金に困ってAV出演してみた(目次)

キャラ名ありません。全33話。
お題箱より「金髪のいいお兄さん(19歳 受け)と黒髪のショタ感溢れる小柄の男の子(18歳 攻め)がゲイAVに出たら本当に恋に落ちてしまう」話
受けが視点の主で大学生。髪は撮影用に染めただけで中身は真面目。攻めは年下だけど高校卒業後すぐにAV業界に入った社会人。攻めは出演もするけど制作側になりたい人。
視点の主は恋人だったはずの男にお金を持ち逃げされたせいでAV出演を決め、そこで同じく初撮影だという攻め(撮影で喪失したいという理由で童貞)と出会う。恋人は暫く要らないと思っていたものの、攻めが監督する作品に出演したことで、自身の中に演じる役柄を羨む気持ちが湧いたり、攻めに告白されたり攻めの性癖を知って、最終的には恋人関係を受け入れます。
大人の玩具登場率高め。結腸開発用のアナルビーズ使用有り。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
AV撮影という内容なため、性的描写がかなり多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 ビデオモデル応募
2話 SEXしないと出られない部屋
3話 相手はバリタチ希望の童貞で処女
4話 カメラを忘れる
5話 アナルを舐められる(R-18)
6話 休憩とキス練習
7話 オモチャでトコロテン(R-18)
8話 脱童貞(R-18)
9話 二本目撮影とデートの誘い
10話 相手の自宅へ
11話 恋人は要らない
12話 知らなかったエンド
13話 指だけで感じすぎる(R-18)
14話 何度もイカされギブアップ(R-18)
15話 お風呂でイチャイチャ撮影
16話 出演予約
17話 出演依頼と撮影開始
18話 冒頭シーン撮影
19話 もっと、して(R-18)
20話 口内射精(R-18)
21話 先生はもう俺のもの
22話 撮影前予習
23話 好きになっていいの?
24話 本当に言った
25話 撮影再開と未経験玩具
26話 どこまで本気?
27話 未知の深さ(R-18)
28話 喜んで欲しくて
29話 先生の中に入りたい(R-18)
30話 映像確認とあの日の回想(R-18)
31話 恋人にはなってもいいけど
32話 譲れない性癖
33話 いつか信じられたなら

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

彼女が出来たつもりでいた1

 バレンタインの夜、駅のホームで声をかけられて、見知らぬ女性からチョコと一緒に手紙を貰った。特別見目が良いわけではないから、こんな経験は当然初めてだった。
 最初は美人局の一種かとも考えかなり警戒していたのだけれど、渡された手紙に書かれていたように、意識的に探せば時折彼女とは駅のホームで会うことがあった。しかし、いくらチョコやら手紙やら貰ったからと言って、気軽に話しかけることなんて出来っこない。それどころか、手紙の中にあった彼女の連絡先へも、ありがとうの言葉一つ送っていなかった。
 結果、向こうも気づいて目が合えば会釈するような関係を一月ほど続けて、ホワイトデーの前日に初めて、メッセージを送ってみた。
 さすがに駅のホームでというわけにもいかず、近くのコーヒーショップで待ち合わせてお返しの品を渡し、とりあえずお試しという感じで交際を開始したのだけれど、ほとんど一目惚れだった、という相手の言い分を信じたわけじゃない。ただ、目の前で緊張気味に話す相手の好意は間違いなく伝わってきたし、実を言えば、緊張に興奮と喜びを交えて、目を輝かせながらも照れ笑う顔が可愛かった、というのがかなり大きい。
 数年振りの恋人という存在に浮かれて、ほとんど毎週末どこかしらへ遊びに行ったし、どこへ行っても目一杯楽しもうとする彼女の姿に、あっという間に本気で惚れた。
 ただ、デートは毎回ひたすら楽しいし、手を繋いだり人気がない所で軽く唇を触れさせるだけのキスなどはむしろ彼女も積極的でさえあるのに、それ以上の進展が難しい。腰や肩を抱き寄せ密着しようとしてもするりと躱されてしまうし、個室で二人きりというような状況にはならないよう気をつけているらしき様子がある。
 もしかしたら、過去の交際やら日常生活で、男性から不快な目に合わされたなどのトラウマがあるのかも知れない。それとなく聞いてみたものの、曖昧にはぐらかされてしまったので、その線は濃厚な気がした。
 下心がないわけではないが、相手の同意なく強引に手を出す気なんて欠片もない。可愛い彼女とあちこちデートして、手を繋いだりキスが出来るだけで充分満足だった。

 免許はあるが車は所持していないことと、多分車内も二人だけの密室と考えるらしく、移動はもっぱら電車やバスの公共交通機関を利用するのだが、その日、帰宅時の電車が途中で予想外に混んでしまった。ちょうど何かのイベントの終了時間と重なったらしい。
 ギュウギュウとまではいかないものの、それなりに人の詰め込まれた車内で、不可抗力ではあるものの、初めて彼女と広範囲で触れ合っている。ドッと人が流れ込んできてから先、相手は酷い緊張を見せていた。
「気分悪い? 大丈夫?」
「ん、だいじょぶ。あの、ごめん、ね」
 俯く相手から、申し訳なさそうにか細い声が聞こえてくる。
 何のイベントだったのか、周りの男性率は高い。恋人相手でもあれだけ警戒するのだから、この状況はきっと相当辛いんだろう。過去に何があったかはわからないが、きっと彼女が悪いわけではないのだろうから、謝らないで欲しい。
 こんな状況になるとわかっていたら、さっきの駅で一度降りてしまえば良かった。
「次の駅で一度降りようか」
「……うん」
 しばらく迷う様子を見せたものの、相手も頷いたということは、やっぱり大丈夫ではないんだろう。とはいえ、急行列車に乗っているので、次の停車駅までまだ10分以上もある。
 見知らぬ男と接触するよりは、まだ恋人である自分のほうがマシだろうと、相手を守るように腕の中に引き寄せた。ますます緊張をひどくし、なるべく密着しないよう二人の胸の間に両腕を挟んでガードする徹底っぷりに、なんだか申し訳ない気持ちになる。さすがにこの状況で下心なんてないけれど、ないつもりだけれど、彼女からすればこの機に乗じてと見えるのかも知れない。
「ごめん。嫌だよね。でも次の駅までの、数分だけ、我慢して」
 思わず謝ってしまえば、ハッとしたように俯いていた顔をあげて、違うと言いながら首を振る。少しばかり、泣きそうな顔に見えて、ますます罪悪感が増した。
 いつも楽しげに笑ってくれることが多い彼女の、こんな顔を見るのは初めてだ。
 引き寄せたりしないほうが良かったのかも知れない。かといって、引き寄せた相手を押しのける真似も出来ない。結果、なんとも気不味いまま、二人無言で電車に揺られるしかなかった。
 そんな中、ガクンと電車が大きく揺れた後、急停車した。人が多いので倒れることはなかったものの、揺れた拍子に胸の間に置かれていた相手の腕が大きくずれて、というよりもビックリした相手に抱きつかれたらしく、正面からぎゅうと抱き合う形になった。
「えっ……?」
 思わず零した驚きの声に、相手が酷く慌てたのがわかった。安全確認のために急停車したことを詫びるアナウンスをどこか遠くに聞きながら、腕の中でもぞもぞと必死に身を離そうとしている相手を、更にぎゅっと抱きしめる。確認するように、腰と腿とを突き出し、相手の体というか股間を狙って擦りつける。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

兄は疲れ切っている(目次)

キャラ名ありません。全40話。
雄っぱい持ち大学生弟(視点の主)×疲労困憊社会人兄。どちらも女性経験ありで男性経験なし。
同情から雄っぱいを揉ませたことで兄を意識するようになった視点の主が、彼女ができそうという兄に焦って、酔い潰して先に体だけ手に入れたら大失敗だった話。
目一杯優しくしても一向に絆されてくれないどころか心を閉じていく兄と、最終的には恋人同士になります。
21話から先はダラダラと恋人同士の甘ったるいセックスをしているだけですが、S字結腸まで突っ込んじゃったり、後始末でお湯の排泄させたりが混ざってます。描写は控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 1分百円
2話 酔った兄に絆されて
3話 兄の奢りで居酒屋へ
4話 ラブホ連れ込み(R-18)
5話 兄覚醒と抱く宣言(R-18)
6話 とにかく諦めて(R-18)
7話 泣かれて一時中断(R-18)
8話 再開したけど(R-18)
9話 その後の迷い
10話 上手くいかない(R-18)
11話 兄だけ先に(R-18)
12話 兄の口奉仕(R-18)
13話 精飲と湧き上がる怒り(R-18)
14話 嫌だと言えば開放する
15話 兄の告白
16話 ポンコツなりに必死
17話 兄の惨めさの正体
18話 土下座で謝罪
19話 セックス前から好きだった
20話 やっと恋人同士
21話 初デートの余韻を残して
22話 ちっぱい堪能(R-18)
23話 襲っていいよ
24話 嬉しくて仕方がない(R-18)
25話 いつもと違って(R-18)
26話 耳元に甘い声(R-18)
27話 ゴムを口で着けてみたい
28話 初の対面座位(R-18)
29話 兄が自分で(R-18)
30話 初トコロテン(R-18)
31話 もっと、愛して(R-18)
32話 中出しマーキング(R-18)
33話 奥までじっくり(R-18)
34話 奥のその先(R-18)
35話 これから先はいつだって
36話 抱っこで風呂場
37話 後始末のお手伝い了承
38話 排泄中だって可愛い(R-18)
39話 湯船でうとうと
40話 おやすみ

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

ただいまって言い続けたい

 玄関扉を開けた先は、廊下の明かりは点いていなくとも薄明るかった。短な廊下の突き当りにあるリビングへと続くドアに嵌った曇りガラスから、リビングの明かりが漏れているせいだ。
 そのドアが開いて、ますます廊下の明るさが増すと共に、お帰りなさいの弾んだ声が掛けられる。
「ただいま」
 帰宅時に家に誰かが待っててくれるってのはやっぱ幸せだなぁと思いながら、恋人までの短な距離を詰めていく。
「飯温めるので、手ぇ洗ってうがいしてきてください」
 差し出された手に仕事カバンを手渡せば、さっさとしろと急かされてしまう。なるほど。やたら弾んでいた声の理由がわかってしまった。今日は遅くなるから先に飯食っていいよって、遅くなるのが決定した瞬間に連絡は入れていたけれど、どうやら食べずに待っていてくれたらしい。
「そこはご飯にする? お風呂にする? ってヤツやってよ」
「やですよ。だって俺、腹減ってるし」
 知ってる、とは言わなかった。というよりも言う隙がなかった。先に食べずに待ってたんだから急いでと、かなり空腹らしい相手に再度急かされてしまったからだ。
「えー、じゃあ、せめてお帰りのちゅー」
 ねだれば一瞬うっと詰まったものの、すぐさま頬にちゅっと小さなリップ音が立った。口にしてくれないのはわかっていたけど、それでも不満ですと言いたげに口先を少しばかり尖らせれば、相手は困った人だなと言いたげに苦笑する。
「口はうがいしてからです」
 ほら行ってらっしゃいの言葉とともに、肩を掴まれ強引に回れ右させられたかと思うと、洗面所へ向けて背中押し出されてしまう。仕方がないので数歩分廊下を戻って、ハンドソープを使ってしっかり手を洗った後、うがいも念入りに数回繰り返す。
 部屋に戻って、本日の夕飯をテーブルへと運んでいる途中の相手から皿を奪うついでに唇を突き出せば、今度こそおかえりの言葉とともに唇にキスが落ちた。
 満足したので奪い取った皿をテーブルに運び、そのまま自分は席に着いて残りの準備は相手に丸投げしたけれど、相手は文句もなくキッチンとテーブルとを往復している。さすがに今日はかなり疲れているのを察してくれているんだろう。
 
 着々と腕を上げているのがはっきりわかる彼作の夕飯を食べて、既にシャワー済みだという相手に後片付けも押し付けて風呂を使い、疲れてるけどそれは別腹的に気持ちよくなって、というか正確には気持ちよくしてもらって、現在はベッドの中で甲斐甲斐しく後始末をされながらまどろみ中だ。
「最近、随分と甘ったれになりましたよね」
 ざっくりと後始末を終えたらしく、相手もベッドに潜り込んできたから、さっそくすり寄ってくっつけば、そんな苦笑交じりの言葉とともにふわりと抱きしめられる。
「それは誰かさんが目一杯甘やかすから〜」
「知ってます? 俺の夏休み、明後日には終わるんですよ」
 年下の恋人はまだ大学生で、夏休みがとても長い。けれどそれももう終わりが近づいていた。
「知ってるからこそ、この週末は甘え尽くすつもりなんだけど」
 というか彼の夏休み最後の週末を休日出勤なんかで無駄にしたくなかったからこそ、今夜の帰りがここまで遅くなったわけなんだけど。
「ならいいですけど。大丈夫なんですか?」
「大丈夫って何が?」
「甘やかすのはいいんですけど、元の生活に戻れないとかって泣きついて来ないで下さいよ、って意味ですかね」
「えーそれはちょっと保証できない」
 夏休みの大半を半同棲的にこの家で過ごしていたから、彼に行ってきますもただいまも言えない生活に戻ったら、絶対に寂しいに決まってる。もういっそこのまま、大学もここから通えばいいのに。
「それってプロポーズですか?」
「えっ?」
「いっそ大学ここから通えって、今、言いましたよね?」
 どうやら口から言葉にして出していたらしい。
「行ってきますとか、ただいまとか、お前に言える生活、続けたいよ。って言ったら、一緒に暮らしてくれんの?」
 プロポーズしていいならもちろんしたいよ、と言ったら、照れくさそうに、本気にしていいなら引っ越しも考えますと返された。

夏休みを終えて戻ってきました。ただいまです。というわけで、更新再開しますのでまた宜しくおねがいします。

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

追いかけて追いかけて(目次)

キャラ名ありません。全31話。
同じ大学の大学院生×新入生(視点の主)。という出会いをした二人ですが、メインになってるのは視点の主が大学院生で相手は社会人な時期。5歳差。視点の主は決して小柄ではないけれど、先輩が高身長のためそこそこ身長差あり。
財布をなくして困っていた時に声を掛けてくれた相手に興味を惹かれるまま、追いかけるように転学部・学科までしてその相手と同じゼミに入った視点の主と、好意を隠すことなくダダ漏れにして自分を追いかけてくるくせに、恋人になるのは嫌だと言って譲らない視点の主を諦め悪く追い詰めて、最終的には恋人になると言わせる先輩の話。
途中、視点の主がさして仲が良いわけでもない別ゼミの後輩に襲われる(挿入は指だけ)展開があります。
作中そこまで明確に書いてはいませんが、先輩は高校時代に彼氏が、大学時代に彼女が居た設定。高校時代の彼氏との関係はタチ寄りのリバで非処女。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 人生を変えた出会い
2話 ゼミ訪問で久々の再会
3話 今後を見据えた交流
4話 院進学と告白
5話 恋人にはなれません
6話 侵入者
7話 ヤバイ相手とわかっていても
8話 逃げ切れない(R-18)
9話 呼んでしまう名前(R-18)
10話 駆けつけてくれた友人(R-18)
11話 知られている
12話 だから会いたくなかった
13話 セフレにだってならないけれど
14話 互いの性体験暴露
15話 強引なキスにそれでも安堵
16話 一緒にシャワーを浴びるか否か
17話 信頼している
18話 自分から伸ばす手
19話 耳へのキス
20話 上書きが欲しいわけじゃない
21話 気持ちの切り替え
22話 シャワーの下で(R-18)
23話 罪悪感につけいって
24話 恋人になって
25話 もしもゲイだったなら
26話 黙って従って
27話 こんなに想われていても
28話 今だけ恋人(R-18)
29話 好きです(R-18)
30話 このまま恋人でいたい(R-18)
31話 ズルい大人

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

兄弟ごっこを終わりにした日

 彼とその母親がこの家に住むようになったのは、中学に入学する直前の春休み中だったと思う。父の再婚を反対しなかったというだけで、もちろん彼らを歓迎する気持ちなんてなかったが、だからといって追い出そうと何かを仕掛けるような事もしなかった。
 子供心に両親の仲が冷え切っているのはわかっていたし、家の中から母が消えた時にはもう、なんとなくでもこの未来が見えていたというのもある。
 本当なら父だって、新しい妻と幼い息子の三人で、新たな家庭を築きたかったはずだ。単に、父は自分を捨てるタイミングを逃しただけなのだ。
 母の行動の方が一歩早かった。もしくは、自分を置いていくことが、母の復讐だったのかもしれない。なんせ、当時二歳の弟は連れ子ではなく父の実子だった。つまり自分とも半分血が繋がっている。
 自分は両親どちらにとってもいらない子供だったから、再婚するから出て行けと言われなかっただけマシだ。だから家族の一人として彼らに混ざろうなんて思わなかったし、必要最低限の会話しかしなかったし、練習のハードそうな部活に入って更には塾にも通い、極力家に居ないようにしてもいた。
 高校からは逃げるように家を出て寮生活だったし、もちろん大学も学校近くにアパートを借りたし、社会に出ればもっともっと疎遠になっていくのだろうと、あの頃は信じて疑わなかった。それでいいと思っていたし、そう望んでいた。
 父とは疎遠どころか二度と会えない仲になったので、あながち間違いではないのかもしれないが、望んでいた形とは全く違うものとなったし、まさかまたこの家に住む日がくるなんて、あの頃は欠片も思っていなかったけれど。

 父と後妻が揃って事故で亡くなったという連絡が来たのは、大学四年の冬の終わり頃だった。卒論は提出済みで、もちろん就職先も決まっていて、後は卒業を待つばかりというそんな時期だったのは有り難かったが、後処理はなかなかに大変だった。
 父はやはり元々の性格がクソだったようで、どうやら性懲りもなく浮気をしていたらしい。事故という結論にはなったものの、事故を装った後妻による心中じゃないかと疑われていたし、実際自分もそうだったのじゃないかと思っている。幸い血の繋がった新たな弟妹の出現はなかったが、父と付き合っていたという女は現れたし、遺産を狙われたりもした。
 でも何より大変だったのは、残された弟のケアだった。ちょうど中学入学直前という時期だったから、昔の自分とダブらせてしまったのだろうと思う。
 彼もまた、冷え切った両親の仲にも、父の浮気にも、元々気づいていたようだったし、両親の死は母の無理心中と思っているようだった。自分は両親に捨てられたのだと、冷めきった表情でこぼした言葉に、グッと胸が詰まるような思いをしたのを覚えている。
 放っておけないというより、放っておきたくなかった。
 半分血が繋がっているとは言え、互いに兄弟として過ごした記憶なんて欠片もなく、年も離れている上に七年もの間別々に暮らしていた相手が、今後は一緒に暮らすと言い出すなんて、相手にとっては青天の霹靂もいいところだろう。
 それでも、施設に行くと言う相手を言いくるめるようにして、彼の新たな保護者という立場に収まった。
 そうして過去の自分を慰めるみたいに、自分が欲しかった家族の愛を弟相手に注ぎ込んでやれば、相手は思いの外あっさり自分に懐いてくれた。そうすれば一層相手が愛おしくもなって、ますます可愛がる。そしてより一層懐かれる、更に愛おしむ。その繰り返しだった。
 それは両親から捨てられた者同士、傷の舐めあいだったかもしれない。それでも自分は彼との生活に心の乾きが満たされていくのを感じていたし、父は間違いなくクソだったけれど、彼という弟を遺してくれたことだけは感謝しようと思った。
 ただ、やはり今更兄弟としてやり直すには無理がありすぎた。自分が家を出た時、彼はまだ小学校にも上がっていなかったし、そもそも中学生だった自分が彼と暮らした三年間だってほとんど家にはいなかったし、彼を弟として接していた記憶もない。父の後妻同様、同じ家に暮らす他人、という感覚のほうが近かった。それは彼の方も同じだろう。
 便宜上、彼は自分を兄と呼んではくれていたが、互いに膨らませた情が一線を超えるのは時間の問題のようにも思える。兄として慕ってくれているとは思っていないし、自分だってもうとっくに、過去の自分を慰めるわけでも、弟として愛しているわけでもなかった。

 それでもギリギリ一線を超えないまま、兄弟ごっこを続けること更に数年。
 ある土曜の日中、彼はふらっと出かけていくと、暫くして花束を抱えて帰宅した。真っ赤なチューリップが束になって、彼の腕の中で揺れている。
「どうしたんだ、それ。誰かからのプレゼント?」
 今日は彼の誕生日だし、誰かに呼び出されて出かけたのかもしれないと思う。でもいくら誕生日だからって、男相手にこんな花束を贈るだろうか? 贈るとして、それはどんな関係の相手なんだろう。
「違う。自分で買ってきた」
 そんな考えを否定するように、彼ははっきりそう言い切った。差し出されたそれを思わず受け取ってしまったけれど、全く意味がわからない。
「え、で、なに?」
「今日で十八になったから、もう、いい加減言ってもいいかと思って」
「待った」
 とっさに続くだろう言葉を遮ってしまった。
「高校卒業するまでは、言われないかと思ってた。んだけど……」
 彼が十八の誕生日をその日と決めていたなんて思わなかった。さすがに想定外で焦る。
「待てない。もう、じゅうぶん待ったと思う」
 けれど、お願い言わせてと言われてしまえば拒否なんてできない。自分だって、この日を待っていたのだから。
「あなたが好きだ」
 そっと想いを乗せるように吐き出されてきた柔らかな声に、手の中の花束をギュッと握りしめる。
「兄弟としてじゃない。兄さんって呼んでるけど。事実半分とは言えちゃんとあなたは俺の兄なんだって知ってるけど。わかってるけど。でも何年一緒に暮らしても、やっぱりあなたを兄とは思えない。兄としては愛せない。愛したく、ない」
 真っ直ぐに見据えられて、あなたはと問い返された。彼だってこちらの想いに気づいているのだから、その質問は当然だろうし、自分だってちゃんと彼に想いと言葉を返さなければ。
「こんな俺に、誰かを愛するって事の意味を教えたのは、間違いなくお前だよ。お前以外、愛せないよ」
「なら、これからも愛してくれますか。これからは、恋人として」
 大きく頷いて見せてから、手の中の花束をグッと相手の胸に押し付けるようにして、そのまま花束ごと相手のことを抱きしめてやった。

続きました→

有坂レイへのお題【押し付けた花束/「これからも愛してくれますか」/まだ僕が愛する意味を知らなかった頃。】
https://shindanmaker.com/287899

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁