復讐されるためのお付き合い

これを最後とするべきかどうかの未来。攻め視点。

 背後から名前を呼ばれて反射的に振り向けば、そこには捨てた男が立っていた。
「久しぶり」
 笑顔はないが、怒っている様子でもない。
「……ああ、うん」
 頭の中では、なぜ彼がここにと驚きも動揺もしているが、実際ははそんな間抜けな同意しか返せなかった。
「話、したいんだけど。家、行ってもいい?」
「そ、れは……」
 彼と関係があった頃とは違って、現在は古い安アパート暮らしだ。月に数度の彼との逢瀬のためだけに、そこそこの賃貸マンションの一室を借りていられた経済状況など、今はもうなかった。
 かといって、この近辺で個室を借りて話せるような場所に思い当たらないし、そのための出費を惜しいと思う程度には金銭的な余裕もない。けれど捨ててきた男との話なんて、人の目がある場所で語れる内容でないのは明白だ。
「ちなみに、今、どんなとこ住んでるかは知ってる」
 こちらの躊躇いの意図を察したらしい。というか、ここに来たことを含めて、現在の自分の状況はかなり把握されているんだろう。探偵でも雇って調べさせたのかも知れない。
「わかった。いいよ」
 告げて歩き出せば、相手は黙って付いてくる。アパートに着くまで、結局それ以上の会話はなく、二人無言のままだった。

 
 部屋に上げて適当に座ってと促したあと、とりあえず茶を淹れにたつ。
 この部屋に他者の気配があるということが、不思議で仕方がない。しかも相手は、二度と顔を合わせることもないだろうと思っていた男だ。
 自分の中では綺麗なまま残しておきたい記憶だったけれど、これもきっと自業自得な結果の一つなんだろう。
 もともと互いの私生活を明かしもしなければ踏み込むことも踏み込ませることもなく、つまりは割り切ったお付き合いに近いものではあったけれど、それなりの期間、関係を継続していた相手に対し、何も詳細を告げずに一方的な別れを突きつけて逃げ出したのはこちらだ。
 抱き潰して、彼の言い分を一切聞くことなく姿を消してしまったわけだから、文句の一つも言わずには居られない、という心境になっていてもおかしくはない。
「どこまで知ってる?」
 お茶を出して相手の対面に腰を下ろして、まずは相手がどこまでこちらの事情を知っているかを問いかける。
「多分、それなりに。ざっくり、ゲイバレして離婚。慰謝料・養育費その他諸々で、実親からも縁を切られて、現在は縁もゆかりもないここに辿り着いて、一応は正社員の仕事についての一人暮らし。恋人の影はなし」
「調べるの、結構金かかったんじゃないのか」
「まぁ、それなりに。でも、どうしても確かめたいことがあって」
「確かめたいこと?」
「俺と恋人になりたい気持ちがあるかどうか」
「え……?」
「慰謝料も養育費も一括で払って、色んな人と縁切って、今、なんの柵もないフリーってことでしょ? その状態なら、俺と、恋人になっても問題ないんじゃないの、って」
「いや、それは……」
「俺のこと、嫌いになったから切ったわけじゃないよね?」
 もちろんそうだが、正直彼の言葉の意味が理解できない。どう考えたって、こちらが家庭で解消できないストレスやら性欲やらを解消するために会っていただけの関係だ。金銭のやり取りこそしていないが会えばそれなりのものを奢ったりプレゼントしたりしていたし、金の切れ目が縁の切れ目になって当然な相手だったはずだ。
「それともやっぱ、ちょっと贅沢させれば足開いて好き勝手させてくれる、都合がいい相手でしかなかった?」
「そんなはずないだろっ」
 思わず否定はしたけれど、だからといって、彼と恋人になりたいだとかを考えたことはない。というか彼に限らず、男の恋人を持つという人生を、今まで一度だって考えたことがなかった。
 ああ、でも、彼が言う通り、色々なものとの縁が切れて、何の柵もなくなった今は、男の恋人を作っても問題はないのかも知れない。
「いやでも、俺は、お前に執着してもらえるような男じゃ……」
 贅沢させれば足を開いて好き勝手させてくれる、などと思っていたつもりはないが、自分の欲望を開放して好き勝手するようなセックスばかりしていた自覚はある。
「あなたを本気で惚れさせて、あなたが俺なしじゃ居られなくなったら、今度は俺があなたを、捨ててやりたいんだよね」
「え、あ、ああ……なるほど」
「って、そこで納得しないで欲しいんだけど。てかそう言われたら納得して、俺の復讐のために恋人になってくれたりするの?」
「俺なんかに構ってる時間が無駄になるんじゃないのか、とは思うが、俺に復讐しないと次の相手に行けない、みたいな話なら、まぁ……」
 相手は呆れた顔になって、深々とため息を吐いている。
「じゃあそれでいいや」
「それでいい?」
「俺の復讐に付き合って」
「本気か?」
 本気だと言った相手は連絡先を交換したあと、また来るからと言ってあっさり帰っていったが、それから本当にちょくちょくと顔を見せるようになった。
 そこそこの距離があるのにものともせずやってきて、この安アパートに嬉々として泊まっていく。セックスも今まで通りでいいというが、ここに住みづらくさせてやろうという意図があるのかと思いきや、必死に声を出さないようにと気を遣っている。
 声を出すまいとする相手を追い詰めて、こらえきれずに声を上げさせる瞬間にたまらなく興奮することを、知られているからかも知れないが。
 とっくに本気で惚れている。というよりも自覚が追いついてきたという感じで、彼のことを手放しで愛しいと思うようになっている。もう、彼なしじゃ居られない状態になってそうだとも思うけれど、また来るねと満足気に笑う彼は、まだしばらく復讐を遂げる気がなさそうだった。

1ヶ月経過したので、今回の更新期間は終了します。
次回の更新は10/26(水)からの予定です。

 
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捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか

 早起きは三文の徳とは言うが、たまの休日は思う存分眠って置きたい。とは思うものの、妙にスッキリとした目覚めによりどうにも二度寝出来そうにはなく、仕方がないので諦めて起き上がる。
 早いと言っても早朝と呼べるほど早い時間ではないが、それでもこんな休日はめったに無いので、いっそ朝の散歩にでも出かけようかと思いたち適当にあちこち歩いてみた後、ファミレスに寄ってモーニングメニューを堪能した。
 睡眠時間確保には失敗したが、なかなか良い出だしだ。などと自己満足で帰路についた途中、珍しい人物が珍しい店舗へと入っていくのを見かけて、とっさにその後を追って同じ店舗へと踏み入ってしまった。
 ご近所さんのその男とは小学生の頃に何度か遊んだことがある。といっても確か5つほど年齢が離れていて、中学も高校も同時期に在籍したことがない。小学生の時に遊んだと言ったって、遊び相手のメインは彼の兄であって、幼い彼はオマケでしかなかった。
 その兄とも、中学くらいまではそれなりに交流があったが、別の高校に進学してからはわざわざ連絡を取り合って遊んだりはしなくなっている。そもそも高校卒業後に実家を出たと聞いた気がするから、弟以上に顔を合わせる機会がない。
 まぁ弟の方だって、姿を見かけることなどなかなかないのだけれど。なんせ母が仕入れてくるしょうもない噂通りなら、せっかく入れた高校を早々に退学になりかけるような、荒れた生活をしているようなので。
 そんな男が、開店まもない書店に入っていくだなんて、ちょっと良からぬ想像が働いてしまうってものだろう。万引の現場を目撃するようなことがあったら、さすがに止めてやろうと思っていた。
 兄とだってさして仲が良かったわけではないが、彼の家庭環境や生活が荒れるに至った事情を漏れ聞いてしまう立場として、同情めいた気持ちがあるのは認める。一緒に遊んでいたころは、素直な一生懸命さで、兄の背を追いかけてくるような子だったのを覚えているせいもある。
 しかし、周りを気にする素振りを見せながら彼が向かった先は、はやりの漫画やらが並んだ棚ではなく、ペット関連の書籍が並んだ一角だった。そのままこっそり盗み見ていれば、どうやら猫の飼い方についてを立ち読みしているらしい。
 随分と真剣な表情で読み進めていく姿を見ていたら、思わず名前を呼びかけていた。
「ひっ……」
 相当驚かせたようで、大きく肩を揺らしながら小さな悲鳴を漏らした相手は、それでもすぐに振り向いて、怖いくらいにこちらを睨みつけてくる。
「誰だ、お前」
 そう聞かれるのも仕方がない。なので名前を告げて、兄の友人だったと伝え、小学生の頃に一緒に遊んでいた話と共に当時のあだ名を教えてみた。どうやら記憶の片隅に引っかかるものがあったようで、一応は名前を知られていることには納得できたらしい。
「で、何の用だよ」
「用、っていうか、気になっちゃって。猫、飼うのか?」
「んなわけねぇだろ」
「じゃあ猫好きなの?」
「うっせ」
 手にしていた本を思い切り平台の上に叩きつけると、早足にその場を去っていく。
「あ、こらっ、売り物だぞ」
 慌ててその本を手に取り、破損がないことを確かめてから元の場所と思しきところへ戻している間に、相手の姿はすっかり見えなくなってしまった。
 そんなことがあってから数日、母親が仕入れてきたしょうもない噂話で、彼が虐待していた子猫が保護された、という話を聞いた。
 あんなに熱心に猫の飼い方を立ち読みしていた男と虐待とが結びつかない。どうせ、猫にかまっている姿を誰かに見られて、あの調子で対応した結果虐待と思われた、とかじゃないのか。
 ありえそうすぎて苦笑するしかない。
 それからなんとなく、猫が保護されたという場所を気にかけるようになって更に数日、ぼんやりと立ち尽くす彼の姿を見つけて、我ながら懲りないなと思いながら名前を呼んでみた。
「またあんたかよ」
 少しうんざりした顔は以前に比べて明らかに元気がない。というよりもなんだか疲れた顔をしている。
「で、今日は何?」
「ここに居た子猫は保護されたって聞いたけど、お前、虐待なんかしてないよな?」
「そ、っか……」
 一瞬驚いた顔をしたけれど、でも何かに思い当たったのか、一つ息を吐き出すとくるりと向きを変えて歩き出す。その腕を思わず掴んで引き止めた。
「あー……虐待したつもりはねぇけど、まぁ、あいつらが無事保護されたってなら、俺が虐待してたんでも別にいーわ」
「もしかして、居なくなった子猫心配して、探してた?」
「うっせ。てか放せよ、腕」
 強引に振りほどくことも出来そうなのに、おとなしく立ち止まっている彼をこのまま放したくないと思ってしまった。
「えっと、……あ、じゃあ、飯でも食いに行く?」
 我ながら、何を言っているんだと思ったけれど、呆れられて仕方がない場面で、なぜか相手はふはっと笑いをこぼす。
「じゃあ、ってなんだよ。てかそれって当然奢りだよな? 金ねーし、奢りなら行ってやってもいいけど?」
「もちろん奢る」
 食い気味に肯定すれば、相手はますますおかしそうに笑い出してしまったが、笑う顔に昔の面影が重なって、なんとも言えない気持ちになった。
 頭の片隅では、これ以上深入りしないほうが良いとわかっているのに、その反面、いっそもっと深く関わってしまいたい気持ちが湧いている。

有坂レイさんは、「朝の書店」で登場人物が「夢中になる」、「猫」という単語を使ったお話を考えて下さい。https://shindanmaker.com/28927

描写ないけど視点の主は高校卒業後就職している社会人です。

 
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酔っ払いの戯言と笑い飛ばせなかった

感謝しかないのでの父側の話です。少し未来。

 好きになった女性は片手の指で足りないくらいには年上のバツイチで子供も居たから、結婚する時にはけっこう揉めた。特に自分の親には相当難色を示されていたから、絶縁上等という気持ちで婚姻届を提出してしまった。
 だから妻となった女性が結婚からほんの数年足らずで他界してしまった後、血の繋がらない息子をどうするか、という話になった時に、愛する妻の忘れ形見なのだから当然このまま自分が育てると啖呵を切ってしまったのも、結婚に反対していた奴らのそれみたことかという顔や態度に腹がたって仕方がなかったから、というのが大きい。
 意地を張っていた、という自覚はある。
 幸いにして彼女の残した一人息子は少年ではあったが幼児というほど幼くはなかったし、母子家庭だった時期に彼女によってある程度鍛えられていた家事能力もあり、少々いびつな父子家庭を維持することにも協力的だった。
 そうして気付けば息子も酒が飲める年齢を超えて数年経過し、そろそろ自分が結婚した年齢に近づいている。
 そう気づいてしまえば、いつ、結婚相手を連れてきてもおかしくないのだ、ということにも思い至った。
 どんな女性を連れてくるんだろう、と楽しみ半分寂しさ半分心待ちにしているのだけれど、そっち方面の話題をふるといつの間にやら過去の自分の話をしていて、肝心の彼の恋愛事情や結婚感が聞けていない。親の惚気話なんて聞いて楽しいのかとも思うが、彼にとっては貴重な母親の話、という意味で楽しまれているのかも知れない。
 そんな中、いつもより酔いが回っているらしい相手からようやく聞き出せたのは、今現在お付き合いをしている女性はいない、という話で、更には今のところ結婚願望も全くないという。
「なんで!?」
「なんで、って、言われても」
 驚きで声が大きくなってしまったのを苦笑されながら、今の生活に満足しきってるからかなぁ、などと言われてますます驚いた。
「満足って、お前、こんなおっさんとの生活に満足してちゃダメだろ」
 二人の生活が上手に回せるように互いが努力してきた結果、という意味では誇らしく思う気持ちもないわけではないが、それでは生活に華がなさすぎじゃないのか。というよりも、自分は彼女との結婚生活が楽しくて仕方がなかったし、愛する女性と一緒に暮らす幸せを、彼にも存分に堪能して欲しいと思う。
「もしかして、俺みたいに愛する女に先立たれたら、みたいな心配でもしてる?」
 一緒に酒を飲むようになってからは、酔った勢いで、妻に先立たれて寂しい気持ちを吐露することもあった。
 まぁ、だからお前が居てくれて良かった、的な感謝も告げているのだけど。どちらかというと、酔った勢いで彼と父子として暮らしてきた日々への喜びが溢れてしまうのをごまかすみたいに、彼女との思い出をあれこれ語っている節もあったりするんだけど。
「でも俺は、あのとき強引にでも結婚に踏み切ってよかったって、胸張って言えるぞ?」
 もちろん自分と同じ様に愛する相手に先立たれる可能性もあるけれど、それに怯えて結婚そのものを忌避するのは馬鹿げている。なのに。
「わかってるよ。わかってるから、結婚しなくていっかな、って話」
「いやそれわかってないだろ」
「あー、じゃあ、父さん以上に愛せる誰かを見つけたら、考える」
「え?」
「俺は愛する人と一緒に暮らす生活するなら、相手は父さんがいいから、結婚はしなくていいし、今の生活に満足しきってる」
 ニコリと笑って見せた後、へにゃっと笑み崩れて、そのままヘラヘラと笑い続けている相手を見る限り、冗談だった……
 そう思えたら良かったのだけど。酔っ払いの戯言だと、一蹴するべきなんだろうけれど。
「まぁだから、孫は諦めて貰うしかないけど、一人にはさせないから安心して」
 バカ言ってんなと笑い飛ばすことは出来なくて、頭の片隅にはホッとしている自分も居て、そんな言葉を喜んでしまう自分が情けなくて、なんだか泣きたい気分になった。

有坂レイへのお題は『笑い飛ばしてしまいたかったのに』です。https://shindanmaker.com/392860

 
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自棄になってても接触なんてするべきじゃなかった

 夜の相手が欲しい時に利用するその店には、あまり顔を合わせたくない人物も出入りしていて、普段ならその姿が見えた段階で回れ右して別の店を利用するか諦めるかするのだけれど、その日はどうにも自暴自棄になっていて、わざわざ相手の目に留まる様に行動し、そのまま相手を引っ掛けた。
 その段階では、わかってて自分の誘いに乗ったのか覚えていないのか判断がつかなかったけれど、多分、相手は覚えていない。まぁ彼とのいざこざがあったのはもう10年ほど前の話で、あの頃は互いに学生でもあったし、相手はともかく自分の方は減量に成功して見た目もそれなりに変わったから、気づかれなくても納得ではある。
 連れ込んだホテルの一室で、酷くして欲しいと頼んでみたら、相手は平然とした顔で、どういう方向でと問うてくる。罵って欲しいのか、肉体的に痛めつけて欲しいのか、オナホみたいに扱って欲しいのか、それとも快楽責めでもしてあげようか、と。
 この相手に優しくされたくなかっただけで、好きに扱ってくれという意味での酷くして、だったから、一番近いのはきっとオナホ扱いだった。なのにちょっとした好奇心で、快楽責めなんて出来るのかと聞いてしまった。
 興味あるんだ? と意地悪そうに笑う顔に、昔の記憶がチラついてイライラする。だから、そんな自信あるんだ? と煽り気味に返してやった。
 フフンと笑いながらその体で思い知ればと返されて、せいぜい楽しませてくれよと応じたときは、まさか、こんなことになるとは思っていなかった。
 せっかくラブホだしと、室内に置かれたアダルトグッズの自販機から次々と玩具を取り出した相手に、結局そういったものに頼るのかと鼻で笑ってられたのは最初だけだ。結局の所、そんな無機物相手にどこまで感じられるかは、使い手の技量に掛かっている。
 自慰行為に玩具を利用することはあったが、自分の意志で動かすのと、他者の手で使われるのはあまりに違った。酷くしてと頼んで始めた快楽責め、というのも大きいのだろうけれど、弱い場所を的確に探られて、執拗に責め立てられるとどうしようもない。
 最初のうちは比較的緩やかな刺激で何度かイカされ、こんなもんかと思っていたのに。どうやら、こちらの体力がある程度削られるのを、そうして待っていただけらしい。
 強い刺激に逃げ出したくなったころには、相手にがっちりホールドされて、そこからが多分、本当の意味での快楽責めの始まりだった。
「ぁ、ぁ゛あ゛っ、や゛ぁ」
「いいよ、イキなよ」
「も゛、やだぁ、む゛り、ぁ゛、むりぃ」
「だいじょぶだいじょぶ」
 射精できなくなってからが本番だよと笑う相手の手には貫通型のオナホが握られていて、もちろん自身のペニスがそれを貫いている。お尻に突き刺さっているバイブも、相手の手によってしっかり固定され、ウネウネとした動きが前立腺を抉り続けていた。
「ぁ、ぁ゛、ああ゛っ」
 ブルブルと体が痙攣し、絶頂する。お尻の穴もギュウギュウとバイブを締め付けているのに、前立腺を抉る動きはそのままだから、イッても終わらない快感に、いい加減おかしくなりそうだった。

 いつ意識を手放してしまったのかわからない。気づいた時には部屋の中は明かりが落とされていて、相手が隣ですこやかな寝息を立てていた。
 体を起こすとあちこちが痛い。普段使わない筋肉を酷使したせいでの、いわゆる筋肉痛だ。
 どうにかベッドから抜け出してシャワーを浴びに行く。意識を手放した後放置されはしなかったのか、ある程度後始末は済んでそこまでベタついてはいなかったが、だからってそのまま服を着込むのは躊躇われた。
 そうしてバスルームから戻ると、部屋の明かりがついていて、相手がベッドの上にあぐらをかいて座っていた。
「満足できた?」
 こちらの姿を認めるなり掛けられた言葉がそれで、ムッとしながらもおかげさまでと返しておく。想像以上の行為で望み通りなんかではなかったが、相手の言葉通り、快楽責めというものをこの体で思い知ることは出来た。
「じゃあ、俺と付き合う?」
「意味がわからない」
 即答で返せば、だって俺昨日イッてないんだよねと返されて、どうやら昨夜は玩具以外突っ込まれなかったらしい。
「途中で意識飛ばしたのは悪かった。けど、抱かなかったのはそっちの意志だし、お前となんか二度とゴメンだ」
「酷っ。満足したって言ったのに。てか酷くしてっていったのそっちなのに」
 あんなに頑張ったのにと言われたって、もともと一夜限りの相手を探していたのだ。じゃなきゃ、こいつを誘ったりするわけがない。
「お前と恋人とかありえない」
「それってもしかして、昔のこと、まだ引きずってるから?」
「は?」
 認識されていないと思っていたから、突然昔のことと言われて焦った。
「避けられてるなとは思ってたけど、じゃあなんで、昨日は俺を誘ったの?」
「覚えて……ってか俺ってわかってたのか……」
「そりゃあ、好きな子、忘れたりしないだろ」
「は?」
「好きだったんだよ、お前のこと。でも素直にそれを認められなくて、お前にキツくあたってたのは認める」
「はぁ? 好きだったからいじめた、なんてのが通用するわけ無いだろ。俺はお前が大っ嫌いなんだけど」
「だよね! 知ってる!」
 だから今まで声掛けたりしなかったのに、でも昨日は誘ってくれたから期待しちゃったんだよと嘆く相手に、なんとも言えない気持ちになる。
 そして結局、チャンスを頂戴と食い下がる相手に絆された。といっても連絡先を交換しただけだけれど。
 ちょっと仕事で嫌なことが続いて自棄になってたからって、やっぱり誘うべきじゃなかったんだろう。今更知りたくなかった事実と、相手の押しの強さに辟易する。なのに、筋肉痛という副作用はあるものの、意識が落ちるほど強引にイカされまくった体と心は、随分とスッキリしているから困る。

有坂レイへの今夜のお題は『鳴かせる / 大人の玩具 / 唐突な告白』です。https://shindanmaker.com/464476

 
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罰ゲームなんかじゃなくて2(終)

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 まぁ男同士だし、好きって思って告白したんだから嫌悪やらはないものの、そこまで行為に積極的な興味はなくて、でもせめて、あの笑顔は見せて欲しいなと思う。二人きりと言っても、こちらの友人がいない状態を二人きりと称しているだけで、実際は周りにたくさんの他人がいるわけで、その状態では無理なのかなとも思うんだけど。
 だって、あの笑顔を見たとき、そこに居たのは野良猫一匹だけだったから。
 今度、空き時間にあの場所へ二人で行ってみようか。そういや、なんで好きになったのか、なんて話はしたことがなかった。
 これはちょっといい案かも知れない。
「ねぇ、このあとだけど、もうちょっと時間ある? ちょっと行きたいとこあるんだけど」
 思い立ったが吉日とばかりに切り出せば、向かいで本日のA定食を食べていた相手が、質問とはまったく関係のない答えを返してきた。
「今日で1ヶ月経ったけど」
「ああ、うん。え、もしかしてお祝いとかしたい系?」
 言われてみれば確かに、あの告白から今日で一月経過している。ちょうど学食に居るし、何かデザートでも買って来たほうがいいだろうか。
 なんて思った矢先。
「これ、いつまで続ければ満足なの?」
「は?」
「もしかして、期限とか決めずに始めたの?」
「は? え? そんなの決めて恋人するほうが珍しくない?」
「そりゃ普通の恋人はそうかもだけど、俺達は違うでしょ」
「え、なんで?」
「なんで、って……罰ゲームみたいなもんじゃないの?」
「は? はぁあ?」
 あまりに驚いたせいか、相手もなんだかバツが悪そうな顔になりながらも、いつネタバラシがあるのか待ってるんだけど、と続けた。
「こっち来る前、そっちでなんかすごい盛り上がってたし、やたら怖い顔して近づいてきたと思ったら、好きです付き合ってください、なんて言い出すから、何か掛けでもしてて、負けた罰ゲームで言わされたんだと思ったし、巻き込まれた腹いせに困らせてやろうとして、いいよって言ったのに、なんか、いつまでも終わる気配がなくて……」
 ああ、なるほど。やけにあっさりOKされたと思ったが、そんなことを考えていたとは。
 こちらの好意はどうやら、一欠片だって相手には伝わっていなかった。
「俺は終わる気ないけど、ネタバラシが必要なのはわかったから、このあと、ちょっと付き合って」
 あの場所へ二人で行ってみようと思いついた後で良かったなと思う。
 相手が食べ終わるのを若干急かしながら待って、相手の都合は聞かないまま、やや強引にあの場所へと連れて行く。脇道からそれようとした時にはさすがに少し抵抗されたから、その手を取って有無を言わさず引っ張っていった。
「こんなとこ連れてきて何する気? もしかして、怒った?」
 人気のない建物の裏手に連れ込まれ、相手は少し怯えているようだ。
「ここでさ、猫なでて笑ってた記憶、ない?」
 数ヶ月前の話だと言えば、思い当たることがあったらしい。
「ああ、うん。そういえばそんなこともあった、かも」
「俺、あのとき、猫相手に笑ってる顔が忘れられなくて、お前のこと気にするようになって、気づいたら惚れてたっつうか、どんどん好きになってて、あいつらがあの日やたら盛り上がって騒いでたのも、俺が怖い顔してたのも、俺がお前に玉砕覚悟の告白する気になったからで、罰ゲームとかなんもない。だから俺はOKされて普通の恋人になったつもりでいたし、1ヶ月経ったから終わり、なんて気もないんだけど」
 でも罰ゲームに嫌がらせで付き合っていただけなら、相手はもう、別れたいと思っているだろうか。なんていうのは、多分杞憂だ。
 完全な二人きりが功を奏しているのか、随分とまとう気配が穏やかで、安堵の表情を浮かべる表情もいつもに比べて随分と柔らかい。
「ねぇ、俺のこと、1ヶ月付き合って、ちょっとは好きになってくれてる?」
「それ、わかってて聞いてるだろ」
「うん。だって嬉しくて」
 えへへと笑えば、つられたように相手もクスリと笑う。あの日見た柔らかな笑顔に似ていた。
 キスがしたいなと思ってしまって、内心苦笑を噛みしめる。恋人らしいことが何もなくたって、せめて笑ってもらえれば満足するかと思ったけれど、そんなことは全然なかった。

<終>

さ~て、今週の有坂レイにぴったりのBLシチュエーションは~?
1.賭けに負けて
2.同級生
3.好きすぎて止まらない
の三本です!!
来週もお楽しみに~!
https://shindanmaker.com/562913

 
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罰ゲームなんかじゃなくて1

 同じ学部学科の同級生であるそいつとは、必修科目で顔を見る程度の仲でしかなく、かろうじて名前はわかっているが、多分向こうはこっちの名前も把握してないんじゃないかと思う。
 大学の敷地はそこそこの広さがあるし、いくつも並ぶ校舎の脇道ですらない建物の影にいたそいつに気づいたのは、休講を忘れて早く来すぎてしまい、時間を持て余して一人きりで構内散策をしていたことが大きいと思う。
 耳は割と良い方で、話し声が聞こえて近寄ってみたら、そいつが入り込んだ野良猫を構って笑っていたのだ。
 猫に向かって柔らかに笑う顔を見て、そんなふうに笑うんだと初めて知った。だってあまり人とつるむ気がないようで、誰かと話してる姿すら滅多に見かけないし、その時には笑顔なんて見せてなかったから、無愛想なイメージしか持っていなかった。
 そこで声を掛けてしまえば良かったのかも知れない。けれど多分相手は一人で行動するのが好きで、今ここに自分が踏み込んだら、せっかくの猫との時間を邪魔してしまうだけだろう。
 結局相手が猫と別れるまで見守ってしまった上に、自分がいる方向とは別方向に去っていったから、見てたということすら知られないままその時間は終わった。
 気づかれなかったのに、その直後の講義で同じ教室内に相手の姿を見つけて、なんだかソワソワしてしまったし、あの光景が忘れられなくて時々あの場所を覗くようにもなってしまったけれど、その後同じ光景に出会えたことはない。あの野良猫とすらあれっきりだし、夢でも見てたと忘れられたなら、良かったのに。
 しばらくして、そんなにあいつが気になるのかと、普段つるんでいる友人たちの一人に聞かれた。普段つるんでいる連中には、相手を意識しているのが丸わかりらしい。
 あの日のことは誰にも話していないし、なんとなく教えたくもなくて曖昧に濁していたら、からかい混じりに惚れただの何だの言われるようになって、そう言われ続けると、なんだか本当に相手を好きな気がしてくるから怖い。
 あの笑顔をもう一度みたいとか、できれば自分に向けて笑ってほしいとか。それってつまり、相手からの好意を欲しているってことで、好きってよりは好きになって欲しい方向だとは思うものの、あれをきっかけに相手に惚れてしまったのだと思えないこともない。
 なんてことをぐるぐると考えて、思い込みとも言える想いをバカみたいにつのらせて、相手も一緒の必修科目に身が入らないというやばい状況になり、いっそ玉砕してこいと周りに囃し立てられるまま、講義終わりに呼び止めて告白した。
 さすがに驚いたみたいで目を瞠ってまじまじと見つめ返されたのが印象的で、それすら、珍しいものを見たと思って食い入るように見つめ返してしまう。
 それに対して嫌そうに眉を寄せたから、絶対に断られると思ったのに。というよりも、そもそもが玉砕覚悟の突撃だったのに。
「わかった。いいよ」
「え?」
「おつきあい、してみても」
「え、え、まじで? いいの? じゃあ、じゃあっ、とりあえず連絡先交換しよっ」
 まったく熱のないそっけない対応ではあったが、OKされたのには違いなく、食い気味に連絡先の交換を持ちかければ、やっぱり引かれ気味ではあったものの、渋られることなく教えてくれた。
 やっぱり人とつるむのはあまり好きではないらしく、こちらの友人たちの中に引き入れるのは失敗したけれど、こちらが友人と離れて彼の隣で講義を受けることや、友人たちとは離れた席での学食利用などは出来るようになって、ポツポツとではあるが相手のことを教えてもらって、最初のうちはひたすら毎日が楽しくて仕方がなかった。
 でも友人たちに指摘されるまでもなく、恋人らしい進展はなにもない。構内で二人で過ごすことはあっても、休日に一緒にでかけたことすらないのだから、正直言えば未だ友人以下の関係だった。

続きました→

 
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