夕方の廃ビルで

 逢瀬の場所は相続で揉めてるだかなんだかで、ずっと放置されている廃ビルの中のとある一室だ。
 廃ビルとは言っても、あちこちの窓やドアやらが破壊されているような崩壊ぶりはなく、簡単に外部の人間が入り込めるような状態ではない。
 そんな場所へやすやすと入り込めているのは、今現在、何の収入にもならず、売ることも建てなおすことも出来ず、けれど固定資産税は払わなければならないという、やっかいなこのビルの管理者が自分の親だからだ。もちろん親の許可など取ってはいないけれど。
 時刻は夕方の5時。合鍵を渡してある恋人がひっそりと訪れる。
 なぜこんな廃ビルを逢瀬の場所に利用しているのかといえば、自分たちの関係が公に出来ないものだからだ。
「なんだよその花」
「ビルの入り口近くに置いてあった」
 お前は気づかなかったのかと問われ、知らないと答えた。
「そっか。まぁちょっと影になってたしな」
「で、なんで持ってきてんの?」
「お前宛だと思ったから?」
「は? なんで俺宛?」
 さっぱりわからないと首を傾げれば、含み笑いで近づいてくる。
 差し出された花束を思わず受け取れば、その花束越しに最初のキスが落とされた。
「知ってるか? 最近このビル、幽霊出るらしいぞ」
 キスの合間に楽しげに囁かれて、上がる息に乗せて知らないと返す。
「事故死だか自殺だかした男の霊らしい。だからな、この花はその幽霊のための献花じゃねーかと思ってな」
「んで、それがどうして俺宛?」
「わからないか?」
「全然わかんねぇよ」
 ぽつりぽつりと会話を重ねながらも、着々と服は剥かれていて、顕になった肌の上を手がすべっていく。それは的確に快楽を引き出していくから、アッアッと小さな吐息が漏れだした。
「ほら、お前のその声」
「なんだよ。声は殺すなって言ったのアンタだろ」
「そうそう。俺はお前の喘ぎ泣く声大好きだからな」
 けどな、と話は続いていく。
「お前が感極まってすすり泣く声が、外に漏れてんじゃないかと思うんだよなぁ」
「えっ?」
「まぁかなりのボロビルだからな。というわけでな、幽霊の正体って多分お前なんじゃないか?」
 そんなことを聞かされて、のんきに喘いでる場合じゃない。けれど必死で声を抑えようとしても、普段と真逆の状態がそう簡単に続くわけがないのだ。結局、本日も盛大に喘ぎ泣いたことは言うまでもない。

レイさんは、「夕方の廃ビル」で登場人物が「結ばれる」、「花」という単語を使ったお話を考えて下さい。
#rendai http://shindanmaker.com/28927
 
 
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