雷が怖いので プレイおまけ8

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 どれだけこちらが贅沢し過ぎでサービスされ過ぎって思ってたって、彼はちっともそう思っていないし、彼の中での第四土曜日の扱いは変わりそうにない。かといって、嬉しい気持ちを隠しきって嫌がるなんて真似はしたくない。つまらなくて無意味で苦痛だなんて演技をしたって、彼を騙せるはずがない。でも騙せるわけがないからって理由よりも、この時間を喜び楽しんでいる自分自身を否定するようなことをしたくない、という理由のほうがはるかに大きかった。
 ただただ、どうしても貰いすぎだと思ってしまう分を、自分も彼に何かしら返したいと思っているだけなのに。旅行に付き合ってって話さえも、結局は彼自身ではなくこちら基準の場所選びだったし、いくら彼が自分の気持ちを優先したって言ってくれても、そんなの自分が嬉しいばっかりだ。
 そうすると、自分から彼が喜んでくれそうなプレイをねだってみる、というくらいしか思いつかないのだけれど、それもなかなか難しい。そもそも、自分からこういうプレイをして下さいなんて言ったことがなかった。
 言われるまま可能な限り従って、彼の与えてくれる羞恥や快感に身を委ねるようにして、泣いて善がって痴態を晒せば、彼はだいたい楽しげで満足そうにしてくれる。彼の不興を買いそうなことなら、経験的にある程度思いつくけれど、逆にこちらがねだって彼が喜んでくれそうなプレイなんて思いつかない。
 そう、思っていたんだけれど。
 チビの童顔なせいで実年齢より大きく下回って見られることは確かにあるのだけれど、昼間ふらっと立ち寄った店舗で、彼と親子に間違われたのは正直言ってショックだった。色々気にかかることや考えてしまうことはありつつも、やっぱり彼との旅行という部分ではしゃぎ過ぎていたのは認める。だから余計に子供っぽく見られたんだろうことはわかっているが、その事実すら動揺を加速するようだった。
 しかし、慌てて違いますと言ってしまったのは、失敗だったのかもしれない。ただでさえ実年齢に差があって、その上でこちらのこの見た目だから、親子じゃないならかなり不審な組み合わせに見えてしまう可能性を失念していた。どう考えても友人には見えないだろうし、実際友人と言えるような関係じゃない。でももちろん、愛人ですなんてもっと言えない。
「俺たちそこまで年の差ないですよ」
 どうしようとますます慌ててしまう中、横から彼の声が聞こえた。思わず見上げた横顔は少し胡散臭い笑顔を貼り付けていたけれど、それを胡散臭いと思ってしまうのは、自分が彼の優しい笑顔も楽しげな笑顔も意地悪な笑顔も知っているからなんだろう。
 結局、自分たちを親子扱いしてきた店員さんは、兄弟って事で納得したらしい。いやそれもだいぶ違うけれど。でも肯定も否定も返さない彼を見ていれば、さすがに、兄弟と思われるのがこちらにとっても都合がいいというのは理解できた。
 ただ、この件は自分にとってはショックなばかりの出来事だったけれど、彼にとってはそうでもなかったらしい。
 店を出た後ホッと安堵の息を吐いた自分と違って、彼は随分と楽しげに、お前が否定しなきゃ親子で通しても良かったのになんて言っている。
「いくら俺の見た目がガキ臭くても、さすがに小学生に間違われたことはないんですけど。中学生にだって殆ど間違われませんけど、仮に中学生の父親って考えても、あなたじゃ若すぎでしょう」
「俺が老けて見えた可能性もある。っつーか、どっちかっつったら距離の近さの問題だと思うけどな」
 チラリとこぼれた、立場が変わると見えるものも随分変わるもんだなと言う言葉に、つい彼の過去を思い浮かべてしまったけれど、本当にそれが関わっている発言なのかは良くわからなかった。彼の過去の話は聞いてるだけで苦しくなるようなものが多いから、親子に間違われたことを明らかに楽しんでいる様子の彼と、頭の中で上手く繋がりそうにない。
「距離の近さ?」
「実際の関係考えたって、兄弟てよりは親子のが近いっつーか、経済援助してくれる男性探すのをパパ活とか言うらしいし、どう考えても兄ってよりはパパがのが正解だろって事」
 ちょっとパパって呼んでみるか、なんて事をニヤニヤ顔で言われたって、従えるわけがない。お父さんなんてもっと嫌だし、親父も絶対無理。
 ムリムリムリと言い張っても相手は残念だと言いつつも楽しそうに笑っているから、多分からかわれているだけなんだろうけれど、ふと、以前ホテルに宿泊した際に全身剃られて甘やかされたというか、子供みたいに扱われた夜があったことを思い出す。第四土曜日としては珍しく、あれは彼の遊びに付き合ってのプレイだった。

続きました→

 
 
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