雷が怖いので プレイ17

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 リアルに「上手にお漏らしできました」を聞かされて、色々な感情をごちゃ混ぜにして精神を昂ぶらせたままダラダラと泣き続けるこちらを宥めるように、優しいキスを繰り返された。口の中を舐められて、舌を吸われて甘噛まれても、ひたすらあやされているだけなのがわかる。明確に性的な興奮を煽ってはこないキスが酷く心地良い。
 彼がご褒美だと明言して差し出す強烈な快感よりも、間違いなくこのキスのほうが、自分にとってはご褒美だった。
 うっとりと身を任せきるうちに、涙は止まって気持ちも落ち着いてくる。でもそうするとさすがに、汚したアレコレが気にかかり始めた。どんな状態になっているのかはもちろん確かめられていないが、少なくとも足先は濡れて冷えているし、ほのかに漂うアンモニア臭だってある。
 今なら服を汚さずに済むなんてことも言われたけれど、履いたままだったこの靴下は廃棄決定だ。彼に脱がされ放られたズボンや下着は、本当に無事なのだろうか。下着は今日だって替えを持ってきているし、靴下は裸足で帰ればいい。けれどもしズボンが汚れていたらどうしよう。
 なんてことを考える余裕が生まれたことはあっさり相手にも伝わったようで、落ち着いたみたいだからと抱き上げられて連れて行かれたのは、部屋の隅に設置されたシャワーブースだった。
 出てくるまでに簡単に片付けておくからなるべくゆっくり使っての言葉に従い、ひたすらシャワーを浴び続けていたら、逆にそろそろ出ておいでと迎えに来られてしまったし、体を拭かれた上に彼の手で服を着せられた。
 ズボンは確かに無事だったようだけれど、他は靴下も下着もシャツも全てが真新しい。靴下はありがたく貰うとしても、下着は替えを持ってきているし、どうせ家までだしシャツはそのままで良い。そう言ったのに、じゃあ次回着ておいでと言われて済まされてしまった。
 どう考えてもそれらは汚れた物の代わりとして渡されたものであって、脱がすために渡されたものではない。下着だって前に貰ったものとほとんど変わらない。しかしそう言われてしまえば、わかりましたと返すほかなかった。
 更には出入り口近くの椅子に座らされて、ドライヤーで髪を乾かされる。多少濡れたままだってすぐに自然と乾いてしまうものだけれど、必要ないとは言わなかった。性的でなく彼の手に触れられることが、酷く魅力的に思えたからだ。
 実際、それは幸せなひとときだった。
 間違いなくこれも自分にとってはご褒美だけれど、彼の認識としてはどうなんだろう?
 終えてからもこんなに世話を焼いてくれるのは初めてだけど、それを言ったら今日はちょっとずつどころじゃなくいきなりグッとハードルを上げられたプレイをしたし、自分でもびっくりするほど泣きまくった。だからやっぱりこれは、お詫び的なものなんだろうか。
「乾いたな。じゃあ、今日はここまでにするか」
 その言葉に、思わず背後の相手を振り仰いだ。こちらの驚きに釣られてか、相手も少し目を瞠っている。
「どうした?」
 どうしたもなにも……
「もしかして、今、終わった、の」
「ん? いい加減疲れ切ってると思ってけど、足りないとかまだ出来るってなら、もっと何か、エッチでキモチィことしてやろうか?」
「んひゃっ」
 悪戯に首筋をサラリと撫であげられて、驚き声を上げながら肩を竦めた。それだけで少し息が上がるくらいに、たしかに疲れ切っている。
 相手はおかしそうに笑って、今日はここまでだよともう一度繰り返した。もっと続けてなんてつもりは欠片もないし、相手もそれはわかっていそうだけど。
「今日の分はとっくに終わってると、思ってた、だけ」
「ああ、そういう話。お前の体拭いて服着せて、髪の毛乾かしてやった分も全部、時給とは別に給料発生してるよ」
 そんな高値はつかないけどと言われたけれど、それでも十分驚きだった。
「服着せるのもドライヤーも、プレイ、なの?」
「プレイと言えばプレイだし、たんに頑張ってくれたご褒美みたいなもんでもある。特に今日は、けっこう無理させた自覚もあるしな」
 実際かなり疲れてるだろうという問いかけには、そのまま素直に頷いてしまう。
「少なくとも俺は、プレイで疲労した相手を労るのは、当たり前に必要な行為だとも思ってる。まぁ、そこにも金銭を発生させるのは、お前が俺の愛人バイト中だからだけど」
「ご褒美なのに、給料も出るとか、ちょっとよくわからない」
「基本的には、お前が俺に好き勝手させた分全部に金を払うよ。じゃなきゃ、ご褒美渡すから三万分追加で働けなんてそもそも言わない。俺がどれだけご褒美だって言ったって、お前にとっては苦痛が伴う場合もあるってのは、身を持って知ったばかりじゃないのか?」
「ああ、確かに」
 練習してきたことに対して、給料上乗せ分と別にご褒美を渡すとも言われていたから、ご褒美は彼の好意で発生する無料のものと思い込んでいたのかもしれない。給料上乗せ分とは別に、ご褒美でアレコレされた分の給料が発生するという意味では捉えていなかった。
「一々詳細言うの面倒だし、お前も聞かないから金だけ渡してたけど、適当とは言えざっくりと値段振ってるのは確かだし、気になるなら何が幾らか教えようか?」
「いえ、いいです」
「即答だな。まぁ、お前がいいならいいさ。じゃあ、今日の分の給料払うから、リビング移動しようか」
 一人で移動できるかという問いに黙って頷き立ち上がる。来た時に置いた荷物を取りに向かう足取りを見て大丈夫と判断したようで、準備しておくからゆっくりおいでと声を掛けてから、彼は先に部屋を出ていった。

続きました→

 
 
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