だった。思ったより難しい」
「思ったより?」
「ごめん。これは意図的に隠してたんだけど、ほんの数分前まで、童貞だった」
 はぁあああと声を上げたら、どうやら腹筋にけっこうな力が入ったらしい。その結果、二人同時に呻く羽目になった。

続きました→

 
 
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