リバップル/処女を奪った友人が童貞も貰ってくれるらしい

 その男と出会い、親交が深まるにつれ、友人として好ましいという感情は当然のように湧いた。恋愛的な意味で好きなんだと告げられた時、気持ちが悪いとかフザケルナと言って拒絶することが出来ず、それどころかひとまず距離を置くという道すら選べなかった程度に、その好意は育っていた。
 そんな態度だったから、無理だとか気持ちには応じられないと口にしたところで、やはり期待はさせていたと思う。生殺しだと苦笑されてさえ、のらりくらりと今までと変わらぬ友人関係を続けようとした結果、切羽詰まった相手に押し倒されたのも、今となっては自業自得だったと言わざるをえない。
 せめて抱く側ならと消極的にOKを出したものの、女性相手ですら経験がなかった自分に、男を抱くという行為の難易度は高すぎた。はじめは抱かれる側でもいいからとまで切羽詰まっていた相手は、次回持ち越しも時間を置いての再チャレンジも許してくれず、結果的に自分が抱かれる側になってしまった。
 思いの外気持ちが良かったため、それ以降も結局抱かれるばかり回数を重ねているが、男としてこの状態を良しとしてはいなかった。というか童貞なのに非処女という現状がなんとも居たたまれない。
 自分にも抱かせろと言ったこともあるが、のらりくらりと躱されて、押し倒されて、気持よくさせられて有耶無耶になった事が何度かあって、不信感を持ち始めたというのもある。もともと相手の気持ちが「抱きたいという意味合いが強い恋愛的な好き」だったというのもあって、切羽詰まって一度は抱かれることを了承したものの、抱く側でいいなら抱かれたくはないという事なんだろう。
 まったくもってフェアじゃない。けれどそれを詰って友人関係ごと終える気になるかというと、そういう気持ちには一切ならないのだからどうしようもなかった。
 だとしたら自分の取る道は、彼ではない別の誰かで童貞を捨てるほかない。しかし風俗には抵抗感が強すぎるし、恋人を作れるスキルがあるならそもそも童貞ではなかっただろう。という所で手詰まりだった。
 彼との行為を含んだ関係はなし崩し的に受け入れているものの、それでも、童貞なのに非処女かつ男に抱かれて善がっている自分に対する絶望感は日々押し寄せる。だから、最近何か悩んでる? と聞かれた時に思わず、恋人がほしい。童貞を捨てたい。と口走ってしまったのも仕方がないだろう。
「童貞捨てたいはともかく、恋人なら俺が居るじゃん?」
「何言ってんだ。お前は恋人じゃないだろ」
「えっ?」
「えっ?」
 本気で驚かれ、こちらも驚いた。
「セックスする仲なのに恋人じゃないとか言うわけ?」
「は? セックス出来ないまま友達で居るのが辛いって泣いたの誰だよ」
「え、っえええぇぇ……?」
「何?」
「えーちょっと待って。てことはお前、俺と友達で居るために俺とセックスしたっての?」
「そうだよ。だってそうしないと俺とはもう付き合えないって言われたら、そうするしかないだろ」
「俺、恋愛的な意味でお前好きって言ったよね?」
「だからその気持ちには応えられないって、俺もそう言っただろ」
「えー……」
 いたく不満気で納得の行かない顔をされたが、そんなのこちらだって同じだ。結果的に相手の要望はほぼ受け入れた形になっているのに、なぜそんな顔をされなければならないのだ。
「じゃあ俺とこんなことしときながら、別に恋人作ろうって思ってるってこと?」
「そううまく行かないのわかってるから悩んでんだろ!」
「てかなんで俺が恋人じゃダメなわけ?」
「なんでって……」
「セックス出来るほど友人としての俺に執着してるくせに、なんで恋人にはなれねーのよ」
「そんなの……だって、お前とはずっと友人で居たいと思ってて……」
「友人兼恋人だっていーじゃんよ」
「いやでもだって、そんな、恋愛絡めてお前と揉めるのとかヤダよ」
 友人としてなら上手く行っても、恋人として上手く行くとは限らないじゃないか。そう言ったら、酷く悲しげな顔で見つめられてたじろいだ。
「約束する。もし恋人として上手く行かないと思ったら、そんときゃ友人に戻っていい。だから取り敢えずのお試しでいいから、俺の、恋人になって?」
「でもそしたら俺、お前と恋人の間はずっと童貞のままって事になるだろ。嫌だよ。今だって、こんなに居たたまれないってのに」
「気持ちよさそうにしてんじゃん」
「気持よいのと童貞なのにって思っちゃう気持ちは別なの!」
「じゃあ俺が抱かれてお前が童貞捨てれたら、ちゃんと恋人になってくれる?」
「お前、俺に抱かれる気ないだろ。それにまたどうせ出来ないかもだし」
「俺で童貞捨てたら俺の恋人になってくれるって約束してくれんなら話は別」
 恋人になってよと言いながら見つめてくる顔は、切羽詰まって押し倒してきた時とどこか似ている。卑怯だと思うのに、選べる答えは「約束する」以外なかった。
「約束な」
 嬉しそうに笑う顔に仕方ないなと思う反面、なぜこんなにも彼との友人関係に固執してしまうのかわからず、胸の中がもやもやとして気持ちが悪くなった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

(攻)俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕 の攻側の話を同じお題で。

 突き上げるたびに、あっ、あっ、と溢れる吐息は甘く響いて、相変わらず随分と気持ちが良さそうだと思う。見た目や口調や振る舞いからは、真面目で堅物というイメージを抱きがちな先輩が、こんな風に男の下で蕩ける姿を、いったい何人の男が知っているんだろう?
 現在付き合っている恋人は居ないと聞いている。けれどこうして、恋人でもない自分を誘って抱かれているのだから、他にも気軽に誘って楽しむ相手がいるかもしれない。
 自分は先輩が初めての相手で、いまだ先輩以外を知らないのに。
「男ダメじゃないなら、俺で卒業してみる?」
 そう言って笑った時、先輩はかなり機嫌よく酔っていた。多分半分以上、童貞であることを揶揄われただけなんだろう。
 少しムキになった自覚はある。
 話の流れで、童貞捨てたいんすよねーなんて言ってしまったのは、先輩も童貞仲間なんだろうと勝手に思い込んでいたせいだ。真面目な先輩からは、今カノどころか元カノ関連の話が出たこともなかったから、交際未経験なんだと思っていた。
 対象が男なら今カノも元カノも話題に上らないのは仕方がないし、隠しておきたい気持ちもわかる。自分だって、男の先輩相手に童貞を捨てた事を、友人たちには隠している。
 こんな関係になった後も、一度たりとも抱かせろと言われたことはないし、童貞かどうかは結局聞けないままだけれど、あの時点で少なくとも処女ではなかった。まさかこんなエロい体をしてるなんて思っても見なかった。
「ふっ、……アァッ、そこっ……」
「センパイここ、強くされるの好きですよね」
「ん、イイ、そこっ、…ぁあ、あっ、も、……っ」
 どこが気持ちいいのか、どうすると気持ちいいのか、言葉にしてわかりやすく教えられたせいで、どこをどうすれば先輩が気持ちよくなれるのかは知っている。回数を重ねるごとに先輩はあまりあれこれ言わなくなったけれど、今はもう、先輩が漏らす吐息や短い言葉からその気持ち良さがわかるようになってしまった。
 自分なりにネットで調べてあれこれ試すこともしているが、先輩は楽しげに、俺の体で色々ためしやがってと笑う程度で、それを咎めることはしない。気持ち良ければなんでもいい。みたいなスタンスは、ありがたいようでなんだか寂しくもあった。
 自分ばかりがどんどんこの関係にのめり込んでいくのが目に見えるようで、なるべく行為に及ぶ間隔はあけるようにしているけれど、このイヤラシイ体の持ち主がその間どうしているのかを考えるのも辛い。いつ、恋人できたからこの関係はもうおしまい、と言われるかもわからないのに、恋人になってくださいなんて言って、逆に面倒だと切らえるのも怖い。
 俺のこと、どう思ってるんですか?
 聞きたいのに聞けないまま、都合の良いセフレを演じている。そんな関係への不満は少しずつたまっていた。
「そろそろイきそう?」
 良い場所をグイグイと擦れば、切羽詰まって息を乱しながらも必死に頷いている。
「ん、んっ、イ、きそ……あ、ぁぁ」
 先輩が昇りつめるのに合わせて、衝動的にその胸元に齧りついてやった。
「ぅああ、ちょっ、なに……?」
「所有印?」
「は、……なに、言って、あ、あぁっ」
 咎められそうな雰囲気を笑顔で封じながら、こちらはまだ達してないので、イッたばかりで敏感になっているその場所を、更に強めに擦りあげる。
 見下ろす先輩の胸元には赤い印がしっかりと刻まれていて、それを見ながら自分自身が昇りつめるのはいつも以上に心身ともに気持ちがよく、けれど果てた後はさすがに気まずかった。いくらなんでも痕なんて残したら怒られるに決っている。
 しかし、くったりと横たわる先輩は胸元にはっきと残っている痕に気づいていないのか、何も言わない。いつも通り、満足気な顔でうとうとと眠りかけている。
「寝ます?」
 これまたいつも通りそっと頭を撫でてやれば、ふふっと幸せそうに口元をゆるめながら、「うん」と短い応えが返った。
「鍵は新聞受けな」
「はい」
 こちらの返事にもう一度小さく頷いて、先輩はすっかり眠る体勢だ。
 あーこれ絶対痕が残っていることに気づいていない。それとも、わかっていて不問なのか?
 そうは思ったが、起こして問いただすなんて出来るはずもなく、文句を言われるにしてもこれは次回に持ち越しだ。
 衝動で付けてしまったその印を軽く指先でなぞってから、グッと拳を握りこむ。こんな目立つ場所に痕を残したことを申し訳ないと思う気持ちはあるが、後悔はあまりなかった。
 問われて咄嗟に所有印と言ったあれは本心だ。もし他の誰かにも抱かれているとしたら、その相手にこの人は俺のだと主張したいのだ。
 先輩とのこの時間を惜しむ気持ちは大きくて、終わりという言葉は怖いけれど、そろそろこの関係をはっきりさせる時期に来ているのかもしれない。先輩の穏やかな寝息を聞きながら、次回スルーで不問にしろ、咎められるにしろ、あなたが好きだと言ってみようと思った。

レイへの3つの恋のお題:俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕
http://shindanmaker.com/125562

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

 鏡の前に立ち、ため息を一つ。Tシャツの襟首ギリギリのところに、小さいとはいえない鬱血痕が残されている。
 つけられた時のチリリとした痛みを思い出して、眉間に力が入るのがわかった。所有印だなんて言って笑った相手の顔まで、一緒に思い出されてしまったからだ。
 面白半分で、付けてみたいという欲求だけで、試してみただけのくせに。
「なにが所有印だ、バカ」
 小さく毒づいてみるものの、もちろんそれを聞かせたい相手はとっくに帰宅済みで、虚しさだけが大きくなる。恋人でもない相手に、こんな痕をやすやす残させた自分が、相手以上にバカなのだ。
 友人とすら呼べるか疑問の自分たちの関係は、広義で大学の先輩と後輩だ。相手は、自分がたまたま教授の頼まれごとで大きな荷物を移動させていた時に、やはりたまたま通りがかってしまっただけの新入生で、本来なら先輩後輩としての付き合いすら生まれることのなかった相手だ。
 入学早々巻き添えを食らって肉体労働をさせられてしまった彼に、申し訳無さから学食をおごると言ったのは確かに自分だ。しかし、それで手伝いはチャラになるはずだった。まさかそのまま懐かれて、学年もサークルもバイト先もなにもかも違ってほぼ接点のない相手と、互いの部屋を行き来するほどの仲になるとは思っていなかった。
 少しお調子者でいつも笑顔を絶やさない彼は、自分なんかと付き合わなくても、友人も頼れる先輩も大勢いるはずなのに。なんとなく居心地がいいから、というなんとも曖昧な理由で、気が向くと声をかけてくる。
 あの日、なんであんな話になったのかはもう思い出せないが、自分は間違いなく酔っていた。仲の良さそうな女友達もたくさんいるくせに、実は童貞で、捨てたいけどなかなか機会もなくてなどと言い出した相手を、好奇心と揶揄い半分に誘ってしまった。酔ってはいたが、もしドン引きされて最悪この関係が切れたとしても、彼との接点がなくなって困ることはないという判断はあったと思う。
 自分の性対象が同性である事にはもう随分と前に気づいていたが、そういった人が出入りする場所や出会い系などを試す勇気はなく、同性とどうこうなる機会を持つことはなかった。つまり、自分にとってもチャンスだった。
 結果彼はその提案にのり、なんだかんだセックス込みの関係が続いている。好奇心旺盛にあれこれ試されて、こちらも充分楽しい思いをしているが、しかし真夏にがっつりキスマークなどを残されれば、さすがに溜息だって出る。
 現在恋人はいない。とは言ってあるが、実は自分もまったくの初めてだったとは言っていない。相手にしてみれば、経験豊富なお姉さんに手ほどきされて童貞喪失。というありがちな設定の、お姉さんがお兄さんになった程度の感覚なんだろう。
 性対象が同性で、しかも抱かれたい欲求に気づいてから、オナニーでは後ろの穴も使っていたから、初めてらしからぬ慣れた様子を見せたはずだ。本当はこちらもそれなりにいっぱいいっぱいだったけれど、年上としての矜持やら誘った側の責任やらもあって、余裕ぶって見せてしまった自覚はあった。
 鏡を見つつ、そっと鬱血痕に指先を這わせてみる。大きな痣のようにも見えるそれは、押した所で痛みなどはない。痛くもないのに気になってたまらないのは、襟首ギリギリで人に気付かれるかもという不安ではなく、やはり「所有印」という単語のせいだ。
 もちろん彼からの好意は感じているし、自分だって彼のことは好きだ。しかしその好意が恋愛感情かと言われると、途端に自信がなくなる。彼の気持ちもだけれど、自分の気持に対しても。やはりこの関係は、気軽な性欲発散の相手で、つまりはセフレなのだと思う。
 どんなつもりでそれを口にしたのか。彼は一体自分をどう思っているのか。多少なりとも所有したいという欲求からの言葉なのか。
 確かめてみたい気持ちもないわけではないけれど、きっと確かめることはないんだろう。

後輩側の話を読む→

レイへの3つの恋のお題:俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕
http://shindanmaker.com/125562

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁