セフレは幼馴染で節操なしのクソ男

 幼馴染といわゆるセフレになって数年。最初は好奇心からだった抱かれるセックスも慣れきって、ついでに言えば相手もあちこちで経験を積みまくっているおかげで、やってる最中の満足感だけはかなりいい。
 問題はやり終わったあとなんだよなと、どんよりベッドに沈む相手を見下ろしながら、呆れを隠さない溜息を一つ。
 まぁこうなるのがわかってて抱かれたのも事実ではある。ついでに言うと、この落ち込みまくった幼馴染を慰めるつもりで訪れていたりもする。
 素直に抱かれたせいで余計に落ち込ませる結果になったのもわかっているが、そこはまぁ、慰め料の前払いというやつだ。
 ただ、慰めるにしたってもう少し落ち着く時間が必要だろう。
「シャワー使いたいんだけど。ついでに喉も乾いてんだけど」
「ふたりとも出張中だし好きにしろ」
「りょ」
 短く了承を告げて、落ち込む幼馴染を部屋に残し、勝手知ったると風呂場へ向かった。
 軽くシャワーを浴びて当然タオルも勝手に使い、冷蔵庫の中から未開封の500ミリペットボトルを2本取り出し、1本はその場で半分ほど飲んで一息ついたあとで相手の部屋へと戻る。
「なんだ。まだ回復してねぇの」
 相手は部屋を出たときとほぼ同じ状態で、ベッドにうつ伏せていた。
「うっせ」
「スポドリ持ってきたけど」
「いる」
 いい加減起き上がれ、という気持ちが強かったのか、ベッドの上に投げた未開封ペットボトルは相手の腕にしっかりぶつかってしまう。ちょっと鈍い音がした。
「痛っ」
「こっち見もしないお前が悪い。つか何もかもお前が悪い」
 本気でこいつが悪いと思っているので、謝罪なんて絶対に口にしない。
 相手は陰鬱な溜息を一つ吐いてから、ようやく体を起こしてベッドに腰掛ける。
 隣に座る気にはなれなかったから、勝手に椅子を拝借してそっちに座り、相手がペットボトルに口をつけるのを眺めて待った。
 口を離して、今度は大きな溜息が一つ。
 それもジッと眺めていれば、さすがに視線が気になったらしい。
「怒ってんの?」
「まぁ、それなりに?」
 怒ってるとはちょっと違う気もするが、人の忠告をさんざん無視しやがった結果だぞ、という憤りはある。
「気持ちよかったくせに」
「否定はしないけど。でも今日のお前はいつにも増して最低だったなって思ってる」
 なんせ他の女を抱いた直後の呼び出しだった。しかも別れ話でもしたのかと思ったらそんなことはなく、今現在もその女とは交際継続中らしい。
「それはそう」
「わかってんならヤメロ。せめて女抱いた直後に同じベッドで俺を抱くなよ」
 節操なしのクソ男。と口に出さなかった自分を褒めたい。今これを言ったら、相手にかなりのダメージを与えられるとわかっているのに、踏みとどまれた。
「へぇ。お前でも、少しは嫉妬とかすんの?」
「いや別に。罪悪感と後ろめたさでお前が張り切って俺をイカせようとすんのは、まぁ、そんな悪くなかった」
「なんじゃそりゃ。んじゃ何が不満なんだよ」
「今この状態がひたすら鬱陶しいな、と」
 落ち込むんだからヤメロと言ってやるのは、幼馴染としての優しさだと思う。
「いやもう落ちれるドン底まで落ちたい気分ってやつで」
「今更?」
「うっせぇ」
「俺は、お前の気持ちに気づいた一番最初に、素直に告白しろって助言はしてるからな」
 こいつの本命はもう一人の幼馴染で、そいつは何も知らない。こいつの気持ちも、幼馴染二人がセフレ関係だってことも。
 あの時素直に告白して、多少引かれても真剣に伝え続けてたら、充分に脈はあったと思っているから、本当にこいつはバカだと思う。それこそ今更の話なんだけど。
「それが出来てたら今こんなになってねぇよ」
「素直に告白できないにしても、本命の前で女とイチャついて見せる必要なんてあったか?」
「ちょっとは俺の魅力に気づくかと」
「お前のモテアピール、どう見たって逆効果にしかなってないのわかってただろ。間違いなく、自業自得だぞ」
 盛大に呆れられた最初の1回で止めておけば良かったものを。アホな真似を繰り返したせいで、とうとうブチ切れられて、節操なしのクソ男は金輪際関わってくるな、という絶縁宣言を食らったのが今日の昼だ。
 それで反省したり自分の行動を省みたりする性格だったら、そもそもここまで拗れたりしなかったわけで。親が居ない自宅に彼女を呼んで抱いたあと、セフレを呼んで抱いて、ひたすら落ち込んで今に至る。というわけだ。
「いやマジでアホだな」
「うるせぇ」
「つかさすがに今回のは割と絶望的だと思うんだけど」
「わかってんよ」
 いい加減諦める、という自信のなさそうな呟きが聞こえてきた。
「本気で?」
「あー……出来れば。そうなったらいいな、みたいな」
「はいはい。無理無理」
 否定してやれば不満げに口を尖らせているけれど、無理じゃないと言ってこないのだから、本人も自覚はあるんだろう。
「つか本気で諦めたいなら告白するのがいいと思うよ。これ、何回か言ってるけど」
「ぜってーやだ。今までのあれこれ全部、お前が好きだからやってました。なんて知られたら俺もう多分生きていけない」
「いっそ一度死んだらいいと思うよ。てか今日すでに絶縁宣言食らっただろ」
「あああああ思い出させんなよクソがぁ」
「クソなのはどう考えてもお前だから。自業自得だから」
「なぁ、あれって本気だと思うか?」
 さすがにあれを撤回させるのは難しいだろうなと思う。なんせ節操なしのクソ男と言われたその直後に、思いっきり節操とは無縁の行動を取るような男なので。
「期待はすんなよ。さすがにもう無理だろって気もするし。つかお前はいい加減本気で諦めることを考えろ」
「わかってる。努力はする。けど、それはそれとして、よろしくお願いします」
 ベッドの上に正座したかと思うと深々と頭を下げられて、小さな溜息を一つ。
 さて、どうやって絶縁宣言を撤回させようか。

 
 
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酔って宿無し年下男を連れ帰った話

 軽い頭痛と胸焼けで意識が浮上し、ベッドの中で大きなため息を一つ。
 また、やってしまった。
 昨夜は隣で飲んでいた一人客と意気投合し、飲みすぎて、いろいろあって、今に至る。
 酔っても記憶が飛ばないのはありがたいが、覚えているからこそ、やらかした翌朝の自己嫌悪も酷い。
 昨日の相手はふらっと入った居酒屋で捕まえた、というのも自己嫌悪を加速させる。間違いなくノンケだったし、かなり戸惑ってたし、酔いに任せて本当に悪いことをしたと反省する。
 反省したところで過去は変えられないし、こんなことは二度とやらない自信もないのだけど。
 再度大きくため息を吐いてから、ゆっくりと体を起こした。
 酔った勢いで縺れ込であれこれ致したわけだから、ベッド周りはまぁまぁ酷いことになっているがそれはいい。
 問題は昨夜連れ込んだ相手の姿がないことだ。
 記憶は飛んでないので、今回連れ込んだ相手がちょっと難あり物件だってこともしっかりと覚えている。
 家も仕事もないって話だったから、多分金もそんなに持ってないはず。なんて相手をよくまぁ自宅に連れ込んだと、我ながら呆れる。
「はは……っ痛……」
 乾いた笑いをこぼせば、連動して二日酔いの頭が痛んだ。
「ああ、起きたくない……」
 そんな現実逃避を口に出してはみたものの、寝室の外を確認しないわけにはいかない。人の気配はなさそうだから、多分、相手はもう逃げ出したあとなのだろうけど、はたして何を持ち出しているだろう?
 あまり部屋を荒らされてませんように。
 そんな願いを込めつつ寝室を出たところで、廊下の先にある玄関ドアに鍵が挿さる音が聞こえて、思わずそちらを凝視する。
 なぜかしっかり閉まっている鍵が、なぜか外から開くのを呆然と見つめてしまえば、ドアが開いて一人の男が入ってきた。
 昨夜連れ込んだ男だが、当然、意味がわからない。
「あ……」
 何が起きてるのかわからず相手を見つめてしまえば、相手は気まずそうな顔で明らかに戸惑っている。
「え、なんで?」
「なんで?」
「なんで外から? え、帰ってきた? って、コンビニ?」
「あー……」
 次々と溢れてくる疑問を口からこぼせば、相手はますます気まずそうだ。
「その、昨夜のこと、どこまで覚えてますか?」
 誰だって聞かないから俺のことはわかるんですよね? と確認されて、一応と返す。
「えと、同意はあったというか、誘われたのは俺の方で」
「ああ、うん。わかってる。てか酔っても記憶飛ばない方だから、多分そこそこしっかり覚えてる」
 言えばあからさまにホッと安堵された。
「あの、朝飯食べれますか?」
「え?」
「買ってきたんですけど」
 言いながらコンビニの袋を掲げられて、なるほど中身は朝食か、と思う。
「食べながら話しませんか?」
 いっぱい運動したらお腹減っちゃってとはにかまれたけど、その運動ってのはやっぱ昨夜のセックスだろうか?
「ああ、うん」
 戸惑いながらも了承を告げて、とりあえず一緒にリビングへと移動した。

 インスタントの味噌汁まで2人前買ってきていた相手は、二日酔い辛そうだから座っててくださいと言いおいて、率先してお湯を沸かして味噌汁を作っている。
 やることをやった仲ではあるが、知り合ったのも家に入れたのも昨夜だというのに。ただ、随分好き勝手動くんだなという気持ちはあるものの、正直言って何もする気力がわかない程度に体がしんどいので、黙って待っているだけで朝食が運ばれてくるというのはありがたい。
「おまたせしました」
「ああ、うん」
「じゃあいただきます」
 差し出された味噌汁とおにぎりを受け取れば、相手はさっさと食べ始めていて、どうやら相当お腹が空いていたらしい。それを横目に、自身も小さくいただきますと告げて、まずは味噌汁にそっと口をつけた。
「それで、今後のことなんですけど」
 胃の中に温かな汁が流れ込んでホッと息をつけば、それを待っていたかのように相手が口を開く。
「え、今後?」
「あっ……」
 戸惑えば相手は少し考える素振りを見せたあと。
「えと、昨日の話、どこまで本気ですか?」
「えー……と、どんな話?」
「仕事見つかるまで、ここに居てもいいって」
「あー……」
 仕事見つかるまで居ていい。と言った記憶はない。でも毎晩だって泊まっていいよと言った記憶ならある。ただ、けっこう無茶苦茶な条件を付けたことも、忘れてなかった。
「うん、似たようなことなら言った。けど」
「やっぱなしですか?」
「あ、いや、そうじゃなくて、条件が」
「あ、はい。頑張ります」
「いやいやいや。頑張りますじゃなくて。てか頑張られても困るというか」
 だって相手は間違いなくノンケだし、あんなに戸惑ってたわけだし。まぁ途中から吹っ切ったっぽいし、最後の方は相手もそこそこ楽しんでたような気もするけど。
 でもあんな条件を口にしたのは酔ってたからだし。本気じゃないし。
「え?」
「サラリーマンは毎晩セックスなんてしません」
「えっ!?」
「つか君ノンケでしょ。めちゃくちゃ戸惑ってたのに、俺がむりやり抱かせたよね? 俺を抱けたら泊めてあげるって言ったから仕方なく頑張ったんだよね? 俺を毎晩気持ちよくしてくれるなら毎晩だって泊まっていいよとは言ったけど、それをマジに実行されたら困るのは俺だなって」
 肉体的にもキツイけど、それ以上に、精神的に多分かなりキツイ。ただでさえ、宿無しで困ってるノンケを酔った勢いで連れ込んで無理やり抱かせた負い目に自己嫌悪しているのに、更に弱みに付け込んで関係を続けさせようだなんて。
「えと、じゃあ、週末とかに1週間分頑張るとか……?」
「待て待て待て。なんでそうなる」
「泊めてもらえなくなるの困る……ってのもそうなんですけど、えと、あー……ちょっと楽しみにしてた、から」
「楽しみ?」
「またあなたを抱けるんだって」
 思わず本気か確かめてしまったが、本気ですと即答されて言葉にしばらく詰まってしまった。
「確かめたいんだけど」
「なんですか」
「ノンケだよな? 年上のおっさんとか、どう考えても範囲外だろ?」
「まぁ確かに最初は驚きましたけど。でも無理なら誘いになんか乗ってないし、結果的に俺もしっかり楽しんだわけだから、気づいてなかったというか今までそういう機会がなかっただけで、どうやら範囲内だったみたいです」
 言い切られてやっぱりしばらく言葉が出なかったけれど、結局、セックスは週末に、それ以外は出来る範囲の家事負担という条件で、彼の仕事が決まるまでの同居が決定した。

 
 
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類友のクズ

 先日、友人が恋人と別れたらしい。
 好きになったと言い出してから別れたと言い出すまでが過去一長かったので、男の方が付き合いやすかったのか聞いてみたら、落ちるまでと信用を得るまでが長くかかって楽しかったと、相変わらずクズな言葉が返ってきた。
 可哀想にと言いながらも、内心は当然のようにワクワクとしていて、その場で別れたという友人の元恋人相手にメッセージを送る。
 付き合ってると紹介された時に連絡先は交換済みだし、二人きりで会ったことはなくても、友人込みでなら何度も顔を合わせている。

 別れたって聞いたけど大丈夫? 話聞こうか?

 そう送ったメッセージにはすぐに話を聞いて欲しい旨が返ってきたから、近くのカラオケ店を指定して呼び出した。カラオケなのは、経験上、泣かれることが多いせいだ。
「てわけで、着いたって連絡きたらちょっと行ってくるわ」
「結局お前だって男試すんじゃねぇか」
 一連のやりとりを眼の前の友人に見せれば、相手は呆れた様子でそう返してくる。
 今回好きになった相手は男だと言い出した時に、とうとう男にと呆れたのを根に持っているのかも知れない。
「それはまだわからないだろ」
「8割イケるって話だったろ」
「そんなにないって。半分近くはただ話聞いて慰めるだけだって」
 まぁここ何回かは全てお持ち帰りに成功しているけど、なんせ今回は初の男の子なわけだし。
「嘘つけヘンタイ」
「ヘンタイなのは認めても良いけど、それ言ったらお前だって相当タチ悪いだろ」
 恋愛は相手を本気にさせるまでが楽しいとか言って、散々相手が本気になるよう仕向けるくせに、いざ本気になられると鬱陶しくなって捨てるとか、ホント、相手がひたすら可哀想だ。
 そしてその可哀想な元恋人たちに、ひたすら興奮してきた自分の性癖がヤバい、って事はもちろん認めている。ついでに言えば、慰めエッチで抱くまではしても、次の恋人として立候補したりはしないので、眼の前の友人をどうこう言える立場にはないことも自覚している。
 こんなクズ相手に友人を続けられるのは、似た者同士のクズだからでしかないだろう。いわゆる類友ってやつだ。
「認めんのかよ。てかお前のあれ、マジなの?」
「あれって何が?」
「相手が可哀想なほど興奮するとかいう」
「じゃなきゃお前と友人なんかやってないわ」
「なにげに酷いな。つかホントは俺のお古が抱きたいとか、そういう方向のヘンタイではないって認識でいい?」
「なんだそれ?」
 本気で意味がわからないと首を傾げれば、男抱けたしお前のことも抱いてやろうか、などと言い出して笑ってしまった。
「お前、男試したせいでとうとう俺のことをそんな目で……」
「ないないない。さすがにお前落とすとか絶対ない。けどまぁ、やれるかやれないかで言えばヤれそう。ってちょっと思っただけ」
「あー……クズなお前がいつかしっぺ返し食らって失恋したって泣いたら、俺もお前相手に慰めエッチ出来なくない……かも?」
「それ俺が抱かれる側想定してね?」
「それはそう」
「つか俺が抱かれる側で男の恋人作って振ったら、お前、そんな相手でも慰める? 抱かれる?」
「さすがにそれは無理そう。だけど話聞いて慰めるくらいはすると思うし、抱く側でなら慰める……かも?」
 まさか男を抱いたら男に抱かれるセックスも試したくなったんだろうか?
 なにやら真剣に考え出してしまうから、次に紹介される恋人も男になるのかも知れない。なんて思ったところで、手の中のスマホが小さく震えた。
「あ、連絡きたわ」
「おー、がんばれー」
 棒読み過ぎる声援に小さく笑いながら席を立つ。こいつの次の恋人のことは、紹介されてから考えればいい。
 とりあえずは、振られたばかりのこいつの元恋人を慰めに行こう。

 
 
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積極的にどうこうなりたいわけじゃなかった結果

 告白されたのは卒論提出を終えた1月の終わりだった。相手は同じゼミのひとつ下の後輩で、教授に卒論を手渡したその直後に、先輩ちょっとと呼ばれて、人気のない廊下の片隅に連れ出された。
「俺、先輩のことが恋愛的な意味でずっと好きでした」
「ああ、うん」
「驚かないんですね」
「いや驚いてるけど」
 だって、なんで今? という気持ちはかなり強い。
 ただまぁ相手からの好意には気づいていたし、わざわざこんな人気がない場所に連れ出されての話ってことで、途中でもしやと思っていたのも事実だ。
「全然驚いてるように見えないですけど。てかやっぱ、知ってました? よね?」
「あー……まぁ」
 ですよね、と言いながらその場にしゃがみ込んでしまった相手は、どうやら落ち込んでいる。
 仕方がないので自分も腰を落として、うつむく相手の様子をしばらく眺めていた。
「あの……?」
 やがておずおずと顔を上げた相手が、なぜいつまでもここに居るんだと言いたげに見つめてくるから、まさか話は終わったのか? という疑問が浮かんでくる。
「で、話ってそれだけ?」
「あ、そうですね。知ってたのに知らない振りしてくれててありがとうございました」
「え、他には?」
「ないですけど」
 即答されて、マジかよと思う。
 え、好きって言って終わり? それだけ?
「あ、告白なんかしてすみませんでした……?」
「それ疑問符ついてないか?」
「いやなんか怒ってはなさそうだったから」
 怒ってます? と聞かれて、怒ってないと返したが、正直釈然としない。
「先輩……?」
 無言で相手を見つめてしまえば、居心地悪そうにしながらも心配そうな声が掛かった。
 というか普通、告白したら相手の返事を求めるものじゃないのか? もしくは告白と同時にお付き合いの打診とかするもんじゃないのか?
「いやオカシイだろ」
「え、何がですか?」
「何がって全部だ全部」
「あ、はい、すみません」
「いや待て。なんの謝罪だそれ」
「えと、好きになってすみません。ずっと知ってたのに、普通に接してくれてたんですよね? ずっと気持ち悪い思いさせてましたよね?」
「待て待て待て待て。え?」
「え?」
 こちらが戸惑えば、相手も同じように戸惑っていて、しばし沈黙がこの場を支配する。
「あー……まぁ俺も秘密にはしてないが積極的に開示してはいないというかで、つまりは知らなかったってことだよな」
「え、何をですか?」
「俺が男もイケるって事実」
「は? え?」
 本気で驚いているようだから、本当に知らなかったらしい。
「あーまじか。知らなかったからか。マジか」
 確かに、あんなあからさまな好意を寄せてくるわりに何も無いのはオカシイなと思うこともなくはなかった。どうやら、こっちから積極的にどうこうなりたいわけでもないしまぁいいか、と放置してしまったのがこの結果らしい。
「てかなんで今?」
「え、なんで?」
「なんで、告白する気になったんだろって思って」
「それは先輩が卒業するから」
「俺が卒業後地元戻るって知ってるよな?」
「はい」
「卒論出したし、ゼミに顔出すこともなくなるんだけど」
「ですね」
 こちらの言葉に即答で肯定が返るのを見ながら、なるほど、と思う。
「つまりマジで言い逃げ? ただ好きって言いたかっただけ?」
「あと確認、ですかね」
「確認?」
「ずっと知ってて知らない振りしてくれてるのかなって思ってたから。知ってて普通に接してくれてたならお礼言わないとって思って」
 言えて良かったですとようやく相手に笑顔が見えて、ちょっとイラッとしてしまう。
「なあ、俺、男もイケるって教えたとこなんだけど」
「あ、はい、ビックリしました。だから俺の気持ち知ってても平気だったんですね」
「マジで? なぁマジで?」
「えっ? えっ?」
「男もイケる相手に告白したってわかっても、それ以上先、何も求めないわけ?」
 そこまで言えば、ようやく相手も何かを察したらしい。
「いやでも先輩、もう卒業ですよね?」
「そうだな」
「ゼミにも顔出さないですよね?」
「そうだな」
「遠距離恋愛とかするタイプじゃないですよね?」
 その指摘にはグッと喉が詰まってしまったが、それでもなんとか「そうだな」と肯定を返す。
「えと、何を求めていいんですか?」
「っ……それ、は……」
 積極的にどうこうなりたい相手じゃなかったはずなのにと思いながら。
「とりあえず付き合うか」
「え?」
「卒業までの期間限定で」
「えっ!?」
 相当驚かれたが、嫌なのかと聞けば即答で嫌じゃないですと返ってきた。
 卒業後のことは卒業してから考えればいい。

 
 
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弟狙いの従兄弟を抱かせて貰うことになった

 祖父母は伯父家族と一緒に住んでいるので、正月の挨拶に行けば必然的に従兄弟たちとも顔を合わせることになる。
 次男とは同じ年齢だったから、小学生の頃は子供だけ互いの家に泊まり合ったり2家族+祖父母と旅行したりの交流もあったのだけど、やはり中学に上がって部活などが始まると従兄弟と遊ぶなんて機会は減っていき、今はもう正月くらいにしか顔を合わせない。
 その正月の集まりで、今年は妙に向こうの長男が気になって仕方がなかった。だって弟に対する態度が、なんていうか微妙にオカシイ。
「ずいぶん背ぇ伸びたんだな」
 弟は確かにこの1年で驚くほど身長を伸ばしたので、その感想は妥当だと思う。でも、モテそうだのカッコいいだの、挙げ句はちょっと筋肉触らせてだの言い出して、それが同じ男として憧れるって雰囲気よりも、性的魅力を感じてるって言ってるように聞こえて仕方がなかった。弟に話しかける声が妙に弾んでいるせいだろうか。
 愛想が足らない弟は、モテるとかどうでもいいというか興味ない、みたいなことを言って全然相手の話に乗ってないし、触らせてってお願いもあっさり拒否っているんだけど。それでも相手は全くこりた様子がないまま、何かと弟に構い続けている。
 弟も微妙に鬱陶しそうと言うか迷惑そうにしてるのに、相手がかなり年上ってこともあってか、返答はそっけないものの無視までは出来ないらしく、話しかけられれば応じていた。間違いなく、相手はわかっていて調子に乗っている。
 いい加減、止めたほうがよさそうだ。
 というかこれってやっぱ、長兄は弟狙いって考えていいんだろうか?
 そう思ってしまうのは、最近、自身がゲイと呼ばれる性指向なんだと自覚したせいかもしれない。自覚したと言うか、ようやく認めたと言うか。
 だからもし長兄もそうだって言うなら、ちょっと話がしてみたい。
「こいつばっか構ってないで、そろそろ俺にも構ってくれても良くない?」
「えーっ」
「なんでそんな嫌そうなの。失礼だな」
「いやだってお前、俺に構われたいとか絶対嘘じゃん」
 確かに、弟みたいに構われたいとは一切思ってないけど。絶対鬱陶しいだけだし。でも話がしたい気持ちは嘘じゃない。というか相手もゲイなのか本気で知りたい。確かめたい。
「可愛い可愛い大事な弟が、変な男に絡まれてたら助けたい兄心ってやつだよ。わかれよ。つかこいつまだ中学生ってわかってる?」
「あー……ね」
 青田買いって呟いたの聞こえたぞコラ。
「ね、じゃなくて。だから構うなら俺にしよ? つかちょっとマジに話、聞いて欲しいんだけど」
 最後はけっこう真面目な口調で告げてみたら、相手も何かを察したらしい。
「人生相談? なら俺の部屋行く?」
「行く!」
 相手が立ち上がるのに合わせて自分も立ち上がれば、隣の弟がそっとズボンの裾を引いてくる。
「どうした?」
「いや、えっと」
「大丈夫。聞いて欲しい話があるのはホント」
 ポンッと弟の頭を撫でるように叩けば、ズボンの裾から弟の手が離れたので、じゃあ行ってくると残して従兄弟のあとを追った。


 結果から言えば、従兄弟はゲイよりのバイで男相手なら抱かれる側がしたくて、背の高い細マッチョ最高、らしい。
 弟は中学生だぞと再度釘を差しつつ、高身長細マッチョなら誰でもいいのかと呆れてしまえば、ニヤリと笑って、好きな男がいるんだろうと指摘されて、ついでにセックス一切未経験なのもどうやらバレた。
 相手の男に脈ないのと聞かれて、欠片もないし好きだなんて知られるのは絶対避けたい相手だと答えながら、思わず泣いてしまったのは想定外だったけど、でもなんだか少しスッキリした。
「じゃあとりあえず誰かとセックスしてみたら?」
「は?」
「抱かれたい側? それとも抱きたい側?」
「や、え、なんで?」
「だって脈ないどころか好きも知られたくない相手想い続けるとかしんどいだろ」
「それはそう。だけどそこからなんでセックス?」
「気持ちぃセックス経験したら他に好きになれるやつ出来るかもだから」
「そういうもん?」
「そういうもんだろ。つか俺はそう」
 好きだなって思う男はセックスが上手い男ばっかりとか言い出してドン引きした。
「女の子は? 女の子もセックス上手いかで好きになるわけ?」
「あー、いや、女は抱けなくないけどくらいであんま恋愛対象ではないな。てかだからゲイよりなんだって」
「そっか」
 じゃあもしかしたら、自分もバイの可能性があるのかも知れない。女の子相手にセックスしたいって思ったことはないけど、それを言ったら、男相手にセックスしたいって思ったことだってないんだから。
「男紹介する?」
「え?」
「セックス上手い男」
「え、嫌だ」
「なんでだよ」
「だってそれあんたのお古……あ、まさか今彼紹介したりしないよな?」
「なるほど。いたら3Pも有りだったな」
「最低。てか今彼氏いないの?」
「居たらさすがにお前の弟にちょっかいかけたりしてないって」
「じゃあ俺とセックスして、って言ったら、する?」
「は? あれ? 抱きたい側だった?」
 てっきり片恋相手に抱かれたいんだと思ってた、というその憶測は当たってる。
 想い人相手には抱かれる想像しかしたことがない。というか抱かれたいって思ってしまったから、友情じゃないんだと気づいてしまったし、ゲイなんだと自覚してしまった。
「違うけど、いきなり知らない男相手に抱かれる側のセックスとか絶対無理だし。あんたが俺に抱かれるとこ見たら、抱かれるセックス試してみてもいいかもって思うかもだし。絶対上手いわけないから、あんたが俺に惚れる心配もないし」
 ほらいい事ずくめ。と言ってみたら、大笑いされたあと、いい性格してんなって言われて了承が告げられる。
 お前の童貞貰うの楽しみってニヤニヤして言ってくる相手だって、相当、いい性格だよなと思った。

別れた男の弟が気になって仕方がない」に出てくる兄(別れた男)の初めての相手は従兄弟で抱く側。
ただしこれを書く前に読み返したりはしてないので、兄関係はたいして情報書いてないから多分大丈夫と思ってるけど、設定食い違うところがあるかもしれないです。

 
 
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異世界召喚されたオメガの話を書きたい気がした(続かない)

 周りのざわつく気配に意識が浮上する。
「あ、起きたぞ」
「マジかよどーすんだ」
 目を開けたらそのざわつきが大きくなって、ついでに、ヒョコッと2つの見知らぬ顔が上から見下ろしてくる。
「ぎゃっ!」
 思わず叫んでしまったのは仕方がないと思う。てか誰だ。つうかどこだここ。
「おいこらヤメロ。ビビらせんな。あとみんな少し落ち着け。起きたなら説明しないとまずい」
「あ、ごめ」
「すまん」
 その声に2つの顔はさっと引っ込んでいき、さきほどまでのざわつきも収まり逆に静まり返っている。
「あー、とりあえず、目が冷めたのなら起き上がっていただけると嬉しいのですが」
 促されてゆっくりと身を起こし、ついでに周りをくるっと眺めて、最後に自身が寝ていたのだろう床を確かめた。
 見知らぬ部屋に見知らぬ男たちに極めつけは床に描かれた魔法陣らしき模様。
「あー……異世界召喚てきな?」
 もしくは夢。今まさに、夢を見ている真っ最中の可能性。
「違うなら夢」
「いえ夢ではないです」
 速攻否定された。
「というか召喚された自覚がおありなんですか?」
「流行ってたんで」
「だから冷静なんですね」
 主に創作の世界でだけど。という割と肝心な部分を抜かしたせいか、また周りが一瞬ざわついたけれど、その葉に納得したのかすぐに収まっていく。
「そうだと思います」
「ただ何かの手違いと言うか、その、申し上げにくいのですが、お呼びしたのは貴方ではないと言いますか」
「じゃあ帰れる?」
「多分、無理かと」
「じゃあ手違いで呼ばれた俺が、こいつ要らねって殺される心配は?」
「それはない!」
 速攻否定したのは眼の前で丁寧な口調で話してくれている男ではなく外野で、多分、最初に顔を覗き込んできた男の一人だと思う。まぁ声が似てた気がするってだけで、確証はないんだけど。
「じゃあいいや」
 いやホントは全然良くないんだけど。でも速攻殺されて終わりってわけじゃないなら、さっさと気持ちを切り替えて早めに対処しておかないと、あとから結局殺される羽目になりかねない。
 ここが異世界なら、アルファだとかオメガだとか、第3の性が存在しない可能性だって高い気がする。抑制剤なんて期待できないし、こんな目に合うのがヒート直後だったのは多分運が良い。
「え、いいんですか?」
「あっちの世界にあんま未練ないんで。てか正直死にたいとか思ってたくらいなんで」
 大嫌いで大嫌いで避けまくっていたアルファ相手に、家の都合で強制的に嫁がされるかも。なんて話が出てたところだったから、むしろ絶対追ってこれないだろう異世界なんてところに逃げれたのはマジで運が良いと思う。
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。というわけで、言葉は通じるみたいだけどこっちの生活のこととか教えて欲しいのと、俺にもできそうな仕事とか紹介して貰えれば。あ、ちょっと特殊な体質で、3ヶ月に2週間ほど家を出れないと言うか、引きこもって安静に過ごしたい期間があるんですけど、仕事はそれを考慮して紹介して欲しいです」
「わかりました。というかこちらの事情とかは……?」
「手違いで呼ばれたなら俺が聞いても意味ないかなと」
 それはそう、という雰囲気が周りからも伝わってくる。
「わかりました。では、当面生活していただく予定の部屋へご案内いたします」
 くるりと回りの男たちに順番に視線を移していくその男に習って、同じように視線を周りに向けてみれば、一人の男が挙手するのが見えた。最初に覗き込んできた男の一人で、多分さっき殺さないと言い切ってくれた彼だ。
 その男の名前らしきものが呼ばれて、どうやらここからの移動は眼の前の丁寧語の男と、その男と二人だけらしい。
 まぁ手違いだとか言ってたから、残った男たちには他にやることが色々有るんだろう。部屋を出る直前、何やら色々指示しているのが聞こえてきたし。


 当面生活して良い部屋、というのはなんともファンシーと言うか、女の子が好みそうな可愛らしい部屋だった。というかレースの天蓋付きベッドなんて初めてみた。
「なんか、その」
「不要であれば後ほどはずさせます」
 こちらの視線の先に気づいて苦笑とともにそう告げられたので、お願いしますと返しておく。あんなベッドで落ち着いて眠れると思えない。
 その後、簡単な自己紹介をしあって、この国の情勢という名の事情説明がされた。さっき聞いても意味ないかなと断ったはずだが、ここで仕事を得て生活していく気がお有りなのでこの国がどんな状況であるかを知ってほしいと言われてしまえば断れない。
 どうやらこの世界では、ここ数年どの国も急速な出生率の低下を辿っているらしい。そして前回同じような状況に陥った時には、他の世界から聖女を呼んでその聖女に子を産んでもらったそうだ。
 国の規模やら数やら考えたら相当数呼ばれた可能性があるようで、今回は早めに対処しようということになり、数百年ぶりの聖女召喚だったらしい。が、結果来たのは男だったと。
 そこまで聞いて、呼ばれた理由には納得してしまったわけだが、もちろん、じゃあ手違いじゃなかったですねとも、子ども産めますよなんてのも教える気はなく、基本はそうなんですねと聞き流すだけだ。
 だってここが、子どもは女が産むもの、という世界らしいのは間違いない。というか抑制剤が存在しないのも確定したなと思う。
 ああ、だから理由なんて聞きたくなかったのに。

タイトル通り続きません。異世界召喚も転生もオメガバースも読むのとか妄想するのは好きだけど、形にするのは難しいね。

 
 
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