雷が怖いので プレイ34

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 彼の家ほどではないにしろ、ベッドルームが別になっているようなホテルのバスルームはやはりそこそこ広くて、二人で使っても窮屈感なんてものはない。
 湯船と洗い場はしっかり別々になっているので、洗い場に立ち、剃られた部分をシャワーで丁寧に流されながら、随分と念入りに剃り残しがないかをチェックされる。彼の前に体の隅々まで晒すのなんて今更でも、壁に額を押し当てて腰を突き出し、自ら尻肉を割って拡げて、そこにシャワーの湯を浴びる経験はもちろん初めてだし、剃り残しがないかを確かめるように触れる指も注がれる視線も初めてだ。
 そんなの、どうしたって恥ずかしい。彼の前に晒す、彼によって引き出される羞恥は、自分の中ではもう完全に快感と結びついてしまっているから、体が期待で震えてしまう。
「物欲しそうにハクハクしてる」
 可愛いなと言って、指先が息づくアナルに押し当てられた。その指先をもっと奥まで咥え込みたいと、アナルが吸い付くように蠢いてしまうのがわかる。けれどその期待に応じてくれることはなく、指先はあっさり離れていった。
「ぁ、ぁあ……」
 安堵と落胆を混ぜた息を零せば、ククッと喉の奥で笑われる気配がする。
「大丈夫。やっとツルツルにさせてくれた分、いつもとは違うやり方で、うんと可愛がってやるから」
 言いながらシャワーを置くと、尻タブを掴む手を覆うように彼の手が重ねられて、開き方が足りないと言わんばかりにグッと左右それぞれ外側へ向かって力が込められる。近づく気配が彼の頭だと認識するのと同時に、アナルにピタリと押し当てられたのは、間違いなく彼の舌だった。
「んぁああああ」
 ビクビクと体中を痙攣させながら悲鳴をあげてしまう。それに構うこと無く、グニグニと蠢く舌が楽しそうにアナルを舐め弄る。指とは全然違った動きと感触に肌がゾワゾワしっぱなしだし、更にそんな場所を舐められているという驚きと背徳感で、頭の中がグラグラと揺れた。
「ゃぁあ、ああ、ああんん」
 多分間違いなく気持ちが良いけれど、その気持ち良さに身を委ねてしまってもいいのか、わからない。だってこんなの、知らない。彼の口にイカされたこともあるけれど、でもその時はこんな場所まで舐められなかった。彼の舌が這ったのは、口に含まれ吸われたのは、ペニスとせいぜい陰嚢までだ。
 そんなことが頭を掠った直後、アナルに舌を差し込まれ、その周りごと押し当てられた唇で吸い上げられる。
「ひぃぁああ゛あ゛あ゛や、だぁああ」 
 再度絞り出すように悲鳴を上げれば、ちゅぽんという音が聞こえそうな勢いで、唇が離され舌が抜け出いく。
「ん、すっげ、いー声出てた」
 零される笑いは満足気だ。
 尻から手を離して立ち上がった彼に倣って、自分も尻から手を離して突き出した腰を引っ込めようとしたら、それを阻止するようにあっさり腰を掴まれてしまう。
「だーめ。まだ終わりじゃないから」
 壁に手をつくように言われて従えば、壁から離れた顔を覗き込まれる。
「ああ、やっぱりおでこ、赤くなってるな」
 中断したのは、額を壁に押し当てているにも関わらず、アナルを舐められる衝撃に耐えられなくて、イヤイヤと頭を振ってしまっていたかららしい。
「頭フラフラしてる感じは?」
 そういや部屋に戻ってきた時は、結構酔っていたんだった。でも酔いがぶり返したり、のぼせている感じはなかった。
「それは、平気、です」
「じゃ、とりあえず、舐められながら一度イッてみようか」
「えっ、ここ、で?」
「どうしてもベッドの上でがいい?」
 多分頼めばそうしてくれる。特に今日は四週目だから、口に出したこちらの希望を優先して叶えてくれる。でもこっちだって、彼がしたいように、されたい。特に、建前上は買われていない、まるで恋人同士のデートを楽しむみたいな四週目は。
「ここで、して」
 だからこちらが返す言葉なんて、それ以外になかった。

続きました→

 
 
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雷が怖いので32

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 洗われながら焦らされた体は強い刺激を欲しがっていたから、すぐにでも言われた通り彼の肌にグリグリと性器を擦り付け達してしまいたい気持ちはもちろんある。でもそれと同じくらい、この時間が長く続けばいいのにとも思った。
 結局どれくらいの時間、彼の体を洗っていたのかはわからない。ただ、おぼろげな知識を辿りつつ、それなりにあれこれ試せたとは思う。まぁ途中からはイマイチ記憶が曖昧だけれど。
 興奮しきった中で射精を耐え続けたのと、湯の中ではなくとも風呂場の温度と湿度でやはりのぼせていたのが原因だ。
 最後は、もうイきなさいとかなり厳し目の命令調で言われ、それに従ったことは覚えている。しかしそこで意識が飛んだらしく、気づけば寝室に寝かされていた。
 もうカーテンの隙間から漏れ入る明かりはなく、代わりに部屋の隅に置かれた細身のスタンドライトが淡い光を灯している。
 今度は隣に彼の姿はなく、裸だった。ゆっくりと上体を起こして部屋の中を確認すれば、ベッド脇に二つのスツールが並んでいて、片方に畳まれた服が、もう片方にペットボトルの飲料水とグラスが置かれている。
 用意周到ぶりに驚きながらも、ありがたく水を飲み干し服を着た。
 どうやらあんなにびしょ濡れだった服が乾燥機で乾くだけの時間を、寝て過ごしていたようだ。きっと一緒に掃除するといった廊下も、彼が一人で終わらせてしまっただろう。
 取り敢えず彼を探そうと部屋を出た。
 結構大きな家だけれど、基本防音室でのプレイばかりでそこにはシャワーブースもトイレもあったから、リビングと今いた寝室と先程使った風呂場しかこの家の中の構造を知らない。防音室とリビングだったら、リビングのほうが彼がいる可能性は高いだろうと、取り敢えずはリビングへ向かう。
 軽く扉をノックして様子をうかがえば、すぐに入っておいでと返事が聞こえた。良かった。やっぱりこっちで合っていた。
 リビングへ入ると同時に、ソファに座っていたらしい彼が立ち上がるのが見える。
 こっちにと促されてテーブルセットの椅子に座れば、じっと顔を観察される。
「体調はどうだ?」
「特には問題ないです。でももう少し、水が飲みたい」
「わかった。腹は? 何か食べれそうか?」
「食べます!」
 勢い良く返したら、ぷっと小さく吹き出された後、大丈夫そうだなと言ってくしゃりと頭を撫でられた。
「じゃあ何か用意するから待ってな」
 キッチンスペースに向かった彼は、冷えたミネラルウォーターの大きなボトルとグラスとを手に戻って来たが、それらをテーブルに乗せるとまたすぐキッチンに入っていく。
 ほどなくして出てきた夕飯は、ハンバーグをメインにした、まるでレストランの食事みたいだった。電子レンジが稼働していたから、レトルト惣菜か冷凍食品なのだろうけれど、皿に綺麗に盛り付けられたそれらはめちゃくちゃ美味しかった。
 夕飯を食べ終えて一息ついたところで、相手から、今日の分の給料を払ってもいいかと言われて、これはさっさと帰れってことかなと思いながら頷く。時刻は既に22時を大きく過ぎていて、途中二度も寝てしまったせいもあるけれど、こんなに長時間この家に居続けたのは、実のところ初めてだ。
 差し出された封筒は、目に見えて分厚かった。
 今日は本当に色々とあったから……とは思うが、同時に、やはり少しだけ胸が痛い。彼に初めて抱かれた事の報酬は当然入っているだろう。もしかしたら、好きという気持ちにも、やっぱり値段を付けられているのかも知れない。
 要らないと言って突き返しても、受け取ってくれるかはわからないけれど、でも、黙って受け取ることだって出来そうにない。できれば、返してしまいたい。
「あの、中、確かめても、いいですか?」
 渡された封筒の中身を、彼の前で確認したことはない。だから相手も一瞬驚いたようだけれど、すぐにどうぞと返され、手にした封筒から中の札束を取り出し枚数を数える。
 一万円札が、二十三枚、入っていた。
「これ、内訳、どうなってるんですか?」
「内訳?」
「気分で決めてるってのは聞きましたけど、でも、ある程度は、あるんですよね? 何が幾ら分、っていうの」
「あー……お前の初めてを、俺が幾らで買ったか知りたいって事?」
「あ、はい。そうです、ね」
「そうだな。最初の、ベッドの中で過ごした時間全部で、十万。お前の肩に噛み付いて傷を残したのが十万。その他、プラグ入れてここまで来たのとか、玄関先でイくの我慢できたのとか、単純時給分とか、諸々合わせて三万。くらいの感覚、だな。傷の分は払うけど、風呂場でのその他には今日は値段つけてない。もしあれに値段つけるなら、プラス二万か三万、くらいか?」
「傷に、十万……?」
 痕、残るとしてもうっすら程度って言ってたよね? なのに十万?
 彼の中の値段設定に驚きすぎて、一瞬目的を忘れた。
「金銭感覚違いすぎるとか思ってんのかもだけど、俺にとってはお前の体に残るかもしれない傷痕付けるってのは、相当な意味があると思ってくれていい。俺の体は傷だらけだけど、俺の経済力の基礎部分は、その傷と引き換えにした分がかなりある。正直、お前のその傷も、傷の残り具合によっては、もっと追加してもいいと思ってる」
「でも俺、この傷、多分、嬉しい……から。ちゃんと痕が残って欲しいって思ってるくらいだから。あなたの傷とは、きっと、意味が違う」
「それは、受け取れないと、そういう話?」
「うん、そう。それと、ベッドの中で過ごした十万分も」
「仕事として俺に抱かれるのが、嫌だから?」
「今日のは、出来れば、仕事じゃなかったって思いたくて。あの時間を、いつも通りのバイトって思いたくない、から。次回からは、ちゃんと、バイトとしてここに来た日に抱かれた分は、お金、貰います」
 相手は何かを考えるように口を閉ざしてしまう。
「あ、あの、お風呂場の、値段つけてないっての、むしろ嬉しかったし。もしかして、好きなんて言ったら、好きって気持ちにも値段つけられて、バイト代に上乗せされるのかって思ってたから、そういうのもなくて、良かったって思ってるくらいなんで。だから、その、俺、本当に、あなたから必要以上に、お金貰いたくないくらい、あなたのことが、好きになっちゃってて、せっかくいっぱい給料入れてくれたのに、その、わがまま言ってごめん、なさい」
 どうしてもお金は返したくて、でも怒らせたかもと焦る気持ちもあって、口からはぼろぼろと気持ちがこぼれ落ちていく。
「お前の気持ちは、わかった」
 差し出された手に封筒と引っ張り出したお札を一度全て返したら、そこから改めて三枚の万札を封筒に入れてそれを戻された。

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雷が怖いので31

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 優しいキスなのに、ゆるりと口内を探られてすぐに息が上がっていく。お湯の中にいるからというのも、多少は関係しているのかも知れない。
 息を継ぐときに取り込む空気も湿気が多くて息苦しい。くらりと思考と目の前が揺れるのは、感じすぎてと言うよりはきっとのぼせ始めている。
 このままキスを受け続けるのはマズイかな? そう思うのと同時くらいに、キスが終わって、ちょっと立ってみてと指示された。
「めまいとか、吐き気や頭痛はあるか?」
 言われるまま立ち上がればそんなことを聞かれたので、のぼせ始めているのは相手もわかっているようだった。
「少しだけ、くらっとしたけど、でも……」
「まだ気持ちいいこと何もして貰ってないって?」
 ククッとおかしそうに笑われて、のぼせとは別の意味で頭に血がのぼる。
「ここも、期待でこんなになってるもんな」
 彼の顔の前にさらけ出す形になっているペニスは今のキスだけで頭をもたげていて、それを大きな手が柔らかに包み込んで軽く上下にしごいてくる。
「んぁっ」
 声を漏らしてしまえばすぐに手は外されてしまい、がっかりする気持ちを見透かすように、やっぱり楽しげに笑われた。
「体、洗ってやるよ」
「えっ?」
「このまま湯船の中でお前弄るのは無理だけど、風呂場ですることも出来ることも、他に色々あるだろって話」
 促されるまま洗い場に立ち、彼の手で隅々まで丁寧に洗い上げられる。それこそ足の指の間から、耳の裏やら耳介まで。もちろん、すっかり芯を持ってしまったペニスのくびれも、アナルの周りのシワも、優しい手つきで洗われた。
 そう。それは優しく丁寧な、あまり性感を煽ってはこない手つきだった。なのに、それでも感じて善がってしまうのが、なんだかとても恥ずかしい。
 体はもっとはっきりとした刺激を欲しがっていて、まるで意地の悪い焦らしプレイを受けているみたいだった。というか、本当にそういうプレイなのかもしれないけれど。
「さて、後は泡流したら洗うの終わりだけど……おい、そんな恨めしそうな顔で見るなって」
「だって、意地悪だ」
「だってお前、さっき何回イッたと思ってんの。お前が思ってるより、お前の体、多分かなり疲れてんぞ。まぁお前若いから、俺が思ってるより案外平気かもとも思うけど。それに、俺にイかされて終わりじゃいつも通りだしな」
 そう言うからには、いつも通りじゃない何かをさせられるらしい。彼にイかされるわけじゃないなら自分でしろて見せろって事かも知れないけれど、オナニー披露は意外と早くに受け入れてしまったから、そこまで珍しいプレイじゃない。
 彼に促されながらも、出来ない無理だと渋って未だ成してない事は何があっただろう。本気で嫌がれば無理矢理やらされる事はないので、泣いてできないと訴えて許されたプレイも色々あった。
「これからして貰うのは、今まで言ったことも無いようなことだよ」
 そう言って続いたプレイ内容は、彼の体を洗うことだった。確かにそれは、欠片も思い浮かばなかった内容だ。
「い、いいの?」
「いいよ。お前、俺に触りたいんだろ? だから、使うのはお前の体だけな」
「え?」
「お前の体に付いた泡を俺に擦り付けるみたいにして、お前の体全部を使って、俺を洗って?」
 なるほど、確かにこれは風呂場ならではっぽい。脳内にソープ嬢もののアダルトビデオを浮かべながら、何をどんな風にして客を洗っていたか思い出す。
「えーと、壺洗い……でしたっけ?」
「ああ、そういやお前、AVとかはかなり広範囲に見るって言ってたか。いや、そういうのはしなくていい。まぁ、指くらいなら入れたきゃ試していいけど。でもやって貰いたいのは、俺の体にそれ擦り付けて、気持ちよくなれたらそのままイッてみてってだけ」
「あの、俺が、気持ちよくなる、の?」
「そうだ。俺の体を使って、お前が気持ちよくなるのを、見せなさいって言ってる。無理ならいつも通り俺が気持ちよくイかせてやるけど、でもその場合は、意識飛ぶ覚悟と、起きた時にはここの毛は剃り落とされてるって覚悟して」
 それならそれでいいけどと、陰毛をそろりと撫でられた。
「無理じゃ、ない、です。やります」
 できれば彼にもちょっとくらいは気持ち良くなって貰えたらいいなと思いながら、泡の残る体を彼の体に押し当てた。

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雷が怖いので28

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 性感を煽ってこない、ただただ荒々しく貪られるようなキスは初めてで、けれどキュウと締め付けられる胸の痛みはいつもよりずっと甘い。
 間違いなく、嬉しかった。喜んでいた。
 知られたくなかっただろう傷を半ばむりやり暴いて、その結果、彼から随分と余裕を奪ったらしい事を、申し訳なく思う気持ちはある。嫌な過去を思い出させただろうかと心配する気持ちもある。けれど胸の中を圧倒的に占める感情は、多分、愛しさだった。
「すき……」
 キスの合間にほろりと気持ちを零せば、ハッとしたように唇が離れていく。少し残念だったけれど、もっととねだって良さそうな雰囲気ではない。むしろ一瞬、どことなく気まずい沈黙が流れた。
「取り敢えず、風呂に浸かって体を温めるか。このままだと本気でお互い風邪をひく」
 沈黙を振り払うように告げられた言葉に頷いて、促されるまま移動し、たっぷりの温かな湯に身を沈めた。
 浴槽はそこそこ大きく、二人同時に入ってもまったく窮屈さはない。広さがあるから、長辺に沿って向かい合う形で座ると、その距離が突き放されているような気もして少しだけ寂しい。
「そんな顔をするなよ」
 寂しさが顔に出てしまったのか、苦笑された。
「俺も流石に、この状況には戸惑ってる。プレイでもなく肌を晒すのも、誰かと風呂に入るのも、始めてなんだよ」
「風呂場でのプレイとかも、することあるの? もし俺が、風呂場エッチに興奮する性癖持ちだったら、してくれてた?」
「昔、俺がある人の所有物だった時は、しろって言われた事はなんだってやったよ。でもお前との関係は全く別だから。お前にこの体を見せるつもりは一切なかったし、だから風呂場プレイなんてのは最初から欠片も候補に入ってない」
「なら、体を見ちゃった後の、今は?」
「なんだ、されたいのか?」
 にやりと笑ったよく知った顔に、酷くホッとしながら肯定を返す。風呂場でのプレイに興味があると言うよりも、裸の彼に触れてもらえるならなんだっていい、みたいな気分だった。
「じゃあこっちおいで」
 呼ばれていそいそと近づけば、嬉しそうな顔しちゃってと、からかい混じりに指摘されてさすがに恥ずかしい。けれど既に開き直っている部分は、嬉しいのなんて当然だろと憤ってもいた。でも、好きなんだから嬉しいのは当たり前、とは口に出来なかった。言ったらきっとまた、戸惑わせるか困らせるかして、一瞬拭いようもなく気まずくなってしまう。
「さっきあんなにいっぱい気持ちよくイッたのに、自分からもっとしたがるなんて随分といやらしい子に、どんなことをしてあげようか?」
 伸ばされた彼の腿の上に足を開いて乗り上げる形で向かい合い、何をされたいかを問われた。問われたところで、どんなことが出来るのかわからない。
 今まで見てきたアダルトな動画の中、風呂場のシーンってどんなことをしてたっけ? なんて思考を巡らせていたら、ススッと顔が寄せられて、耳元にとろりとしたイヤラシイ声が吹き込まれた。
「ご褒美と、おしおき、お前が今欲しいのは、どっち?」
「んぁあっっ」
 声だけでもたまらないのに、オマケとばかりに耳朶を食まれて、ゾクゾクとした快感に身を震わせる。
「ああ、お前の可愛い声が響くのは、悪くないな」
 そう言って、こちらの返事など待つことなく、そのまま耳を舐られ肌の上を手が這った。
「ぁ、ぁっ、ぁあっ」
「ほら、早く決めないと、俺が勝手に決めちまうぞ?」
 意地悪なのに、でもホッとするし嬉しい。逃げ出しても、傷を暴いても、以前と変わらぬプレイをしてくれるなら、もうそれで良いのかも知れない。
 そう思ったら、逃げて傷を暴いた罰を、受け取らなければという気になった。
「おしおき、が、いい」
「何をした罰か、自分で言えるか?」
「あなたから逃げて、あなたの傷を暴いた」
「そうだな。それにさっき、何でもするから、服を脱いでとお願いした」
「はい」
 こうして一緒に風呂に入ってくれているのだから、もちろんその言葉通り、なんだってするつもりでいた。でもそれを言ったときも眉を寄せていたし、自分の首を絞めると注意もされた。そう言えばこのバイトに誘われた最初、バカ丸出しで何されてもいいと言えるなら、月一回抱かれるだけで八万入手も可能だけれど、それはそんなことを軽々しく言うなと言う警告だとも言っていた。
 軽々しく言ったつもりはないけれど、それでもやはり、これは口にしてはいけない言葉だったのかもしれない。
「何でもする、なんて言葉を自分から差し出す危険を、少しだけその体に刻んでも?」
 それは痕が残るような何かをするという事だろうか。彼が残してくれるものなら、むしろ嬉しい気がするのだけれど、はたしてそれは罰になるのだろうか。
 そう思いながらもハイと言って頷けば、肩に強い痛みが走った。

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目隠ししようか

気がつけばお前のことばかり考えてるの続きです。

 さすがにそのままはいどうぞという気にはなれず、シャワーを借りる事にしたら、なぜか一緒に入ることになった。
 体を洗ってやるついでに触って終わりにするというから、ベッドの上であれこれされるよりはマシな気がしてOKした。体を洗ってもらうという理由があったほうが、気分的に受け入れやすいような気がしたからだ。
 もちろん、一人で風呂に入れる年齢になってからは、他人に体を洗われたことはない。
 まずは背中から、たっぷりとボディソープを含ませ泡立てたボディタオルでゴシゴシと擦られるのは、単純に気持ちが良かった。肩から腕にかけてや腿から脛へかけてもも同様に気持ちが良かったが、胸や腹はさすがに擽ったくて笑いを堪えるのが大変だ。手の平や指は全然平気だったが、足の裏や足の指となってくると、もう笑いがこらえられない。
「ちょっ、くすぐってぇ! やめっ、ぅアハっ、あははっおいっっ!」
「もうちょっと」
 風呂椅子に腰掛けた自分の斜め前脇にしゃがみこんだ相手は、片足首をがっちり掴んで持ち上げていて、泡立つタオルをくるくると足裏にすべらせる。
「よーせーって、うはぁっ、……こ、んの、しまいにゃ蹴んぞ」
 風呂の縁にすがりつく格好で締りがないにも程があるが、言いながら掴まれた足をバタバタと振れば、さすがに諦めた様子で手を離された。しかしすぐにもう片足を掴まれる。
「じゃ、反対側」
「えー、もう、足はいいだろ」
「やだよ。めっちゃ楽しい」
 最初で最後なんだからそこは譲れないなと言われれば、今度はこちらが諦めるしかない。ため息を吐いて足を差し出し、さっさと終えろと言ってはみたが、無駄なことは相手を見ればわかる。結局また散々笑わせられる結果になった。
 しかも最後の方はタオルを放り出し、手の平でスルスルと擦られた。ここからが『触る』のメインだなどと言われて、足の指の間に手の指を突っ込んで前後に擦られた日には、笑いとは違った妙な声がこぼれ出た。
「うあッ、…ッん」
「感じた?」
「何言って、ああっ、あっ、っちょっダメ」
 くすぐったさの中に、ぞわりと背筋を這い登るしびれのようなものが混じって、変な声が押さえられない。混乱している間に反対の足も同じように指の間を擦られ、ダメともやめろとも言えなくなって、あッあッと漏れる声だけが風呂場に響く。
「めっちゃチンポ勃ってる」
 ようやく足裏攻撃から開放されると同時に、含み笑いで指摘されたが、言われるまでもなくわかっている。足の裏やら指の間やらを洗われて、こんな状態になるとは正直思っていなかった。
「触っていい?」
 少し上ずった声に相手の興奮を感じて、ゴクリとつばを飲み込んだ。
「い、いーよ」
「目隠し、する?」
「へ? なんで?」
「見えなかったら、女にされてる想像もしやすくね? 俺、しゃべんねーようにするし」
 手のデカさとゴツさは仕方ないにしても、男にされてるとこ見るよりマシじゃないかと提案されたけれど、じゃあ目隠ししようとは思えなかった。
「あー……てか別にいーって。お前に触られる覚悟でここ居るんだし」
「マジか」
「成り行きでいいよって言ったとでも?」
「違うのかよ」
「いや、半分は当たってるけど。でもここまでさせて今更なしも言わねぇって。いいよ。触れよ」
「いや、でも、見られる俺も恥ずかしいっつーか……」
「結局そっちかよ。俺だって握られて擦られたら興奮した恥ずかしい顔晒すんだから、お互い様だろ」
「握られて興奮すんのと、男のナニ握って興奮してんのは違うだろ。つか俺やっぱキモいな」
 眉尻を下げてゴメンと情けない顔を晒すので、仕方ないなと相手の股間に手を伸ばす。互いに裸なので、相手の性器も興奮を示して勃ち上がっていることはわかっていた。
「ったくしょーがねーから俺もお前の握ってしごいてやるわ」
「っえ、っちょっ」
「お互い、握られて興奮してる。ってことでいーだろ」
 ほら早くお前もと急き立てつつ、握った手を軽く上下に動かしてやれば、負けじと伸びてきた手が性器を包む。
 後はもう、衝動のままに手を動かした。
「あっ、ああっ、きもちぃっ」
 さっき笑いながらアンアンしてしまったせいか、握られ擦られ喘ぐことにもあまり抵抗がない。それに比べて、相手はやはり声を上げることに抵抗があるのか、必死でこぼれる息を噛んでいる。
「おまぇ、は? きもちーの?」
 見てわかんだろと言いたげな視線を躱してしつこく繰り返していたら、ぐっと相手の顔が近づいて口を塞がれた。
 触っていいとは言ったがキスしていいとは言ってない。
 なんて野暮なことを言うつもりはなく、自ら舌を差し出した。

続きました→

レイへの3つの恋のお題:気がつけばお前のことばかり考えてる/目隠ししようか/ずっと忘れない

 
 
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サーカス6話 クスリの排泄

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 コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「入ってこい」
 机の上の写真を握りつぶしたビリーは、それをゴミ箱に放りこんでから入室の許可を与えた。
 ゆっくりと扉を押し開いたのは、セージではなくガイ自身だった。
 前と変わらない、何か強い意思を秘める瞳。だから同じように、ビリーもガイを前と変わらぬ冷たい視線で射抜く。
「ここに帰って来るということが、どういうことか。分かってるんだろうな?」
 その視線をしっかりと受け止めながら、ガイは黙って頷いた。
「服をすべて脱いで、こっちへ来い」
 一瞬のためらいさえ許さない口調に、ガイはおとなしく服に手をかけていくが、その様子を見ていたセージは驚きに目を見張った。
「ビリー……?」
「セージ、席を外してくれ」
「でもビリー、ガイは戻ってきたばかりでまだ身体に傷が残ってる状態なんだよ。もし、これ以上ガイを傷つけるようなことをするつもりなら、僕はガイを自分の部屋へ連れていく」
「今のお前に、そんなことをする権利はないだろう?」
「なくても、放っておけない」
 セージは服を脱いでいくガイの腕をとってその行為をやめさせる。けれどガイは、セージを見上げながらゆっくりと首を横に振る。
「ええねん。こうなることはわかっとったし。それでも、ここに、帰って来たんやから」
 だから平気やと、ガイはほんの少しだけ微笑んでみせた。それを見たビリーは、わずかに眉を寄せる。ガイの笑顔など、初めてだったからだ。
「セージ……おおきに。また、会えるとええな」
「会えるよ。会いに、来るから」
 目尻に涙をためたセージは優しく微笑んで、ガイの額に小さなキスを一つ落とした。擽ったそうに身を竦ませたガイは、それでも一瞬、瞳の中に嬉しさを滲ませる。
 ビリーはその一瞬を見逃したりはしなかった。
「セージ」
 呼んだ名前は、やはり咎めるような響きだった。
「出ていくよ。でも、本当に……」
 何かを言いかけて、けれど。
「君を、信じてるよ。ビリー」
 ビリーにも同じように優しい笑みを向けて、セージは部屋を出て行った。
「チッ」
 扉の閉まる音にまぎれてビリーがもらした舌打ちは、ガイの耳には届かなかった。
 
 
 口内に放たれたものをむせることなく飲み下したガイは、ホッとして肩の力を抜いた。
「イイコだ、ガイ」
 その言葉に驚いて、ガイは顔をあげる。ビリーがそんな風に言葉の上だけでもガイを褒めたのは初めてだった。
 一瞬見せた期待に応えてやったほうが良いのか、ビリーも瞬時に考える。けれど結局、そんなのは自分に似合わないだろうと結論付けた。
 セージのように優しく微笑んでなんてやれない。
「ずいぶん上手くなったもんだ」
 作りやすいのは、蔑むような表情。ガイの瞳の中、明らかに落胆の色が見て取れる。
「他にも色々教わってきたんだろう?」
 先ほどセージに見せた微笑が脳裏に過ぎったが、意識的に掻き消した。
「ココで、相手を喜ばす術も、仕込まれて来たのか?」
 ビリーはガイを引き寄せると、言いながらその場所へと指を這わす。
 ガイの身体がピクリと震えた。仕込むという言葉が当てはまるほど、丁寧に扱われてはいなかっただろう。ビリーが確かめたいのは、むしろ傷の具合だった。
「言え」
 震える唇から言葉は生めず、ガイは辛うじて首を縦に振る。
「なら、次はココで楽しませて貰おうか?」
「ぅっ……」
 指先を潜り込ませれば、息を詰めて身体を強張らせる。
「力は抜いておけ」
 一応そう声を掛けながらも、緊張したままのガイに構わず、ゆっくりと奥を探っていく。指に触れる違和感に、すぐにビリーは眉を寄せた。
「……んっ、ふぅ……」
 小刻みに震えるガイの体と、こぼれ出す熱い吐息に、確信を持つ。
 ビリーはガイの体の中を探っていた指を引き抜くと、ガイの腕を掴んで立ちあがった。うるんだ瞳から、今にも溢れてしまいそうな涙は見なかったことにして、顔を背けたビリーはそのまま引きずるようにガイを部屋の隅に造られたシャワールームへと引っ張って行く。
「この、バカが……」
 焦りが滲み出た強い口調に、ガイの身体が怯えて竦む。
 バカなのは俺か……
 そんな自嘲めいた思いを抱えながら、ビリーは狭いシャワールームにガイを押し込んだ。戸惑うガイを放置したまま、フックに掛かったシャワーを手に取ると、ヘッドを外してからお湯の温度と流出量を調節する。
「壁に手をつけて、ケツをこっちに向けるんだ」
「何、する気やの……」
 震える声にようやくガイの顔をまっすぐに見つめれば、そこにあったのはいつも見せる強気の瞳ではなかった。本気で、怯えていた。
「入れられた薬を洗い流すに決まってんだろ」
「い、嫌や!」
「そのままにしてたら、気が狂うぞ?」
 子供相手に使うような物ではない媚薬。それがたっぷりとガイの腸内に注がれていた。
 館ではこんなことまでが日常なのだろうかと一瞬考え、さすがにそれは否定する。ただ、この酷く扱いにくい子供を今後も調教していかなければならないビリーに対する心遣いだというのなら、余計なお世話もいい所だ。
「それでも、ええ」
「お前が良くても、俺が困るんだ」
「お願いや……中、洗うんは、堪忍して……」
 すっと視線を逸らせたガイから、細く吐き出されてくる声は、やはり震えている。『お願い』などという言葉をガイの口から聞く日がくるとは思わなかった。
 目の前で震える小さな身体を、優しく抱きしめてやりたい衝動がビリーを襲う。そう出来ない代わりに、ビリーは努めて柔らかな口調で尋ねた。
「残念だが、わかった……と言ってやれる状況じゃない。しかし、何がそんなに嫌なんだ?」
 館に居る間、経験した相手の数だけ、身体の中を洗うという行為も繰り返されていたはずだ。毎回この調子で嫌がっていたとは思えないし、そんなことは許されないだろう。
 ガイはキュッと唇を噛んで、答える事を拒んでいる。
「言えないならそれでもいいが、とにかく薬を洗い流すから背中を向けろ」
 フルフルと首を横に振るガイに、ビリーは溜め息を一つ吐き出した。
 やはり、力尽くでやるしかないのか。諦めて伸ばした手を、ガイの手が力なく払う。当然、そんなものはたいした障害にはならなかった。
 入り口にビリーが立ち塞がっている状況のシャワールームに逃げ場などない。ビリーは無言のままガイの身体を捕らえると、後ろを向かせて腰を抱えあげる。
 チョロチョロと流しっぱなしになっていたシャワーホースを掴んで、その先を入り口へと押し当てた。
「やっ! 嫌や!!」
 逃れようと暴れる身体を、ビリーは強い力で押さえつける。ガイの嫌がる声だけが大きく響く中、ビリーは頃合いを見計らって、一度目の排泄を促した。ビリーの服の裾を強く握り締めて、ガイは必死で頭を振る。
「何我慢してるんだ。いいから出せ」
「やぁ……ぁぁ……」
 トロリとした薄紅色の薬と湯が混ざり合って流れ出し、排水溝へと吸い込まれていく。ぐったりと力の抜けた身体がズルズルと崩れて行くのを、ビリーは慌てて支えてやった。
「しっかりしろ。まだ終わっちゃいないんだぞ」
「も、堪忍や……」
 こぼれる涙を隠すように、ガイは腕を上げて目元を隠す。
 ビリーは腕の中の身体を抱えなおすと、確認するようにガイの中へと指を埋めた。先ほどの排泄で緩んだ入り口は、こぼれ出た薬の滑りもあって、やすやすとビリーの指を受け入れる。
「あっ、あっ、なにを……?」
 ガイの身体が大きく弾む。
「湯で洗われるのが嫌なら、指で掻き出してやる」
「そんなん、あっ、ああん」
 溢れてしまう嬌声に、ガイの顔が羞恥で赤く染まった。
「感じるのは薬のせいで、おかしな事じゃない。イきたければイってもいい」
 幼い身体でありながらも、明らかに快楽を示し始めたガイに、ビリーはそう声を掛ける。しかしやはり、ガイは困ったように首をふるだけだった。
 それでもだんだんと、先ほどのように、ただ嫌がってもがくのとは少し違った反応に変わって行く。
「どうした?」
 あふれ出る嬌声すら枯れて、苦しそうに短く息を吐き出し始めたガイの顔を覗きこんだビリーは、その泣き顔に思わず息を飲んだ。顔中を涙で濡らしたガイは、どうやら自分の中に湧きあがる快楽の波を持て余しているらしい。
 他人のモノを口に含んでイかせることも覚えたくせに、自分の精を吐き出す術をまだ知らないのだ。気付いて苦笑を洩らしたビリーは、ガイの幼い性器へもう片方の空いた指先を伸ばした。
「……ぃ」
 力の入らない身体を捻って、それでも逃げようとするガイの零した呟きは『怖い』。
「大丈夫だ。心配するな」
 言いながら、涙の滲む目元へ、頬へ、優しく唇を押し当てる。そうしながら、手の中のモノをイかせる目的でゆっくりと扱いていく。
「あっ、ああっ……」
 ビクビクと身体を震わせてガイは意識を手放してしまったが、その手を汚すモノはない。
 そこまで子供だったのだと思い知らされるようで、胸の中に広がる罪悪感。それを振り払うように、ガイの身体を軽く洗ってやったビリーは、柔らかなタオルにその身体を包んで抱き上げた。

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