生きる喜びおすそ分け28

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 だってそのせいで振られてきたんでしょう、と言えば、腑に落ちない様子のまま、それはそうだけどと返される。
「愛情たっぷりに、あんな気持ちぃセックスされてたら、半年に一回だっていいから恋人でいたいって思う女の子、居たんじゃないかなって、思っちゃったんですよね。だから、そういうの、あんまり伝わってこないセックスで、良かったなって」
 彼女と続いてたら、恋人になんてなれなかった。恋人を作ることを諦めてしまうくらい、過去の彼女たちが彼の想いを上手に受け取れないタイプで良かった。
 それを伝えたら、君にも満足いくレベルでは感じられなかったって言われたばっかりなんだけど、と困惑されてしまう。
「直接感じられなくても、間接的には充分感じてるから、いいんです。頑張ってくれてるのはわかった、って言いましたよね」
「間接的に?」
「そ、です。俺ね、あなたは嘘つきじゃないって、知ってるんですよ」
「はい?」
 唐突に話が変わったように思うのか、相手の語尾があがって、ますますわけがわからないという顔をされた。
「その場限りで適当なこと、言わないでしょ。仕事でも、プライベートでも。出来ないことを安請け合いしない人だって知ってるから、俺を好きって気持ちがあるってことも、セックス一緒に楽しんだって言葉も、疑う気にはなれないんです」
「うん、それは、ありがたいけど。でも俺にその気持ちが事実あることと、それで君が満足いくかは別問題じゃない?」
「あなたの言葉が信じられる、ってことが重要なんですって。だって、気持ちが伝わってこない、って話なんですから。好きだよとか、可愛いよとか、気持ちのこもらない上滑りな言葉を告げられたら、悲しくなったり虚しくなったりするんですよ。セックス中に相手の興奮が見えなくて、自分一人が発情してるって思わされるのも、キツイです」
「ん゛ん゛っ」
 痛いところを突かれたという顔で言葉を詰まらせるから、過去の彼女たちにも指摘された事があるのかもしれない。
「えーと、それは、セックスのダメ出し……?」
 おずおずと聞かれて、なんでそうなる、と思う。
「違いますって。そんなセックスされても、好きだよも可愛いよも嘘じゃないって信じられてれば、頑張って口に出して想いを伝えようとしてくれてるんだって思えるし、興奮して見えなくたって俺だけ一人で発情してるなんて思わなくて済む、って話でしょ」
「あぁ、なるほど」
 ホッと安堵する相手ににじりよって、無造作に投げ出されていた手にそっと自分の手を重ねる。
「ん?」
 どうした? と問いたげな視線を避けるように瞳を伏せて、そのまま相手の肩口に頭を寄せた。
「ぎゅって、して下さい」
 たっぷり甘える気持ちを込めて、ゆるっと吐き出せば、躊躇う様子もなく相手の腕が背に回される。
「好きです」
「ああ、俺も、好きだよ」
 こちらからも抱き返して次の言葉を伝えれば、やはり躊躇いなく好きだの言葉が返る。相変わらず素直な反応だなぁと思いながら、相手と抱き合ったまま、ふふふっと笑いだしてしまう。
「で、これは何か意味があってしてるの?」
「はい。というかセックス中も、俺がぎゅってして好きって言ったら、ちゃんと好きだよって返してくれたでしょ。今も、さっきも、ちゃんと気持ち、乗ってましたけど、それ自覚あります?」
「気持ちが乗ってた?」
「ああ、やっぱり自覚ないんだ。あのね、俺はあなたの言葉を信じられるし、今みたいに俺から誘って、あなたの気持ち引っ張りだすことも、出来るんですよ」
 しかも今後彼とのセックスを繰り返して慣れるほど、最中に相手の気持ちを感じられる瞬間が確実に増えていくはずだ。
「君は、」
 感嘆するみたいにどこか呆然と漏れた声に、寄せていた体を少しばかり離して相手の顔を確かめる。
「本当に、凄いな」
 やっぱりどこか呆然とした顔をしている相手に、気が早いなと思う。感動するなら結論を聞いてからにして欲しい。なんてことを思いながら。
「だから、半年に一回頑張ってくれるなら、とりあえず、半年後目指してお付き合い続けてみてもいいかな、って気持ちには、なってます」
 伝えた途端、背に回ったままの腕にぎゅっと強く抱きしめられた。

続きました→

 
 
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