雷が怖いので プレイ19

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 静かな部屋の中に自分の零すため息が落ちる。
 ここに立ち続けているだけで時給千五百円もの給料が発生しているのに、まったくもって欠片の嬉しさもない。それどころか、こうして一人部屋に取り残されてはいるが、閉じ込められているわけでも繋がれているわけでもなく、いつでも自分の意志でこの部屋を出ることもバイトを終了することも出来るのに、その事実が逆に心もとなくてなんだか寂しい。
 だからといって、首輪やら壁の手錠やらに繋がれていたって、きっと別の意味で不安になるんだろう。さすがに一度繋がれたらそのままここに閉じ込められて逃げ出せないままエロ調教される、なんてことまでは思わないけれど、時間の経過もわからない中、外との連絡手段どころか彼に戻ってきてと伝える手段さえなく、いつ迎えに来てもらえるかわからないままひたすら彼を待ち続けるなんて、少し考えただけでも怖すぎる。
 それをはっきり回避したのだから、そこまで迂闊で危機感の足らない判断をしたとは思わないけれど、間違いなく先週の自分は、随分と思慮の浅い提案をしていた。彼にエッチなことなしのバイトを了承されて、この一週間、今日をちょっと楽しみにしていた自分がバカみたいだ。
 あのお試しの時のように、彼とあれこれ話が出来るんじゃないかと、そう期待していたんだってことは、プレ放置プレイと言われてショックを受けるまで自覚がなかった。カメラの前に一人立たされるこの状況を、まったく予想ができなかった。
 なんとなく視線を逸らしていたカメラを見つめてみる。彼の目の代わりだと、言っていた。けれど無機質なそれは、彼の目なんかとはまるで別物だ。
 彼になら、見つめられるだけでも、ドキドキする。そんな彼の目を思い出すだけでも、なんだかドキドキしてきてしまう。
 ああ、これは、ヤバイ。
 最初のお試しも含めてずっと、バイトのたびにここに立って、彼に見つめられてきた。イヤラシイ視線と柔らかで優しい視線を使い分ける彼に、どんどん丸裸にされた上、たくさんのキモチイイを引き出されてしまった。
 もちろん目だけじゃない。甘い声で辱められたり逆にあやされたりしながら、器用な指や舌や唇に、時に泣くほどの、未知の快楽を叩き込まれるまでした。
 全部全部、この場所で。
 思い出してしまうアレコレに、カーッと体の熱が上昇する気がする。無機質に見つめてくるカメラのレンズから、逃れるように顔を背けた。動画は後で彼に確認される。この動揺はどこまで彼に伝わってしまうだろう。
 彼の目とはまるで別物のはずのカメラレンズだけれど、今の自分を撮られていることが恥ずかしい。恥ずかしいのに、カメラを意識すればするほど、ここに居ない彼の目まで意識する羽目になる。
 カメラで撮られてるだけで勃起するの? とからかう彼の声が聞える気がして、ますます体が熱くなる。なんだか泣いてしまいそうだ。
 気持ちを落ち着けたくて、逃げるようにカメラに映らない位置へ移動してしまった。彼の告げたルール上は、五分までなら許される。
 でも五分で平常心が取り戻せるかは難しい。カメラの前ですました顔のまま立ち続けるのは無理そうだし、ルール上許可されているからと、五分ごとにチラッとカメラに映るだなんてことを繰り返したら絶対何かしら言われるだろうし、カメラ相手に彼の目を意識して感じてしまった事実を隠せる気はしなかった。
 はやくカメラの前に戻らないと後でおしおきだよと、頭のなかで彼が笑う。フルリと体が震えてしまったが、おしおきされる恐怖よりも、彼に何かして貰えるという期待の方が強そうだった。
 確かにもう、最初のお試しのときとは全然違う。たった三回だけど、彼に与えられるキモチイイを、自分の心も体も知ってしまった。
 彼に触れて欲しい。キスして欲しい。そんな風に思ってしまう気持ちを、もう、無視できない。

続きました→

 
 
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