ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書6(終)

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 互いのオススメ本を読みあって、ランチタイムに感想を言い合って、時々セックスする。という関係に、どうやら落ち着いてしまった気配がする。
 彼は自分を抱く相手を見てみたいという好奇心にも応じてくれたので、時々セックスの内の二回ほどは自分が抱かれる側だった。もちろん事前に自分である程度慣らす事はしたし、はっきり言えばそれなりにキモチイイ思いもした。多分おっさん本人が言うほど下手ではなかったのだと思う。
 ただ、気持ちよくはしてもらったけれど、気持ちよくはさせられなかった。もっと端的に言えば、その二回とも、相手がイくことはなかった。
 一番キツかったのは、相手は本当に好奇心を満たしてくれるだけなのだと、抱かれることでよりはっきりと突きつけられた事だった。言うなれば、たんたんと体が気持ちの良くなれる場所を的確に刺激されて、その刺激に正しく体が反応しただけだったからだ。
 酷いことなどされなかったし、むしろ優しく気遣ってくれたとは思うのだけど、でも愛されているとも好かれているとも一切感じることが出来ないままただ抱かれるという行為は、元来アナルを男の性器で擦られたいなんて欲求が一切なかった人間にはなんとも虚しいばかりだった。
 本当に、自分を抱いている彼の姿を見てみたいだけだったらしい。出来れば、自分を抱きながら欲情して気持ちよくなってくれる彼を見たかったが、それが見れるまでにどれだけこの虚しい行為を重ねなければならないのかと考えたら、さすがにこれ以上を求める気は失せた。
 そんなわけで抱かれる側は二回で懲りたのだが、抱く側にしたって実のところそう行為の内容に大差はない。
 せいぜい中を刺激されることに慣れた相手がイッてくれる場合もあるというだけで、疲れたからもう終わってと頼まれて自分だけが達して終わることも多かったし、そこに愛や恋があるわけでもない。抱かれるよりは相当マシと言うだけで、行為の後に虚しさがないわけでもなかった。
「今日は、抱かせてくれるんですか?」
 午前中に読んでいた本の感想に一区切り付いたところで、午後はどうするのか聞いたら、相手はうーんと渋る声を上げる。気分じゃなければ今日はなしと即答してくる相手なので、この反応は珍しい。
「別に、無理にしたいとは言いませんけど」
「いや。抱かれるのが嫌ってことはないんだけど、でもまだ飽きないのかと思って? お前の好奇心を満たしてやるとは言ったけど、そろそろただの性欲処理になってないか? そうだってなら、さすがに他当たって欲しいんだけど」
 善がってる顔どころか前回中イキまでしてみせたんだし、これ以上何を見たいのと言われて言葉に詰まった。こちらの技巧も上達しているのか、疲れたから終わってと頼まれる回数は減ってきているし、たしかに前回、後ろだけの刺激で相手をイかせる事に成功もした。
 彼のそんな姿を見れたことに若干の驚きや多大な興奮はしたものの、でもそれは相手の体がこちらの与える刺激に反応した結果であることもわかっている。
「性欲処理のつもりは、ない、です」
「じゃあどんなつもり? 好奇心や探究心だってなら、これ以上の何が見たいのかはっきり言って。協力するから」
 これ以上何が見たいのかの自覚はある。こんなただ体の快楽を追うだけの殺伐としたセックスではなく、もっと想いを分け合うような、互いに想いあった、心ごと愛し合うようなセックスを彼としてみたい。
 そうは思うが、それを好奇心で試してしまうのはさすがに怖すぎた。そもそも本当には愛し合ってなど居ない状態で、そんなセックスが可能なのかわからない。そして多分間違いなく、今以上に彼への情が湧く。
 そうだ、こんな殺伐としたセックスだって、結局情は湧いている。一回り以上年上のおっさんが自分の腕の中で善がる姿に、可愛いかもだなんて感情が欠片でも湧いてくること自体が、終わってるとしか言いようがない。認めないわけにいかない。
 かといって、彼と本気で恋人の関係になりたいのかと言えば、正直無理だとしか思えなかった。主に、彼の感情面が。
 この人はきっと、自分に恋なんてしてくれない。体はくれても心はくれない。それはセックスを重ねるごとに、強くなっていった思いだった。
 でも言ってしまったほうがいいんだろうか。彼とどうなりたいかの結論は、彼の予想を裏切って、どうやら恋人になりたいだとか特別な一人になりたいだとか、そういったものになってしまった。
「もし俺が、恋人として付き合って下さい。って言ったら、どうします?」
「そういう試すような聞き方は気に入らない。この流れだと、一々説明するの面倒だから恋人になればセックスし放題。って思ってるように感じるぞ」
「違いますよ。ただ、俺がこれ以上に見たいものは、きっと恋人にならないと見れないだろうと思っただけで」
「ああ、恋人ごっこがしてみたいって話?」
「違います。ごっこじゃないです。恋人になりたい、という結論です」
「は?」
 何の結論? と言いたげな顔に、あなたとどうなりたいかの結論が出たって話ですよと教えてあげれば、今度は呆然と嘘だろとこぼしている。
「嘘じゃないです。こんな結果になって残念でしたね」
「本当にな。好奇心だけにしときゃ良かったのに」
「恋人になるのは無理だって振りますか?」
「取り敢えずお前とのセックスはもうしない」
「未来永劫?」
「そこまでは言ってない。というかまず、もしお前がこんな俺相手でも恋人になりたいって言い出したら、言うつもりだった言葉が最初っからあるんだけど、それ、言っていいか?」
「どうぞ」
「ここに通うの止めろとは言わないし、俺を口説くなとも言わないけど、でもお前をそういう意味で好きになれる自信はあまりない」
「それは今も変わらない気持ちってことでいいんですよね?」
 聞けば苦笑とともにそうだと返された。
「でも通い続けていいし、口説いてもいいし、自信がないだけで可能性がないわけではないと。口説き落とせたら、次は恋人らしいセックスもさせてくれるって事でいいですか?」
「そりゃそうなるけど、お前の俺への好奇心と探究心ってそこまでのもんなの?」
「好奇心舐めないで下さいって言いましたよね」
「ごめん、舐めてたわ。じゃあ期待させても悪いから先に言っとくけど、お前、俺の好みから相当外れてる」
「それ今言います? てかそういや教えてもらってませんでしたよね。あなたの好みのタイプってどんな男なんですか」
「年上」
「ちょっ! 一回り以上年下の相手に中イキまでさせられてて、今更、本当は年上が好きとか酷すぎません?」
 年齢などという、どうあがいても変えられない部分の好みを、どうしろと言うのか。つまりさっさと諦めろと、当回しに言われているだけなんだろうか。
「好きって気持ちなんかなくてもセックスで善くなれるってのは散々実証してやったろ」
「ええ、ホント、そうですね」
「人の心なんてなかなかどうこう出来るもんじゃないんだよ。俺は俺で色々抱えてる。セックスする相手ってんじゃなく、恋人になるってのは心の話だからさ、しんどくなりすぎる前に、適当なところで自分から諦めろよ」
 ああやっぱり諦めろということらしい。
 一応わかりましたとは返したけれど、でも当分は諦められそうにない。さてまずは、どう口説いて行くのがいいだろうか。
 午後は彼のオススメ本を読むのではなく、今の自分の助けになるような本を探してみようと思った。

<終>

 
 
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「ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書6(終)」への9件のフィードバック

  1. おっさんのごにょごにょが絶妙(笑)
    ついつい、独り言が、
    「本当は、とっくに惚れてるクセに、強がっちゃって」
    ふん!若い相手に怯んでいるのが見え見えだわよ!

    あれ?すっかり虜で嵌まっています。

  2. 5からコメントを書きたいのですが、今から飲み会なので明日頭がすっきりしてからまたコメントを書きに来ます!T_T
    今全部読みました!とりあえずレイ様お疲れ様でした!
    萌えました!

  3. るるさん>
    絶妙のお言葉ありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ
    心の伴わないセックスを自分から誘い込んで平気でやっちゃうようなおっさんが、一回りも年下の相手に惚れてるなんて事を、おっさんがちゃんと認められるのはいったいいつでしょうね(笑)
    そんなおっさんの新しい恋の自覚やらをグダグダ書く機会が来るかはわかりませんが、視点の主はしつこく口説いて最終的にはおっさんの心を落とすはずですので、この二人の未来はちゃんと恋人エンドと思ってます(^^♪

    睡魔さん>
    さっそく最後まで読んで下さって、それの報告までありがとうございます!
    けっこうざっくりと終えてしまいましたが、萌えて頂けたなら嬉しいです(^v^)

  4. こんにちは〜!
    今日はまた何度もコメントして申し訳ないですf^_^;
    レイ様の小説の会話にも思うんですが、話の書き方にも意表をつかれるところがあって私は唯一無二な感じだなあと思うのですが、最終話の展開の早さも面白いと思いました!私は予想を裏切られる話が大好きで!
    ……と言っても大した予想はしないのですがf^_^;
    でもおっさんの中でイク所はちょっと読みたかった感がありました、って冷静になってみると、こんな昼間にネットで堂々と「おっさんの中でイクところが読みたかった!」ってコメントをするかなりいい年した女の自分にちょっと絶望を抱きました!(≧∇≦)
    それからレイ様が仰られたように抱く抱かれるは、はじめての男同士のセックスで、主人公がおっさんにするのは確かに色々大変そうだなと思い、すごくあの描写に納得し、また萌えました!
    「やっぱりレイ様の書かれるBLはよいなあ」と改めて思いました。
    どこかに投稿されたりはしておられるのですか?もうプロの方でしたら的外れなことを言って申し訳ないですf^_^;レイ様の書籍があれば買いに行きたいなと思いました^_^
    このお話、おじさんには主人公はまだ興味をひかれる存在で、(実際はエッチを続けてしまうくらい特別な感情があるんだと勝手に期待しておりますが)、好意を確信できるまでに持って行くのは骨が折れると思うのですが、もし続きがあればこちらも是非読んでみたいです。レイ様がどうやって描くのか気になると言うのか、いえ、ただ自分が萌えのため読みたいだけですね!(笑)その時は良ければおっさんの中イキを……←
    長々とすいません。すごく萌えたお話でした!^_^お疲れ様でしたー!

  5. 先程頂いた睡魔さんのコメントへお返事を書いているうちに新しく感想が!
    睡魔さん、たくさん感想コメントを残してくださって本当にどうも有難うございます〜嬉しい〜( ;∀;)
    思いつくまま好き勝手書いてる話ですが、唯一無二などと言って貰えて感無量です。
    私が書き散らすものを面白いと感じてくださる方に、ここを見つけてもらえて凄く嬉しいです。
    投稿などはしてませんが、このブログを立ち上げた最初は、余裕があったら書き散らした中で気になるものをピックアップし、名前や外見などもっとしっかりキャラ作り込んで世界も広げて、同人誌にしてイベント参加とかしてみたい〜……とは思っていたんですよね。ただその余裕は今のところ一切ないというか、二日に1話上げるので精一杯な状態です(;´д`)
    でも本を買ってでももっと読んでみたいと思って頂けたこと、本当にすごく光栄です。ありがとうございます!

    この二人を恋人まで持っていくのは相当面倒だろうなぁ(主におっさんの心情面)というのがありありと予測できてしまうので、現段階でこの後を書こうという気持ちはないのですが、もし続きを書く気になった時にはおっさんの中イキ描写が入れられるよう努めたいと思います(笑)
    私は本気になったおっさんに抱かれて戸惑いながらイかされまくる視点の主とかめっちゃ見たい! なーんてことを思ってたりです(●´艸`)ウヒヒ

  6. レイさまVS睡魔さま。
    ウヒヒ、盗み聞きの気分♪どちらが中イキでも楽しそう(^o^)

  7. るるさんも中イキに反応ありがとうございます!!(笑)
    この二人なら抱かれる側になった時は中イキ出来るような関係になれそうなイメージあります。

  8. こんにちは。
    以前(恐らく3.4ヶ月ほど前)、「ゲイを公言するおっさんの蔵書」にて続きが読みたいとコメントした者です。
    続編の方もついつい6話まで一気読みしてしまいました。

    おっさんと主人公の微妙な距離感に読んでいてモヤモヤしつつも、それが何故か心地がいいと思ってしまう不思議な感じ。主人公の好奇心とおっさんの頑固さに、クスッと笑わせられてしまったり、もどかしく思ったりすることもありました。り最初から最後まで本当に楽しんで読めました。

    やはりレイさんの書くお話はこのお話に限らず、予想外の展開と独特な雰囲気がとても好きです。

    これからも更新楽しみにしています!m(_ _)m

  9. まぶさん、こんにちは。
    続きが読みたいとコメントを下さったのはまぶさんだったんですね。
    続きが読みたいと思ってくださった方に続きを読んでもらえて、しかもちゃんと楽しめて貰えたようで良かったですヽ(=´▽`=)ノ

    悪い意味でなくモヤモヤして下さったみたいでありがとうございます!
    モヤモヤが心地良いという感想を頂いたのは初めてな気がします(笑)

    自分でも時々、なんでこんな展開になるのかわからない……とか思いながら書き進めてしまうことがあるのですが、予想外の展開や独特さを好きと言って貰えて嬉しいです。ありがとうございます。
    今後もちまちまと更新を重ねていく予定ですので、またぜひ読みに来てやって下さいませ(*^_^*)

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