聞きたいことは色々27

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「そういや好きって言わされたり言われたりしないセックスしてるんだっけ。じゃあ、いつか俺とする時には、そういうセックスをしようか」
 一瞬気まずそうな顔をしたけれど、すぐに良い案を思いついたとでも言いたげな笑顔でそんなことを言い出す。彼に聞かせるために口に出したのは明白だ。
「あー……じゃあ、そのときは、よろしくお願いします」
 少し迷って、結局そう返した。振られた後の話なんだから、はっきりと優しく甘やかすセックスをしてくれるって言うなら、それに甘えてもいいような気がしたし、この人が本当は誰を好きだって別にいいかと思ってしまった。
「おい、何の話だ?」
「浮気したくないし3人でする気はなくても、お前と別れた後ならいいってさ。だからいつか振られちゃったら、俺が目一杯優しいセックスして慰めてあげるね。っていう予約? 宣言? かな」
「恋人になれもしないのに?」
「なれないから、俺とするのは1回だけって言われてるよ」
「は? なのに好きだの言うのか? てか恋人になれない男からなら、口説かれても嫌じゃないわけ?」
「口説かれるのは嫌ですけど」
 最後のはこちらへ向かっての問いだったので、当然否定を返しておく。
「じゃあ、よろしくお願いします、ってのはなんだよ」
「だって口説かれないと思ってるんで」
「好きだよ可愛いよ愛してるよって、いっぱい言うって言ってたが?」
「俺が喜ぶように、安心して抱かれていられるように、そういう言葉を惜しまないって言ってくれてるだけですよね?」
「って言われても、お前ピンとこないだろ?」
 それとも多少は理解するようになったのかなぁ、と続けた後。
「お前この子抱きながら、可愛い愛しい好きだ、みたいな気持ち、湧いてきたりする?」
「好きだの愛してるだのは言ったことがないからわらないが、可愛い、と言うと嬉しそうにするのは知ってるし、そこそこの頻度で言ってると思う」
「それは喜ばせてあげたい気持ちなら湧いてるって意味なの?」
「さぁ、そう言われると難しいな。嫌がられたり怒られたりしないから多用してるだけという気もする」
 やってる最中に相手を口説かないセックスなんてこいつ以外に経験がなくて、と続いた言葉に、本当に恋人とただイチャつくようなセックスは知らないんだと諦めに似た気持ちが湧いた。
「お前、ほんっと、感謝しろよ」
 怒気を孕んだ低い声が隣から響いてビックリする。最後告げられた知らない名前が、多分、この人の旦那で彼の叔父の名前なんだろう。
「なんだよ突然」
「俺に新しい恋人だのパートナーだの作る気があったら、この子を絶対お前から奪ってやるのに、って意味だよ!」
「何言い出してんだ、ほんと」
「ってかこいつ見限って俺にしない? って割とマジに思い始めてるんだけど。でも大事にはできても幸せにできる気がしないんだよなぁ〜」
 ごめんねと謝られて、慌てて首を横に振った。
 さっさと死なれたこと以外は最高の旦那で、嫁扱いで側に居られた日々はめちゃくちゃ幸せだった。と盛大に惚気けられたのを思い出して、やっぱり少し羨ましい。
 ちなみに、羨ましくてたまらないって気持ちにならないのは、彼らがどんなセックスを好んでいたかまで知っているせいだ。でも、とんでもセックスを片側だけが求めるのではなく、ちゃんと双方合意で楽しめていたからこその、最高のパートナーだったのかなとも思う。
「あの、気持ちだけありがたく頂いておきます。幸せにできるかまで考えてくれて、無理だからって引いてくれるのも、ありがとうございます」
「ああ、もう、ほんっといい子。てか身元はっきりしててゴム使うの嫌がらないで病気とかにも気を使う男がいいんだよね? あ、あと、プレイっぽいセックスじゃなくてラブラブ恋人セックスが出来る男か。いっそ俺が次の男探してきてあげよっか?」
「おいこら。さすがに怒るぞ」
 何別れさせようとしてんだと語気を強める相手に、だって別れたほうがいいと思ってと返す男は、全く悪びれた様子がない。

続きます

 
 
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聞きたいことは色々26

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 誘ったけどお断りされたよと聞いた彼は、あっさり「なんで」と問うてくる。
「ゴム使うの嫌がる男じゃないし、病気だって気をつけてるはずだし、初対面でも身元は割れてるし、既に充分気を許して見えるけど。あとどっちで誘ったのか知らないけど、そいつタチも出来るよ」
 他の男試してみる絶好の機会じゃないの、みたいな言い方をされて、普通は了承しないものという自身の常識がまたしても揺らぐ気がした。
「俺にも抱かせてって誘ったけど、恋人が居る身で浮気したくないってさ」
 それを聞いて、彼はますます意味がわからないって顔をしている。
「話したんじゃないのか?」
「話したし、俺も交ぜてって誘ったね」
「なら、浮気にはならないだろう?」
「そう思うのは俺らだけで、この子はそう思わなかった。ってだけだろ」
「浮気だなんて思わないから、抱かれ」
「はいストップ」
 抱かれてみたらと続きそうだった彼の言葉を、隣に座る男が遮ってくれた。チラチラとこちらの様子をうかがう気配はあったから、このままだと泣きそうって伝わってるのかも知れない。
「この子が本気で嫌がることはしない、っていうお付き合いしてるなら、余計なことは言わないように」
「そんなに?」
「過去の恋人たちには全然嫌がられなかったんですか?」
 意外そうな顔をされて思わず聞いてしまえば、相手は少し考えたあとで、何かを納得した様子で「なるほど」と言った。てことは、嫌がられた過去がちゃんとあるってことじゃないの?
「確かに今までが通じない相手ではあるか」
「お前、自分がやりたいこと押し通すタイプだったのにな」
 ああ、つまり嫌がられても了承をもぎ取ってたって話か。
「話色々聞きましたけど、なんで俺は今までと違う扱いされてるんですか?」
「なんで、って、口説かれたくないと予防線張られながら付き合うのが初めてだから?」
 色々あったからと濁されたり、叔父さんが亡くなったことが関係ある素振りをされるのかと思ったら、そんな答えが帰ってきて拍子抜けだった。
「というか今までとはあらゆる面が違う恋人だからな」
 聞いたんじゃないのかと言われて、そういや未経験のネコが貴重って言われたのを思い出す。ノンケとかタチとか、彼を抱く気で近寄ってくる男たちが対象だった。とも聞いたっけ。
「俺を好きで寄ってきたわけじゃないとこ食ったし、わざわざ周りに知らせて回る真似はしなくてもしっかり隠す気なんかはない付き合いばっかりだったし、お前から誘ってくることほぼないし、ラブホ禁止とか言い出すし」
「ラブホ禁止!?」
 驚きの声は隣から上がった。
「だって連れてかれるの、変な部屋ばっかなんですもん」
「興奮するどころか、気が散って萎えるんだと」
「する場所に困ってるわけじゃないんだから、お金使わなくてもいいと思って」
「ラブホ行く最大の利点が潰されてる上に、俺のベッドのがいいと言われてまで、ラブホでヤることに拘りないしな」
「へぇえええ〜」
 驚きと感心が混ざったみたいな声を上げたあと。
「でもなんか、らしいね、としか思わないな。プレイっぽいの全般ダメそうというか、普通に抱かれるだけで満足しそうというか」
 トロトロに優しく甘やかされながら、好きだよ可愛いよ愛してるよっていっぱい言われるセックスとか好きそうだよね。と楽しげに言われて、その通りなのに、その通りだとは言えなかった。だって、そんなセックスして貰ったことがない。
「あっ……」
 そしてそれはどうやら相手にも伝わったらしい。

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聞きたいことは色々25

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 とんでもエピソードは確かに色々凄かったけど、いいなぁと思う部分もなくはなかった。だってめちゃくちゃ愛されてたのが伝わってくる。
 恋人交換やら3Pやらは、その後の二人きりでのセックス込みでのプレイで、メインはもちろん二人きりでのセックス。と言われて、なるほどと思ってしまう部分もあった。
 他の男に抱かれて善がれば善がるほど、事後の恋人セックスが嫉妬やらで濃厚になる。らしい。
 まぁ、スゴイ性癖だ、みたいに思う部分も間違いなくあるんだけど。
 双方が納得済みと言うか、どちらかが我慢してそんなプレイに付き合ってるとかじゃないならいいんじゃないかな。あと、参加する別カップルや3人目が同じようにそのプレイを楽しめるなら。
 という部分だけ、ちょっと自分にも関連しそうと言うか、そのプレイに主に巻き込まれてたのが自分の恋人である彼だったわけだけど。
「アイツはともかく、アイツが連れてくる恋人がどこまで納得してたかわからないし、アフターフォロー的なのはけっこう失敗してたんじゃないかって気はするね」
 その後フラレたとか浮気されたとか結構あった気がする、らしい。あと面倒だったのが、この人の旦那さんにちょっかい出そうとしてくるヤツ、だそうで。
「セックスって、恋人ならなおさら体がキモチイイ以外にも大事なことって結構あると思うんだけど、そういうの拾うのが上手い人でさ。多分抱かれると気づいちゃうんだろうね。アイツがたいして自分のこと想ってくれてないな、みたいなの」
 一応、助言と言うか無理して恋人まで差し出す必要はない的なことを言ったこともあるそうだけど、相手の了承はちゃんと取ってると言って変わることはなかったらしい。
「まぁ3人でってなるとアイツもネコ側やらされる可能性そこそこあったし、自分の恋人差し出して俺抱くほうがマシって思ってた可能性もある」
「うぇえっっ!?」
「やっぱドン引き?」
 正真正銘叔父と甥なんだよねぇと苦笑されたけれど、でも子ども出来るわけじゃないからって続いた言葉にそれもそうかと思ってしまったし、そもそも本当に衝撃だったのはそこじゃない。
「えとなんで彼がネコ側に? ってのがまずよくわからなくて。や、抱かれる側も経験あるってのは、聞いてますけど」
 だってネコ役はあなたでしょう? と言えば、相手はますます苦笑を深くする。
「あーそれね。さっきは言わなかったけど、突っ込む棒と突っ込まれる穴が両方あるんだから、両方使えばいいよねってプレイもあるっていうか」
 3人で楽しむ場合の割と定番だと思うよと言いながら、どういう状態になるのかを教わった。
 要は、彼がこの人に突っ込んで、彼の穴に旦那さんが突っ込む的な。もしくは、彼が一番下でこの人が真ん中か。
「ひえぇ……」
「アイツもそれだけは結構わかりやすく嫌がってたかな。特に一番下は嫌だったみたいで、俺がアイツに突っ込んだのなんて2回しかないからね」
「嫌がってもするんですね」
「まぁアイツはちょっと特殊な立ち位置だったのもあるよね。高校退学の理由は知ってるんだよね? 俺らに交じってヤるのが居候の条件だったぽいし、大学の学費出してたのも旦那だったし、拒否権無かったって感じかな」
 嫌がるから面白がってやられる場合もあったけど、お仕置きでやられる場合もあった。らしい。
「お仕置き……?」
「だってアイツ、懲りずに大学内でもエロいことしてたからね。そういや、そんなに人に見せたいなら見ててあげるから恋人連れておいで、ってのが最終的に恋人交換に発展した経緯だった気がする」
「ひえぇ……」
「それで本当に恋人連れて来るんだから、やっぱ血の繋がりを感じるところはあったよね」
「確かに」
 そう答えたところで部屋のドアが数回叩かれて、入るぞの宣言と同時にドアが開く。
「マジか……」
 入ってくるなりなんだそれ。
「全然戻らないから、俺等がヤッてると思っての様子見でしょ」
「ええっ!?」
「あれは交ざる気で来たのに当てが外れた顔だね」
「えええっっ」
 思わずその顔を凝視してしまえば、バツが悪そうにそっと視線を逸らされてしまったから、指摘はきっと当たりなんだろう。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々23

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 時間が必要と思われたのか、相手は口を閉じて待っている。
 過去の経験人数が多そうという想像はしていたし、出会い系やらに抵抗がないこともわかっていたし、その日その場限りの関係が有りだったとしても不思議はないんだけど。積極的に複数人でのプレイやらを好んでいたらしいのは、正直ちょっと信じられない。
 それくらいには、普通に一対一での恋人関係をそこそこ良好に続けてきた。はずだ。
「事実、なんですよね?」
「そうだね」
「なんで俺、そういうの連れて行かれなかったんでしょう?」
 そんな素振りやら気配やらがあったらどうしていただろう。流されて渋々受け入れてしまうよりも、さすがに大慌てで逃げ出しそうではあるから、それがわかってて諦めたんだろうか。
「考えてみたらゲイバーですら、一緒に行ったこと、ないですよ。てか社内に複数いるらしいゲイやバイの人たちも、名前すら聞いたことないかも」
「あいつなりに大事にしたかったから、とか?」
 その可能性あると思う? と聞かれても、わかるわけがない。わからないのに、なさそうって思ってしまったし、なさそうって答えてしまったけど。
 相手は苦笑だけ返してきたけれど、やっぱり同じように思っているんだろうか。
「本当に行為見せたり他人巻き込んだりのプレイが好きなんですか?」
「どうかなぁ。少なくとも抵抗はなさそうだったし楽しんでたとも思うけど、自分から進んでしたいわけではなかった可能性はあるね」
 どっちかって言ったらオフィスでとか公衆トイレでとか、誰かに見られたり知られたりしたらヤバそうってシチュに興奮するタイプっぽいかも? と言われて、それは知ってますと返した。
「つまり、した?」
「してないです。嫌がられない程度に自制する気はあるって言ってましたから、外でキス掻っ攫う以上のことは俺がはっきり嫌がるってわかってるんじゃないですか」
 交際開始の段階で、社内でとかは絶対なしだし慣れとか関係ないんでって釘を刺してる話をしたら、それを律儀に守ってるのが結構信じられないんだよねと返されてしまった。
「嫌だってホント、あいつ口うまいしあの顔利用しまくるし、けっこう自分のやりたいこと押し通すタイプだったから」
 って言っても色々あったのも事実なんだよねぇと困ったように笑う顔は、なんだか泣きそうにも見える。
 多分その色々の大半が、叔父の急な事故死絡みなんだろう。そう思ったら、気軽に何があったんですかとは聞きづらい。
「やっぱこれも本人に聞くしかないかなぁ」
 後で問い詰めようと笑う顔は一転して楽しげだ。
「なんて言ってたか、俺にも教えてもらえますか?」
「もちろんいいよ。てか一緒に問い詰める?」
「あー……それはあんまり。というか、俺が傷つきそうな酷いこと言ってたら、こうオブラートに包んで教えて欲しい的な」
「おけおけ」
 じゃあ連絡先交換しよってスマホを出されたけれど、こちらのスマホが手元になかった。
「カバンの中で充電中ですね」
 正確には昨夜寝室に移動する前にカバンに放り込んだので充電は終わっているはずだが、この人の突然の登場でスマホどころじゃなかった。
「じゃあ後で忘れずに交換しよう。で、けっこう変な話聞かせたと思うんだけど、過去は水に流すというか、好きな気持ちは特に変わらなくて、今後も妙なとこ連れ込んだり無茶な要求されない限りは付き合い続ける、ってことで良さそう?」
「あー……なんか実感湧かなくて」
「ちなみに、この先、そういうことしたいって言われたらどうする?」
 もう一人交ぜようとか、別のカップルと相手交換したプレイしようとか言われたら、と聞かれて、即座に無理ですと返す。
「知らない人とするのなんか怖すぎますって」
「知らない人じゃなかったら?」
 どれくらい親しくなったら俺も交ぜてくれる? と聞かれて、驚くと同時に、そういやこの人も抵抗なくプレイできるんだったと思い出す。しかも既に彼とは経験済みだとも言っていた。
 この人も彼に抱かれたことがあって、しかも話しぶりからして、自分が経験してないような抱かれ方をしてる。という理解が、やっと実感を伴ってやってきた。
 ただ、理解はしても疑問は残る。だって彼にまた抱かれたいと思ってるようには、とても思えない話しぶりだった。
「あの、交ざりたいの意味が……だってまた彼に抱かれたい、みたいな話しぶりではなかった、ですよね?」
「今のは、俺も君を抱いてみたい、っていうお誘いだったんだけど」
 アイツと別れる気があるとか浮気してくれる気があるなら二人で楽しむのでも全然いいよと続いた言葉に、やっぱりかなり驚いて、口からは間抜けな音だけが漏れていく。
「へっ?」
「俺が抱かれるのは旦那と、旦那が抱かれろって連れてきた相手だけだよ」
 嫁って単語で誤解させたのはごめんねという謝罪とともに、頭をサラリと撫でた手がそのまま頬に添えらて、ゆっくりと相手の顔が近づいてくる。

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聞きたいことは色々22

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 恋愛感情で、とは言えなくても、手放したくはないって思ってるみたいよ。と続いた言葉に、やっぱり首を傾げるしかない。
「だってデート中変なことされたり、デート先がヤバい場所だったりはしてないんでしょ?」
「人目を盗んで掠め取るキスのが興奮するとか言って周りに人が居るような場所でキスされたり、なんかちょっと変なラブホに連れてかれたりはしてますよ?」
 部屋からガラス張りの浴室が丸見えだったり、壁やら天井やらに大きな鏡が貼られてたり、拘束するための道具だったり装置だったりが置かれてたり、なんでそんな特殊な部屋選ぶかな、みたいなのを繰り返した結果、最近はもうラブホ利用は基本NGにしてしまったけれど。
 ラブホなんて、致す場所が確保できないわけでもないのにわざわざお金をかけて行くような場所じゃないと思う。だって気が散る要素満載でエッチに集中できない。
「うん、だから、そういう軽いのじゃなくて」
「軽い……?」
「出会い系も怖がって独り身貫いてきた子で、恋人にはなるけど惚れさせないでとか言っちゃうような子を、どう扱うかはかなり迷ったぽいよね。初めての恋人として都合がいいはずとか言っちゃったもんだから、あんまり無茶は出来なかったって感じなのかな」
 好きってバレたら捨てられちゃう、って考えて黙ってたのは大正解だね。と言いながら、伸びてきた手がワシャワシャっと髪をかき混ぜていく。
「好きになったって正直に言っちゃってたら、恋人としてのアイツに色々求めてたら、調子に乗ってどこまで許すか試されてたかもね」
「試すんですか? 振られるんじゃなくて?」
「好かれるのが重くて嫌とか、そういう感覚多分ないよね」
「えっ?」
「本気で惚れられたら飽きてポイ、の言葉の中には、君が想像してない色々があるわけだよ。好きになりましたって言われたら、即もういいやとかなるようなもんじゃないの」
 まぁなんでもさせるなって思われたらそこで終わりなのは事実だけど、そこまでアイツに惚れ込んでから捨てられたって子は多分居ない。らしい。
「え、居ないんですか?」
「アイツが好きだから、アイツが求めることはなんでもする。なんて気持ちが育つような関係、アイツに作るのは無理だよ。だって相手のこと、たいして見てないんだから」
 エッチの傾向がたまたま合致してただけとか、気持ちよければいいって割り切っちゃった子とかは居たよ。と続いた言葉が耳を通り抜けていく。
 相手のことなんてたいして見てない、という言葉が胸に響いて痛かった。そうなんだろう実感は嫌ってほどあったし、すんなり信じてしまえるのに。その事実がやっぱり悲しい。
「振られたり浮気されたりで終わった関係も多かったはずだし、君のことも、慣れたらさっさと次の人に行くだろうって思ってたみたいなとこあるね」
「出会い系やらないって言ってるのに、ですか?」
「それはね、出会える場所に連れて行く気があったっぽいよ」
「出会える場所……」
 ちょっとショックが強いかも知れない話になるけどいい、と前置いてから、さっき言ったデート場所だけどと話が続いていく。
「いわゆる発展場やらハプバーやらに連れ込まれたり、行為見せたり他人巻き込んだプレイしたりとかってのはなかったでしょ?」
「……は?」
「そういうのもありな付き合いが圧倒的に多かったんだよね。というか、いくら家族だからって、アレコレ詳しすぎると思わなかった?」
「え……?」
 まさか、と思うと同時に、旦那が健在だった時には当然俺らも一緒にしてた、という言葉が耳に届いた。
 隣に座る男の顔をマジマジと見つめてしまえば、気まずそうに苦笑を深くしながら、気持ち悪くなってないかと確かめられてしまう。
「気持ち悪く……すみません、頭、追いつかなくて」
 気持ち悪くないのかどうかもわからないくらい、呆然としていた。

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聞きたいことは色々21

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 そりゃ好きとか言われるわけ無いし好きを求められることも無いわと納得すると同時に、なんで恋人として引き止めたのかますますわからなくなったなと思う。欠片くらいは何かしら惹かれるものがあったから、今こんな関係になってるんだと思ってたのに。
 いやまぁ、カラダがって話なのかもだけど。でもカラダに執着されてる実感は全くと言っていいほどないから、多分違う気がする。
「あの人、なんで俺を恋人にしたんですかね。いやまぁ、俺が恋人でもない相手に抱かれないだろうって思ったから、とりあえず恋人ってことにして抱いた。てのはわかってるんですけど、俺はあの晩限りの恋人だって思ってたし、恋人続ける気なんか全然なかったのに」
「あーそれはねぇ」
 自覚ないと思うけどと苦笑しながら、めちゃくちゃ貴重なネコちゃんだからだよと教えてくれたけれど、さっぱり意味がわからない。
「なんすかそれ」
「自覚して抱かれたい側のゲイで誰とも未経験のままな男が、あいつの手が届く範囲でうろついたことが多分ないんだよね。タチって知ってて寄ってくるネコちゃんは大概色々経験済みで、そういう子にはあまり惹かれないみたい」
 ノンケだのタチだのに積極的に手を出すのは、男に抱かれた経験がないって部分が大事なんだと思う。と続けた相手は、つまりは処女厨なんだよアイツと言って、更に苦笑を深くした。
「処女厨……」
「人の手垢がついてない子がいいみたい。まぁ、それは君を手元に置き続けて自覚したっぽいんだけどね」
 昔は、抱く気で寄ってきた男を抱いたときの達成感がたまらない、なんてことを言ってたらしい。
「多分ずっとそういう、寄ってきた男を落として抱くゲームしかしてなかったし、好きって言ってっておねだりも、それを言わせるゲームを楽しんでただけなんだよね。そんなゲーム仕掛けられてる方はたまったもんじゃないけど」
「過去の恋人のことも、好きって言ったりはしてなかったってことですか? 言わせるだけで?」
「それは言ってたかな。だって抱くつもりで寄ってきた男に足開かせるんだよ? 甘えるのも、甘やかすのも、得意だったと思うよ」
 口説かないでって言わなかったら多分君にも当たり前に言ってたよ、と続いた言葉に、驚きで声が詰まった。
「えっっ!?」
「好きって繰り返してデロデロに甘やかしたり、好きって言ってっておねだりしたり、それって結局、相手を自分に惚れさせるための手段だからね。少なくとも、アイツにとっては」
 恋人とただイチャイチャしたくて好き好き言い合う感覚とか知らないと思うよと言ったあと、もったいないよねぇと同意を求められたから、この人は旦那だったという彼の叔父と、ちゃんとそういう好きのやり取りが出来る恋人だったんだなと思う。
 そういや、最初に抱かれる前のやりとりで、本気で口説いてもいいけど後々恨まれそうって言われたような記憶がある。抱かれずに帰るならお前を本気で落とすゲームを始めるって言われて、恋人になって寝室にって流れだった。
 好きって言い合う行為を相手を惚れさせるための手段としか認識してないから、口説かないで惚れさせないで落とすゲームを始めないでっていうこちらの主張に合わせて、そういう言葉のやり取りがないセックスをしたってことなんだろうか。
「でもデートするのは好きって言ってたし、デートするから恋人でデートしないでセックスだけするのはセフレだって言ってあちこち連れ回されて、その、ちゃんと恋人として扱われてるって感じるし、恋人とのイチャイチャがわからないって感じでもないような?」
「それそれ。アイツが卒なく恋人やってるっての、笑うよね」
 言いながら、本当にまた楽しそうに笑っている。

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