竜人はご飯だったはずなのに2

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 寝たきりではなくなった今、持て余す暇を潰してくれるのも世話係の彼だ。
 人の世界で生きていた頃はもっぱら体を鍛えるばかりで、頭を使うのにはあまり慣れていない。負けるばかりの賭け事も苦手だった。
 かといって、あまり体を動かしまくるわけにはいかない。エネルギーを使いすぎれば、すぐに腹の奥が疼き出す。結果、彼のキスをねだりまくって困らせるし、朝夕に飲まされる液体の量も増える。
 なので基本的には、話し相手。もしくはあまり頭を使わずにすむ簡易なゲーム。あとは風呂。
 トイレに行きたいと思うことがなかったのであまり気にしていなかったが、この部屋にあるのは大きなベッドと頑丈そうなテーブルと、そのテーブルとセットになった椅子が二脚だけだ。風呂に入りたいといえば、部屋の外へ連れ出されるのではと思ったのが最初だが、どうやらその考えは甘かった。
 部屋の中に陶器で出来ているらしいバスタブが持ち込まれ、そこに世話係の彼がせっせと湯を運び入れるという、なんとも面倒な事態になった。でもその一回で懲りること無く、たびたび風呂に入りたいと頼んでしまう。だってさして汗もかかず排泄もしない、あまり汚れている実感がない体でも、熱い湯につかり肌をこすられると気持ちが良い。
 一緒に入ってという言葉は無視されたが、じゃあせめて体洗ってと言ったら、それは受け入れられたから、今ではもう、風呂に入る時に彼に体を洗ってもらうのはセットになっている。
 最初の頃はこちらの体に傷をつけないようにおっかなびっくりだった彼も、今では慣れたもので、気持ちが良いと零すたびにどこか得意げな顔で嬉しそうに笑うから、ますます暇つぶしで風呂に入る回数が増えていく。
 世話係の小さな彼相手に、日々良からぬ遊びを少しずつ、アレコレ仕掛けている自覚はあった。
 彼が自分の世話を焼くのは仕事だからで、そこにあるのはただただ純粋な厚意や哀れみだろう。それをもっと明確な好意へ変えられないかと思ってしまう。出来れば恋愛的な要素も含んで、好きになって欲しい。
 雄の竜人相手に何をと思う気持ちはもちろんある。でもこの部屋で暮らすようになってから、自分と直接対峙し会話してくれたのは、世話係の小さな彼と食事担当の大きな彼の二人だけなのだ。しかもご飯な彼はたまにしか来てくれないのだから、今自分の世界は、この無駄に広い部屋と世話係の彼が中心の酷く小さなものでしかない。小さな世界を支えている相手と、懇意にしたくなるのは当然だった。彼と、もっともっと親密な間柄になりたい。
 あとはまぁ、単純に、落としがいがありそうという意味で楽しんでもいた。
 そもそも彼らは人のように、恋愛を楽しむような生活をしていない気もする。でも心はあるし、食事としての味気ないセックスではなく、情を交わすセックスがしたいといえば、食事としてのセックスに情を交えて優しくしてくれる。食事担当の彼だから出来る、という可能性もあるにはあるが、小さな彼に不可能と決まったわけでもない。
 立場的にも多分種族的にも食事担当の彼のほうが間違いなく上というか、こちらに対する柔軟性も圧倒的に高いし、世話係の彼は彼自身の判断でこちらにアレコレできないらしいのもわかっている。それでも口直しのキスをしてくれるようになったし、こちらのきわどい誘いにも前ほど逃げ腰じゃなくなった。
 どうせ時間は有り余るほどあるのだから、日々は少しでも多く、楽しい方がいいに決まってる。

続きました→

 
 
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