ベッドの上でファーストキス1

 風呂から上がって自室に戻れば、ベッドがこんもり盛り上がっていた。もちろん、風呂へ入るために部屋を出る前のベッドに、そんな盛り上がりはなかった。
 無言でベッドに近づき足を持ち上げ、その盛り上がりを足の裏でグイグイ蹴り押す。
「ちょっ、やめろって」
「それはこっちのセリフだ」
 なおもグイグイ押していたら、ようやく盛り上がりが動く気配がして足を下ろした。けれど起き上がるのかと思ったら、その盛り上がりはくるりと寝返りを打っただけだった。
「起きろよ」
「やだ。ここで寝る。寒い」
 確かに今夜は相当冷え込んでいるけれど、そんな理由で弟のベッドに我が物顔で入り込むのはホントどうかと思う。
 こちらが嫌がるからか頻度は減ってきたけれど、隙を見ては潜り込まれていた。それでも、こうして最初から一緒に寝ようという態度で来ることは珍しい。いつもは夜中に目覚めてしまい、寒さで二度寝が出来ない時にやってくる。
「狭くなるから嫌だって言ってんだろ」
「俺の部屋のベッド使っていいって言ってんじゃん。でも俺が寝入った後でな」
「なんで自分のベッド追い出されて、兄貴のベッド使わなきゃなんねーんだよ。しかもアンタ、俺が移動した先に、更に俺追っかけて移動してくる可能性高いだろ」
「だって寒いと目が冷めちゃうんだもん。てかいい加減諦めて、寒い日の夜は俺のための人間カイロに徹しなよ」
 冷え性な兄を持った弟の使命だよ。なんて、随分と勝手なことを言っている。
「たった一年先に生まれただけで横暴すぎ。冷え性どうにかしたいなら筋肉つけろ。筋肉を」
「そりゃ運動部のお前より筋肉ないのは認めるけど、吹奏楽部だってそれなりに筋トレしてますぅ。母さんも冷え性だし、これ絶対遺伝だって」
 背だってなかなか伸びないしと口を尖らせる兄は、確かに母の遺伝子が強いのだと思う。対するこちらは父の血が濃いのは明白だった。
 父の血が濃いせいで、好みまで父に似たのだったら最悪だなと思う。母によく似た兄相手にこんなにもドキドキする理由が、父親からの好みの遺伝という可能性はどれくらいあるんだろう。そして母の血が濃い兄も、母の好みに似て父に似た自分を好きだと思う可能性はあるだろうか?
 兄弟で、男同士で、考えるような事じゃない。考えていいことじゃない。
 それでも体は正直だった。考えないようにしてたって、暖を求めてひっついてくる兄相手に問答無用で股間が反応してしまう。バレるわけに行かないから、意識がある時は絶対に背中を向けて寝るけれど、気づかれるのも時間の問題じゃないかと思う。
 性欲なんてもののなかった子供の頃は良かった。冷たい手先や足先を自分の肌の温かな部分で包み込んで、兄がありがとうと笑うのも、ホッとした様子で眠りに落ちていくのを見守るのも、ただただ純粋に嬉しかった。
 今だって、寒くてぐっすり眠れないのは可哀想だと思うし、だから夜中知らぬうちに潜り込まれたものを蹴り出すほどの拒絶はしたことがないが、でもこのどうしようもない下衆な欲求に気づかれるくらいなら、もっと厳しい態度で拒否を示した方が良いのかもしれない。
「どーした? てか早く入ってきてくんないと、寒くて寝れないんだけど」
 こちらの気持ちを知る由もない兄に急かされ、大きなため息を一つ吐き出した。我ながら甘すぎる。兄に対しても、自分自身に対しても。
 想いにも欲望にも気づかれたくないし、気づかれるのが怖いのに、兄が昔と変わらずこうしてベッドに潜り込みこちらの熱を奪って眠るのが、嬉しいし愛おしい。迷惑そうな顔をして口先で嫌がったって、きっと本気で嫌がってないのは丸わかりなんだろう。だから平然とベッドへ潜り込むことを、本気で止めはしないのだ。

続きました→

有坂レイさんにオススメのキス題。シチュ:ベッドの上、表情:「真剣な顔」、ポイント:「ファーストキス」、「お互いに同意の上でのキス」です。
https://shindanmaker.com/19329

 
 
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雷が怖いので(目次)

「雷が怖いので」プレイリクエストについて

キャラ名はありません。全47話で、他の話に比べるとかなり長めです。
お金持ちなS ✕ 貧乏大学生(視点の主)。はっきりとした年齢差は出てませんが、8歳前後上のイメージで書いてました。
雷が怖い視点の主が、突然の雷雨に逃げ込んだ先で出会った男に、愛人契約という高額時給のバイトを持ちかけられて頷いてしまい、お金と引き換えにほんのりSM混じりの開発調教をされまくるうちに相手の男への恋心を自覚していく話。
攻めは親に売られて痛めつけたいタイプのサディストに所有されていた過去あり。人を好きと思う気持ちがわからないという相手に視点の主が諦めずに奮闘し、最後には「お前が好きだ」と言わせます。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
今回は性的な内容が含まれるものが多いので、性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

2017年3月6日追記。
最終話直後のオマケ話、全4話を追加しました。

1話 逃げ込んだガレージ
2話 雷が聞こえない部屋へ
3話 バイトはクビに
4話 愛人契約の提示
5話 時給千五百円
6話 お試しチャレンジ
7話 契約成立
8話 バイト初日
9話 キスだけで(R-18)
10話 やだって言ったのに(R-18)
11話 初日終了
12話 次回はお泊り
13話 豪華ホテルで誕生祝
14話 食事の前に(R-18)
15話 二日酔い
16話 昨夜の記憶(R-18)
17話 チェックアウト
18話 イヤラシイおねだり(R-18)
19話 抱いてもらえない理由(R-18)
20話 抱かれたい理由と恋の自覚
21話 アナルプラグを入れて向かう(R-18)
22話 ずっとこの日を待っていた(R-18)
23話 気持ちいいばかりの初めてだったのに(R-18)
24話 逃げ出す
25話 雷と彼に追われて
26話 ずぶ濡れの告白
27話 彼の肌に残る傷
28話 一緒にお風呂
29話 痛くて怖いだけのおしおき
30話 好きで居てもいい
31話 洗ってもらう
32話 突き返すバイト代
33話 少し変わったその後の関係(R-18)
34話 彼の過去
35話 大学生活最後の年末
36話 ただただ裸で寄り添って
37話 彼の目的
38話 気づいてしまった
39話 それでも受け入れてはくれない
40話 親から勘当されてきた
41話 彼のものになっていく
42話 心に言葉を刻むということ
43話 ポジティブシンキング
44話 彼を貰う(R-18)
45話 互いに互いだけのもの(R-18)
46話 最奥まで全部(R-18)
47話 いつか二人で挨拶に

直後1 ゆっくり抱かれ続ける(R-18)
直後2 嬉しくて泣きそう(R-18)
直後3 繰り返される好き(R-18)
直後4 目覚めた後もずっと幸せ(R-18)

本編隙間埋めプレイ(目次)

 
 
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初恋は今もまだ(目次)

キャラ名はありません。共通10話+親友4話+友人6話の全20話です。
社会人になっても時々飲み会をしてる高校時代の友人グループで、長いこと親友への恋心を抱えている視点の主と、やっと視点の主への恋心が芽生えた親友と、その親友が視点の主を試したことに怒った友人との三角関係っぽい話。
10話から先分岐して、親友と友人とそれぞれ別の恋人エンドを作りました。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
エロ描写は控えめで挿入はなしですが、それっぽいシーンが含まれるものにはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 親友の爆弾発言
2話 トイレへついてくる友人
3話 友人の提案
4話 恋人宣言
5話 手をつないだ帰り道
6話 デートに来たのは
7話 親友とカラオケ店へ
8話 親友からの告白
9話 友人に会いたい
10話 白紙に戻して

親友1 今の気持ち
親友2 キスしてみたい
親友3 親友姉登場
親友4 キスだけじゃ、足りない(R-18)

友人1 他人事にはさせない
友人2 友人はバイセクシャル
友人3 初恋の終わり
友人4 キスされたくない?
友人5 友人の部屋へ
友人6 触られてみた結果(R-18)

 
 
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エイプリルフールの攻防

 まだ寝ていた春休みの朝、チャイムを連打されて起こされた。渋々玄関の戸を開ければ、そこには思いもかけない人物が立っている。
「え、何? なんでお前?」
 そこに居たのは地元の知り合いだった。いや、知り合いというか犬猿の仲というか、あまり良好とは言い難い関係を長年続けてきた元同級生だ。
「寝ぼけてんのか? お前に愛を囁きに来たに決まってんだろ」
 にやりと笑ってみせるから、今日がエイプリルフールだったことを思い出す。
「まさか今年も来るとは思ってなかった」
 大学への進学を決めて、先日引っ越してきたばかりのこのアパートは、実家から片道三時間オーバーの場所にある。
「もはや恒例行事だ」
「というか住所良くわかったな」
「お前の親に聞いたら、笑いながら教えてくれたぞ」
 思わず何やってんだよ母ちゃんと呟いてしまったら、相手は楽しそうに笑いながら、離れても仲良くしてやってねって言ってたぞなんて言うから、親は自分たちの関係を大きく誤解しているらしいと知った。
 いや、毎年毎年、春の玄関先で告白ごっこをしている息子たちを見ていたら、そう誤解するのも仕方がない。
「お前、どんだけ俺好きなんだよ」
「始発で駆けつける程度には、愛してるよ」
 にやりと笑い返してやったら、ふわっと笑いつつも真剣な声のトーンで告げてくるから、ああくそダメだと内心では既に白旗を振った。嘘だってわかってても嬉しいとか頭沸いてる。
「照れんなよ。可愛いな」
 顔赤くなってんぞと指摘されて、言われなくてもわかってると思いつつ、相手の腕を掴んで取り敢えず家の中に引き込んだ。どう考えても玄関の戸を開けながらする会話じゃない。
「今年はやけに積極的じゃないか」
「引っ越してきたばっかだし、近所に見られたくない」
「ああ、まぁ、確かに。配慮不足で悪かった」
 素直に謝られて拍子抜けだ。どうやら親含む実家近辺では、エイプリルフール限定の遊びとして認識されている自覚が、こいつにもちゃんとあったらしい。
「つーかお前も、本当によくこう長いことこんなバカなこと続けるよな」
「お前に正面切って好きだといえるのはこの日だけだしな」
「でももういい加減俺も慣れきってるし、そうそうお前が楽しい反応もしてないんじゃないの?」
 言いながら、初めて好きだと言われた大昔へ思いを馳せる。あれはまだ小学生の頃で、多分たまたま出くわしただけだった。普段何かと衝突することが多かった相手に、いきなり好きだと言われて腰を抜かす勢いで驚いたら、こいつは爆笑してエイプリルフールだと言ったのだ。もちろんその後、自分たちの関係が悪化したのは言うまでもない。
 その後数年は何もなかったのに、中学三年の春にわざわざ自宅まで押しかけてきたこいつは、またしても好きだと言って驚かせてきた。過去にエイプリルフールと笑われた事なんて忘れていたから一瞬本気にした。中学に上がってからはそこまで険悪な仲ではなかったし、好きな女子にすら告白できない自分と違って、男相手に告白するという勇気を純粋に凄いと思って、好きな子いるからゴメンと誠意を持って丁寧にお断りしたのだ。なのにこいつはにやりと笑って、エイプリルフールと一言残して帰っていった。もちろんその後、自分たちの関係は悪化した。
 そして高校に入学してからは、毎年4月1日に実家を訪れ、お前が好きだと言うようになった。さすがにもう信じることもなく、嘘つきと追い返したり、はいはいお疲れ様ですと軽く流してみたりしたのだが、昨年、嘘だとわかっているのにトキメイてしまって慌てた。おかげで、高校三年次はひたすらこいつを避けて生活するはめになってしまった。
「お前の反応がおかしくて続けてるってより、待ってる、が正しいな」
「待ってるって何を?」
「お前が俺に好きだっていうのを」
「は?」
「こんだけ嘘の好きを並べ立ててるのに、お前は驚くか呆れるかで、自分も嘘をつき返そうとはしないんだよな」
「ああ、その発想はなかったわ」
 そうか。嘘ってことにして好きって言っていいのか……
「じゃあ、俺もお前のこと、好きだよ」
 口に出してみたら、思いのほか恥ずかしい。だって嘘だけど、嘘じゃないから。
「そうか。ならやっと、両想いだな」
 グッと腰に手が回ったかと思うと、ふふっと楽しげに笑った相手の顔が近づいて、軽く唇が塞がれる。
 すぐに離れていく顔を呆気にとられて見つめてしまったら、満足気な顔でにやりと笑う。胸の奥を鋭い何かで突かれるような痛みが走るくらい、それは酷く嫌な顔だった。
「バカすぎだろ。お前の反応、まだまだめちゃくちゃ楽しいぞ?」
「死ねっ!」
 閉じたばかりの玄関扉を開いて、グイグイと相手を押し出した。
 ガチャリと鍵を閉めて、閉じたドアに額を押し付ける。ぐっと歯を食いしばっていなければ、泣いてしまいそうだと思った。

続きました→

 
 
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墓には持ち込めなかった

 幼い頃から心のなかに隠し持っていた恋心を、生涯、相手に告げることはないと思っていた。墓にまで持ち込む気満々だった。ずっとただ想うだけで良いと思っていた。
 同じ年に生まれた自分たちは、幼稚園で出会ってからずっと長いこと親友で、だからこそ、彼の選ぶ相手が自分にはならないこともわかっている。彼が興味を惹かれ、好意を寄せる女の子たちに、気持ちが荒れたこともあるけれど、それももうだいぶ遠い昔の話だ。
 少しずつ大人になって、自由になるお金が増えて行動範囲が広がれば、だんだんと寂しさを埋める術だって色々と身に着けていく。
 その日は特定のバーで相手を見つけて、そのままホテルに向かうつもりで店を出た。店を出た所で、名前を呼ばれて顔を向ければ、そこには見るからに怒っている幼なじみが、こちらを睨んで立っていた。
 今夜のお相手となるはずだった相手は、あららと少し楽しげな声を発したけれど、この後始まる修羅場に巻き込まれるのはゴメンとばかりに、じゃあ頑張ってとあっさり回れ右して店に戻っていく。
 面白おかしく酒の肴にされるだろう事はわかりきっていたが、もちろん引き止めることはしなかった。代わりに幼なじみに向かって歩き出す。
「こんな場所で揉められない。付いて来て」
 隣を通り抜けるときにそう声をかければ、黙って後をついてくる。素直だ。
 一瞬、このまま本来の予定地だったホテルにでも入ってやろうかとも思ったけれど、そんな自分の首を絞めるような真似が出来るわけもなく、結局足は駅へと向かった。こんなことになってしまったら、今日の所は帰るしかない。
「待てよ」
 半歩ほど後ろをおとなしく付いて来ていたはずの相手が、唐突に声を上げただけでなく、手首を掴んで引き止めるから、仕方無く歩みを止めて振り向いた。
「何?」
「どこ、行く気だ」
「どこって、帰るんだよ」
「は? 家まで待てねぇよ」
「待つって何を?」
 まぁさすがにこれは、わかっていてすっとぼけて見せただけだ。でも頭に血が登りっぱなしらしい相手は、そんなことには気付かない。
「お前、俺に言うことあるだろっ」
「特にはないけど」
 しれっと言ってのければ傷ついた顔をする。そんな顔をするのはズルイなと思った。
「一緒にいた相手、お前の、何?」
「飲み屋で知り合って意気投合したから、河岸を変えて飲み直そうかーってだけの相手」
「本当に飲み直すだけなのかよ」
 疑問符なんてつかない強い口調に、これはもう知られているんだなと諦めのため息を吐いた。
「せっかく隠そうとしてるんだから騙されなよ」
「なんで俺を騙そうなんてすんだ」
「あのさ、幼馴染がゲイだった上に、夜の相手探してそういう場所に出入りしてるって知って、どうしたいの? 知らないほうが良いでしょそんなの」
 お前とは縁のない世界なんだからと苦笑したら、掴まれたままだった手首に鈍い痛みが走る。力を入れ過ぎだ。でも、相手は気づいてないようだったし、自分も痛いとは言わなかった。
「ああいう男が、お前の、好み?」
 抱ける程度の好意は持てる相手で、でも好みからはけっこう遠い。なんて教えるわけがない。寂しさを紛らわせてくれる相手には、雰囲気や言葉遣いが優しくて、でも目の前の男にはまったく似ていない男を選んでいた。
 だって別に、代わりを探していたわけじゃないから。本当にただ、一時的に慰めを欲していただけだから。
「そういう話、聞きたいもの?」
「俺はお前に、好きになった相手のこと、さんざん話して来ただろ」
「ああ、まぁ、そうだね。俺の相手は男ばっかりだから、聞かせたら悪いかと思ってた」
「悪くなんか、ない。知りたい」
「そっか、ありがとう」
「で、お前、あいつが好きなのか?」
「まぁ、抱こうとしてた程度には?」
 自分で知りたいといったくせに、言えばやっぱりショックを受けた顔をする。しかも目の中にぶわっと盛り上がった涙が、ぼろっと零れ落ちてくるから、焦ったなんてもんじゃない。
「えっ、ちょっ、なんでお前が泣くんだよ」
「だって、俺に、ちっとも似てない」
「は?」
「ここに来るまで、お前とあいつが出てくるの見るまで、男好きなら俺でいいじゃん。って思ってた。でも、わかった。俺じゃダメだから、お前、こういうとこ来てたんだって」
 もう邪魔しない、ゴメン。そう言いながら、掴まれていた手首が解放された。
「一人で帰れるから、店戻って。それと、お前のノロケ話もちゃんと聞けるようになるから。ちょっと時間掛かるかもしれないけど、そこは待ってて」
 泣き顔をむりやり笑顔に変えて、じゃあまたねといつも通りの別れの挨拶を告げて歩き出そうとする相手の手首を、今度は自分が捕まえる。こんな事を言われて逃がすわけがない。
「ねぇ、俺は、お前を好きになっても良かったの?」
「だって好みじゃないんだろ?」
「バカか。好みドンピシャど真ん中がお前だっつ-の」
「嘘だ。さっきのあいつと、全く似てない」
「それには色々とこっちの事情があって。っていうか、俺の質問に答えて。俺は、お前を好きになっていいの?」
 じっと相手を見つめて答えを待てば、おずおずと躊躇いながらも、「いいよ」という言葉が返された。
「じゃあ言うけど、小学五年の八月三日から、ずっとお前のことが好きでした」
「え、何その具体的な日付」
 戸惑いはわかる。何年前の話だって言いたいのもわかる。でもこの気持ちの始まりは確かにそこで、忘れられないのだから仕方がない。
「俺がお前に恋してるって自覚した日。まぁ、忘れてんならそれでいいよ」
「ゴメン、思い出せない」
「いいってば。それより、墓まで持ってくつもりだった気持ち、お前が暴いたんだから責任取れよ」
「ど、どうやって……?」
「取り敢えずお前をホテルに連れ込みたい」
 言ってみたら相手が硬直するのが、握った手首越しに伝わってきた。
「お、俺を、抱く気か?」
「え、抱いていいの?」
「や、いや、それはちょっとまだ気持ちの整理が……」
「抱いたり抱かれたりは正直どっちでもいいよ。でも、俺がお前を本気でずっと好きだったってのだけは、ちょっと今日中にしっかり思い知らせたいんだよね」
 今すぐキスとかしたいけど、さすがにこんな公道でって嫌じゃない? と振ってみたら、相手はようやく自分たちが今どこにいるかを思い出したらしい。ぱああと赤く染まっていく頬を見ながら、行こうと言って手を引いた。
 相手は黙ってついてくる。
 さて、十年以上にも渡って積み重ねてきたこの想いを、どうやって相手に伝えてやろうか。

 
 
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弟の親友がヤバイ(目次)

キャラ名ありません。全10話。
弟の親友(高3)×社会人(視点の主)。5歳差。
弟とその親友が中学2年の時に、弟に手を出さないようにと釘をさしつつ軽く手を出した(手コキした)ら、弟の親友に恋されてしまった話。
親友がその恋を拗らせまくって、主を縛って手や口でイかせようとしたり、脅して抱こうとしたりして失敗。
弟から真相を聞いた主が、結果的には親友と恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせた物を適当に付けてあります。
エロ描写は控えめで挿入はなしですが、それっぽいシーンが含まれるものにはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 四年ぶり
2話 気付けば拘束
3話 勃たない(R-18)
4話 抱かれる覚悟
5話 翌朝・弟来襲
6話 弟に話す
7話 弟に聞く
8話 弟の親友と話す
9話 ホテルチェックイン
10話 恋人に(R-18)

恋人になった二人が初エッチする続編が出来ました。
続編 親友の兄貴がヤバイ

 
 
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