親友の兄貴がヤバイ6

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 正直言ってホッとした。
 こちらを気遣うような柔らかな笑顔をひっこめて、へらへらとにやけ出している相手は、あんなつたないキス一つで緊張し始めている。それがどうしようもなく嬉しかった。
 もう一度顔を寄せて、唇を触れさせる。ただ押し当てるだけでなく、唇の先で相手の唇を軽くついばんでから離す。次は舌先で軽く突付いた。
 その次には、応じるようにちろりと差し出された相手の舌先をやわく食み、そのまま相手の舌に沿うようにして口内へ侵入させた自らの舌で、相手の口内を舐めるように探る。
 必死になってキスに没頭していたら、そろりと伸びてきた相手の手が、探るようにこちらの手を取り、指を交互に絡めるようにして握ってきた。思わず顔を離して、いわゆる恋人繋ぎ的状態となっている自分たちの手に視線を落とす。
「二人っきりなんだから、手、繋いでたって、別に、いいだろ?」
「ダメだなんて言ってないです。言う気もないです」
「じゃあ繋いでて?」
「あの、一つ聞いていいですか?」
「何?」
「これ、貴方に触れないようにって、捕まえてるんですか?」
 振りほどけ無いほど強く握られているわけではないが、片手だけでも自由に動かせないようにという意味が込められている可能性はどの程度あるんだろう?
 軽いキス一つで緊張してくれる程度には、相手だってこの先の行為を意識しているはずだ。
「何言ってんの。こっち利き手じゃないだろ?」
 しかしそれはすぐ、そんな言葉で一蹴されてしまった。その言葉からは、空いた利き手で好きに触っていいと思っているのが伝わってくる。
「まぁ、そうなんですけど」
 変なところで余計な気を回したらしいことを自覚しつつも、じゃあこの手にはどんな意味があるんだろうと思ってしまう。もし恋人らしい仕草の一つ程度の意味しかないのだとしたら、盛大に反応してしまって恥ずかしい。
「何が不安か言いたくないなら聞かないけど、お前が言わないせいで、俺だって色々不安に思うのも出来ればわかって? なんか失敗したんだなってのはわかるけど、その結果、お前の俺への気持ちがどうなってるのかわからないのは怖いよ。ちゃんとまだ俺を好きで、だから俺を抱きたいんだって、そう思えるだけの安心が欲しいってのは、多分そこまでワガママな話じゃないと思うんだけど」
 ギュッと握られた手に力が込められて、彼が言うところの安心が手を繋いでいることなのかと思ったら、あまりにいじらし過ぎて、申し訳無さに胸がきゅうきゅうと絞られるように痛んだ。
「好きです。凄く、好きです」
 とにかくまずは伝えなければと、切羽詰まった様子で言い募れば、相手は柔らかに笑ってみせた。
「うん。俺も、好きだよ」
「でも、今のその顔は、正直好きじゃないです」
「えっ? 顔?」
「優しく笑ってくれる顔。貴方が色々と優しく気遣ってくれるのは嬉しいけど、でも同じくらい悔しいし、そんな風に笑われるたび、自分の不甲斐なさを突きつけられるみたいで苦しくなります」
 不安というより嫉妬ですと言えば、意味がわからないと言いたげに、少しだけ眉が寄せられた。
「嫉妬? って俺、に……?」
「そうです。貴方に。俺だって貴方にいっぱい優しくしたい。なのに、年上の余裕とか、経験値の差とか、そういうのを目の当たりにすると、むしろ追い詰めて酷い目に合わせて、困ったり泣いたりすればいいのにって。自分と同じところにまで、貴方を引きずり落としてやりたくなるんですよ。そして、そう思ってしまう自分に、嫌気がします」
「落ち込んでたのって、それ?」
 頷いて見せれば、ホッとしたように安堵の息を吐く。その後、じわじわと広がる笑みを堪えきれない様子で噛み殺しているから、今度は自分の眉間に皺が寄るのを自覚した。

続きました→

 
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